「日本国際病院(仮称)」をリスト化、外国人患者受け入れ推進へ―政府の成長戦略
2015.7.1.(水)
「骨太方針2015」と共に6月30日、閣議決定された「成長戦略(日本再興戦略)」では、医療・介護・健康分野について、「産業としての活性化・生産性の向上」といった視点を持つ必要性の高まりを指摘した上で、外国人患者を受け入れる意欲と能力のある病院を「日本国際病院(仮称)」に位置付けることなどを具体策に盛り込みました。政策分野ごとのスケジュールを整理した「中短期工程表」によりますと、こうした病院のリスト化に早ければ年度内に着手したり、専用のホームページを作成したりして海外向けにアピールします。
2020年に開催される予定の東京オリンピックをにらんだインバウンド戦略(呼び込み)の一環で、海外の患者の受け入れを従来の特区の枠組みにとらわれず、全国展開します。さらに、これと並行して外国人患者の受け入れを支援する企業を「医療渡航支援企業(仮称)」として認証する方針です。政府は「日本国際病院(仮称)」のリストアップの考え方や「医療渡航支援企業(仮称)」の認証要件を年度内にまとめるとしています。
成長戦略では、安倍政権による経済政策「アベノミクス」が人口減少を見据えた第2ステージに入ったと指摘して、岩盤規制が残る医療などの分野で「戦後以来の大改革」を行う方針を打ち出しました。
医療・介護分野の取り組みには、勤務環境の改善に取り組む医療機関を支援する「医療勤務環境改善支援センター」の全国展開(年度内)や、介護ロボットの開発・実用化の推進などを挙げました。サービス産業全体の労働生産性の伸び率を20年までに2%(13年現在0.8%)に引き上げる目標を掲げていて、こうした取り組みによって、医療の活性化や生産性向上につなげたい考えです。
電子カルテの普及促進や医療政策へのデータ活用などIT戦略も推進します。電子カルテでは、地域医療の中核的な役割を担う400床以上の一般病院による全国普及率について、「20年度までに90%」(11年現在57.3%)を目指します。この目標を実現させるため、16年度の診療報酬改定でICT(情報通信技術)を活用した医療情報連携への評価を検討し、さらに、「地域医療介護総合確保基金」による情報ネットワークづくりに対する支援策も講じます。
医療政策へのデータ活用では、国などが保有する医療関連データベースを活用して患者を長期追跡できるようにしたり、医療の標準化や医療の質を評価したりする仕組みづくりなどを想定しています。「医療等分野データ利活用プログラム(仮称)」を年度内に策定し、具体的な取り組みと実施スケジュールを整理するとしています。
また、「医療等分野における番号制度の導入」を18年度から段階的に運用し、20年までに本格運用を開始する方針も明確にしました。具体的には、セキュリティーの確保を徹底させながら「マイナンバー制度」の インフラを活用して医療分野などの番号制度を導入します。
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