患者の体験談やビフォーアフター写真、ホームページへの掲載も原則不可―厚労省
2018.5.11.(金)
医療機関のWEBサイト(ホームページなど)も広告規制の対象とし、虚偽・誇大な内容の掲載はもちろん、「医療内容や効果に関する体験談」「十分な説明のない術前・術後の写真」などの掲載も禁止する―。
厚生労働省は5月8日に通知「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)等について」を発出し、こういった点を明確にしました。6月1日から施行される予定で、それまでに自院のホームページ等を再確認しておく必要があります。
目次
医療機関ホームページなども「広告」と扱い、規制の対象に
医療は人の生命・健康に関わるサービスであり、誤った情報が世に広まることを防止する必要があります。また多くの患者は専門教育を受けていないので、医療・医学情報を正しく理解できません。このため、医療に関する広告には厳格な規制(広告規制)が設けられています。
この点、医療機関のホームページは、「患者自らが検索しなければ閲覧できない」ため、広告規制の対象から除外されています。しかし、美容医療サービスなどの中には、ホームページ掲載内容に問題があることも多く、消費者トラブルが絶えないため、昨年(2017年)6月に医療法が改正され、「医療機関ホームページも広告に含める」などの見直しが行われました(関連記事はこちらとこちら)。
今般、具体的な広告規制見直しの内容について告示・通知が行われました。詳細は「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」(医療広告ガイドライン)で明らかにされています。見直しのポイントは「ホームページ等も広告に含め、不適切ホームページ等を禁止する。一方、有用な情報については『広告限定を解除』し、情報提供の継続可能とする」と整理できます。見直し内容を眺めてみましょう。
費用を支払って、他者のホームページ等で実質的な広告を行う場合も規制対象に
まず、規制の対象について「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」に拡大。ここから、医療機関のホームページや、SNS(Facebookなど)はもちろん、さらに「他者に金銭を授受して自院の紹介をしてもらう」ことなども規制の対象となる可能性があります。例えばマスコミや広告代理店、さらに「アフィリエイター」と呼ばれる、報酬を得てブログなどで広告を行う者なども、規制の対象となります。
一方、▼学術論文や発表▼新聞や雑誌の記事(記事広告は別)▼患者自らが掲載する体験談など(報酬等を得て掲載する場合などは別)▼院内の掲示・パンフレット▼医療機関の職員募集広告―などが、規制の対象外となります。
患者の体験談、ビフォーアフター写真などは広告禁止【広告可能事項の限定】
医療広告規制は、「広告可能な事項を定め、これ以外を広告することは認められない」(広告可能事項の限定)との考え方をベースにしています。誤認しやすい情報で、患者が不利益を被ることを避けるためです。
広告可能な事項としては、▼医師・歯科医師である旨▼診療科名▼名称・所在地・電話番号・管理者名▼診療日・診療時間、予約診療実施の有無▼保険指定や労災保険指定などの旨▼地域医療連携推進法人に参加している旨▼入院等の設備や従業者数など▼診療に従事する医師等の氏名や役職、略歴、専門性資格など▼休日・夜間診療、セカンドオピニオン実施の有無、個人情報保護、平均待ち時間などに関する事項▼紹介可能な他院の名称など▼診療録等の情報提供に関する事項▼厚生労働大臣が定めた検査・手術等の治療方法▼手術件数・分娩件数・平均入院日数・患者数・平均病床利用率・DPC機能評価係数IIで公表が求められる病院情報・治療結果分析の旨・セカンドオピニオン実施▼救急病院や災害拠点病院等である旨、介護医療院等を併設している旨、院内サービス、医療機能の評価を受けている旨—などに限定されています。
ここから、次のような広告が禁止されます。
▽広告が可能とされていない事項の広告(例えば、「死亡率、術後生存率等」(医療機能情報提供制度において報告が義務付けられた事項以外は不可)、「未承認医薬品による治療内容」など)
▽虚偽広告(例えば、「絶対に安全な手術」「必ず治る」などの記載や、加工・修正した術前術後写真など)
▽比較優良広告(例えば、「日本有数の実績」「日本一の実績」(事実であっても原則不可)、「著名人が当院で治療を受けている」など)
▽誇大広告(例えば、「○○の症状のある2人に1人が●●のリスクあり」「こんな症状が出ていれば命に関わる。今すぐ受診を」「○○手術は効果が高く、おすすめ」など)
▽患者その他の者の主観または伝聞に基づく、治療等の内容・効果に関する体験談の広告
→体験談は、個々の患者の状態等で感想は異なり、誤認を与えるおそれがあるため、広告可能な範囲であっても認められない。▼個人が運営するウェブサイト▼SNSの個人のページ▼第三者が運営するいわゆる口コミサイト―などへの体験談掲載は、「医療機関が広告料等の費用を負担し、便宜を図って掲載を依頼している」など誘引性が認めらる場合は広告に該当する
▽治療等の内容・効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前・後の写真等の広告(いわゆるビフォーアフター写真・イラストなど)
→術前・術後の写真に通常必要とされる▼治療内容、費用等に関する事項▼治療等の主なリスク、副作用等に関する事項—などの詳細な説明を付した場合は広告可能
→治療効果に関する事項は広告可能事項ではなく、そもそも術前術後の写真等については広告できない
▽公序良俗に反する内容の広告
▽品位を損ねる内容の広告(例えば、「割引キャンペーン実施中」「○○治療し放題プラン」「無料相談をした人全員に○○をプレゼント」など)
▽医薬品医療機器法や健康増進法、景表法、不正競争防止法などに違反する広告(例えば、「○○医薬品を処方可能」など)
医療の選択に有用な事項等は、ホームページで掲載可能に【有用情報は限定解除】
一方で、上記の情報だけでは、医療機関等を選択するに当たり患者側が不便を感じることもあります。医療内容や医療機関等を適切に選択するためには、患者側が十分な情報を収集できる環境が整っていることも必要です。
従前、医療機関のホームページ等には、さまざまな情報が掲載されており、これが医療内容・医療機関等の選択に極めて有用でした。こうした有用な情報は、今後も患者・国民に十分に提供されることが求められ、厚労省は「医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合には、幅広い事項の広告を認める」(限定の解除)こととしたものです。
限定が解除されるためには、保険診療においては(1)と(2)の双方、自由診療においては(1)から(4)のすべての要件を満たさなければいけません。
(1)医療に関する適切な選択に資する情報であり、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告である
(2)表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先(電話番号やメールアドレスなど)の記載、その他の方法により明示する
(3)自由診療に係る通常必要とされる▼治療内容▼標準的な費用(最高から最低、発生頻度の高い追加費用を含む)▼治療期間▼回数―などを、患者・国民に適切かつ十分に、分かりやすく情報提供する
(4)自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供する
このうち(1)は、これまで広告規制の対象となっていなかった医療機関のウェブサイト、メルマガ、患者等の求めに応じて送付するパンフレットなどが該当します。いわゆるバナー広告やリスティング広告(検索サイトに費用を支払い、上位に表示されるようになしたものなど)は要件を満たしません。
不適切な広告は、医療の信頼を失わせます。一般の患者・国民には情報の真偽等を正確に判断できないため、正確な情報の信頼性までが低くなってしまうからです。そこで、不適切な広告については、都道府県から是正に向けた指導が行われ、虚偽内容等については刑事罰が科されます。
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