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医療機関ホームページ、手術後生存率等を合理的根拠等示さず記載は不可―医療情報提供内容検討会(1)

2018.5.31.(木)

 医療機関が「自院における治癒率・死亡率・術後生存率」を表示することは、看板などの広告に記載することは認められないが、合理的根拠を示すなど一定の要件を満たせばホームページなどのWEBサイトに記載することは可能である。一方で、「国内No.1」「国内最高峰」などの表示は、比較広告に当たりホームページ等への記載も認められない―。

 5月31日に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」において、こういった広告・表示の是非に関する具体例が、厚生労働省から提示されました。今後、広告・ホームページ等記載の事例を集積する中で、より明確な「是非の基準・線引き」が示されていくことになります(関連記事はこちらこちらこちら)。

5月31日に開催された、「第9回 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」

5月31日に開催された、「第9回 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」

 

具体例をもとに、「医療広告・ホームページ記載の是非」の線引きを明確化

 2018年6月1日から、医療機関等の広告規制が改められます。昨年(2017年)6月に医療法が改正され、「医療機関ホームページ等も広告に含める」などの広告規制見直しが行われました。もっとも、患者が医療・医療機関を選択する際に、医療機関ホームページ等の情報は極めて有用であるため、「広告可能な事項は『限定』的に明示するとともに、それ以外の事項や、虚偽・誇大な内容は広告することを認めない」との原則を維持したまま、「一定の要件を満たす場合、医療機関ホーム等においては、広告可能事項の『限定』を解除する」こととされています(関連記事はこちら)。

医療機関ホームページ等の広告規制の対象となる

医療機関ホームページ等の広告規制の対象となる

 
 詳細は、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」(医療広告ガイドライン)に示されており、次のような点がポイントと言えます(厚労省のサイトはこちら

【広告可能事項】
 ▼医師・歯科医師である旨▼診療科名▼名称等▼診療日・診療時間、予約診療実施の有無▼保険指定や労災保険指定などの旨▼地域医療連携推進法人に参加している旨▼入院等の設備や従業者数など▼診療に従事する医師等の氏名や役職、略歴、専門性資格など▼休日・夜間診療、セカンドオピニオン実施の有無、個人情報保護、平均待ち時間などに関する事項▼紹介可能な他院の名称など▼診療録等の情報提供に関する事項▼厚生労働大臣が定めた検査・手術等の治療方法▼手術件数・分娩件数・平均入院日数・患者数・平均病床利用率・DPC機能評価係数IIで公表が求められる病院情報・治療結果分析の旨・セカンドオピニオン実施▼救急病院や災害拠点病院等である旨、介護医療院等を併設している旨、院内サービス、医療機能の評価を受けている旨—

 これら以外の事項、例えば「自院の手術後患者の生存率や死亡率」などを「広告」(チラシやパンフレット、ダイレクトメール、ポスター、看板、新聞や雑誌などの広告、テレビやラジオ放送などのコマーシャル、Eメール、インターネット上の広告、不特定多数者への説明会、相談会などでのスライドやビデオなど)することは許されません。また、これら「広告可能な事項」であっても、虚偽や誇大な広告、体験談の掲載、ビフォーアフター写真のみの掲載などを行うことは認められません。

広告可能な事項は限定列挙されている

広告可能な事項は限定列挙されている

 
【ホームページ等において、上記の「広告可能事項」の限定が解除されるための要件】
(1)医療に関する適切な選択に資する情報であり、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告である
(2)表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先(電話番号やメールアドレスなど)の記載、その他の方法により明示する
(3)自由診療に係る通常必要とされる▼治療内容▼標準的な費用(最高から最低、発生頻度の高い追加費用を含む)▼治療期間▼回数―などを、患者・国民に適切かつ十分に、分かりやすく情報提供する
(4)自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供する

