医療広告ガイドライン、新たなQ&Aを厚労省が提示―厚労省
2018.8.13.(月)
厚生労働省は8月10日に事務連絡「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)に関するQ&Aについて」を発出。医療現場のさまざまな疑問に答えています(厚労省のサイトはこちら)。
目次
医療機関ホームページも広告と扱う、要件満たせば「広告可能事項」以外の広告も可能
昨年(2017年)6月に医療法が改正され、医療機関等における広告規制が今年(2018年)6月1日から見直されました。従前、「医療機関等のホームページ」は広告に含まれていませんでしたが、不適切な内容が相次いだため、新たに「広告に含める」こととされました(不適切な内容には罰則が科せられることもある)。ただし、患者が医療・医療機関を選択する際に、医療機関ホームページ等の情報は極めて有用であるため、「広告可能な事項は『限定』的に明示するとともに、それ以外の事項や、虚偽・誇大な内容は広告することを認めない」との原則を維持したまま、「一定の要件を満たす場合、医療機関ホームページ等においては、広告可能事項の『限定』を解除する」こととされています。
詳細は、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」(医療広告ガイドライン、以下、本抗稿ではガイドラインと呼ぶ)に示されており、その概要はメディ・ウォッチでもお伝えしています(医療広告規制に関する厚労省のサイトはこちら)(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。
原則として、広告可能な事項は「限定列挙」されており、これ以外の事項を広告することは認められません。ただし、ホームページなどのウェブサイトでは、一定の要件を満たすことを条件に、限定列挙以外の事項も記載することが可能となる(限定解除)といったイメージです。
今般、厚労省は医療現場から寄せられた質問を整理し、考え方を明確にしました。Q&Aには従前から示されている事項もありまずが、併せてポイントを眺めてみましょう。
まず「広告の対象範囲」に関する点です。広告に該当した場合には、虚偽(例えば、「絶対に安全な手術」「必ず治る」などの記載や、加工・修正した術前術後写真など)や誇大(「○○の症状のある2人に1人が●●のリスクあり」などの表現)な内容が許されないことはもちろん、▼患者その他の者の主観または伝聞に基づく、治療等の内容・効果に関する体験談▼いわゆるビフォーアフター写真・イラストなど―を記載することも禁止されます。
この点、▼学術論文や発表▼新聞や雑誌の記事(記事広告は別)▼患者自らが掲載する体験談など(報酬等を得て掲載する場合などは別)▼院内の掲示・パンフレット▼医療機関の職員募集広告―などは、規制の対象外ですが、曖昧な部分もあるため、厚労省は次のような考えを示しています。
▽「新聞や雑誌の記事」等を引用・掲載した場合、ガイドライン等の適用を受ける。雑誌に掲載された「日本が誇る50病院の一覧」などは、比較優良広告として原則、広告できない
▽「最新がん〇〇療法」、「〇〇治療最前線」といった書籍や冊子等は、特定の医療機関への誘引性が認められる場合(特定の医療機関のみ可能な治療法や、治療法を行う一部の医療機関のみが紹介されている場合等)は、広告に該当する
▽新聞や雑誌等に掲載された治療方法等に関する記事であっても、医療機関が広告料等の費用を負担する等の便宜を図って記事の掲載を依頼し、患者等を誘引するような場合は、誘引性が認められ、いわゆる「記事風広告」として広告に該当する
▽雑誌の同一紙面上で、「上段が治療法等に関する記事」「下段が当該治療等を実施している医療機関の広告」の場合であっても、当該医療機関が費用を負担する等の便宜を図って上段の記事の掲載を依頼することにより患者等を誘引するような場合は、上段の記事についても誘引性が認められ、いわゆる「記事風広告」として広告に該当する
▽インターネット上のバナー広告について、医療機関の名称が記載されているなど特定性がある場合は、広告に該当するため、ガイドラインで認められた広告可能事項に限って、広告可能である。なお、バナー広告にリンクした医療機関のウェブサイトは、「患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイト」であり、要件を満たした場合には、広告可能事項の限定が解除可能である
▽QRコードを読み込むことで表示されるウェブサイト等も、インターネット上のウェブサイト等と同様に取り扱い、広告規制の対象となる(ただし、要件を満たせば広告可能事項の限定が解除可能)
▽複数の医療機関を検索し、医療機関の情報を提供する機能を備えたようなスマートフォンのアプリケーションから得られる情報も、広告規制の対象となる(ただし、要件を満たせば広告可能事項の限定が解除可能)
