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近く始まる「ポスト地域医療構想」論議、「ベッド数の数合わせ」に終わってはならず、2次医療圏の在り方も再検討が必要—日病・相澤会長

2024.3.26.(火)

2024年度診療報酬改定において入院料などの引き上げが行われたが、そのほとんどは「医療従事者の人件費」に充てるため、「病院の経営安定、病院の赤字解消」に十分とは言えない—。

「高齢救急患者へ包括的に対応する」機能を持つ病棟は必要であり、新病棟【地域包括医療病棟入院料】創設の方向は正しいと思う。ただし、「あるべき医療提供体制像を固める→それを実現するために必要な人員配置等を考える→適切な人員配置を可能とする診療報酬を設定する」という順で検討を進める必要がある。新病棟の点数・基準で、必要な機能を賄えるかどうかは、今後の状況を見守る必要がある—。

日本病院会の相澤孝夫会長が3月26日に定例記者会見を開き、「個人的な見解」と前置きしたうえで、こうした考えを強調しました。今後、日病内でも「ポスト地域医療構想」に向けた議論が進められます。

3月26日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の相澤孝夫会長

医師働き方改革、医師の働き方はどうあるべきかを地域医療確保とセットで議論する機会

現在の地域医療構想は「2025年」をゴールに据えていますが、その後も2040年にかけて「高齢者人口そのものは大きく増えないが、支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく。さらにその状況は地域ごとに大きく異なる」ため、こうした状況に対応できる効果的かつ効率的な医療提供体制の構築が求められます。

そこで2040年頃までを見据えた【ポスト地域医療構想】作成論議が近々にスタートします(本年中(2024年中)に意見取りまとめ、関連記事はこちら)。

今後、日病内でもポスト地域医療構想に向けた議論が進められますが、相澤会長は「個人的な見解」と前置きしたうえで、ポスト地域医療構想に向けた考えを明らかにしました。

相澤会長は、ポスト地域医療構想を考えるにあたって、(1)ベッド数の数合わせ論議ではなく、「病院の機能」をどう考え、どう地域医療提供体制を守るかを考えなければならない(2)2次医療圏の在り方を考え直さなければならない—という2点を強調しました。

まず(1)について、現在の地域医療構想には▼病床・病棟の見直し、入院医療の見直しに終始し、「病院機能をどう考えるか」「どう地域医療を守っていくか」という議論が十分に行われていない▼と指摘。データを見れば「地域医療構想の必要病床数(全体及び機能別)」に「病床数の見込み」が近づいているものの、それは「ベッド数」の話であり、地域医療提供体制が良い方向に進んでいるとは考えにくい▼病院の合併・統合が話題になるが、地域医療をどう守っていくのか、地域医療機関の役割分担・連携をどう考えるが必ずしも十分に検討されていない—と指摘。

さらに、「将来の医療提供体制はどうあるべきか、今の医療体制が具体的にどのように変われば、そのあるべき姿に近づくのかという議論をせず、単なる数合わせの議論に終始してはいけない」、「高度急性期や急性期の基準は?などは、少し乱暴に言えば些末な話である」ともコメントし、ポスト地域医療構想の「議論のあり方」を十分に考える(現在の地域医療構想論議とは根本を変えていく)必要があると強く訴えました。

また、(2)の2次医療圏については、「地域医療構想論議(地域医療構想区域と2次医療圏とはほぼイコール)でも、医師確保論議でも、『2次医療圏の設定が正しい』という前提で進んでいるが、大丈夫であろうか?地域の人口構成や交通網が激変し、ICTを利活用した医療情報連携が広まる中で、2次医療圏が現行のままでよいのか?もう一度、しっかり検証する必要があるのではないか」との考えを示しました。

今後、相澤会長の見解も踏まえて、日病内で「ポスト地域医療構想に向けた考え方」を整理。それが、厚生労働省検討会の議論にも披露されます。



また、間もなく「医師働き方改革」がスタートします(関連記事はこちら)。

この点について相澤会長は「現時点では『大学病院からの医師派遣をストップされた』などの声はそれほど多くないが、スタートしてみなければわからない部分もある。今後、実態を日病としても調べていく」としたうえで、「労働時間をどう短縮するか、宿日直許可をどうするかという点ばかりが注目されるが、本来の『医師の働き方はどうあるべきか』『地域医療の質、医療安全をどう守っていくか』という議論をしっかりしなければならない。4月からスタートする医師働き方改革を契機に、こうした議論が進むことに期待したい」との考えも示しています。



なお、今後の「かかりつけ医機能報告」制度論議に資するよう、日病では「報告対象となる医療機関の範囲」「報告内容」に関する提言を武見敬三厚生労働大臣に宛てて提出しています(関連記事はこちら)。この点について相澤会長は「『かかりつけ医機能』という言葉からは『医師の機能』との誤解も生まれる。『医療機関の機能』であることが明確になるような名称を考える必要がある」とも付言しています。



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