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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

チーム医療等推進のため「特定行為研修を修了した看護師」に業務移管している旨を広告可能に—医療情報提供内容検討会

2020.10.30.(金)

医療機関において、「チーム医療や医師の働き方改革を推進するために、自院で特定行為研修を修了した看護師による業務が行われている」場合には、その旨を広告することを認める―。

患者・国民の医療機関選択を支援する「医療機能情報提供制度」において、新たに「外国人患者への対応体制の有無」(通訳等を配置しているか、翻訳機器を配備しているか、サポート体制を敷いているか)を盛り込むこととし、医療機関等にその旨の報告を求めることとする—。

10月29日に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」(以下、検討会)では、こうした見直し内容が了承されました。今後、社会保障審議会・医療部会の了承を待ち、年度内にも制度的手当て(法令の改正等)を行ったうえで、来年度から新たな仕組みがスタートする見込みです(前回会合の記事はこちら(医療機能情報提供制度)こちら(広告可能事項))。

10月29日開催された「第16回 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」

どのような業務を「特定行為研修を修了した看護師」が行うかなど、分かりやすい広告を

10月29日の検討会では(1)医療機関が広告可能な事項の見直し(2)「医療機能情報提供制度」における報告内容の見直し—の2点を議題としました。

(1)の「広告可能事項」については、チーム医療や医師の働き方改革の推進に向けた「特定行為研修を修了した看護師」の業務内容を広告可能としてはどうか、という点が議論されています。

一般国民の目に触れやすい広告として不確かな情報が飛び交えば、国民・患者の健康・生命に取り返しのつかない被害が出かねないことから、医療機関が広告可能な事項は限定列挙(▼診療科名▼専門性に関する資格名▼紹介可能な医療機関等▼医療内容▼手術件数等―など)されています。ただし、ホームページについては、国民・患者が医療機関を選択等する際に、能動的に(自分から)情報にアクセスするものであるため、一定の要件を満たした場合には「限定事項」以外の内容を広告することが可能です(限定解除)(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

この点、医療を取り巻く大きな課題の1つに「チーム医療の推進」や「医師の働き方改革」があり、それに資する活動を行っている「特定行為研修を修了した看護師」の業務を広告可能としてはどうか、という議論が行われています。

厚生労働省は、前回会合(9月24日開催)で「『特定行為研修を修了した看護師』は、チーム医療や医師の働き方改革を推進することだけの仕組みではない」などの指摘が相次いだことを受け、次のように「分かりやすく『特定行為研修を修了した看護師』の業務内容を広告することとしてはどうか」と提案しなおしています(前回会合から提案内容を一部修正)。

▼看護師が医療機関において手順書(プロトコル)により特定行為を実施している場合に、その業務内容を広告可能とする

▼各医療機関での具体的な取り組みである「チーム医療」や「医師の働き方改革」などを推進している旨を併記する

▼業務内容に関連する事項として、「特定行為を手順書により行う看護師である旨」「特定行為区分等(当該実施業務内容に関する特定行為区分に限る)に関する記載」「氏名」を広告することも可能とする

例えば・・・
●当院ではチーム医療推進のため、術後患者のための以下の管理業務を、特定行為研修を修了した看護師が実施しています
▽術後の痛みを抑えるために、患者さんの体の状態を確認しながら、手順書に基づいて適切なタイミングで鎮痛剤を投与します。(関連する特定行為区分「術後疼痛管理関連」)
▽術後に創部に感染が起こる場合がありますが、手順書に基づいて薬剤の臨時の投与を行います。(関連する特定行為区分「感染に係る薬剤投与関連」)
・・・などいった広告をしてもらうイメージです。

特定行為研修を修了した看護師の業務内容を広告可能とする(医療情報提供内容検討会1 201029)

特定行為研修を修了した看護師の業務内容を広告可能とする「医療広告ガイドライン」の修正内容案(医療情報提供内容検討会2 201029)



患者や一般国民には「術後の管理は医師が行うもの」との認識があり、何らの広告・説明がないままに術後管理を専ら看護師が行うとなれば「本来は医師がすべき管理を看護師が行っている。この病院は大丈夫なのだろうか」などと不安を感じる人もいることでしょう。この点、こうした広告をすることで、「研修を修了した看護師が、手順書に基づいて術後管理などを行ってくれている」と理解でき、そうした不安が解消されると期待されるのです。

この見直し内容は検討会構成員にも高く評価され、患者代表の立場で参画する山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は「広告を見た国民・患者は『特定行為研修という制度があるのだな。ほかにどのような行為があるのだろう』と調べることができ、制度への理解が深まる」と期待を寄せています。