 保険診療においては(1)と(2)の要件を、美容整形などの自由診療においては(1)から(4)のすべての要件を満たした場合、上述の「広告可能事項」以外の事項についてもホームページ等に記載することが可能となります。例えば、「未承認薬を用いた治療を実施している」旨(がん治療では、保険診療にも先進医療にも含まれていない治療を行う医療機関も少なくない)をホームページに記載する際には、自由診療であり、その内容や費用、リスク、副作用などを詳細に示すことが求められます。もっとも、これらの要件を満たしたとしても虚偽や誇大な内容を記載することや、体験談の掲載、ビフォーアフター写真のみの掲載などを行うことは認められません。

広告禁止事項の全体像、根拠が異なるが、上表の事項はすべて「広告してはならない」

広告禁止事項の全体像、根拠が異なるが、上表の事項はすべて「広告してはならない」

 
 厚労省は今般、後述する「ネットパトロール」事業によって発見された、実際の「医療機関の広告やホームページ記載」内容をもとに、新たな医療広告ガイドラインの下でどのように取り扱われるのかを具体的に示しています。

 まず、「がん免疫療法専門クリニック」や「審美歯科」である旨は、「広告可能事項」に含まれていないため、当然、広告することはできません。ただし、上記の限定解除要件を満たせば、ホームページ等に記載することは可能です。

 
 また、「自院の患者死亡率、手術後の患者生存率、治癒率」などは、「広告可能事項」に該当しません。医療広告ガイドラインでは▼保険収載されている手術、先進医療で認められた手術等の件数▼分娩件数▼患者の平均的入院日数▼在宅・外来・入院患者数▼平均的な在宅・外来・入院患者数▼平均病床利用率▼DPCの機能評価係数Ⅱにおける病院情報▼治療結果に関する分析を行い、その結果を提供している旨▼セカンドオピニオン実績▼患者満足度調査を実施し、その結果を提供している旨—を診療実績として広告することを認める一方で、▼死亡率▼治癒率—等については「対象となった患者の状態等による影響も大きく、適切な選択に資する情報であるとの評価がなされている段階にはない」として広告を認めていません。

 このため、「自院の患者死亡率、手術後の患者生存率、治癒率」などを広告することは許されません。もっとも、上記の限定解除要件を満たし、かつ患者等が適切に数字を検討できるよう「合理的な根拠を示し」かつ「客観的に実証できる」場合には、ホームページ等への記載が認められます。

 
 また「患者からの体験談や感謝の声」などは、個々の患者の状態等で感想は異なり、誤認を与えるおそれがあることから、上記の「広告可能事項」に該当するものであっても、広告することは認められません。今般の広告規制見直しで明確にされた点です。ホームページ等においても、これらを記載することは認められません。

 ただし、「治療等の内容・効果に関係しない体験談」(例えば病室からの眺望が良い、病院の外観がお城のようである、など)については、上述の限定解除要件を満たすことでホームページ等に記載することが可能です。

 なお、▼個人が運営するウェブサイト▼SNSの個人のページ▼第三者が運営するいわゆる口コミサイト―などへの体験談掲載については、「医療機関が広告料等の費用を負担し、便宜を図って掲載を依頼している」など誘引性が認められる場合には広告に該当します(不適正な広告として、指導や処分、罰則の対象となる)。

 
 また「治療前・治療後の写真のみ」を掲載することは、「広告可能事項」の範囲外であり、広告することは認められません。またホームページにおいても、患者等を誤認させる恐れがあり、掲載は認められません。

 ただし、上述の限定解除要件を満たし、かつ、重複もありますが▼治療内容▼費用▼リスク▼副作用—などを十分に説明すれば、こうした写真をホームページに掲載することが可能となります(写真のみでは不可)。その際であっても写真に加工・修正がなされていないこと、被写体・撮影条件に変更がないことが条件(加工・修正等があれば虚偽や誇大広告となる)となります。

