訪問看護師・専門性の高い看護師など計画的に育成!病院薬剤師の「奨学金返済を免除する」仕組みを検討!—第8次医療計画検討会
2022.11.14.(月)
2024年度の第8次医療計画においては、「歯科医師・薬剤師・看護職員の確保」にもさらに力をいれる。薬剤師については、「病院に勤務する薬剤師」の確保が重要なテーマである―。
看護職員については、例えば「訪問看護に従事する看護師」や「専門性の高い看護師」の育成を計画的に進める―。
医科・歯科連携を進めるため、地域の実情に応じて「地域の歯科診療所から、必要に応じて病院に歯科医師等に来てもらい、入院患者の口腔ケアを適切に行ってもらう」ことなどを進める―。
11月11日に開催された「第8次医療計画に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった議論が改めて行われました。
病院に一定期間勤務する薬剤師、「奨学金の返済を免除する」仕組みを検討中
Gem Medで繰り返し報じているとおり、2024年度から新たな「第8次医療計画」(2024-29年度の計画)が始まります。検討会や下部組織のワーキンググループでは、都道府県が医療計画を作成する(2023年度中に作成)際の拠り所となる指針(基本指針、2022年度中に都道府県に提示)策定論議を進めています。検討会で年内(2022年内)に意見を整理し、それをもとに厚労省で年度末(2023年3月頃)に指針(基本方針)を示します。
【これまでの検討会論議に関する記事】
脳卒中等の急性期対応では医療機関へのアクセスを最重視、精神疾患の慢性期入院患者減踏まえベッド数適正化を—第8次医療計画検討会
小児・周産期医療、「集約化・重点化」と「患者アクセスの確保」とのバランスを地域ごとに慎重に判断せよ—第8次医療計画検討会(2)
すべての開業医に地域で不足する医療機能(夜間対応など)への協力求める、外来機能報告データの利活用推進—第8次医療計画検討会(1)
平均在院日数の地域格差、「地域性があり容認すべき」と考えるか、「医療の標準化に向け解消すべき」と考えるか—第8次医療計画検討会(2)
医療提供体制の基礎となる2次医療圏は適正な規模・エリア設定が重要、他計画にも影響するため優先検討を—第8次医療計画検討会(1)
かかりつけ医機能は医師個人・医療機関の双方に、「制度化や登録制」に疑問の声も—第8次医療計画検討会
「病院・クリニック間の医師偏在解消」「ベテラン医師ターゲットに据えた医師偏在解消」など進めよ—第8次医療計画検討会(2)
病院薬剤師や訪問看護師、特定行為研修修了看護師、医療計画に「ニーズ踏まえた確保策」規定へ—第8次医療計画検討会(1)
医療・介護サービスの一体提供可能とするため、在宅医療圏域は「市町村単位」が望ましいのでは—第8次医療計画検討会(2)
医療安全の向上に向け、例えば医療機関管理者(院長など)の「医療事故に関する研修」参加など促していくべき—第8次医療計画検討会(1)
2次救急と3次救急の機能分担、巡回医師等確保・オンライン診療によるへき地医療支援など進めよ—第8次医療計画検討会(2)
周産期医療・小児医療提供体制、医療の質確保や医師の負担軽減のため「集約化・重点化」を急ぎ進めよ—第8次医療計画検討会(1)
がん拠点病院が存在しない医療圏への対策、効果的な糖尿病対策、精神疾患対策の評価指標などが今後の重要論点—第8次医療計画検討会(2)
外来機能報告データ活用し、紹介受診重点医療機関の明確化だけでなく、幅広く「外来医療機能分化」論議を—第8次医療計画検討会(1)
高額医療機器の共同利用推進、「読影医・治療医配置なども勘案」した広範な議論求める声も—第8次医療計画検討会(2)
外来医師偏在の解消に加え、「かかりつけ医機能の明確化、機能を発揮できる方策」の検討も進める―第8次医療計画検討会(1)
人口減の中「2次医療圏」をどう設定すべきか、病床数上限である基準病床数をどう設定するか―第8次医療計画検討会
今後の医療提供体制改革では、「医療人材の確保」が最重要論点―第8次医療計画検討会
外来機能報告制度や紹介受診重点医療機関が「医師偏在」を助長しないよう留意を―第8次医療計画検討会
感染症対応では情報連携、看護師はじめ医療人材確保が最重要、課題検証し早急な改善を—第8次医療計画検討会
感染症対応医療体制を迅速確保できるよう、強制力持つ法令の整備を検討してはどうか—第8次医療計画検討会
