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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

DPC標準病院、「データ数の少ない病院」を切り分け基礎係数設定、適切に急性期医療行うDPC病院で収益向上見込まれる—中医協総会(2)

2023.12.25.(月)

DPCについて「1か月当たりデータ数が90未満の病院」では基礎係数を低く設定するなどの見直しを2024年度診療報酬改定で行う—。

ICU(特定集中治療室管理料)において患者の重症度評価を、「特定集中治療室用の重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)」と「SOFAスコア」を組み合わせて行う。HCU(ハイケアユニット)用の看護必要度について「心電図モニタ管理の削除」などの見直しを行う—。

療養病棟における患者の重症度評価指標である「医療区分」について、「疾患・状態」と「処置」とを切り分ける—。

12月22日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こうした見直し内容の「試算」を行っていく方向が議論されました。試算結果そのものは今後を待つ必要がありますが、「項目見直し案が具体的に示された」と捉えることができます。今から改定対応に向けた準備を進めることができまう。

なお、同日には「遺伝学的検査や人口腎臓などの技術的事項」に関する議論も行われており、別稿で報じます。

DPCで「データ数の少ない病院」を切り分けて基礎係数を設定、新点数体系の是非は・・

DPCについては、例えば▼適切なデータ提出を機能評価係数IIから「DPC要件」に移行する▼データ数の少ない病院(1か月あたり90未満)は、2024年度には低い基礎係数とし、将来はDPC制度からの退出を促す▼効率性係数の計算方法見直し、地域医療係数の新項目追加などを行う▼「入院期間Iで投下コスト回収できる」新たな点数設定方式を検討する—などの見直し方向が議論されてきました。

12月22日の中医協総会では、厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨課長から、こうした見直しを行った場合に医療機関別係数がどのように変化するのかの大まかな試算結果が示されました。DPC病院の入院収益は「包括部分」+「出来高部分」(手術など)で構成され、このうち「包括部分」は「DPC点数(全病院一律の1日当たり点数)×在院日数×医療機関別係数」で計算されるため、「医療機関別係数が高くなるのか、低くなるのか」で病院の経営状況が大きく変化します。このため中医協委員、とりわけ診療側委員は「医療機関別係数への影響を見てからDPC見直し案の是非を判断したい」と強く要望していたためです(関連記事はこちら)。

【基礎係数+機能評価係数II双方の見直しを行った場合の影響】
▽見直しにより「2%を超える収益減」が見込まれる病院が66施設あり、このうち64施設は「1か月あたりデータ数が90未満」の病院である
▽見直しにより「2%を超える収益増」が見込まれる病院が1施設ある

DPC係数見直し試算1(中医協総会(2)1 231222)



【基礎係数のみの見直しを行った場合の影響】
▽見直しにより「2%を超える収益減」が見込まれる病院が79施設ある
▽見直しにより「2%を超える収益増」が見込まれる病院はない

DPC係数見直し試算2(中医協総会(2)2 231222)



【機能評価係数IIのみの見直しを行った場合の影響】
▽見直しにより「2%を超える収益減」が見込まれる病院が5施設あり、このうち3施設は「1か月あたりデータ数が90未満」の病院である
▽見直しにより「2%を超える収益増」が見込まれる病院が1施設ある

DPC係数見直し試算3(中医協総会(2)3 231222)



この試算結果から「基礎係数の見直し」、つまり「1か月あたりデータ数が90未満となる病院への低い基礎係数設定」が病院経営に大きな影響を及ぼすことが分かります。なお、収益が2%を超えて変動するDPC病院には、改定年度の1年間に限り「激変緩和措置」(収益が下がりすぎる病院では係数をプラスする、収益が上がりすぎる病院では係数をマイナスする激変緩和係数)が設けられます。

このため診療側委員からは「基礎係数の見直し(データ数90未満病院の低い係数設定)で、標準病院群(旧III群)の1割が2%以上の収益減となり、影響が非常に大きい。『90日で切る』根拠はまだ曖昧であり、『1か月あたりデータ数が90未満』病院の特性(他の病院とどういった違いがあるのか)を見て慎重に検討すべき」(長島公之委員:日本医師会常任理事)、「データ数が90未満の病院では大きく基礎係数が下がり、2%を超える収益減が見込まれる。『90で切る』根拠として、『複雑性指数・係数が不当に高くなる』点があげられているが、もう少し影響が小さくなるような基準値(基礎係数が低くなる病院が少なくなるような基準値)を検討すべき」(太田圭洋委員:日本医療法人協会副会長)といった声が出ています。

