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地域の在支病・在支診整備状況、これまでの在宅医療提供実績、医療・介護連携など勘案し、柔軟に在宅医療圏域を設定―在宅ワーキング

2022.9.29.(木)

各都道府県において、地域の医療資源(在宅療養支援診療所、在宅療養支援病院はどの程度整備されているかなど)、これまでに培ってきた在宅医療提供実績、さらに介護サービスとの連携などを総合的に勘案して、「在宅医療の拠点等」と「在宅医療圏域」とをセットで柔軟に考えていくことが求められる—。

在宅医療・介護連携の推進が極めて重要であり、その「牽引役」「要となる役」として郡市区医師会を考えていってはどうか―。

9月28日に開催された「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」(第8次医療計画等に関する検討会の下部組織、以下「在宅ワーキング」)で、こういった議論が行われました。

9月28日に開催された「第6回 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」

在宅医療圏域、「介護との連携」と「地域の医療資源」とを勘案し柔軟に設定を

Gem Medで繰り返し報じているとおり、2024年度から「第8次医療計画」がスタートします。

医療計画の中には「在宅医療」について「どのように提供体制を強化していくか」「どの程度の供給量が必要か」「医療・介護連携をどう進めていくか」などを記載することも求められます。在宅ワーキングでは今春より第1ラウンド論議を進め、親会議である「第8次医療計画等に関する検討会」に審議状況を報告しています。

【ワーキングおよび検討会に関する記事】
医療・介護サービスの一体提供可能とするため、在宅医療圏域は「市町村単位」が望ましいのでは—第8次医療計画検討会(2)
在宅療養患者に対する「口腔・栄養・リハビリの一体的提供」を、第8次医療計画でも強力に推進すべき―在宅ワーキング
地域の在宅医療提供体制、「訪問介護」や「後方病床」などとセットで検討し整備しなければならない―在宅ワーキング
患者意思に反した医療がなされないよう「患者意思を医療・消防関係者が把握できる仕組み」構築を―在宅ワーキング
在宅医療の整備指標をより具体化せよ、医療機関間連携、医療・介護連携、地域性への配慮も必須視点―在宅ワーキング
第8次医療計画に向け在宅医療推進方策を議論、「医療的ケア児への在宅医療」が重要論点の1つに―在宅ワーキングけんとう



9月28日の会合から、上記を踏まえた第2ラウンド論議がスタート。同日には「在宅医療の提供体制」および「在宅医療・介護連携」を議題としました。引き続き「急変時や看取理事の対応」「小児在宅医療」「多職種連携」などのテーマを議論し、「年内の意見取りまとめ」→「親会議(第8次医療計画検討会)への報告」→「年度内の親会議の意見取りまとめ」と進んでいく予定です。

在宅ワーキングの今後の進め方(在宅ワーキング1 220928)



「在宅医療の提供体制」に関しては、これまでの議論を踏まえて次の5つの方向が概ね了承されています。
(1)次期「在宅医療の体制構築に係る指針」(都道府県が医療計画のうちの「在宅医療」整備計画を作成する際に拠り所となる厚生労働大臣の定める指針)において、▼在宅医療において積極的役割を担う医療機関▼在宅医療に必要な連携を担う拠点—の目標・機能・役割などを整理する

※在宅医療において積極的役割を担う医療機関:▼自ら24時間対応体制の在宅医療を提供する▼他医療機関を支援する▼医療、介護、障害福祉の現場での多職種連携を支援する—医療機関
→主に在支診・在支病などが想定される

※在宅医療に必要な連携を担う拠点:▼地域の関係者による協議の場の開催▼包括的かつ継続的な支援にむけた関係機関の調整▼関係機関の連携体制の構築—などを行う機関
→主に市町村、保健所、医師会などの関係団体などが想定される

在宅医療圏域に求められる事項(在宅ワーキング2 220928)



(2)▼在宅医療において積極的役割を担う医療機関▼在宅医療に必要な連携を担う拠点—を医療計画に位置づける(現在は「医療計画への位置付けが望ましい」とされるにとどまっている)
▽前者の「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」について は、原則、在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院を位置づける
▽機能強化型の在支診・在支病が整備されている地域では、これらが「より積極的な役割を担う」こととする

