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「医師少数区域からの医師流出」などの問題発生、医師確保計画見直しで対処―地域医療構想・医師確保計画WG(2)

2022.6.17.(金)

医師偏在解消のために、都道府県は「医師確保計画」を作成し、医師確保策を展開していく。その際、3年間の計画終了時点でどの程度の医師を確保するかの目標値(目標医師数)を設定するが、現在の仕組みでは「医師少数区域にもかかわらず、医師を減らしていかなければならない」「医師少数区域から、比較的医師が多い区域への医師流出が生じてしまう」などの問題点も生じており、これらを解消するための見直しを行う—。

6月16日に開催された「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」(「第8次医療計画等に関する検討会」の下部組織、以下、地域医療構想・医師確保計画WG)では、こうした議論も行われています。

6月16日に開催された「第5回 地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」

医師少数区域にもかからわず「医師を減らさなければならない」事態を解消へ

地域医療構想・医師確保計画WGでは、2024年度から新たなステージに入る「医師確保計画」見直し論議も進められています(関連記事はこちらこちら)。

医師確保計画は、大きく次のような流れで進みます(関連記事はこちらこちら)。

(1)地域の医師確保状況を精緻な指標(医師偏在指標)を用いて相対化(言わば順位付け)し、2次医療圏を▼医師多数区域(医師偏在指標に照らし上位3分の1)▼中間の区域▼医師少数区域(同下位3分の1)—に3区分する

(2)地域の区分に応じた「医師確保計画」(例えば下記のイメージ)を作成する

【医師確保に関する方針】
▼医師多数区域:圏域外からの医師確保は行わず、逆に医師少数区域に医師を派遣する
▼中間の区域:圏域内に「医師少数の地域」がある場合など、必要に応じて他の2次医療圏からの医師派遣等を受ける
▼医師少数区域:医師多数の区域(他の2次医療圏)から医師派遣等を受ける

【目標医師数】
▼2次・3次医療圏ごとに「計画満了時点」(つまり3年後)に確保すべき医師数を算出する

【具体的な施策】
▼「地域枠を●名確保する」「医師派遣を●名受けるよう調整する」などの施策を明示する

医師確保計画に基づく医師偏在対策の大枠(地域医療構想・医師確保計画WG3 220511)

医師多数区域では、偏在の助長を防ぐために、「他地域からの医師派遣など」を医師確保計画に盛り込むことはできない(好ましくない)(その1、3次医療圏)

医師多数区域では、偏在の助長を防ぐために、「他地域からの医師派遣など」を医師確保計画に盛り込むことはできない(好ましくない)(その1、2次医療圏)



この計画を第1期(2020-23年度)→第2期(2024-26年度)→第3期(2027-29年度)・・・と進めることで、「医師多数区域」から「医師少数区域」への医師移動を強力に促し「地域偏在を2036年度に解消する」ことを目指しています。

2024年度から医師確保計画の第2期がスタートするため、地域医療構想・医師確保計画WGにおいて「夏まで(9月頃まで)の第1ラウンドで大きな見直し方向を探る」「秋以降の第2ラウンドで具体的な見直し内容を固める」ことになります。前回会合(5月11日)では上記(1)の偏在指標について議論しました(関連記事はこちらこちら)。

6月16日の会合では「医師少数区域・医師少数スポット」や「医師確保計画における目標医師数設定の考え方」に焦点を合わせた議論が行われました。

まず、後者の「目標医師数設定の考え方」について見てみましょう。

上述したように、医師確保計画には「医師少数区域」「中間の地域」「医師多数区域」のそれぞれについて、「目標医師数」を設定します。3年間(当初のみ4年間)の計画終了時点で「どの程度の医師数が必要なのか」を目標値とし、目標達成に向けた施策(医師派遣の要請や地域枠設定など)を転換していきます。

