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2次医療圏毎に病院・診療所別の「医師が多い、少ない」を可視化、地域の医師確保対策に極めて有益―地域医療構想・医師確保計画WG

2022.9.22.(木)

医師偏在の解消に向けた「医師確保計画」のベースとなる「医師偏在指標」について、例えば「病院の医師数に着目した偏在指標」「診療所の医師数に着目した偏在指標」情報を参考資料として提示していく。地域ごとに「病院勤務医が多いのか少ないのか」「診療所医師が多いのか少ないのか」を把握し、地域の特性を踏まえた医師偏在対策につなげることが期待できる—。

9月21日に開催された「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」(「第8次医療計画等に関する検討会」の下部組織、以下、地域医療構想・医師確保計画WG)で、こうした議論が行われました。

9月21日に開催された「第7回 地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」

病院・診療所それぞれで医師が多いか少ないかを把握し、各都道府県で偏在対策に活用

地域医療構想・医師確保計画WGは、▼地域医療構想の実現に向けた方策▼2024年度から新たなステージに入る「医師確保計画」見直し—の2テーマを議論しています。

後者の「医師確保計画」は、医療提供体制の大きな課題である「医師の地域偏在・診療科偏在の解消」に向けて、各都道府県で「3年を1クールとする医師確保計画を立て、実効性のある医師確保策に取り組む」ものです(関連記事はこちらこちら)。

医師確保は、大きく次のような流れで進められます。
(I)地域の医師確保状況を精緻な指標(医師偏在指標)を用いて相対化(言わば順位付け)し、2次医療圏を▼医師多数区域(医師偏在指標に照らし上位3分の1)▼中間の区域▼医師少数区域(同下位3分の1)—に3区分する

(II)地域の区分に応じた「医師確保計画」(例えば下記のイメージ)を作成する
【医師確保に関する方針】
▼医師多数区域:圏域外からの医師確保は行わず、逆に医師少数区域に医師を派遣する
▼中間の区域:圏域内に「医師少数の地域」がある場合など、必要に応じて他の2次医療圏からの医師派遣等を受ける
▼医師少数区域:医師多数の区域(他の2次医療圏)から医師派遣等を受ける

【目標医師数】
▼2次・3次医療圏ごとに「計画満了時点」(つまり3年後)に確保すべき医師数を算出する

【具体的な施策】
▼「地域枠を●名確保する」「医師派遣を●名受けるよう調整する」などの施策を明示する

医師確保計画に基づく医師偏在対策の大枠(地域医療構想・医師確保計画WG3 220511)

医師多数区域では、偏在の助長を防ぐために、「他地域からの医師派遣など」を医師確保計画に盛り込むことはできない(好ましくない)(その1、3次医療圏)

医師多数区域では、偏在の助長を防ぐために、「他地域からの医師派遣など」を医師確保計画に盛り込むことはできない(好ましくない)(その1、2次医療圏)




(III)計画を第1期(2020-23年度)→第2期(2024-26年度)→第3期(2027-29年度)・・・と進め、段階的に、しかし強力に「医師多数区域」から「医師少数区域」への医師移動を促すなどし、「医師の地域偏在を2036年度に解消する」ことを目指す



2024年度から医師確保計画の第2期がスタートするため、地域医療構想・医師確保計画WGにおいて「上記の仕組みの改善方策」を議論しています。

【これまでの議論に関する記事】
「病院・クリニック間の医師偏在解消」「ベテラン医師ターゲットに据えた医師偏在解消」など進めよ—第8次医療計画検討会(2)
医学部臨時定員が削減されても地域枠医師育成できるよう「恒久定員の中の地域枠等設定」を推進―地域医療構想・医師確保計画WG
「医師少数区域からの医師流出」などの問題発生、医師確保計画見直しで対処―地域医療構想・医師確保計画WG(2)
地域医療構想の必要病床数と病床機能報告結果、単純比較できない点を再確認―地域医療構想・医師確保計画WG(1)
地域枠医師などサポートするキャリア形成プログラム、現場ニーズを意識した作成・運用進む—地域医療構想・医師確保計画WG(2)
2024年度から「医師確保計画」も新ステージに、医師偏在解消に向け2022年内に見直し案まとめ―地域医療構想・医師確保計画WG