(3)医療資源の整備状況が地域によって大きく変わることから、「在支診・在支病以外の診 療所・病院」についても、引き続き地域における在宅医療に必要な役割を担うこととする

(4)在宅医療の圏域については、引き続き「2次医療圏にこだわらず、できる限り急変時の対応体制(重症例を除く)や医療と介護の連携体制の構築が図られるよう、▼市町村単位▼保健所圏域—などの地域医療・介護資源等の実情に応じて弾力的に設定」する

(5)▼在宅医療において積極的役割を担う医療機関▼在宅医療に必要な連携を担う拠点—を在宅医療圏域内に少なくとも1つは設定することを前提とする



第1ラウンド論議で大きなポイントとなったのが(4)の「在宅医療圏域」についてです。鈴木邦彦構成員(日本医療法人協会副会長)や江澤和彦構成員(日本医師会常任理事)ら多くの構成員が「在宅医療が必要な患者は、同時に在宅介護ニーズも保有しており、医療・介護サービスを一体的に提供できるよう、介護保険事業計画と同一の市町村を原則とすべき」と提案していました。極めて合理的な提案ですが、「地域によっては、とりわけ小規模の町村では在宅医療提供体制が充実しておらず、市町村を在宅医療圏域とした場合に十分なサービス提供が確保できない」という問題も孕んでいました。

実際に市町村単位でみると、「27%の地域で在支診が存在しない」「65%で機能強化型在支診が存在しない」「63%で在支病が存在しない」「80%で機能強化型在支病が存在しない」ことが明らかとなりました。こうした中で「在宅医療圏域は市町村とする」と厳しいルールを設ければ、「在宅医療圏域にもかかわらず在支診・在支病すら存在しない」エリアが少なからず発生してしまうことになります。

在支診の整備状況(在宅ワーキング3 220928)

在支病の整備状況(在宅ワーキング4 220928)



そこで厚労省は、「医療・介護連携の推進」と「エリア内での一定の在宅医療サービス確保」との両立を地域(都道府県単位)の実情を踏まえて柔軟に設定できるよう、現行の「従来の二次医療圏にこだわらず、できる限り急変時の対応体制 (重症例を除く)や医療・介護の連携体制の構築が図られるよう、市町村単位や保健所圏域等の地域の医療・介護資源等の実情に応じて弾力的に設定する」との考えを踏襲することにしたものです。

もっとも、(5)のとおり、在宅医療圏域の中には▼在宅医療において積極的役割を担う医療機関▼在宅医療に必要な連携を担う拠点—が1つ以上存在しなければなりません。これは「在宅医療圏域の中に、新たに拠点等を設けよ」という意味ではなく、「▼在宅医療において積極的役割を担う医療機関▼在宅医療に必要な連携を担う拠点—が1つ以上含まれるように、在宅医療圏を設定せよ」という意味と解釈すべきものです。多くの地域では、すでに「地域において在宅医療を積極的に提供する、在宅医療の拠点となっている医療機関等」が存在しているはずです。それら医療機関等が築いてきた体制を尊重したうえで、「さらに介護サービスとの連携を確保するために、どのように在宅医療圏域を設定するべきか」を各都道府県で考えていくことが重要と言えます。

また(1)(2)では、▼在宅医療において積極的役割を担う医療機関▼在宅医療に必要な連携を担う拠点—の位置付けなどを医療計画の中に明確化する方向が示されています。ただし、「1つの医療機関が▼在宅医療において積極的役割を担う医療機関▼在宅医療に必要な連携を担う拠点—の双方の機能を担っている」地域もあれば、「ある医療機関が『在宅医療において積極的役割を担う医療機関』として活躍しているが、『拠点的機能』を担うには十分でない」地域もあることでしょう。このため、▼在宅医療において積極的役割を担う医療機関▼在宅医療に必要な連携を担う拠点—は、地域により「同一の機関(機能強化型在支病など)が担う」「複数の機関(複数の在支診・在支病など)が重複して両機能を分担する」「両者を全く別の機関が担う」など、さまざまなパターンが考えられます。