▽広告規制の対象であるウェブサイトについて、特定の人のみが閲覧可能(例えば情報取得希望者のみが閲覧可能な状態)な場合であっても、広告規制の対象となる
▽患者の希望により配布するメールマガジンやパンフレットであっても、広告規制の対象となる(ただし、要件を満たせば広告可能事項の限定が解除可能)
▽フリーペーパーに掲載された医療機関等の広告も、広告規制の対象となる
▽複数の医療機関を紹介するパンフレットを各医療機関の院内で配布する場合、その内容が「誘引性」「特定性」を有すると判断されれば、広告規制の対象となる
▽医療機関主催の患者・地域住民向け講演会についての広告は、患者の受診を誘引することなどを意図していない場合には、広告規制の対象外である
口コミ情報の提供、患者等の個人が行う場合には可能だが、許されないケースも
前述のように、虚偽・誇大な内容の広告はもちろん、▼患者その他の者の主観または伝聞に基づく、治療等の内容・効果に関する体験談▼いわゆるビフォーアフター写真・イラストなど―を広告することも認められません。
この点について厚労省は、次のように詳細を示しています。
▽「最新の治療法」「最新の医療機器」などの表現は、医学的・社会的な常識の範囲で、事実と認められるものであれば、必ずしも禁止されない。ただし、求められれば内容に係る裏付けとなる根拠を示し、客観的に実証できる必要がある。より新しい治療法等が定着した時点でも、旧来の方法を「最新」と表現することは、虚偽・誇大広告に該当するおそれがある
▽「最先端の医療」「最適の医療」などの表現は、誇大広告に該当するため、広告できない
▽「最良の医療」「最上の医療」などの表現は、比較優良広告に該当するため、広告できない
▽美容医療等の自由診療において「プチ●●」などの、▼短時間で行える▼身体への負担が比較的少ない▼費用も手軽である―といった印象を与える表現は、誇大広告に該当する可能性がある
▽費用を強調した品位を損ねる内容の広告は、厳に慎むべきであるが、費用に関する事項は、患者にとって有益な情報の1つであり、費用について、分かりやすく太字で示したり、下線を引くことは、差し支えない(費用を前面に押し出すことは慎むべき)
▽「糖尿病外来」、「認知症外来」等の専門外来を設置している旨は、診療科名と誤認を与える事項であり、広告できない。ただしウェブサイトについては、要件を満たせば、広告可能事項の限定が解除可能である
▽「当診療所に来れば、どなたでも○○が受けられます」などといった、必ず特定の治療を受けられるような表現は、診察を経ずに全患者が特定の治療を受けられるような誤解を与えるものであり、虚偽広告として広告できない
▽「手術前のみ」または「手術後のみ」の写真を用いた場合でも、患者等を誤認させるおそれがある治療効果に関する表現であり、広告できない
▽医療機関のウェブサイト上の口コミ情報は、虚偽・誇大に当たり、広告できない
▽医療機関の口コミ情報ランキングサイトについては、ランキングを装い、医療機関の口コミ(体験談)等に基づき特定の医療機関を強調している場合は、比較優良広告に該当する可能性があり、広告できない
▽FacebookやtwitterといったSNSで医療機関の治療内容や効果に関する感想を述べることは、医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなどによる誘引性が認められない場合は、広告に該当しない
▽未承認(適応外も含む)医薬品・医療機器を用いた治療は、限定解除の要件を満たしたと判断される場合には、広告可能である。ただし、▼未承認医薬品等であること▼入手経路等▼承認医薬品等の有無▼諸外国における安全性等に係る情報—を明示する必要がある
▽医薬品・医療機器の販売名を用いた治療については、広告できない。ただしウェブサイトについては、要件を満たせば、広告可能事項の限定が解除可能である
▽治療の効果に関する表現は広告できない。ただしウェブサイトについては、要件を満たせば、広告可能事項の限定が解除可能である(求められれば裏付けとなる根拠を示し、客観的に実証できる必要がある)
▽当該医療機関で提供できない医療機器の画像を用いて広告すること(例えば、MRIを設置していない医療機関で、権利関係のないMRIのイメージ画像を用いるなど)は、虚偽広告に該当し、イメージ画像は広告できない
▽「学会の認定する研修施設である旨」「医療従事者の略歴として、研修を受けた旨」は広告できない(後者は検討中)。ただしウェブサイトについては、要件を満たせば、広告可能事項の限定が解除可能である
▽「特定行為研修を受けた看護師である旨」は、現時点では広告できない(検討中である)。ただしウェブサイトについては、要件を満たせば、広告可能事項の限定が解除可能である
