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特定行為研修修了看護師、「どこで、どのようなスキルを持った者が何人必要か」とのニーズに沿った養成が重要―看護師特定行為・研修部会

2022.8.23.(火)

特定行為研修を修了したが「知識・スキルを活用できていない」事態も少なくない。今後、「どのような場で、どのようなスキルを持った特定行為研修修了看護師が何人程度必要なのか」というニーズをしっかり把握し、そのニーズを充足できるように特定行為研修修了看護師を養成していく必要があり、そうした点を「第8次医療計画」の中に盛り込んでいくべきではないか—。

また特定行為研修の負担はやはり大きいが、研修プログラムの一部を「研修受講前に、時間をかけて、余裕をもって履修できる」ような仕組み(受講前学習)を設けることで、研修負担(仕事と研修の両立など)を軽減することなどを推進してはどうか―。

8月22日に開催された医道審議会・保健師助産師看護師分科会の「看護師特定行為・研修部会」(以下、部会)で、こういった議論が行われました。

特定行為研修を修了したが「知識・スキルを活用できていない」事態も少なくない

一定の研修(特定行為に係る研修、以下、特定行為研修)を受けた看護師は、医師・歯科医師の包括的指示の下で、手順書(プロトコル)に基づいて38行為(21分野)の診療の補助(特定行為)を実施することが可能になります(関連記事はこちらこちら)。

今年度(2022年度)から、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代が75歳以上の後期高齢者になり始め、2025年度には全員が後期高齢者となることから、今後、医療・介護ニーズが急増していきます。とりわけ在宅療養や介護施設など「医師の関与が手薄になりがちな場面」において、一定の医行為を行える特定行為研修修了看護師が活躍することが期待されています。2015年から養成が始まり、2025年度に「特定行為研修修了看護師を10万人程度養成する」との目標が立てられています。

目標達成への道のりは険しいものの、本年(2022年)2月時点で▼養成施設(指定研修機関)は319施設で、ついにすべての都道府県で指定研修機関が設置された▼研修修了者数が養成数は4832名になった—と一定の成果が見られています。

特定行為研修の状況(看護師特定行為・研修部会1 220822)



ただし、制度スタートから時間が経つにつれ、例えば次のような改善点・課題が浮上してきました。

(1)「在宅・慢性期医療」領域での活躍が期待されたが、「急性期・高度急性期」領域での養成・活躍が多い(現下のコロナ禍でも活躍している)

(2)▼仕事との両立が難しい▼他の職員・スタッフの業務負担が増加する▼受講の費用負担がかかる▼家庭生活との両立が難しい—など、研修受講に向けて少なからぬハードルがある

特定行為研修の受講には大きな負担がある(看護師特定行為・研修部会2 220822)



(3)「過去1年間、就業先で特定行為を実施していない」者が31.6%を占めるなど、「研修で身に着けた知識・スキル」が必ずしも十分に活かされていない

特定行為研修で身に着けた知識・スキルが必ずしも十分に発揮されていない(看護師特定行為・研修部会3 220822)



(4)訪問看護ステーションにおいて、「将来、事業所職員に特定行為研修を受講させたい」と考えている管理者は52.0%にとどまり、44.7%は受講させたいと思っていない(人手の余裕がない、受講希望者がいない、他の看護師の負担が過重になるなどが主な理由)

訪問看護ステーション管理者の半数近くが特定行為研修の受講に消極的である(看護師特定行為・研修部会4 220822)



これらの課題(とりわけ(1)(3)(4))に共通する問題点として「『制度設計』や『医療現場のニーズ』、『看護師の希望・意向』などの間にミスマッチが存在する」と指摘する声が多くの委員から出されました。例えば、(1)のように厚生労働省は当初「在宅分野での活躍」を期待しましたが、医療現場では「医師の働き方改革なども睨み、医師の負担が大きな急性期・高度急性期分野での活躍」に期待を寄せました。また看護師が高い志の下で研修修了し、知識・スキルを身に着けたものの、「勤務する職場(病院など)において、その知識・スキルの発揮が必ずしも求められていない」(結果、知識・スキルが十分に活かされない)というケースも少なくありません。

事態を放置すれば、「投下コスト(費用も時間も労力も)が無駄になってしまう」「必要とされていないので研修を受ける意味がないと考える若手看護師が増えてしまう」事態を招きかねません。

そこで厚労省は、▼特定行為研修終了看護師の役割について「急性期・高度急性期にも拡大する」ことを明示する▼第8次医療計画(2024-29年度)の中に「特定行為研修修了者の位置付け」を強化する—ことを検討してはどうかと提案しました。

前者の「役割拡大の明示」は、現下の新型コロナウイルス感染症対応の中で特定行為研修修了者が活躍している実態も踏まえたもので、異論・反論は出ていません。ただし、当初の「在宅分野での活躍」をないがしろにすることはできません。高齢化の進展により医療・介護ニーズが急増する事態に変化が生じているわけではないためです。

