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外来診療 経営改善のポイント 2024年度版ぽんすけリリース

医学部恒久定員に中に積極的に地域枠等設置を、ベテラン医師の地域医療従事を促進する工夫を—地域医療構想・医師確保計画WG(2)

2022.10.19.(水)

医師の地域偏在解消に大きな効果を持つ「地域枠」などについて、積極的に「医学部恒久定員」の中に設置できるよう、都道府県・大学等が密接に連携していく必要がある—。

医師偏在解消策は「若手医師、医学生」が主なターゲットになりがちであるが、ベテラン医師にも積極的に地域医療に従事してもらえるような工夫を都道府県・大学等が連携して行っていく必要がある—。

10月12日に開催された「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」(「第8医療計画等に関する検討会」の下部組織、以下、地域医療構想・医師確保計画WG)では、このような方針についても概ねの了承が得られています。

10月12日に開催された「第8回 地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」

医師偏在解消に効果的な「地域枠」を、医学部恒久定員の中にも積極的に設置を

Gem Medで繰り返し報じているとおり、2024年度から新たな「医師確保計画」(2024-26年度の計画、医療計画の一部となる)がスタートするため、地域医療構想・医師確保計画WGで計画見直し論議が精力的に進められています。

【これまでの議論に関する記事】
「医師少数区域にもかかわらず、医師を減らさねばならない」事態など解消のため、新ルール設ける—地域医療構想・医師確保計画WG(1)
2次医療圏毎に病院・診療所別の「医師が多い、少ない」を可視化、地域の医師確保対策に極めて有益―地域医療構想・医師確保計画WG
「病院・クリニック間の医師偏在解消」「ベテラン医師ターゲットに据えた医師偏在解消」など進めよ—第8次医療計画検討会(2)
医学部臨時定員が削減されても地域枠医師育成できるよう「恒久定員の中の地域枠等設定」を推進―地域医療構想・医師確保計画WG
「医師少数区域からの医師流出」などの問題発生、医師確保計画見直しで対処―地域医療構想・医師確保計画WG(2)
地域医療構想の必要病床数と病床機能報告結果、単純比較できない点を再確認―地域医療構想・医師確保計画WG(1)
地域枠医師などサポートするキャリア形成プログラム、現場ニーズを意識した作成・運用進む—地域医療構想・医師確保計画WG(2)
2024年度から「医師確保計画」も新ステージに、医師偏在解消に向け2022年内に見直し案まとめ―地域医療構想・医師確保計画WG



医師確保計画は、大きく次のような流れで進みます(関連記事はこちらこちら)。

(I)地域の医師確保状況を精緻な指標(医師偏在指標)を用いて相対化(言わば順位付け)し、2次医療圏を▼医師多数区域(医師偏在指標に照らし上位3分の1)▼中間の区域▼医師少数区域(同下位3分の1)—に3区分する

(II)地域の区分に応じた「医師確保計画」(医師確保の方針設定、目標医師数設定、具体的な施策などを記載)を作成する

(III)計画を第1期(2020-23年度)→第2期(2024-26年度)→第3期(2027-29年度)・・・と進め、段階的に、しかし強力に「医師多数区域」から「医師少数区域」への医師移動を促すなどし、「医師の地域偏在を2036年度に解消する」ことを目指す

10月12日の会合では、(II)の医師確保計画、(III)の計画実行について、(A)医師少数スポット(B)目標医師数(C)地域枠・地元出身者枠(D)産科・小児科の医師確保計画(E)効果の測定・評価(F)その他—の5項目の見直し方針を議論しました。本稿では(C)(E)(F)に焦点を合わせます((A)(B)(D)について別稿で報じています)。



まず(C)の地域枠・地元出身者枠は「医師の地域偏在解消に大きな効果がある」ことが分かっており、今後、医学部臨時定員が削減される中でも「恒久定員の中に積極的に地域枠等を設けていくべき」との考えが確認されています(関連記事はこちら)。ただし、「地域枠等を設置すれば、卒業生が地域に自動的に定着してくれる」わけではありません。都道府県と大学が密接に連携し、地域枠等学生の段階から「地域医療従事の魅力」などを理解してもらうとともに、地域枠等学生のキャリアアップ(学位取得、専門医資格取得など)支援を十分に行うことが求められます。

厚生労働省は、こうした点を踏まえて次のような方向性を提示しました。

▽都道府県は、積極的に恒久定員内への地域枠等設置について大学と調整を行う

▽特に医師少数県(偏在指標が下位3分の1)においては、「自県内大学への積極的な地域枠設置」に加えて、「地元出身者を対象として他県大学にも地域枠設置」を行い、卒然からキャリア形成に関する支援を行う

▽都道府県、大学、関係機関が連携して、キャリアコーディネーター等を活用しながら、キャリア形成卒前支援プランを通して学生時代から地域医療に従事・貢献する医師としての姿勢等を涵養し、都道府県・大学等における「地域医療を担う医師養成に有効な取り組み」の情報共有を行う機会を定期的に設ける

▽都道府県は、大学・地域医療機関等と連携し、「医師少数区域等における医師確保が必要な診療科や医師数」「医療機関の指導体制」などを十分に把握した上で地域医療対策協議会で協議し、地域枠医師がキャリア形成をしつつ地域医療に従事しやすい仕組みを構築する