各医療機関における外国人患者への対応体制を都道府県が整理して情報提供

また(2)の医療機能情報提供制度は、国民・患者が医療機関を正しい情報に基づいて選択できるように、医療機関等(▼病院▼診療所▼歯科診療所▼助産所―)に対し「自院の持つ機能を毎年度、都道府県に報告する」ことを義務付けるものです。報告された情報は都道府県が整理して、ホームページ上で公開しています(厚労省のサイトはこちら(各都道府県のホームページに飛ぶことができる))。

報告すべき項目については、例えば「かかりつけ医機能などに関する診療報酬を取得・算定しているか」なども含まれていることから、適宜見直しが行われ、前回会合(9月24日開催)で▼2020年度診療報酬改定を反映させる▼産婦人科(産科)以外の診療科で妊産婦への診療に積極的か否かを追加する―などの見直し内容を決定しました。

この点、来夏(2021年夏)に予定される東京オリンピック・パラリンピックなどを睨んだ「外国人患者への対応を行っているかどうか」という報告項目(関連記事はこちらこちらこちら)については、構成員から「報告すべき事項が分かりにくい」などの指摘を受けており、今般、次のような再度の提案が厚労省から行われています。

(1)対応できる外国語の種類:▼職員が外国語で対応できる▼通訳者を配置している▼電話通訳サービスを契約している—などにより、診療の一連の流れにおける主要な場面で、外国語での対応が可能な言語を記載する(定期的に(週1日以上)対応が可能な日があるものに限る)

(2)多言語音声翻訳機器の利用の有無:多言語音声翻訳機器システムを利用した対応が、部門を問わず、常時可能かどうか。

(3)外国人患者の受け入れに関するサポート体制の整備:「外国人患者の受け入れに伴って発生する特有の業務(通訳の手配、医療費の支払いに関する調整、他院への紹介、海外旅行保険会社とのやりとりなど)を総合的に担当する職員の配置または部署の設置により、外国人の患者の受け入れに関するサポート体制が整備されているかどうか(職員の専任・兼任は問わない)

医療機能情報提供制度における「外国人患者への対応」報告内容(医療情報提供内容検討会3 201029)



(1)は「人による多言語対応」が可能かどうか(またその言語は何か)、(2)は機械による翻訳が可能かどうか、(3)は総合的なサポート体制を敷いているかどうか、の報告を求めるもので、構成員はこれを了承しています。各都道府県では、管内医療機関からの報告内容を整理してホームページで公表。患者が医療機関を探す際の重要な情報(正確な情報)となります。

ところで、(3)のサポート体制に関しては「自前のスタッフではなく、外部の事業者等に委託している」ケースもあると考えられますが、その場合は現時点では「体制を敷いていない」と報告することになります(あくまで「自前のスタッフ」による対応体制を敷いているかどうかを報告してもらうもの)。ただし、厚労省医政局総務課の熊木正人課長は、「外部委託等についてどのような実態があるのかを調査し、その上で報告内容の見直し等が必要であるか検討したい」とコメント。「外部委託等による対応」を報告するかどうかは、将来の検討課題という位置づけです。

また前回会合(9月24日開催)では、(3)のサポート体制について「病院のみならず、クリニックや助産所にも報告を求めるべき」との意見が多くの構成員から出されました。ごく一部ですが、サポート体制を敷いているクリニック等もあると考えられ、「そうした努力を公表する場を設けるべき」との考えに基づくものです。

しかし、厚労省では「病院でもサポート体制を敷いているところはごく少数派であり、クリニックや助産所ではこうした体制がほとんど敷かれていない」ことや、「ホームページ等で自院のサポート体制等をPRできる」ことなどから、「報告は病院のみに求め、クリニックや助産所には報告を求めない」との考えを整理しました。この整理案には異論が出ていません。仮にクリニックや助産所にも報告を求めるとすれば、ほとんどの施設が「対応していない」と回答することとなり、医療機関を探す患者からは「なんのための情報提供なのか」という疑問も生じてしまいます。

このため当面は「病院のみに報告を求める」(公表情報も病院の体制のみ)とし、広く医療現場に「外国人患者サポート体制」が浸透した段階で、クリニックや助産所にも報告を求めるべきかどうかを再度検討することが現実的と考えられます。大道道大構成員(日本病院会常任理事)や山口構成員は「短いスパンで状況を把握し、時代に合わせた情報提供制度にしていくべき」とコメントしています。

なお、(1)(2)の言語対応については、病院だけでなく、クリニックや助産所も状況を報告する必要があり、やはり都道府県で整理したうえで公表されます。



今後、「広告可能事項の見直し」と「医療機能情報提供制度の見直し」について社会保障審議会・医療部会の審議を経て、厚労省は年度内にも必要な法令改正等を行い、来年度(2021年度)から新たな仕組みを稼働させたい考えです。

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