東京オリ・パラ等に向け、「外国人患者を受け入れる」全国の医療機関リストを作成・公表―厚労省
2019.7.26.(金)
厚生労働省が7月17日に、「外国人患者を受け入れる医療機関の情報を取りまとめたリスト」を公表しました。
今年(2019年)9月には我が国でラグビーワールドカップが開催され、また来年(2020年)には東京オリンピック・パラリンピックが控えています。当然、我が国を訪れる外国人旅行者も増加し(政府は2020年には4000万人、2030年には6000万人の訪日外国人旅行者数を目標値に据えている)。
外国人旅行者が増えれば、必然的に、傷病に合い医療機関を受診する外国人も増加します。しかし、外国人患者側には「どの医療機関に行けば良いのかわからない」、医療機関側には「言語対応はどうすればよいのか、費用請求はどのように行えばよいのか」などのさまざまな疑問が生じます。
そこで、厚労省は「訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」(以下、検討会)を設置。検討会では、今年(2019年)3月に▼外国人患者を受け入れる医療機関リストを作成する▼医療機関に向けて外国人受け入れに関するマニュアルを整備する(患者が保険に加入しているかなどを事前に確認するとともに、事前に概算費用を提示するなどの重要性を指摘)▼費用負担について、「通訳等に係る費用は実費請求できる」「診療費は自由診療として医療機関が価格を設定できる」ことなどを明らかにする―などの内容を盛り込んだ「議論の整理」を行いました(関連記事はこちら)。
このうち「外国人患者を受け入れる医療機関リスト」については、厚労省から都道府県に対し、▼重症(入院)患者を受け入れる医療機関を都道府県単位で(少なくとも1か所)▼軽症(外来)患者を受け入れる医療機関を2次医療圏単位で―選定し、リスト化するよう要請。
各都道府県では、▼行政の医療・観光・多文化共生等の部局▼医療機関▼医師会▼病院団体▼病院グループ▼医療通訳関係団体▼消防・救急▼観光協会▼宿泊関連業者▼国際交流団体―などで構成される「協議体」を設け(設置済であればその協議体を活用)、そこで「外国人旅行者を受け入れる医療機関の選定」などを行い、今般、それを整理したリストを厚労省が公表したものです。
このリストは、外国人患者にとって極めて有用であることはもちろん、全国の医療機関においても、例えば「自院では対応できない言語」の外国人が来院した際などに、このリストをもとに医療機関を紹介する場合などに活用することが可能です。
なお、今回のリストに掲載されたのは「5月末の第1回提出締切りまでに都道府県から提出された医療機関」であり、今年(2019年)9月末の「第2回提出締め切り」を待ち、リストを更新していくことになります。
リストでは、▼都道府県▼医療機関名(日本語および英語)▼住所(日本語及び英語)▼電話番号▼受付時間▼WEBサイト(ホームページ等)▼対応診療科と対応外国語▼利用可能なクレジットカード▼24時間365日対応の可否▼外国人受入環境整備事業の対象医療機関か否か▼入院を要する救急患者に対応可能な医療機関か否か▼医療通訳者配置の有無▼遠隔通訳の可否―などが整理されています。
●「外国人患者を受け入れる医療機関の情報を取りまとめたリスト」はこちら(厚労省のサイト、サイト中段よりExcelファイルでリストをダウンロードできる)
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