 
また、▼厚生労働大臣に届け出のある団体(学会等)が認定するものでない資格・指導医・認定医である旨▼「絶対安全な手術」「副作用なし」「10分で10歳若返る」などの表現▼「国内最高峰」「国内No.1」「どこでも受けられる治療でない」などの表現▼「女優●●も愛用」などの表現▼「知事の許可を取得した病院」である旨▼わいせつな画像の添付▼「早割●円off」「期間限定キャンペーン中」「お得プラン」「セット割」などの表現▼「先着●名様に、●●をプレゼント」などの表現—については、広告することはもちろん、ホームページ等への記載も認められません。

このうち、例えば「知事の許可取得」のどこに問題があるのか、と思われるかもしれませんが、病院を開設するためには「都道府県知事の許可を得る」ことが当然の義務であり、これをことさらに強調することは、法規に詳しくない一般国民に「特別の許可を得た病院である」と誤認を与えることにつながり、「誇大広告」に該当すると厚労省は説明しています。

 
このように、「広告やホームページ記載の是非」に関する線引きは徐々に明らかになってきていますが、まだ曖昧な部分も残っているようです。このため、厚労省は順次「Q&A」などを提示し、線引きをさらに明確にしていく考えを強調しています。

2017年度のネットパトロール、系列含めて517医療機関のホームページに問題あり

 医療機関のホームページ等は、2018年5月31日までは「広告規制」の対象となっていません。しかし美容整形外科などにおいて「目に余る」事例が少なくなく、患者との間で大きなトラブルになっています。

厚労省は、新たな広告規制(2018年6月1日以降)の開始を待たず、医療機関ホームページ等のパトロールを行い、適正化に努めています(ネットパトロール事業のサイトはこちら)。

具体的には、ネットパトロールを行う事業者(厚労省から委託)が、▼特定のキーワード(上述した「国内No.1」など)による検索▼一般国民からの通報―に基づいて、医療機関ホームページ等に問題がないかをチェック。「問題あり」と考えられる場合には、事業者内の評価委員会(医師・弁護士等で構成、2017年度は月1回開催であったが2018年度からは月2回開催)で詳しく審査・評価を行い、「医療広告ガイドライン等(旧版)に違反がある」と判断した場合には、当該医療機関等に是正を求めます。この是正要望から1か月程度(修正期間)経っても改善がなされない場合には、事業者から医療機関・自治体に通報がなされ、自治体から医療機関へ指導などが行われることになります。

2017年度の事業実績を見ると、160件・517医療機関(系列医療機関も含む)の不適切表示が認められました。うち97医療機関では2017年度中に改善がなされ、86医療機関では2017年度末(2018年3月末)時点で修正中となっています。

なお、一般国民からの通報は1612件(医療広告関係が864件、鍼灸などの医療広告以外が748件)なされ、うち「明確な違反あり」と最終判断されたものが74件となっています。キーワード検索に比べて一般国民からの通報件数が圧倒的に多く(評価委員会の審査対象となった件数でみると5倍近い)なっており、関心の高さが伺えます。

 
なお、上述のように「ホームページに不適切な記載」がある場合には、行政指導・行政処分・刑事罰(罰金など)という順でペナルティが課されますが、刑事罰が科されるまでに至るケースはほぼなく、平川則夫構成員(日本労働組合総連合会総合政策局長)は「改善に向けた実効性が担保されているのか」との疑問を呈しています。

この点、厚労省医政局総務課の榎本健太郎課長は、「罰則(刑事罰)が設けられたことから、社会的に大きな問題になっているということを医療現場にも認識してもらう必要がある。国と自治体で連携し、適正な広告表示に向けて取り組んでいく」旨を強調しています。罰則(刑事罰)が発動されたのかどうかよりも、「ホームページ等の記載が適正になったか否か」が重要です。

 
2018年度以降もネットパトロールは続けられており(6月からは新医療広告ガイドラインに沿う)、その結果は適宜、検討会等に報告されることになります。

 
病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

 

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