これに対し、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「データ数の少ない病院における低い基礎係数設定は必ず行うべき」と進言しています。

この松本委員コメントの背景には、「DPC点数や係数は全DPC病院のデータをもとに計算されるために、不適切に医療資源投入量の少ない病院がDPC制度に参加すると、適切な診療を行ってる病院の収益までも下がってしまう」という点があります。

例えば基礎係数は、少し複雑ですが[各病院群の包括範囲出来高点数の平均値]×[改定率]÷[各病院群のDPC点数表に基づく包括点数の平均値]として計算されます。実際の医療資源投入量が多ければ分子が大きくなり、基礎係数は高くなります(=当該病院群の収益が上がる)。

この点、「1か月当たりデータ数が90未満の病院」は診療密度が低い(「医療資源投入量が少ない」と考えられる)ため、こうした病院が「標準病院群(III)の基礎係数を下げる」(=病院の収益を下げる)方向に寄与してしまっているのです。

実際に、「1か月当たりデータ数が90未満の病院」と「それ以外の病院」とで分けて基礎係数を計算すると、前者は「0.9985」、後者は「1.0401」と大きく異なることが分かりました(同じ診療行為を行っても基礎係数の違いだけで4.2%の収益の差が出る計算)。

誤解を恐れずに厳しい言い方をすると、「『1か月当たりデータ数が90未満の病院』がDPCに参加していることで、他のDPC病院(最も多い標準病院群)は『低い収益』に甘んじよと余儀なくされていた」ことになります。こうした点をどう考えていくかが、今後の議論で非常に重要なポイントになるでしょう。



ところで、2024年度のDPC改革においては上述のとおり「入院期間Iで投下コスト回収できる」新たな点数設定方式が検討されています。

眞鍋医療課長は「在院日数のバラツキが少なく、短期間で退院が可能となる手術等(短期滞在手術等)に相当する診断群分類には『D方式』(いわば入院初日に多くの診療報酬を支払う方式)が適用されている。しかし▼平均在院日数が一定以上である(例えば1週間超)▼在院日数のバラツキが少ない▼一定程度標準化が進んでいる—診断群分類が存在し、これらを『新方式』(入院後、短期間で多くの診療報酬を支払う方式)で評価してはどうか」と新方式導入の背景を説明しました。

DPC新計算方式の対象(中医協総会(2)4 231222)



しかし、診療側の長島委員は「▼平均在院日数が一定以上である(例えば1週間超)▼在院日数のバラツキが少ない▼一定程度標準化が進んでいる—診断群分類の評価も、現行の『D方式』で良いのではないか。細分化による技術的な手間も増える。なぜ新方式が必要であるのか、明確な説明がほしい。また該当診断群はどの程度となるのかも明らかにすべき」と要望しています。

新方式は「投下コストを回収するために、不要な長期入院が生じている」点を踏まえ、早期の投下コスト回収を可能とするために「入院後早期の点数を高く設定する」ものです。この点、長島委員と同じく「D方式でどのような不都合があるのか不明である。『入院期間が一定以上の診断群分類でD方式を導入すると粗診粗療を招く』と考える識者もおられるようだが、それはDPCの退院患者調査で確認・防止可能であり、新方式導入の理由になっていないのではないか」と指摘する識者も少なくありません。



中医協では、こうした委員の声も踏まえながら、DPC制度改革案を詰めていきます。

ICUでSOFAスコアを導入、HCUで看護必要度IIを導入

またICU、HCUについては、次のような見直しを行うとの前提に立った試算が行われます(関連記事はこちら)。

【ICU、救命救急2・4】(看護必要度+SOFAスコアで患者を評価する)
▽ICU用の看護必要度で次の見直しを行う
▼「輸液ポンプの管理」を削除する(重症患者割合がICU1・2で9.1%減、ICU3・4で13.5%減少する)
▼「動脈圧測定(動脈ライン)」を現在の「A2点」から「A1点」に引き下げる(同ICU1・2で8.3%減、ICU3・4で10.9%減)
▼看護必要度該当患者(重症患者)の判断基準値を現在の「A3点以上」から「A2点以上」に緩和する(同ICU1・2で8.1%増、ICU3・4で11.7%増)

▽SOFAスコア
▼ICU1・2:「入室日のSOFAスコア5点以上の患者割合」が一定以上であることする(例えば10%・12.5%・15%以上が考えられる)
▼ICU3・4:「入室日のSOFAスコア3点以上の患者割合」が一定以上であることとする(例えば10%・12.5%・15%以上が考えられる)

ICU看護必要度見直し・SOFA導入案(中医協総会(2)5 231222)



