Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

未予約受診の外国人患者が4割強、院内スタッフによる通訳体制が急務―日本医療教育財団

2016.2.2.(火)

 外国人患者の4割強は時間外での診察を受けており、こうしたケースに対応するために「院内スタッフによる通訳」「電話通訳などの活用」が可能な体制構築を急ぐ必要がある-。このような状況が、一般財団法人日本医療教育財団が2日に発表した「医療通訳等の配置に関するデータ集計報告書」から明らかになりました。

 また外国人患者の診察時には英語力のある医師が、通訳を介さずに直接対応できるものの、受付・会計時には事務員が対応するため、医療通訳配置の必要性が高い状況も明らかになっています。

 2020年には東京オリンピックが開催される予定で、今後ますます外国人患者が増加すると考えられることから、「医療通訳」の配置は、今後、各医療機関においても重視しなければならない課題の一つと言えます。

時間外の外国人患者来院も15%

 日本医療教育財団では、将来を見据えた外国人患者の受け入れ体制整備に向け、外国人患者の受診状況などを調べ、今般報告書としてまとめました。対象となったのは、厚生労働省の「医療機関における外国人患者受入れ環境整備事業」で選定された10病院に、2015年1-3月に来院した外国人患者(合計1631件)で、日本語対応に何ら不自由のないケースは除外されています。

今回の調査には、この10病院が協力している。

今回の調査には、この10病院が協力している。

 その結果、外国人患者の来院時間について、次のようなことが分かりました。

▽診療時間内の来院が84.8%、診療時間外が15.0%、休診日が0.2%

▽予約有りの来院が51.6%、予約無しが44.3%

 医療通訳には、外部通訳・院内スタッフ(新たな雇用も含めて)・電話通訳などが考えられますが、「診療時間外」や「予約無し」の外国患者について、タイムラグの生じる外部通訳を利用することは非現実的です。このため同財団では「院内スタッフ」「電話通訳」での対応が必要と指摘しています。前者としては、外国語に堪能な職員の雇用や、現在のスタッフの外国語能力の向上が考えられます。

予約の有無で見ると、外国患者の44.3%は予約無氏の受診となっている。この場合、外部から医療通訳を調達することは非現実的であり、院内スタッフでの対応などを考えなければいけない。

予約の有無で見ると、外国患者の44.3%は予約無氏の受診となっている。この場合、外部から医療通訳を調達することは非現実的であり、院内スタッフでの対応などを考えなければいけない。

受付、会計などでは、医療通訳の配置を急ぐ必要

 また、受付→診察・検査→会計というプロセスごとに、外国語対応を誰が担当したかを見ると、医療通訳と医療コーディネーターが6-7割で、その他職員が2割程度を担っていることが分かりました。

 しかし同財団では、「診察時には英語力のある医師が、通訳を介さずに直接対応できるものの、受付・会計時には事務員が翻訳アプリや会話集を利用した対応に止まっている」と分析しています。

 医療通訳は人材も限られており、当面は「集中的に配置すべき部門」を一定程度限定する必要があるでしょう。今回の調査結果は、「受付」「会計」「検査」部門に、緊急に医療通訳を配置することが必要であることを示唆していると言えそうです。

外国人患者の8割が「費用を払っても医療通訳を利用したい」と回答

 このほか、今回の調査からは次のような状況も明らかになっています。

▽外国人患者の割合は、外来(初・再診)が91.7%、入院が1.8%、外来からの入院が2.1%、健診が4.3%

▽内科、救急科、整形外科、産婦人科(産科・婦人科)が多い

外国人患者の受診は、内科、救急科、整形外科、産婦人科(産科・婦人科)などで多くなっている。

外国人患者の受診は、内科、救急科、整形外科、産婦人科(産科・婦人科)などで多くなっている。

▽東京都内では「訪日者(例えば観光客)」が6割近くを占めるが、それ以外では日本に居住する外国人がおよそ8割を占めている

▽国籍を見ると、中国が圧倒的に多く(35.9%)、アメリカ(9.5%)、ロシア(5.9%)、フィリピン(5.2%)などと続く

外国人患者の国籍を見ると、中国が圧倒的に多く、アメリカ、ロシア、フィリピンと続く。

外国人患者の国籍を見ると、中国が圧倒的に多く、アメリカ、ロシア、フィリピンと続く。

▽外国人患者による未収金事例は、調査期間(2015年1-3月)に218件発生し、全事例の1.8%

 

 なお、外国人患者に対するアンケート調査(37名が対象)からは、▽言語を理解できず検査・治療を受けたことのある人が6割▽専門通訳を利用したことにより「言いたいことがより速く伝わった」と考える人が66.7%▽専門通訳の利用で「医師の説明がより理解しやすかった」と考える人が86.7%▽有料でも通訳を利用したいと考える人が80.6%-いることも分かっています。財団では、「外国人患者は、費用負担があっても、医療者と正確なコミュニケーションを行いたいと考える」と総括しています。

 2020年には東京オリンピックの開催が予定されており、東京以外の地域でも訪日外国人が大きく増加すると考えられます。うまくコミュニケーションがとれずに治療を行う場合、訴訟が生じる可能性もあるでしょう。医療通訳の配置は、今後、非常に重要な課題になりそうです。

【関連記事】
外国人の患者や医療者の受け入れ、最大の壁はやはり「言語・会話」―日病調査
外国人患者向けの電話通訳サービス、医師法・医療法に抵触せず―経産、厚労両省
「日本国際病院(仮称)」をリスト化、外国人患者受け入れ推進へ―政府の成長戦略

診療報酬改定セミナー2024