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急性期一般1を厳格化し「高齢救急搬送患者に包括対応する新病棟」へ移管させる流れが見える、電カル改修費の実態を調査—日病・相澤会長

2024.1.16.(火)

2024年度診療報酬改定において「7対1看護配置の急性期一般1」などの施設基準を厳しくし、「高齢の救急患者へ包括的に対応する新病棟」への移管を誘導するようだが、本来は「あるべき医療提供体制像を固める→それを実現するための診療報酬を検討する」という順番であろう。今回の見直しで、高齢の救急患者への医療提供が混乱しないか、病院の経営環境が悪化しないかが重要なポイントになる—。

また2024年度改定後に電子カルテなどの院内システム改修が必須となるが、一部に法外なシステム改修費請求がなされている病院もあるようだ。近々にシステム改修費の実態を調査し、必要に応じて国に支援等の要請・提言を行う—。

日本病院会の相澤孝夫会長が1月16日に定例記者会見を開き、こうした考えを強調しました。

このほか、相澤会長は「病院の看護師等確保が極めて困難な状況があり、実態調査を行う」「かかりつけ医機能報告制度で、どういった報告項目とすべきかの日病案を近く作成する」考えも明らかにしています。

1月16日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の相澤孝夫会長

電子カルテ等改修費の実態を調査し、必要に応じて国へ支援を要請

2024年度の次期診療報酬改定論議が中央社会保険医療協議会を中心に進んでおり、1月12日にはこれまでの審議内容の整理案を取りまとめました。そうした中で「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」見直し論議も行われており、1月10日の中医協総会には「見直しの影響」に関する試算結果が示され、例えば▼看護必要度A項目の「救急搬送後の入院」について、A2点獲得期間を現在の「5日」から「1日」に短縮する▼看護必要度該当患者割合を「A3点・C1点以上」18%、「A2点・C1点以上」28%にする▼さらに平均在院日数を現在の「18日以内」から「14日以内」に短縮する—場合には3割くらいが急性期一般1からドロップアウトする可能性がある、など「見直し内容によっては非常に厳しい状況になる」ことなどが明らかにされました。

看護必要度該当割合の見直し試算結果1(中医協総会(1)3 240110)



こうした点について相澤会長は「急性期一般1などの施設基準を厳しくし、新たに設置する『高齢の救急搬送患者に包括的に対応する新病棟』への移管を促す目的があるのではないか」と分析します。

昨年(2023年)12月15日の中医協総会では、厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨課長から高齢の救急搬送患者を受け入れて、急性期状態からの速やかな離脱に向けた十分な医療提供を行うとともに、「早期の退院に向けたリハビリ、栄養管理などの提供」「退院に向けた支援」「適切な意思決定支援」「在宅復帰支援」「退院後の在宅医療を行う医療機関や介護事業所等との連携」といった取り組みを包括的に行う診療報酬上の評価(例えば新たな病棟区分、新たな特定入院料の創設などが考えられる)が提案されました。

この新病棟では、さまざまな病態の高齢救急患者に十分に対応できるよう「10対1以上の看護配置」が求められると予想されます。

高齢の救急搬送患者に包括的な対応を行う新病棟の創設が期待される(中医協総会(1)1 231215)



「急性期一般1(7対1)の施設基準を厳格化する」→「急性期一般1(7対1)を取得できない病院・病棟が多数出てくる」→「新病棟をその受け皿とする」という流れを厚労省は思い描いていると相澤会長は分析するとともに、「高齢の救急搬送患者へ、必要かつ十分な医療提供がなされるのか」「医療現場が混乱しないか」「病院経営の安定性が確保される」が重要なポイントになると指摘しています。

現状では新病棟の具体像(人員配置や点数設定など)は明らかにされておらず、今後の「短冊」論議などを十分に注視していく必要があるでしょう。

さらに相澤会長は、本来は「国民が安心できるような医療提供体制の在り方を固める」→「そうした医療提供体制を整えるために診療報酬でどう手当てするか」を考えるべきである、都も強調。議論の順番を間違えてはいけないとも付言しています。



また、2024年度診療報酬改定の内容が2月上旬に固まり(中医協で答申が行われる)、その後、3月上旬には新点数表や新施設基準などの告示、関連通知の発出などが行われます。医療現場では、そこから「大規模な電子カルテシステムやレセプトコンピュータシステムなどの院内システムの大幅改修」を急ピッチで行うことになります(2024年度改定から施行が「6月実施」となるため、少し医療現場等の負担が軽減されると期待されている)。