こうした方向に異論・反論は出ておらず、▼地域医療に従事する「総合診療能力を持つ医師」と、「高度専門的な医療を提供する医師」とをバランスよく養成することが重要である(小熊豊構成員:全国自治体病院協議会会長)▼人口・医学部定員・地域枠等のバランスを考慮し、「不公平」が出ないように配慮すべき((大屋祐輔構成員:全国医学部長病院長会議理事)—といった提案が出ています。こうした声にも耳を傾けて、今後、詳細を練っていくことになります。

医師確保計画の成果・効果の評価、今般はやむを得ず「代替指標」を用いて実施

医師確保計画についても「作って終わり」では困ります。計画を作成・実行し、その結果・効果について「目標を達成できたのか、できなかったのか」を評価。さらに、目標が達成できなかった場合には特に「何が問題であったのか」を検証して、次の計画に活かしていくことが重要です(PDCAサイクルを回す)。

このためには「結果・効果を測定する指標」を適切に設定することが必要となり、厚労省はこれまでの議論を踏まえ、(E)として次のような考えを提示しました(関連記事はこちら)。

▽「第7次医師確保計画」の効果の測定・評価については、算出が困難である「計画終了時 の医師偏在指標」の見込みとの比較ではなく、「病床機能報告等の都道府県が活用可能なデータ」を参考として評価する

▽医師・歯科医師・薬剤師統計(三師統計)について、オンライン提出の仕組みを導入することで結果を早期に公表できるよう検討を進める

▽既存の他統計との連携も含め、三師統計の更なる充実化を図る



本来であれば、「医師確保計画実行『前』の医師数」と「医師確保計画実行『後』の医師数」とを比較し、計画の内容・取り組みの良し悪しを評価する必要があります。しかし、医師数を把握する厚労省の「医師・歯科医師・薬剤師統計」が示されるまでには時間がかかるため、これを待っていては、「次の医師確保計画作成までに、前の計画の評価を行えない」事態が生じてしまうのです。

そこで、将来的な「医師・歯科医師・薬剤師統計のスピードアップ」を図るとともに、今回の評価においては「病床機能報告などの代替指標を用いる」こととするものです。

やむを得ない措置として了承されていますが、小熊構成員は「医師・歯科医師・薬剤師統計のスピードアップ、内容の充実(どの地域に、どのような専門性を持った医師が廃止され、実際にどのような医療提供が行われているのか)を急ぎ進める必要がある」と提案しています。

若手医師・医学生だけでなく、ベテラン医師の地域医療従事を促す仕組みも重要

上記(C)の地域枠等に代表されるように、医師偏在解消では「若手医師、医学生」を主なターゲットとして「地域医療への従事」を促進する方策が目立ちます。しかし、「ターゲットが若手医師等に偏り過ぎていないか」「ベテランの指導医が地域にいなければ、若手医師が地域医療従事を躊躇してしまうのではないか」「より広範にベテラン医師にも地域医療に従事してもらう方策を考えるべきではないか」との指摘が有識者から出ています(関連記事はこちら)。

こうした声も踏まえ、厚労省は(F)「その他」として、次のような方向性も示しました。

▽例えば、地域医療支援センターが医師確保が必要な診療科・医師数や、派遣元医療機関の候補を調査し、医師派遣に必要な情報を正確に把握する

▽▼自県内の大学への寄附講座の設置▼地域医療介護総合確保基金を活用した派遣元医療機関の逸失利益補填—なども活用し、医師少数区域等の医師確保を推進する

▽「県外の大学に寄附講座を設置する」ことなども考慮し、県外からの医師派遣調整を行う

▽都道府県は、派遣医師が医師少数区域経験認定医師(関連記事はこちら)を取得可能になるような配慮、専門医制度の連携プログラム(関連記事はこちら)、寄附講座等による医師派遣といった既存の施策を組み合わせて医師派遣を進める

▽子育て支援(時短勤務等の柔軟な勤務体制の整備、院内保育・病児保育施設・学童施設やベビーシッターの活用等)について、都道府県は市区町村とも連携し、全診療科において地域の実情に応じて取り組むこととする

▽子育て等の様々な理由で臨床業務を離れ、臨床業務への再就業に不安を抱える医師のための復職研修や就労環境改善等の取組を通じ、再就業を促進する



こうした方向にも異論・反論は出ておらず、総合的に「医師確保を進めていく」方向が了承されました。加えて▼医師少数区域経験認定医師について、院長要件は「地域医療支援病院」に限定せず、「クリニックも含めた、すべての医療機関」に拡大すべきである(小熊構成員)▼地方医大では、医師を派遣する体力がなくなってきており、その辺への支援・配慮も検討すべき(大屋構成員)—といった注文がついています。



地域医療構想・医師確保計画WGでは、「医師確保計画の見直し」と「地域医療構想の実現」の2つのテーマを議論します。前者の「医師確保計画の見直し」に関しては一通りの議論を終え、今後「意見とりまとめ」論議に入ります(親組織である第8次医療計画等に関する検討会に報告する)。

一方、後者の「地域医療構想の実現」については、関連して「2025年度以降のポスト地域医療構想をどう考えるのか」という指摘も強くあり(関連記事はこちら)、今後の動きに注目が集まります。



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