日本専門医機構の専門医資格など、広告可能とするか現在、検討中
広告可能な事項は、▼診療科名▼地域医療連携推進法人に参加している旨▼休日・夜間診療、セカンドオピニオン実施の有無、個人情報保護、平均待ち時間などに関する事項▼紹介可能な他院の名称など▼診療録等の情報提供に関する事項▼厚生労働大臣が定めた検査・手術等の治療方法▼手術件数・分娩件数・平均入院日数・患者数・平均病床利用率・DPC機能評価係数IIで公表が求められる病院情報・治療結果分析の旨・セカンドオピニオン実施▼救急病院や災害拠点病院等である旨、介護医療院等を併設している旨、院内サービス、医療機能の評価を受けている旨—などに限定されています。この点、厚労省は次のような明確化を図っています。
▽麻酔科を診療科名として広告するときには、許可を受けた医師の氏名を併せて広告しなければならない
▽「総合診療科」は、広告可能な診療科名ではないため、広告できない。ただしウェブサイトについては、要件を満たせば、広告可能事項の限定が解除可能である
▽「日本専門医機構認定の専門医である旨」「産業医である旨」は、現時点では広告できない(検討中である)。ただしウェブサイトについては、要件を満たせば、広告可能事項の限定が解除可能である
▽特定の医師が実施した手術件数は、広告できない。ただしウェブサイトについては、要件を満たせば、広告可能事項の限定が解除可能である(求められれば裏付けとなる根拠を示し、客観的に実証できる必要がある)
▽当該医療機関で行われた手術件数について、総手術件数でなく、それぞれの手術件数を示し、1年ごとに集計したものを複数年にわたって示すことが望ましい。例えば「過去30年分」のような長期間の件数で、現在の医療内容を誤認させるおそれがある場合には、誇大広告に該当する可能性がある
▽歯科診療における「審美治療」は、広告できない。ただしウェブサイトについては、要件を満たせば、広告可能事項の限定が解除可能である
▽無痛分娩を実施していることは、広告可能である
▽紹介可能な介護老人保健施設は、介護保険事業者の名称・所在地・連絡先等を、医療機関の広告と併せて広告することが可能である
限定解除のための「問い合わせ先」、形だけのものは認められない
厚労省では、不適切な広告に関するパトロールを実施するなどし、患者への不利益発生防止に努めています。また、違反者には罰則等も課されます。この点については、次のような点を明確にしています。
▽医療広告違反を見つけた場合や医療広告に関する疑問がある場合には、地方自治体や保健所に相談してほしい(連絡先に関する厚労省サイトはこちら)また、ネットパトロールに通報することも可能(ネットパトルール事業のサイトはこちら)
▽医療機関の検索が可能なサイトやポータルサイトが医療広告規制に違反している場合、サイト運営会社や広告代理店等も、是正命令や罰則の対象となる
▽日本語、外国語どちらで作成された広告であっても、広告規制の対象となる
▽広告可能事項の限定解除要件の1つに「問い合わせ先の記載」があるが、予約専用の電話番号等では、患者等が容易に照会できるとは言えず、限定解除要件を満たしているとは認められない(自動音声対応のみも同様である)。メールアドレスで、「受付した旨」の返信のみで、問い合わせへの返答がないような場合等についても、限定解除要件を満たしているとは認められない
▽限定解除要件については、患者が容易に視認できることが必要である。▼文字が極端に小さく容易に確認出来ないと考えられるもの▼背景色と同じあるいは同系統の文字色で記載されているなど、配色に問題があると考えられるもの▼意図的に情報量を増やし、必要事項を見逃す恐れがあると判断できるもの―などは不適切である(患者の求めがあった場合には、どう限定解除要件を満たしているかを紙面等で提供することが望ましい)
▽限定解除の要件として、自由診療の場合は▼治療等に係る主なリスク▼副作用等に関する事項—について情報提供が必要だが「デメリットとして、時間の経過によって体内へと吸収され、元に戻ることがあり、十分な効果を得るために、数回の注射が必要な場合がある」旨を示すだけでは要件を満たしているとは言えない
▽医療機関等のホームページがガイドラインに適合していることは、特段、強調すべき事項ではなく(遵守が当然である)、厚労省のシンボルマーク等を記載することは誇大広告に該当する可能性がある(厚労省シンボルマークの使用規定はこちら)
【関連記事】
医療機関ホームページ、手術後生存率等を合理的根拠等示さず記載は不可―医療情報提供内容検討会(1)
患者の体験談やビフォーアフター写真、ホームページへの掲載も原則不可―厚労省
患者の医療機関への感謝の気持ち、不適切なものはホームページ等に掲載禁止―社保審・医療部会(2)
医療機関ホームページ、「患者が元気になるイラスト」など掲載禁止―厚労省・検討会