9月21日から「具体的な見直し内容を議論する」第2ラウンドに入り、この日の会合では上記(I)の「医師偏在指標」の見直しに向けた議論を行いました。医師偏在指標は「地域の人口10万対人口に対し、医師が何人配置されているか」をベースに、地域人口・医師の高齢化状況などを勘案して相対化(いわばランキング化)したものです。医師偏在指標が小さな地域では「医師が他地域比べて少ないので、他地域からの医師移動を強力に促していく」ことが求められます。第1ラウンド論議を踏まえて、次の5つの見直し方向が厚生労働省から提示され、概ね了承されました。

(1)病院・診療所別の医師偏在指標を「都道府県内において、2次医療圏の実情に応じた施策を検討する際の参考資料」として提示する

(2)複数医療機関に勤務する医師については、「主たる勤務先を0.8人」「従たる勤務先を0.2人」として按分カウントする

(3)医師偏在指標の1要素である「受療率」については、「都道府県別の受療率」ではく、従来どおり「全国平均の受療率」を用いる

(4)受療率について、最新の「2020年患者調査結果」が出ているが、新型コロナウイルス感染症の影響が色濃く出ているため、従前の「2017年患者調査結果」を用いる

(5)診療科別の医師偏在指標は今後も継続検討し、これと別に「診療科別の医師数」情報を、必要な施策を検討する際の参考資料として提示する



まず(1)は、現在の「全体(病院+診療所)の医師偏在指標をベースに医師確保対策を立てる」という考え方を維持したうえで、各都道府県が管内2次医療圏の医療提供体制を検討する際の参考資料として▼病院の医師偏在指標(病院勤務医の多い少ないを全国規模で相対化)▼診療所の医師偏在指標(診療所医師の多い少ないを全国規模で相対化)—を提示するものです。

厚労省は、各医師偏在指標(全体、病院、診療所)の一部を例示しており、そこでは「ある2次医療圏では、全体医師数・病院勤務医ともに全国でもトップクラスだが、診療所医師は下位に甘んじている」、「別の2次医療圏では、全体医師数・病院勤務医ともに全国ワーストクラスだが、診療所医師が全国でもトップクラスである」ことなどが分かってきます。後者には「離島や山村などの地域」が該当すると予想されます。そこでは「全体医師数がワーストクラス」という情報のみからは「病院勤務医を他地域から招聘する必要がある」と考えがちですが(現在はこの情報提供のみ)、「病院勤務医はワーストクラスだが、診療所医師はトップクラス」という情報を加味すれば「診療所医師が地域住民の健康を守っていると考えられる。当該医師が疲弊しないようなバックアップ体制を整えるほか、遠隔医療などを利活用して高度医療ニーズにも一定程度対応可能としていこう」などの検討が可能になってきます。非常に有益な情報提供が2024年度からスタートすることになります。

この点、小熊豊構成員(全国自治体病院協議会会長)は、さらに一歩進めて「病院にもさまざま規模・機能があり、今後、病院の状況を詳しく把握できる調査についても検討してほしい」と要望しています。

病院・診療所別の医師偏在指標を活用し、地域の医療提供体制の状況を確認することも可能(地域医療構想・医師確保WG1 220921)

複数医療機関で勤務する医師、80%を主勤務先、20%を従勤務先に按分カウント

また(2)は、現在は「A医療圏の勤務医が、別のB医療圏の医療機関でも勤務する」ケースについて、医師偏在指標は▼派遣元のA医療圏では実態より大きくなってしまう(Bでの勤務期間中もA勤務とカウントされる)▼派遣先医療圏では実態より小さくなっている(Bでの勤務期間はカウントされない)—という問題点の改善を行うものです(現在は主たる勤務地でのみカウントされる)。