各都道府県には、エリアごとの医療資源、これまでに培ってきた在宅医療提供実績、さらに介護資源などを総合的に勘案して、「在宅医療の拠点等」と「在宅医療圏域」とをセットで考えていくことが求められます。

こうした「地域ごとに、地域の特性を踏まえて在宅医療提供体制を設定していく」考えに異論はでておらず、江澤構成員は「在支病が、地域のクリニックや介護サービス事業所と連携し、面で在宅療養患者をサポートしていく体制を地域ごとに早急に構築する」ことが重要と訴えています。

在宅医療・介護の連携を推進するため、郡市区医師会が拠点的機能を果たしてはどうか

また「在宅医療・介護連携」の重要性は、上述したように鈴木構成員・江澤構成員らをはじめ多くの構成員が繰り返し強調しており、次のような方針が概ね固められました。

(a)現行指針の「在宅医療・介護連携推進事業において実施する取組との整合性に留意する」との記載を、▼在宅医療・介護連携推進事業▼在宅医療に必要な連携を担う拠点—の連携の有効性の観点から、『同一の実施主体となりうる』ことも含め両者の関係について充実していく

(b)「在宅医療に必要な連携を担う拠点」の整備状況や「在宅医療・介護連携推進事業」との連携について実態把握を行い、進捗を評価していく



「在宅医療に必要な連携を担う拠点」は、上述のとおり「▼地域の関係者による協議の場の開催▼包括的かつ継続的な支援にむけた関係機関の調整▼関係機関の連携体制の構築—などを行う機関」です。2024年度の次期医療計画から「記載の明確化」が求められますが、現行医療計画でも「記載が望ましい」とされており、「医療計画上の機関・組織」と位置付けられそうです。

一方、「在宅医療・介護連携推進事業」は、介護保険をサポートする「市町村の行う地域支援事業」の1つに位置づけられ、▼地域の医療・介護の資源の把握▼在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討▼切れ目のない在宅医療と在宅介護の提供体制の構築推進▼医療・介護関係者の情報共有の支援▼在宅医療・介護連携に関する相談支援▼医療・介護関係者の研修▼地域住民への普及啓発▼在宅医療・介護連携に関する関係市区町村の連携—などを行います。

在宅医療・介護連携(その1)(在宅ワーキング5 220928)

在宅医療・介護連携(その2)(在宅ワーキング6 220928)

在宅医療の拠点と在宅医療・介護連携(在宅ワーキング7 220928)



医療・介護連携の視点からは、両者が密接に連携することが極めて重要ですが、マンパワー不足などにより、十分な連携が図られていないという課題があります。

在宅医療・介護連携の課題(在宅ワーキング8 220928)



そこで、「両者を同一の機関・組織が担う」ことも含めた「連携の強化」を図るとともに、「活動実績の把握→評価」を進める方針を明確化するものです。

この点、両者を担う機関・組織として、鈴木構成員・江澤構成員ら医療関係者のほか、市町村代表の大三千晴構成員(徳島県美波町福祉課長)、介護業界代表構成員ら、多くの構成員が「郡市区医師会」に期待を寄せました。すでに行政から委託をうけるなどし、郡市区医師会が在宅医療・介護連携の要としての実績をあげている地域も少なくありません(福岡県、新潟県など)。

今後、より多くの地域で、医師会が行政(市町村・都道府県)だけでなく、地域の介護サービス事業所や介護施設、さらには介護関係者組織と連携をとり、在宅医療・介護連携を牽引してく(ただし1人よがりの牽引でなく、他者と歩調を合わせることが極めて重要)ことに期待が集まります。さらに江澤構成員は「連携にとどまってはいけない。今後、医療計画・介護保険事業(支援)計画を作成していくに当たり、都道府県・市町村の担当者が頻繁に議論を交わすなど両計画の一体的な作成が求められる」と要請しています。



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