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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

外国人患者への診療における通訳費、2019年もほとんどの病院が請求せず―外国人旅行者への医療提供検討会

2020.3.4.(水)

我が国を観光等で訪れた外国人患者が、傷病にあい、医療機関を受診する場合、通訳等に要した費用は患者に実費請求できるが、ほとんどの病院において、この通訳費用を請求していない―。

なお、医療通訳や電話通訳、タブレット等を活用した多言語対応などは、9割近い2次医療圏で整備されている―。

2月28日に持ち回り開催された「訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」に、このような実態調査結果が示されました。

外国人患者への言語対応、9割弱の2次医療圏で整備

新型コロナ感染症の動向にもよりますが、今夏(2020年夏)には東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されるなど、我が国を訪れる外国人旅行者の増加も予想されます(政府は2020年には4000万人、2030年には6000万人の訪日外国人旅行者数を目標値に据えている)。

外国人旅行者が増えれば、必然的に、傷病で医療機関を受診する外国人旅行患者(以下、外国人患者)も増加します。しかし、外国人患者側には「どの医療機関に行けば良いのかわからない」、医療機関側には「言語対応はどうすればよいのか、費用請求はどのように行えばよいのか」などのさまざまな疑問が生じます。

こうした疑問を解消し、外国人患者が安心して医療機関にかかれるよう、また医療機関側が安心して外国人患者を受け入れられるような体制整備に向けて、検討会では、昨年(2019年)3月に、▼外国人患者を受け入れる医療機関リストを作成する▼医療機関に向けて外国人受け入れに関するマニュアルを整備する(患者が保険に加入しているかなどを事前に確認するとともに、事前に概算費用を提示するなどの重要性を指摘)▼費用負担について、「通訳等に係る費用は実費請求できる」「診療費は自由診療として医療機関が価格を設定できる」ことなどを明らかにする―などの内容を盛り込んだ「議論の整理」を行いました(関連記事はこちら)。この方向に沿って、リスト第1弾の作成外国人患者受け入れのための医療機関マニュアルの整備などが進められており、順次、バージョンアップが図られていきます。

2月28日の検討会では、▼2019年度の「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」結果速報▼「外国人患者を受け入れる医療機関の情報を取りまとめたリスト」の改善方向▼地方自治体のための外国人患者受入環境整備に関するマニュアル案▼外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアルの改訂案―などが厚労省から報告されました。

ここでは「実態調査」結果速報について眺めてみましょう。

調査は、全国の病院と外国人観光客の多い京都府・沖縄県のクリニックを対象に、▼外国人患者数▼未収金発生件数▼未収金となった各事例の状況▼医療機関向けマニュアルの整備状況▼医療通訳の配置状況▼外国人患者への診療費請求方法―などを調べています。

まず、2019年10月における外国人患者数を見ると、53.0%の病院が「外国人患者の受け入れを行った」と回答しており、前年調査(2018年調査、49.5%)に比べて微増となりました。また、▼都道府県の選出する「外国人患者受け入れの拠点的医療機関」(以下、拠点医療機関)では82.5%で外国人患者の受け入れを行った▼「1か月で10人以下の受け入れ」病院が最多(前年調査と同じ傾向)―などの状況も分かりました。

およそ半数の病院で、外国人患者受け入れ実績がある(訪日外国人医療提供検討会1 200228)



また多言語への対応状況を見ると、病院単位では▼医療通訳配置:6.0%(前年に比べて1.7ポイント増)▼電話通訳利用:19.5%(同10.7ポイント増)▼ビデオ通訳利用:4.1%(前年は調査せず)▼タブレット等の活用:25.3%(同18.6ポイント増)▼医療通訳・電話やビデオ通訳・タブレット等のいずれかを活用:39.7%(同24.5ポイント増)―、2次医療圏単位では▼医療通訳配置:37.3%(同0.3ポイント減)▼電話通訳利用:69.6%(同20.6ポイント増)▼ビデオ通訳利用:24.8%(前年は調査せず)▼タブレット等の活用:78.5%(同27.8ポイント増)▼医療通訳・電話やビデオ通訳・タブレット等のいずれかを活用:88.4%(同18.0ポイント増)―となっており、外国語対応が進んでいる状況が伺えます。なお、多言語対応については、現時点では「すべての病院で対応しなければならない」ものではなく、「2次医療圏内に対応可能な病院が整備されていればよい」と考えられており、約9割の医療圏で対応が一定程度完了していると見ることができるでしょう。