ICUでは「看護必要度の該当患者割合●%以上かつSOFAスコア◆点以上の患者割合◇%以上」という施設基準が設けられることになりそうです。



【HCU】
以下の看護必要度見直しを行う
▽「創傷処置」について、評価対象を「一般病棟用の看護必要度IIの評価対象行為が実施されている場合」にし、「重度褥瘡処置のみ実施」は評価対象外とする(重症患者割合がHCU1で1.2%減、HCU2で1.4%減)

▽「呼吸ケア」について、評価対象を「一般病棟用の看護必要度IIの評価対象行為が実施されている場合」にする(同HCU1で6.9%減、HCU2で6.0%減)

▽「点滴ライン同時3本以上の管理」について、一般病棟用の看護必要度の見直しを全て実施する(同HCU1で0.2%減、HCU2で0.5%増)

▽「心電図モニタ管理」「輸液ポンプ管理」を削除し、該当基準を「A3点以上かつB4点以上」から「A1点以上」に変更する(同HCU1で4.7%増、HCU2で9.7%増)

▽看護必要度該当患者(重症患者)を、下記の「(1)●%以上、(2)◆%以上」とする
(1)蘇生術の施行、中心静脈圧測定(静脈ライン)、人工呼吸器の装着、輸血や血液製剤の管理、肺動脈圧測定(スワンガンツカテーテル)、特殊な治療法等のいずれかで基準に該当する患者割合
(2)蘇生術の施行、呼吸ケア、注射薬剤3種類以上の管理、動脈圧測定(動脈ライン)、シリンジポンプの管理、中心静脈圧測定(静脈ライン)、人工呼吸器の装着、輸血や血液製剤の管理、肺動脈圧測定(スワンガンツカテーテル)、特殊な治療法等全体でいずれかで基準に該当する患者割合

▽看護必要度II(レセプト電算処理システムコードに基づく評価)の導入

HCU看護必要度見直し案(中医協総会(2)6 231222)



これまで時間をかけて議論してきた見直し内容であり、支払側の松本委員は内容・試算実施に賛同していますが、診療側の長島委員からは「『ユニット入室当日のみのSOFAスコア評価』は日本のICUの実態に合わないのではないか。またユニットの多くはベッド数が少なく、少数の患者が回復、退室するだけで大きく該当患者割合(重症患者割合)が変化する点に配慮すべきである」との注文がついています。

療養病棟、医療区分を「疾患・状態」と「処置」とに切り分けて評価

また、療養病棟についてはこれまでに、患者の重症度評価指標である「医療区分」を「疾患・状態」と「処置」とを切り分ける方向が固められており、眞鍋医療からこの方向を踏まえた試算結果が示されました。一定のバラつきがありますが、医療資源投入量が「疾患・状態で医療区分2・3に該当する患者<処置で医療区分2・3に該当する患者」であることが分かり、点数設定もこれを踏まえたものにみなされる見込みです。

療養病棟の医療区分見直し試算1(中医協総会(2)7 231222)

療養病棟の医療区分見直し試算2(中医協総会(2)8 231222)

療養病棟の医療区分見直し試算3(中医協総会(2)9 231222)

療養病棟の医療区分見直し試算4(中医協総会(2)10 231222)

療養病棟の医療区分見直し試算5(中医協総会(2)11 231222)

療養病棟の医療区分見直し試算6(中医協総会(2)12 231222)



支払側の松本委員は「疾患・状態と処置とで大きく医療資源投入量の分布が異なることが確認できた。入院料にもメリハリをつけるべき」と進言しましたが、診療側の池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)は「いまさら何をと思われるかもしれないが、医療資源投入量だけを見た切り分け検討は妥当なのだろうかと感じている。医療資源に現れない医師の指示や看護の手間などを十分に勘案すべきではないか」との考えを示しました。この点、「現在の医療区分を切り分けるだけであり、疾患・状態や処置の内容を見直すものではない」と眞鍋医療課長は理解を求めています。