この点、「研修プログラム」(カリキュラム)の見直しを求める声も出ています。秋山正子委員(ケアーズ白十字訪問看護ステーション代表取締役)は「例えば『瘻孔管理』について、胃瘻と膀胱瘻とをセットにしているが、後者対応が必要な患者は減っており、現場看護師が魅力を感じていない部分がある。またコロナ禍で、訪問看護ステーションの看護師にも一定の『急性期対応』が求められている。医療・看護の内容は進化・変化しており、特定行為の内容や研修内容などの見直しを行う時期に来ているのではないか」と指摘しています。



また後者は、地域医療の設計図である「医療計画」において、「特定行為研修修了看護師」の位置付け強化などを求めるものです。現在(2018-23年度を対象とする第7次医療計画)は「特定行為研修を行う養成施設(指定医療機関)の体制整備(施設数)」を記載するにとどまっており、これは「特定行為研修修了者の数を確保する」ことを主眼に置いています。

しかし、上述のようなミスマッチの解消が求められている中で、医療計画の中でも「どこで(どの医療機関、どの訪問看護ステーションなどで)、どのような知識・技術を持った特定行為研修修了看護師が、何人程度必要なのか」というニーズを明らかにし、そのニーズを充足するように養成を進めていく必要があると多くの委員が指摘しています。

医療計画に関する議論は、別の検討会で進んでおり、今後、議題の中に「特定行為研修修了看護師に関する事項」が付加されることになるでしょう。この点、▼医療計画において「特定行為研修修了看護師」関連事項を記載する際には、地域の看護職員団体を議論に参加させるべき(春山早苗委員:自治医科大学看護学部学部長)▼「特定行為研修修了看護師の活躍で医療の質がどう向上したのか」などに関する研究も進めるべき(永井良三委員:自治医科大学学長)—などの提案がなされています。

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なお、(4)の課題(特定行為研修修了看護師が身に着けた知識・スキルを活かせていない)に関しては「現場医師の理解が得られていない」ことなども背景にあるようです。制度の理解とともに、「看護師を研修に送り出す前に、院内で『どの場面で、特定行為研修修了看護師が活躍するか』を、医師も含めて明確にし、考え方を共有しておく」ことも重要でしょう。

この点、関西医科大学病院では「医師の夜間負担軽減などを目指し、すべての病棟に特定行為研修終了看護師を常時配置する」との目標を立てた養成を実施。実際に、特定行為の7割は夜間に実施され、当直医等の負担を大きく軽減するなど、看護師にとっても、医師にとっても、さらに何より患者にとっても「良い」結果を生んでいます(いわば、win-win-win)しています。このように「現場ニーズ」を明確にし、それにマッチした形で計画的に特定行為研修受講を促すことで、「特定行為研修修了看護師が身に着けた知識・スキルを活かせていない」という「勿体ない」事態を回避することが可能となります。

関連して秋山智弥委員(日本看護協会副会長)は「制度面や院内の手続き面(例えば「電子カルテ」の仕様など)も含めて、1つ1つ阻害要因を取り除くべき」ともコメントしています。

滋賀医大、研修プラムの一部を「事前に、余裕をもって履修できる」仕組みで負担軽減

課題の(2)はもちろん、「訪問看護ステーションで受講に消極的である」という点にも関連しますが、「研修の負担軽減」も重要なテーマです。

主に、(a)研修を受ける看護師自身の時間的・労力的な負担(仕事と研修、家庭と研修の両立など)(b)費用面の負担(c)同じ職場の他の看護師の負担—の3つに分けられ、これらへの手当てを行わなければ「特定行為研修の受講」が思うように進みません。

このうち(b)の費用に関しては「地域医療介護総合確保基金による支援」「都道府県による独自支援」がなされています。また、看護師を送り出す病院による支援が行われるケースも少なくありません。さらなる充実に期待が集まります。

また(c)では「代替スタッフ」の確保が重要で、この点も地域医療介護総合確保基金などによる支援が行われます。

さらに(a)の看護師自身の負担軽減については、滋賀医科大学特定行為研修センター長の北川裕利参考人(同学麻酔学講座教授)から報告された「受講前学習制度」が参考になります。

滋賀医大では、自院および協力施設の看護師が特定行為研修を受けやすい環境を整備するために、研修プログラムの一部(共通科目250時間のうち最大192時間)を、研修受講の前3年間を期限として「e-learning教材の視聴」に替えられる仕組み【受講前学習】を設けています(研修事項時点で「きちんとした知識を得られているのか」を確認するテストを実施)。

滋賀医大では、特定行為研修に「受講前学習」の仕組みを導入している(看護師特定行為・研修部会5 220822)



言わば「研修プログラム」について▼最大3年間で余裕をもって学ぶ部分(受講前学習)▼指定研修機関で集中的に学ぶ部分—に分割するものです。「受講前研修を経て、特定行為研修を受けた看護師」と「ダイレクトに特定行為研修を受けた看護師」とを比較すると、前者では「楽に受講できた、負担がなかった」との声があるのに対し、後者では「研修受講がたいへんであった」との声が出ており、受講前学習が「負担軽減」に大いに役立っていることが伺えます。今後の拡大に期待が集まります。

受講前学習による負担軽減効果が伺える(看護師特定行為・研修部会6 220822)



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