9割弱の2次医療圏で、外国人患者への多限度対応が一定程度整えられている(訪日外国人医療提供検討会2 200228)

外国人患者への診療単価、9割の病院で12円未満だが、30円超に設定する病院も

一方、外国人患者への診療価格について、検討会では「医療機関での請求価格計算などが簡便に済むよう、例えば診療報酬の●倍(通常、1点=10円のところ、1.5倍(1点=15円)や2.0倍(1点=20円)など)として価格を設定してはどうか」との考えが示されています(関連記事はこちらこちら)。

医療現場でも、この方式が採用されており、1点単価は▼30円以上:0.9%▼25円以上30円未満:0.1%▼20円以上25円未満:3.6%▼15円以上20円未満:3.4%▼12円以上15円未満:0.4%▼12円未満:91.5%―という状況です。ただし、拠点医療機関に絞ると▼30円以上:3.9%▼25円以上30円未満:0.4%▼20円以上25円未満:9.2%▼15円以上20円未満:5.7%▼12円以上15円未満:0.4%▼12円未満:80.4%―に、JMIP(日本医療教育財団の認証)・JIH(Medical Excellence JAPANの認証)登録医療機関に絞れば▼30円以上:20.0%▼25円以上30円未満:1.3%▼20円以上25円未満:40.0%▼15円以上20円未満:5.0%▼12円以上15円未満:0%▼12円未満:33.8%―という具合です。

1点12円未満で外国人患者の診療単価を設定している病院が9割超だが、拠点病院などでは高単価を設定している(訪日外国人医療提供検討会3 200228)



外国人患者への診療単価は、個々の医療機関で「通訳費はどの程度か」「通常より診療時間はどの程度増えるのか」などを勘案して設定することが原則で、拠点医療機関やJMIP(日本医療教育財団の認証)・JIH(Medical Excellence JAPANの認証)登録医療機関では、外国人患者へ対応する体制を充実させており、その分、多くのコストを単価に上乗せする必要があると考えていることが分かります。

なお、公正な取り引きに反するため、国が「外国人患者では1点●円での診療が望ましい」などの基準を示すことはありません。

外国人患者への通訳費用請求が可能な旨を、厚労省は2019年3月の通知で明確化

また、外国人患者への診療において医療通訳を活用した場合、その費用を患者に請求することが可能です。この点、今般の調査では98.8%の病院が「通訳費を請求していない」ことが再確認されました(前年調査でも99.0%の病院が請求していない)。また拠点医療機関でも95.3%が、JMIP(日本医療教育財団の認証)・JIH(Medical Excellence JAPANの認証)登録医療機関でも78.3%が通訳費を請求していません。

98.8%の病院では、外国人患者への診療における「通訳」の費用を患者に請求していない(訪日外国人医療提供検討会4 200228)



この点、厚労省は「医療機関が通訳費用を請求できることを知らない可能性もある」と見て、昨年(2019年)3月28日に通知「社会医療法人等における訪日外国人診療に際しての経費の請求について」を発出し、「外国人患者への診療において医療通訳を活用した場合、その費用を患者に請求することが可能である」旨を明確にしていますが、医療現場に十分に浸透していない可能性があります(関連記事はこちらこちら)。

外国人患者の未収金、12.4%の病院で発生し、1病院当たり総額36万9000円に

ところで、こうした費用を支払ってくれない患者も存在します。いわゆる未収金問題で、外国人患者では言葉の壁などもあり、大きくクローズアップされています。今般の調査では、▼2019年10月に外国人患者受け入れ実績のある2402病院のうち298病院・12.4%で「外国人患者による未収金」を経験した(前年に比べて5.4ポイント減)▼未収金があった病院のうち、1病院当たりの未収金発生件数は平均5.8件(同0.9件減)、未収金総額は平均36万9000円(同6万4000円減)―となったことが分かりました。

外国人患者受け入れ病院の12.4%で、外国人患者による未収金が発生した(訪日外国人医療提供検討会5 200228)



前年に比べて減少しているとはいえ、未収金は病院経営を圧迫する大きな問題です。この点、検討会でも議論されている「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」では、未収金発生防止のために、例えば▼外国人患者が海外旅行保険に加入しているか、また「これから実施する治療が当該保険でカバーされるか」の保険会社への確認をとったか、などを医療機関で確かめる▼医療費(概算)の事前説明を丁寧に行う―ことなどが重要とアドバイスしています(関連記事はこちら)。



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