今後、こうした意見・指摘内容も踏まえながら試算を行い、その試算結果もベースに「具体的な改定内容」を詰めていきます。



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外来医療の機能分化が2024年度診療報酬改定でも重要テーマ、生活習慣病管理の取得・算定推進に向けた手立ては―入院・外来医療分科会(3)
入退院支援加算について「入院料別の施設基準・算定要件」など検討しては、緊急入院患者の退院支援が重要課題―入院・外来医療分科会(2)
がん化学療法の外来移行、「栄養指導」や「仕事と治療との両立支援」などと一体的・総合的に進めよ―入院・外来医療分科会(1)
高額な医薬品・医療機器など、より迅速かつ適切に費用対効果評価を行える仕組みを目指せ、評価人材の育成も急務―中医協
新薬創出等加算の企業要件には「相当の合理性」あり、ドラッグ・ラグ/ロスで日本国民が被る不利益をまず明確化せよ―中医協・薬価専門部会
在宅医療ニーズの急増に備え「在宅医療の質・量双方の充実」が継続課題!訪問看護師の心身負担増への対応も重要課題—中医協総会
入院医療における「身体拘束の縮小・廃止」のためには「病院長の意識・決断」が非常に重要―入院・外来医療分科会(3)
地域包括ケア病棟、誤嚥性肺炎等の直接入棟患者に「早期から適切なリハビリ」実施すべき―入院・外来医療分科会(2)
総合入院体制加算から急性期充実体制へのシフトで地域医療への影響は?加算取得病院の地域差をどう考えるか―入院・外来医療分科会(1)
「特許期間中の薬価を維持する」仕組み導入などで、日本の医薬品市場の魅力向上を図るべき―中医協・薬価専門部会
乳がん再発リスクなどを検出するプログラム医療機器、メーカーの体制など整い2023年9月から保険適用―中医協総会(2)
高齢患者の急性期入院、入院後のトリアージにより、下り搬送も含めた「適切な病棟での対応」を促進してはどうか—中医協総会(1)
2024年度の薬価・材料価格制度改革論議始まる、医薬品に関する有識者検討会報告書は「あくまで参考診療」—中医協総会(3)
マイナンバーカードの保険証利用が進むほどメリットを実感する者が増えていくため、利用体制整備が最重要—中医協総会(2)
かかりつけ医機能は「地域の医療機関が連携して果たす」べきもの、診療報酬による評価でもこの点を踏まえよ—中医協総会(1)
2024年度の診療報酬・介護報酬・障害福祉等サービス報酬の同時改定で「医療・介護・障害者福祉の連携強化」目指せ—中医協総会(2)
医師働き方改革サポートする【地域医療体制確保加算】取得病院で、勤務医負担がわずかだが増加している—中医協総会(1)
患者・一般国民の多くはオンライン診療よりも対面診療を希望、かかりつけ医機能評価する診療報酬の取得は低調―入院・外来医療分科会(5)
医師働き方改革のポイントは「薬剤師へのタスク・シフト」、薬剤師確保に向けた診療報酬でのサポートを―入院・外来医療分科会(4)
地域包括ケア病棟で救急患者対応相当程度進む、回復期リハビリ病棟で重症患者受け入れなど進む―入院・外来医療分科会(3)
スーパーICU評価の【重症患者対応体制強化加算】、「看護配置に含めない看護師2名以上配置」等が大きなハードル―入院・外来医療分科会(2)
急性期一般1で「病床利用率が下がり、在院日数が延伸し、重症患者割合が下がっている」点をどう考えるべきか―入院・外来医療分科会(1)

総合入院体制加算⇒急性期充実体制加算シフトで産科医療等に悪影響?僻地での訪問看護+オンライン診療を推進!—中医協総会
DPC病院は「DPC制度の正しい理解」が極めて重要、制度の周知徹底と合わせ、違反時の「退出勧告」などの対応検討を—中医協総会
2024年度の費用対効果制度改革に向けた論議スタート、まずは現行制度の課題を抽出―中医協
電子カルテ標準化や医療機関のサイバーセキュリティ対策等の医療DX、診療報酬でどうサポートするか—中医協総会

日常診療・介護の中で「人生の最終段階に受けたい・受けたくない医療・介護」の意思決定支援進めよ!—中医協・介護給付費分科会の意見交換(2)
訪問看護の24時間対応推進には「負担軽減」策が必須!「頻回な訪問看護」提供への工夫を!—中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
急性期入院医療でも「身体拘束ゼロ」を目指すべきで、認知症対応力向上や情報連携推進が必須要素—中医協・介護給付費分科会の意見交換(2)
感染対策向上加算の要件である合同カンファレンス、介護施設等の参加も求めてはどうか—中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
要介護高齢者の急性期入院医療、介護・リハ体制が充実した地域包括ケア病棟等中心に提供すべきでは—中医協・介護給付費分科会の意見交換
2024年度の診療報酬に向け、まず第8次医療計画・医師働き方改革・医療DXに関する意見交換を今春より実施—中医協総会

2022年度改定での「在宅医療の裾野を広げるための加算」や「リフィル処方箋」など、まだ十分に活用されていない—中医協(1)