この点について一部会員病院から「前回(2022年度)改定時のシステム改修費用に比べ、今回(2024年度)改定時には大幅値上げとするなどの法外な請求・見積もりが出ている」ことが判明しています。

「高額ゆえシステム改修を行わない」という選択肢は取りえず、大幅なコスト増は病院経営にも大きな影響が出ることになることから、相澤会長は「近々に診療報酬改定に伴う院内システム改修費の実態を改めて調査し、その結果を踏まえて必要があれば国に支援を要望・提言する」考えも示しました。システム改修に着手するまでの時間は限られており、相澤会長は「早急に調査項目を固め実態を把握する」考えです。



このほか、相澤会長は次のような点も明らかにしています。

▽病院の看護師不足が厳しくなっており、一部病棟の閉鎖・一部病床停止などが起きている。日病として実態を調査し、必要な対策に向けた検討を進める(関連記事はこちら

▽「かかりつけ医機能報告」制度の稼働に向けた日病幹部での検討が進んでおり、近く「報告内容」に関する日病案を固め、提言を行う(関連記事はこちら



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「長期収載品」と「最も高い後発品」との価格差の一部を選定療養(患者負担)に—中医協総会(5)
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2プログラム医療機器「どのような点を、どのように評価するのか」明確化、医療上必要な医療機器の価格下支えルールを検討―中医協・材料部会
安定供給に注力するメーカーの後発品を「価格下支え」などで評価、多品目少量生産解消を目指した後発品薬価対応も―中医協・薬価専門部会
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地域医療体制確保加算について支払側が廃止を求めるが診療側が猛反発、勤務間インターバルを報酬要件に盛り込むべきか—中医協総会(3)
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地域包括ケア病棟、救急患者の受け入れ・介護サービス等との連携などさらに強化、入院料逓減制は意見割れる—中医協総会(1)
入院時食事療養費の「患者の自己負担」部分引き上げ、中医協でも賛意示される—中医協総会(2)
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「外来管理加算の廃止」の支払側提案に、診療側委員は猛反発、「かかりつけ医機能」の診療報酬評価をどう考えるか—中医協総会(1)
入院時食事療養費、昨今の食材費急騰を踏まえて「患者の自己負担」部分を引き上げへ—社保審・医療保険部会(1)
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「医療人材の賃金アップ」を診療報酬で手当てすべきか、するとして「医療現場の柔軟対応」を可能な仕組みとすべきでは—社保審・医療部会
2024年度診療報酬改定では「医療人材の確保」を重点課題に据える、国保の賦課限度額を106万円に引き上げ—社保審・医療保険部会
2022年度改定での「在宅医療の裾野を広げるための加算」や「リフィル処方箋」など、まだ十分に活用されていない—中医協(1)
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医療従事者の給与アップ財源を「診療報酬引き上げ」に求めるか、「医療機関内の財源配分」(高給職種→低い給与職種)に求めるか—中医協総会
深刻化するドラッグ・ラグ/ロスの解消や小児用医薬品開発に向け、専門家の研究結果も踏まえた薬価上の対応を検討―中医協・薬価専門部会
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費用対効果評価に基づく価格調整をより広範囲にすべきか、介護費用削減効果を医薬品・医療機器の価格に反映させるべきか―中医協
コロナ診療報酬特例、コロナ感染拡大の状況・医療現場の効率的診療状況踏まえて「点数を引き下げて継続する」方向で調整—中医協総会
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診療報酬改定のない年の薬価改定(中間年改定)、医薬品供給やドラッグラグ・ロスへの影響も見ながら在り方を検討―中医協・薬価専門部会
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総合入院体制加算から急性期充実体制へのシフトで地域医療への影響は?加算取得病院の地域差をどう考えるか―入院・外来医療分科会(1)
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訪問看護の24時間対応推進には「負担軽減」策が必須!「頻回な訪問看護」提供への工夫を!—中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
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感染対策向上加算の要件である合同カンファレンス、介護施設等の参加も求めてはどうか—中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
要介護高齢者の急性期入院医療、介護・リハ体制が充実した地域包括ケア病棟等中心に提供すべきでは—中医協・介護給付費分科会の意見交換
2024年度の診療報酬に向け、まず第8次医療計画・医師働き方改革・医療DXに関する意見交換を今春より実施—中医協総会

2022年度改定での「在宅医療の裾野を広げるための加算」や「リフィル処方箋」など、まだ十分に活用されていない—中医協(1)