しかし、この「目標医師数」設定には次のような2つの大きな課題があることが明らかにってきました。

【課題1】
▽目標医師数は「将来人口」(つまり将来の医療ニーズ)をベースに計算するため、人口減少が進む地域では「医師少数区域でありながら、医師を減らさなければならない」という事態が少なからず生じている(計画開始時点の医師数>目標医師数となる医師少数区域が半数近く(下図の右図)ある)

将来人口が減少する地域では、医師少数区域にもかかわらず「より少ない医師数」(医師の減員)目標をたてなければならない(地域医療構想・医師確保WG(2)3 220616)



【課題2】
▽医師多数区域や、医師少数・多数でもない「中程度の区域」において、目標医師数は都道府県の判断で設定できる。このため医師の「医師少数区域→多数区域・中程度の地域」という移動が生じ、「医師少数区域の医師数がますます少なくなっている」という事態が生じている

医師が比較的多い区域でも「医師の増員」目標を立てているケースがある(地域医療構想・医師確保WG(2)4 220616)

医師少数区域から、医師が比較的多い区域への「医師流出」が生じてしまっている(地域医療構想・医師確保WG(2)5 220616)



まず【課題1】は、目標医師数の計算式が「必ず将来人口を勘案する」ものとなっている点に原因があります。

医師少数区域の「目標医師数」は将来人口(計画終了時点の人口)をベースに計算することとなっており、それ以外の地域では「任意に設定する」こととなっているる(地域医療構想・医師確保WG(2)2 220616)



そこで厚生労働省は「医師少数区域において、医師確保計画開始時に既に目標医師数を達成している場合は、『将来時点で必要となる医師数』(今後検討していく)を踏まえながら、地域の実情に応じて『目標医師数を計画開始時点の医師数を上回らない』範囲で設定することを可能とする」との見直し案を提示しました。「医師少数区域でありながら、医師を減らさなければならない」という事態を避けるものです。

この見直し方針に反論は出ていません。今後、「将来時点で必要となる医師数」の計算式と合わせて詳細を詰めていくことになります。この点、大屋祐輔構成員(全国医学部長病院長会議理事、琉球大学病院院長)は「現在、目標医師数は病院医師数とクリニック医師数を合わせて考えているが、両者は分けて考えていくべき」とコメントしており、重要論点の1つとなりそうです。

医師少数区域から「医師が比較的多い区域」へ医師が流出している事態を解消へ

また、【課題2】は「医師多数区域」「中程度の区域」(医師偏在指標が上位3分の1(医師多数区域)、下位3分の1(医師少数区域)以外の、中間3分の1の区域)で目標医師数を任意に設定できるために、「医師少数区域から、医師を奪ってしまっている」という問題です。医師確保計画は「医師少数区域において、医師増員を図る」ことを重要目標としており、事態を放置することはできません。厚労省は課題解消のために「医師少数区域以外の2次医療圏において『目標医師数は計画開始時点の医師数を上回らない』範囲で設定する」との新ルール設定を提案しました。

この提案にも反論は出ておらず、上記と同様に「将来時点で必要となる医師数」の計算式と合わせて詳細を詰めていきます。

医師少数区域の「目標医師数」は将来人口(計画終了時点の人口)をベースに計算することとなっており、それ以外の地域では「任意に設定する」こととなっているる(地域医療構想・医師確保WG(2)2 220616)



なお、医師確保全体に関連して、▼医師確保計画に基づく都道府県の取り組みには限界がある。全国を俯瞰した「医師少数区域での実効性ある医師確保」が実現できるような仕組みをさらに考えるべき(野原勝構成員:全国衛生部長会)▼地域枠医師では「地域医療機関での勤務」義務期間が9年間設けられているが(関連記事はこちら)、義務年限が開けた後の「地域定着」こそが重要である。そうした地域定着に向けた方策も勘案していく必要がある(大屋構成員)▼地域ごとの状況だけでなく「全体像」を俯瞰した議論岐津陽である。病院・クリニック別の医師配置状況、診療科別の医師配置状況、総合診療を担う医師の配置状況など、さまざまな切り口で考えていくべき(猪口雄二構成員:日本医師会副会長)—などの意見が出ています。

