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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

初再診料等の【妊婦加算】、2019年1月1日より当面の間、「凍結」―中医協総会(1)

2018.12.19.(水)

 2018年度診療報酬改定で新設された、初診料・再診料・外来診療料(いわば「200床以上の病院における再診料」)の【妊婦加算】について、来年(2019年)1月1日から当面の間(別に厚生労働大臣の定める期日まで)、凍結する―。

 12月19日に開催された中央社会保険医療協議会・総会は、こうした方針を決定。根本匠厚生労働大臣に宛てて答申を行いました。

12月19日に開催された、「第404回 中央社会保険医療協議会 総会」

12月19日に開催された、「第404回 中央社会保険医療協議会 総会」

 

妊婦加算や、時間外等で妊婦を診療した場合の加算などを、当面凍結

 2018年度の診療報酬改定においては、初診料・再診料・外来診療料について、「妊婦の妊娠の継続や胎児に配慮した適切な診療を評価する」ために【妊婦加算】が新設されました。妊婦への医療提供に当たっては、▼医薬品によっては催奇形性がある▼頻度の高い合併症がある―点を踏まえなければならないなど、特別の配慮が必要であり、日本産婦人科医会や日本産科婦人科学会からも「外来医療における評価」に対する強い要望に応えたもので、「少子化対策の一環」という意味合いを持つ重要な加算です(関連記事はこちらこちらこちら)。
中医協総会1 181219の図表
 
ただし、「十分な説明なく妊婦加算が算定される」「通常の患者と同様と考えられるコンタクトレンズ処方などでも妊婦加算が算定される」との指摘があり、厚生労働省では「患者・家族への十分な説明を行う」よう周知を求める通知を発出しました(関連記事はこちら)。
妊婦加算2 181102
 
しかし、今秋(2018年秋)頃から「妊婦加算は、妊婦税である」「少子化に逆行する」という偏った意見がSNS等で発信され、またこれを煽るかのようなマスコミ報道等もあり、政治の場でも「妊婦加算の見直し」に向けた議論が行われました。

こうした状況を受け、根本匠厚生労働大臣は「妊婦に配慮した、適切な医療提供と、その評価が重要である」としたうえで、妊婦加算への誤解・不安があることを重視し、「一時凍結し、2020年度の次期診療報酬改定に向けて、その在り方を含めて改めて検討する」方針を決定。12月19日の中医協総会に「2019年1月1日から当面(別に厚生労働大臣の定める期日まで)、凍結する」旨を諮問するに至りました。

 
これに対し中医協総会では、諮問内容を認める答申を行いました。近く、関係告示・通知等の改正が行われます。凍結される点数項目は、次のとおりです。

●A000【初診料】
▽注7の時間外・休日・深夜加算、夜間救急での夜間の加算における「妊婦に対する場合」の加算(通常の時間外加算等を算定する)

▽注10の妊婦加算(算定できない)

▽注11の産科・産婦人科(夜間救急を除く)における夜間、休日、深夜の加算(通常の休日加算等を算定する)

●A001【再診料】
▽注5の時間外・休日・深夜加算、夜間救急での夜間の加算における「妊婦に対する場合」の加算(通常の時間外加算等を算定する)

▽注15の妊婦加算(算定できない)

▽注16の産科・産婦人科(夜間救急を除く)における夜間、休日、深夜の加算(通常の休日加算等を算定する)

●A002【外来診療料】
▽注8の時間外・休日・深夜加算、夜間救急での夜間の加算における「妊婦に対する場合」の加算(通常の時間外加算等を算定する)

▽注10の妊婦加算(算定できない)

▽注11の産科・産婦人科(夜間救急を除く)における夜間、休日、深夜の加算(通常の休日加算等を算定する)

 
診療報酬改定では、限られた期間の中で、数多ある点数項目の見直し・新設を検討するため、「医療現場や国民生活に思わぬ影響を与えるため、さらなる見直しが必要となる」ことは少なからずあります。そのために2年に一度の改定が行われるのです。

この見直し等に当たっては、医療現場等の調査を詳細に行い(結果検証調査など)、その結果を検証した上で、さまざまな角度からの検討を行います。「医療現場だけの意見」「患者側だけの意見」を基に見直しを行えば歪が出てしまうことは明らかで、そのためにも▼診療側(医療提供者サイド)▼支払側(保険者、患者サイド)▼公益代表―の三者構成が採られているのです。今般の凍結は、「患者側だけの意見」に基づく見直しですが、答申では「エビデンスに基づくという、診療報酬改定の基本的な考え方を変更するものではない」点の確認を根本厚労省に強く求めています。

今後、中医協総会では2020年度改定に向けた議論が行われますが、厚労省では「別途、妊婦が安心できる医療提供体制の充実、健康管理の推進を含めた総合的な支援策を検討する有識者会議を創設する」こととしており、そこでの議論も踏まえた検討がなされることになるでしょう。

支払側委員は「中医協論議や医療機関による説明が不十分」と指摘するが・・・

 上述したように、診療報酬改定論議は、エビデンスをもとに、診療側・支払側・公益代表の三者が膨大な時間をかけて、慎重に行うものです。そうした議論を抜きに今回の凍結が決定されたことに対し、中医協委員は「中医協の議論を軽視するものではないか」という忸怩たる思いがあるようです。妊婦加算以外にも、例えば【乳幼児加算】について「負担が大きい。少子化に逆行する」などの声が出され(自治体からの医療費助成があるため、患者負担には直接に結びついてないが・・・)、これに政治が安易に迎合し「廃止・凍結を指示する」ような事態になれば、診療報酬の仕組みそのものが崩壊してしまいます。上述の「確認」はこの点を重視したものです。

 
なお、この点について支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)や吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、▼妊婦加算をめぐる中医協論議が不十分であったのではないか▼中医協において「患者目線で診療報酬を考える」視点が欠けていたのではないか▼医療機関のモラルが低下しているのではないか―といった指摘を行っています。

しかし、中医協論議の中で、支払側委員は妊婦加算に反対しておらず、「診療科による算定制限を設けない」点についても確認しています。また、加算が創設されれば、患者負担が増加することは当然であり(少なくとも中医協委員にとっては当然の事項)、こうした指摘を事後に行うことには、強い違和感を覚えます。

さらに幸野委員は「医療機関サイドが、妊婦加算の説明を十分に行っていない」と診療側委員を非難しましたが、「診療報酬を含めた医療保険制度の説明は、保険者にも課せられた重要な責務」である点を忘れてはなりません。保険者代表・患者代表である支払側委員から、こういった、「ともすれば無責任とも感じられる」指摘等が出ることに、やはり強い違和感を覚えます。負担増を喜ぶ国民は、そう多くはないでしょう。しかし、良質な医療の確保(医療機関の安定経営も含めて)には相応の負担が必要となります。保険者はさまざまな機会を通じて、こうした点を加入者に分かりやすく説明していくことが求められるでしょう。

 
 
 
 
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