この点、厚労省が医師・歯科医師・薬剤師調査結果をもとに分析したところ、「主たる勤務地での勤務割合が80%程度、従たる勤務地の勤務割合が20%程度である」(平均値・中央値、最頻値のいずれも)とのデータが得られたことを受け、上述のように「主たる勤務先を0.8人」「従たる勤務先を0.2人」として按分カウントするものです。

この按分カウントで医師偏在指標がどう動くのか注目が集まります。小熊委員からは「将来的に、従たる勤務先でバリバリと働いているのか、寝当直なのかなども詳しく見られるようにしてほしい」との要望が出ています。



他方(3)は、一部構成員から出されていた「医師偏在指標を計算する際の受療率を、都道府県単位のものにする」案を採用すると、「受療率が高く、医師の多い地域では、さらに医師が多く必要となる。その一方で、受療率が低く、医師の少ない地域では『少ない医師でよい』となり、医師偏在が一向に解消されない」という点を確認し、「現状通り、全国平均の受療率を用いて医師偏在指標を計算する」こととするものです。

この点、注目されるのは「医師偏在指標に用いる調整受療率には都道府県差があり、入院受療率と相関が強い」という点です。入院受療率の高さは、端的に「ベッド数、とりわけ医療療養病床の多さ」に関連しており、「ベッド数が多い→ベッドを埋めるため(空床は利益を生まず、コストのみがかかってしまう)に受療率を上げる→医師が多く必要となる(医療法では一般病床で患者16人に対し医師1人以上、療養病床では同じく48人に対し医師1人以上配置することが求められる)→医師偏在を招いてしまう」という関係が見えてきます。このため医師偏在の解消には「ベッド数を適正化していく」ことも極めて重要であると分かります。本WG設置の趣旨である「地域医療構想(病床数の適正化も検討項目の一環)の実現と、医師偏在の解消とを一体的に考えていかなければならない」点を再確認できるデータと言えるでしょう。

都道府県別の受療率(地域医療構想・医師確保WG2 220921)



もっとも、療養病床が多い地域では「介護保険サービスの整備が十分でない」可能性もあり、医療・介護提供体制改革と医師偏在解消とを「セットで進めていく」ことが重要です。

診療科別の医師数・保有する専門医資格の情報も活用し、地域の偏在対策に活かす

また(5)では、従前から要望されている「診療科別の医師偏在指標」作成は、現時点では困難である(診療科と傷病名との紐づけは困難であり、例えば「糖尿病治療を皮膚科医師が行っている」事例は枚挙に暇がない点を今村知明構成員:奈良県立医科大学教授が指摘)点を確認。

その上で「医師・歯科医師・薬剤調査」で徐々に把握可能となっている「2次医療圏別に見た、医師の勤務する診療科、保有する専門医資格」情報を都道府県に提供していくことを確認しています。ただし、2次医療圏別に細分化すると「診療科別の医師数」が非常に少なくなってしまうため、「診療科別医師数、保有する専門医資格の情報は、都道府県単位での把握で十分ではないか」との声も出ています。各都道府県で、こうした情報も活用し「地域の医師確保計画」をより良いものにしていくことが重要です。

診療科別医師数のデータが徐々に整ってきている(地域医療構想・医師確保WG3 220921)

診療科別医師数を医師確保計画に活かしている県もある(地域医療構想・医師確保WG4 220921)



なお、「●●科の医師が地域で多い少ない」を把握することよりも、「◆◆疾病を診られる体制が地域で整っているかいないか」を把握することが重要と指摘する識者も少なくありません。傷病名と診療科との間には「一定の関係」がありますが、上述の「糖尿病治療を皮膚科医師が行う」ような関係もあり、「◆◆疾病を診られる体制が整っているかどうか」を把握する手法を検討していくことも重要でしょう。



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【GHCからのお知らせ】「ポストコロナに生き残る公立病院」となるためには

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