集中治療認定医を専門医と別に養成し、有事の際に集中治療に駆け付ける「予備役」として活躍を—第8次医療計画検討会
2024年度からの医療計画に向けた議論スタート、地域医療構想と医師配置、外来医療など考えるワーキングも設置—第8次医療計画検討会
11月11日の会合では、医療計画の一部となる「医師以外の医療従事者の確保」のうち▼歯科医師▼薬剤師▼看護職員—について、具体的な確保策を改めて議論しました(第1ラウンド論議の関連記事はこちら)。
まず「薬剤師」確保策を見てみましょう。第1ラウンドの議論も踏まえ厚生労働省から次のような方針案が示されました。
▽次期「医療計画作成指針」で、薬剤師確保に関して以下の点を記載する
▼病院薬剤師・薬局薬剤師のそれぞれの役割
▼地域医療において必要な医療機関・薬局における薬剤師の就労状況を把握したうえで、地域の実情に応じた薬剤師の確保策を講じる
▼「地域医療介護総合確保基金」(修学資金貸与、病院への薬剤師派遣)の積極的な活用、薬学生を対象とした就職活動に係る情報発信等を行う
▼都道府県の薬務主管課と医療政策主管課が連携して取り組む
▼病院薬剤師の確保策を検討する際は、都道府県薬剤師会だけでなく都道府県「病院薬剤師」会と連携して取り組む
▽国が都道府県に対し、都道府県における薬剤師の偏在状況の把握、薬剤師確保対策の検討に資する情報(医師・歯科医師・薬剤師統計を活用したデータ、薬剤師確保に係る厚労省調査事業など)の周知・共有を行い、活用を促す
こうした方向に異論は出ていませんが、多くの委員から「就学資金貸与への地域医療介護総合確保基金活用」にとどまらず、「奨学金返済への地域医療介護総合確保基金活用」を検討してほしいとの要望が出ています。
薬剤師の資格を取得するためには「大学薬学部で6年間の教育を受け、薬剤師国家試験に合格する」ことが求められます。この「6年間の授業料や大学入学金」負担が大きく、少なからぬ学生が「奨学金」などの就学資金貸与を受けます。その返済のために、「初任給の高い薬局」を就労先として選択するケースが多く、結果「病院薬剤師を十分に確保できない」事態の1因となっていると指摘されます。
このため地域医療介護総合確保基金から「就学資金貸与」を行うとともに、「薬剤師が不足する地域の医療機関等で一定期間勤務することで、修学資金返済義務を免除する」仕組みを設けています。要件の明確化が昨年(2021年)12月と遅かったため、現時点で「各地で就学資金貸与が積極的に行われている」状況にはないことから、上記のように「医療計画の中に明示し、積極的な活用を促す」方針案が示されているのです。
ただし、「定員割れしている薬学部もあり、また薬剤師国家試験の合格率はさほど高くない(2022年は68.0%、医師国家試験は91.7%)。就学資金を貸与したとしても、薬剤師確保に必ずつながるとは限らない」ことから、「薬剤師国家試験に合格後に、就学資金の『返済』に充てる資金を貸し付け、一定の医療機関(薬剤師が不足する地域、不足する医療機関など)での勤務を条件に、当該貸し付け金の返済を免除する」仕組みを設けてはどうか、との提案が加納繁照構成員(日本医療法人協会会長)らから出されています。
厚労省内部でも、この「奨学金返済への地域医療介護総合確保基金活用」が検討されていますが、「第8次医療計画のスタートに制度化を間に合わせる」ことが可能かどうかは未知数です。今後の動きを見守る必要があるでしょう。
ほかに「薬剤師にも、医療機関での研修・実習を一定期間義務付ける」仕組みなども検討されており、厚労省担当者は「総合的な対策をとり、病院薬剤師確保に努めていく」考えを強調しています。
訪問看護に携わる看護師、専門性の高い看護師の確保を計画的に推進
また看護職員については、「新卒、潜在看護師の復職支援などを含めた一般的な確保策」を進めるとともに、次のような取り組みを行ってはどうか、との考えが厚労省から示されました。
【地域の課題に応じた看護職員確保対策】
▽都道府県・都道府県ナースセンター等の関係者の連携の下、都道府県・2次医療圏ごとの看護職員確保に係る課題を踏まえつつ、「マイナンバー制度を活用した看護職の人材活用システム」等を活用した都道府県ナースセンターによる復職支援、医療機関の勤務環境改善による離職防止などの取組を推進する
【訪問看護に従事する看護職員の確保】
