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医療webサイトがどこから不適切となるのか、関係者が協議し指導等の運用・解釈を統一―医療情報提供内容検討会(2)

2018.12.21.(金)

 医療広告規制の見直しが行われ、併せて、広告規制に違反する広告等に課するネットパトロールなどが実施されている。違反広告に対しては、是正が求められるが、必ずしも「どういった事例が違反し、どういった事例は許されるか」という点について十分な共通認識が得られていない。こうした状況の改善に向けて、医薬品等広告の例に倣い、▼国▼自治体▼医療関係団体▼インターネット広告業界団体―などで構成される「医療広告協議会」(仮称)を設置する―。

 12月20日に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」では、こういった点についても了承しました。

12月20日に開催された、「第12回 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」

12月20日に開催された、「第12回 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」

 

ネットパトロール事業・医療広告規制の見直しで、国民全体で医療webサイトを監視

 従前、医療機関のホームページなどのwebサイトは、「閲覧者が探して、見に行くものである」ことから、掲載事項が厳しく限定される「広告」とは扱われていませんでした。しかし、美容医療をはじめとする主に自由診療の分野で不適切なwebサイトが少なくなく、患者と医療機関との間にトラブルが絶えませんでした。

そこで、改正医療法(2017年6月改正)によってwebサイト等も「広告」に含め、虚偽や誇大な内容の掲載を禁止(違反すれば罰金・懲役などの罰則も課される)することとしました。他方、医療機関選択等において、極めて重要な情報が掲載されることなどに鑑み、一定の要件(情報の正しさ等を確認できるよう、問い合わせ先を明示するなど)を満たした場合には、広告可能事項の限定を解除することとなりました。通常の「広告」では掲載可能事項が厳格に「限定」されていますが、要件を満たせば、掲載可能事項以外の事項も掲載できるのです(限定解除)(関連記事はこちらこちらこちら)。

 
一方、不適切なwebサイトを是正するため、厚生労働省は昨年(2017年)8月から、次のような「ネットパトロール事業」を実施しています(関連記事はこちら)。

▼厚労省から委託を受けたネットパトロール事業者が「一般からの通報」「自ら実施するキーワード検索」によって不適切なwebサイトを探す

▼不適切なwebサイトについて「書面での審査」「医師や弁護士で構成される評価委員会での審査」によって「是正が必要なwebサイトか否か」を判断する

▼「是正」が必要な場合には、医療機関に通知を行い、改善等を促す

▼通知から1か月後程度に改善状況を確認し、改善がなされていない場合には都道府県に情報提供する
 ↓
▼都道府県が状況を調査し、指導等を行う

 今年(2018年)4-9月の状況を見ると、「是正が必要なwebサイト」と判断されたものは、一般通報から194件(複数の医療機関名が記載されており、329件には是正に向けた通知を実施済)、キーワード検索から98件(同212件に通知実施済)となりました。ほとんどの医療機関ではwebサイトを改善しており、都道府県への情報提供に至ったものは、うち5件にとどまっています。

 一般からの通報件数は、上記の「広告規制見直し」を契機に大幅に増加しており、審査対象となったwebサイトは、昨年(2017年)8月-今年(2018年)3月までの「678件」から、今年(2018年)4-9月には「1137件」に増加しました。

 
 内容を見ると、「美容関係」が238件(2017年8月-2018年3月には237件で、1件の増)、「歯科」(多くは審美歯科)が599件(同178件で、421件の大幅増)、「がん関係」が123件(同144件で、21件の減)となっています。詳細については、今後、詳しく分析の上、示される見込みです。この点、平川則夫構成員(日本労働組合総連合会総合政策局長)は「がん患者は『治りたい。治る方法は何か』という思いで医療機関のwebサイト等を閲覧する」と指摘。こうした気持ちに付け込むような不適切なサイトは、早急な是正が求められます。

通報件数の増加は、いわば「国民全体で、医療機関のwebサイトを監視している」ことを意味し、不適切サイトの減少に向けて「好ましい」状況と言えるでしょう。検討会でも福長恵子構成員(消費者機構日本常任理事)や山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)ら多数の構成員から「ネットパトロール事業の効果が出ている」と高く評価されました。

もっとも、事業者の体制整備が、通報件数の増加に追い付かず、「未審査」や「評価未了」が一定程度生じています。厚労省では、2019年度予算概算要求時点で、ネットパトロール事業の強化等に向けて、前年度に比べて2000万円増額した7400万円強の経費を要求しており、今後の体制充実に伴って、「未審査」「評価未了」事案は徐々に解消していくと思われます。

 
 なお、木川和弘構成員(アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士)は「広告提供側の声にも少し耳を傾ける必要がある。安全性・有効性が確認された保険診療についても、術前術後の写真掲載などが困難になっていると考えられるケースもあるようだ」と述べ、より幅広い視点での議論も要請しています。

医療webサイトがどこから不適切なのか、運用・解釈統一のための「協議会」を設置

ところで、前述した「webサイトに広告可能事項以外の事項を掲載する」(限定解除)ための要件や、「どういった記載が不適切で、どういった記載とすれば掲載可能なのか」という点について、自治体や医療機関、webサイト事業者などから「曖昧な部分がある」との指摘も出ています。これまでに「医療広告ガイドライン」や「Q&A」が示されていますが、個別具体的な記載が「適切か不適切か」という判断をする際には、やはり曖昧な部分があることは否めません。

この曖昧さを放置した場合、webサイト事業者や医療機関には「患者や住民に十分な情報提供をしたいが、適切かどうかが不明で、掲載を躊躇する」といった、自治体サイドには「是正に向けた指導に二の足を踏む」といった弊害が生じます。前者では「十分な情報提供がなされない」、後者では「不適切な情報が流れてしまう」ことにつながり、結果として患者・住民が不利益を被ることになってしまいます。

そこで厚労省は、▼国▼自治体▼医療関係団体▼インターネット広告業界団体―などで構成される「医療広告協議会」(仮称)を設置し、「広告に関する相談の受け付け」「解釈・運用の統一」などを行うことを提案しました。個別事例を集積し、協議を行うことで、「適切か、不適切か」などの解釈(判断)が統一的になされることが期待されます。この仕組みは、医薬品等の広告規制に関して同様の相談・解釈統一などを行う「全国医薬品等広告監視協議会」(通称:六者協)に倣ったものです。

 
この協議会設置について検討会委員からは「賛同」意見が相次ぎ、構成員から出された「メンバーに患者・住民の代表も加えるべき」(福長構成員)などの注文を踏まえ、2019年度から設置・稼働となる見込みです。

 
広告規制の見直しについて、前述のように制度的な枠組みは整理されました。今後は、パトロール事業やサイトの改善など、規制の「運用」「執行」に検討の力点が移ります。不適切な情報が放置されないよう、効果的な「運用」「執行」が期待されます。

 
なお検討会では、年度明け(2019年4月)から▼医療機能応報提供制度の全国統一システム構築(現在は都道府県が独自に構築、関連記事はこちら))▼「日本専門医機構の認定する専門医」資格の広告(関連記事はこちら)▼「特定講師研修を修了した看護師」の広告—などについても議論を行っていきます(関連記事はこちらこちら)。
 
 
 
 
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