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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

外国人患者への多言語対応等が可能な医療機関を、都道府県で選定・公表へ―外国人旅行者への医療提供検討会

2019.1.28.(月)

 外国人旅行者に適切な医療提供がなされるよう、重症(入院)患者を受け入れる医療機関を都道府県単位で(少なくとも1か所)、軽症(外来)患者を受け入れる医療機関を2次医療圏単位で選定し、リスト化する―。

 1月25日に開催された「訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった方針が固まりました。

 厚生労働省は今年度中(2019年3月まで)に各都道府県に選定を依頼。訪日外国人旅行者の多い地域では、早急な選定が求められます。

1月25日に開催された、「第2回 訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」

1月25日に開催された、「第2回 訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」

 

タブレット端末購入費など補助された医療機関、外国旅行者の積極的な受け入れを

 安倍晋三内閣では、「観光立国」も重要政策の1つに据えており、2020年には4000万人、2030年には6000万人の訪日外国人旅行者数を目標としています。

ところで、訪日外国旅行者が急病等になった場合には、外国語への対応が可能な医療機関にかかることが円滑かつ効果的な医療提供のために望まれます。ただし、2次医療圏ごとに医療通訳や翻訳機能を持たせたタブレット端末等配置の体制の整備状況を見ると、「46.1%」にとどまっています(つまり5割超の2次医療圏では、医療通訳やタブレットを配置する医療機関がない)。

また、外国語対応体制などを整備した医療機関がどこなのか、について観光庁やMedical Excellence Japanなどが情報提供を行ってはいるものの、一元化されておらず、必ずしも「分かりやすい」状況にはなっていません。

そこで検討会では、都道府県に対し、▼入院を要する「重症」の外国人旅行者を受け入れ可能な医療機関を少なくとも都道府県単位で1か所▼外来で対応できる「軽症」の外国人旅行者を受け入れ可能な医療機関を2次医療圏単位で―選定することを要請。選定医療機関をリスト化し、民間団体の認証状況なども併せて情報提供する方針を固めました。選定医療機関では、翻訳機能を持たせたタブレット端末等配置の経費が補助されます。
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地域によって外国人旅行者の数や、医療機関の整備状況が異なるため、選定の基準は、「重症患者受け入れ医療機関は多言語対応可能な2次以上の救急医療機関」「軽症患者受け入れ医療機関は多言語対応可能な医療機関」と緩やかに設定されています。地域ごとに必要な体制を柔軟に敷くことが可能となります。

選定にあたっては、都道府県において「医療関係者の集う協議会」(既存の審議会・協議会などを活用する)を開き、「英語であれば●●診療所が強い。ポルトガル語は◆◆クリニックが良いのではないか」などの議論を医療関係者同士で行ってもらうことが期待されます。その際には、昨年(2018年)9月に実施された「医療機関における外国人患者の受入れに係る実態調査」結果も活用されます。

このリストは、外国人旅行者の利便性を高めることが狙いです。このため、東京都や京都府など「すでに外国人旅行者が数多い」自治体では早急に、またラグビーワールドカップや東京オリンピックが開催等される自治体では、開催までに準備を整えておくことが求められます。

厚労省では、今年度中(2019年3月まで)に選定を各都道府県に依頼し、その後、地域の実情を踏まえた迅速な選定がなされると期待されます。

また、来年度(2019年度)予算案では、「外国人患者に対する医療提供体制整備等の推進」に15億円強、「医療機関における外国人患者受け入れ環境整備」に1億4000万円弱などが盛り込まれています。前者では、▼医療通訳の配置▼翻訳機能を持たせたタブレットの配置―費用が補助されます。厚労省では、こうした補助を受けている医療機関については、前述の選定を行うよう求める考えです。
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ところで、診療科等によっては外国人旅行者の受け入れに当たり法令や慣習の違いなどを事前に整理しておくことが必要な場面も出てきそうです(精神科領域や感染症、産科など)。厚労省は担当部局と調整し、必要な法令整備などを検討する考えを示しています。

なお、選定されなかった医療機関は「外国人旅行者を診なくてもよい」(極論すれば受診を拒否できる)わけではありません。医療機関として必要な診断・治療を行うことが求められますが、選定リストから近隣医療機関を紹介することも重要な役割となるでしょう。

 
検討会では、「外国語での対応」も重要な論点の1つとなります。音声認識等の技術発展に伴い、▼受付や電話対応、初期診断などでは「翻訳機能を持たせたタブレット端末」などを活用する▼侵襲の大きな医療行為を実施する場面では「医療通訳」の力を借りる―などの役割分担が可能となってきています。

総務省では民間企業と連携し「多言語音声翻訳ハンズフリー端末」(タブレットや看護師等が首から下げるウェアラブル端末)を開発。例えば、日本語で「どこが痛みますか」などと発声した場合、それを外国語に翻訳し、さらにその翻訳内容を日本語に再変換して、翻訳内容の正しさを確認することが可能です(外国人患者側も同じ)。医療機関での実証試験では高評価も得られており(もちろん同音異義語の翻訳などの課題も顕在化)、間もなく販売が開始されます(すでに販売開始されているものも)。
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厚労省では、こうした「通訳・翻訳」について、▼アクセスの確保(受付や電話対応なので門前払いとなってはいけない)▼質(誤った翻訳は誤診等につながる)▼費用(あまりに高額であれば一般人や一般医療機関が利用できない)―などの論点を掲げており、今後、議論していくことになります。
 
 
 
 
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