▽都道府県・2次医療圏における訪問看護スタッフ数(国から訪問看護ニーズに関するデータを提供し、それをベースに必要な訪問看護スタッフ数を推計する)、必要な看護職員の確保方策を定める
▽訪問看護に係る看護職員の確保のため、「地域医療介護総合確保基金の活用」「都道府県ナースセンターにおける取り組みの充実」を図る
▽訪問看護ステーションにおける安定的・効率的な人材確保に資するよう、地域の実情に応じ、「事業所間の連携」「事業者規模の拡大」などを進める
【特定行為研修修了者、その他の専門性の高い看護師の養成】
▽特定行為研修機関・実習施設の確保など、特定行為研修に係る研修体制の整備に向けた具体的な計画を策定することを都道府県に義務付ける(必須化する)
▽都道府県ごとに「特定行為研修修了者、その他の専門性の高い看護師」の就業者数等目標を設定する(2次医療圏、分野・領域別に検討する)
▽特定行為研修に係る目標の設定方法については、医道審議会看護師特定行為・研修部会で検討する(関連記事はこちら)
こうした方向にも異論は出ていませんが、構成員からは▼看護職員全体の新たな需給推計を行い、計画的に看護職員確保を進めるべき(尾形裕也構成員:九州大学名誉教授)▼訪問看護ステーションの機能強化・大規模化に向けて都道府県ナースセンターの支援に期待している(山口育子構成員:ささえあい医療人権センターCOML理事長、関連記事はこちら)▼訪問看護ステーションの大規模化は重要だが、経営効率の良い都市部集中などを招かないだろうか、また大資本がバックにつくことになると思うが、サービスの質が低下しないか心配している(大屋祐輔構成員:全国医学部長病院長会議理事)▼特定行為研修修了者は、そもそも「在宅や介護分野で活躍する」ことを期待して創設された。急性期医療の補助も重要だが、本来の目的も忘れてはいけない(織田正道構成員:全日本病院協会副会長)▼訪問看護ステーションでは、介護保険サイドの「ステーションを整備せずとも、見做し指定(病院、クリニックからの訪問看護)で十分ではないか」との意向が整備量に大きく影響する。介護保険サイドからも「訪問看護ステーションの整備、訪問看護ステーションのスタッフ確保」方針を打ち出してもらう必要がある(今村知明構成員:奈良県立医科大学教授)—など、さまざまな注文がついています。
なお、今村委員や櫻木章司委員(日本精神科病院協会常務理事)は「少子化が進行する中で、看護職員の確保が極めて困難になると思う。考えられる方策をすべて実行する必要がある」と要望しました。看護師職員にとどまらず、医師・薬剤師、介護スタッフなどの確保が難しくなっていき、とりわけ「地方」でこの問題が深刻となります。医療ニーズの動向(地域によって医療ニーズが増加・減少するなどの違いがある)を適切に見極め、医療従事者の確保を進めていく必要があります。
また、歯科医師については「病院-歯科診療所間の連携推進、地域の歯科専門職の病院における活用などを、地域の実情を踏まえて次期医療計画作成指針に反映させる」方針案が提示されています。昨今は在宅医療や介護の分野で「歯科(口腔管理)・栄養・リハビリの一体的推進」が注目されますが、それ以前に「周術期の口腔管理を適切に行うことで、術後の経過が著しく改善する」ことが注目されています。「病院で歯科医師を確保する(病院に勤務してもらう)」「歯科クリニックの歯科医師等に、必要に応じて病院に来てもらう」など、地域の実情に応じた「医科歯科連携」が進むことに期待が集まります。
なお、11月11日の検討会には、下部組織である「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」でまとめられた「医師確保計画の見直しに向けた意見」の報告も行われました(関連記事はこちら)。
委員からは「若手医師の働き方は急速に変化しており、それを踏まえた需給推計なども改めて行ってほしい」(大屋構成員)、「医師偏在対策は、2025年を見据えた地域医療構想や、その先を見るポスト地域医療構想、医師働き方改革と密接に関連する。今後のスケジュールを明確にしてほしい」(岡留健一郎委員:日本病院会副会長)などの要望が出ています。
「医療計画見直し」に向けた個別テーマの論議が順次、固められてきており、12月の意見取りまとめが近いことが予想されます。
【関連記事】
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