医師少数スポット、原則として「市町村単位」で設定、定量基準を求める声もあるが・・・

次に、「医師少数スポット」に関する議論をみてみましょう。

上述(1)の考え方に基づいて、地域(2次医療圏)を▼医師多数区域(偏在指標が上位3分の1)▼医師数が中程度の区域(多数・少数以外の中間3分の1)▼医師少数区域(下位3分の1)—に区分し、それぞれに「医師確保の方針」や「目標医師数設定」を行います。

さらに都道府県の判断で、「医師少数区域以外の『医師少数スポット』を設ける」ことも可能です。「2次医療圏で見ると医師が少数ではない(偏在指標が下位3分の1よりも大きい)が、この地域には実は医師が少ない。この地域で医師の増員をしなければ地域住民の生命・健康を守ることが難しくなる」と都道府県が判断した場合に「医師少数スポット」を定め、医師少数区域と同様に「積極的に他地域から医師確保を進める」ことなどが認められます。

しかし、「医師少数スポットの定め方」については、医師確保計画策定ガイドラインを見ても「都道府県においては、必要に応じて二次医療圏よりも小さい単位の地域での施策を検討することができる」旨の記載にとどまり、「事実上、都道府県の裁量で医師少数スポットを設定できる」状況です。

このため、一部の都道府県では「2次医療圏そのものを医師少数スポットに指定している」(広域すぎ、2次医療圏単位の「医師少数区域」を設定した意味が失われてしまう)、「医療機関そのものを医師少数スポットに指定している」(あまりに狭すぎる)などの不都合も生じています。

2次医療圏まるごと「医師少数スポット」に指定するケースなどもある(地域医療構想・医師確保WG(2)1 220616)



そこで厚労省は、医師少数スポットの定め方について次のようなルールを設けてはどうかと提案しています。
▽原則として「市区町村単位で設定」する

▽へき地や離島等においては、必要に応じて「市区町村よりも小さい地区単位の設定」も可能とする

▽医師少数スポットを「市区町村単位で設定しない」場合には、医師確保計画に「設定の理由」(たとえば「無医地区の巡回診療を行うため」、「へき地診療所の医師確保を行う必要があるため」など)の明記を求める

▽すでに設定した医師少数スポット、今後設定する医師少数スポットについて、時間の経過や医療提供体制改革(地域医療構想の実現に向けた医療機関の統廃合など)の進捗状況などを踏まえ、「必要性」などを常に検証し、設定の見直しなども検討していく



この提案内容に反論は出ていませんが、「より明確な定量的な基準(数値基準)などを検討すべきではないか」との声が幸野庄司構成員(健康保険組合連合会理事)や櫻木章司構成員(日本精神科病院協会常務理事)から出ています。

確かに「エリア以外の基準がない」実情には不安も感じます。しかし、例えば無医地区・準無医一地区の状況をみると、「人口規模が大きな地域でも、人口規模が小さな地域でも、同程度の割合で無医地区が存在している」ことなどを考えると、「少数スポットとは●●の数値基準を満たすとこである」との定義づけは現時点では困難なようです(定量基準を設けると、地域によっては「医師が不足しているのに少数スポットとして設定できず、医師確保方策を効果的に打てない」などの不都合も生じかねない)。厚労省は「まず『原則市町村単位』というエリア基準を設け、今後、定量基準(数値基準)を設定できるかなどを検討していく」考えを示しています。

医師の多い少ないに関わらず、一定割合で無医地区などが存在している(地域医療構想・医師確保WG(2)6 220616)



医師確保計画のベースとなる「医師偏在指標」も含め、今後も「効果的な医師偏在解消」に向けた取り組み論議が進められます。



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