3次救急、施設数増加する中でも「専門医・専従医配置」や「重篤症例受け入れ数」が増加—救急・災害ワーキング
2022.6.20.(月)
3次救急について「施設数が増加し、医師や症例が分散してしまっているのではないか」との指摘がある。しかし、実態をみると、施設数が増加する中でも「専門医・専従医配置」や「重篤症例受け入れ数」が増加しており、医療の質は向上していると期待できる—。
6月15日に開催された「救急・災害医療提供体制等に関するワーキンググループ」(第8次医療計画等に関する検討会の下部組織、以下「救急・災害ワーキング」)で、こういったデータが示されました。2024年度からの第8次医療計画に向けて「救急医療提供体制の整備・充実」に向けた議論が進みます。
多職種による「病院前から医療機関内」の救急医療の在り方についても検討を進める
Gem Medで報じているとおり「2024年度からの新たな医療計画(第8次医療計画)」に向けた議論が進んでいます(都道府県が作成する医療計画のベースとなる厚生労働法の指針論議)。
救急医療提供体制に関しては、前回会合(4月28日)において「2次救急と3次救急との役割分担・連携の強化」が重要論点となり、そこでは「3次救急が多すぎるのではないか」との指摘がなされていました。施設数の増加により、医師・患者が分散し『医療の質が低下している』可能性があることを懸念する指摘と言えます。
しかし、厚生労働省が新たに示したデータによれば、3次救急の施設数が増加している(現在は299か所)が、▼1施設当たりの救急搬送件数(中央値)も増加している▼1施設当たりの重篤患者数(中央値)も増加している▼1施設当たりの専従医・専門医数も増加している—ことが分かりました。つまり「3次救急施設における医療の質はさらに向上している」と言えるのです。
ただし、例えば重篤患者などについて、「本当に3次救急で診るべき症例であったのか、2次救急でも対応可能な症例であったのか」などの分析をすべきであると加納繁照構成員(日本医療法人協会会長)らは指摘しており、さらに「3次救急が適切に設置されているのか」「2次救急と3次救急との役割分担が現場で適切になされているのか」などを検討していく必要がありそうです。
また、構成員の多くから「医師の需給推計に基づいて『医師養成数を減員』していく方向が示されているが、地方の救急医療現場は医師不足で困窮している。診療科・地域をおしなべるのでなく、診療科ごと、地域ごとに、医療現場の状況を踏まえて、今後の医師養成等を考えていってほしい」との意見・要望が出されました。とりわけ「医師の働き方改革は2次救急で大きな影響がある」と考えられており、その点も十分に加味した検討を求める声も多数でています。今後の医師偏在解消論議などで勘案すべき意見と言えます。
さらに、今後に向けて「ドクターカー・ドクターヘリの連携」をどう進めていくべきかとの論点も示されています。ドクターヘリについては「実質的全国配置」が完了したものの、「隙間になってしまうエリアが出てくる」と指摘されます。この点をどう考えていくかが今後の論点となります。また、ドクターカーについては「実態がなかなか把握しにくい」状況であり、まず「実態を把握」し、その後「さらなる展開・充実、他施策との連携」などを考えていくことになりそうです。
ところで、改正医療法(良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための 医療法等の一部を改正する法律)の一環として、救急救命士に「医療機関内で救急救命処置を実施する」ことが認められています(今年(2021年)10月施行、関連記事はこちら)。
厚生労働省は、この「医療機関内で救急救命処置を実施」状況(法改正の効果)を把握し、さらに「救急外来における看護職員配置の考え方」「救急救命処置への追加・除外・見直し」などを総合的に検討する場(検討会など)を設置する考えを明らかにしました。「病院前から医療機関内に至る救急医療」を多職種連携で進めるための議論が今後進んでいきます。ただし、医療機関内での救急救命士業務実施は「始まったばかり」であり、データ収集を行い、議論し、結論を得るまでには少し時間がかかるでしょう。
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