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GemMed塾 大学病院本院群を取り巻く現況を解説 ~昨今の特定病院群・標準病院群の経営努力とは~

あえて長期収載医薬品選択した場合の患者特別負担、診療側は「小さな負担」を、支払側は「大きな負担」を提唱—中医協総会(2)

2023.12.15.(金)

「長期収載品と後発品との価格差の一部」を選定療養(患者負担)にする議論が進み、例えば「価格差の2分の1以下」を選定療養(患者負担)としてはどうかとの考えが示されているが、「患者の負担増、混乱を最小限に抑えるために小さな負担(例えば価格差の4分の1)とする」べきか、「後発品使用を促すために大きな負担(例えば価格差の2分の1)とする」べきか—。

12月15日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こうした議論が行われました。詳細は、今後の「2024年度予算案」の編成過程で決定されます(同日の「高齢の救急搬送患者への包括的な対応の評価」に関する記事はこちら)。

なお、同日にはほかに「訪問診療や訪問看護」「入退院支援」「オンライン診療」なども議題に上がっており、これらは別稿で報じます。

医療上の必要性がある場合、後発品が選択できない場合などは、現行通りの3割負担に

Gem Medで報じているとおり、長期収載品医薬品について「後発品との差額の一部を患者自己負担(選定療養)とする」議論が進められています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

「同じ成分、効能効果で価格の安い後発品を使用してほしい。後発品を使用できる環境が整えられているにもかかわらず、あえて高額な長期収載品(先発品)を選択する場合には、差額の一部を患者自身に負担してもらう」という考え方に立ち、基本的な枠組みを社会保障審議会・医療保険部会で、詳細を中医協で検討しています。

長期収載品(先発品)と後発品との価格差の一部を選定療養とする仕組みの大きなイメージ(社保審・医療保険部会 231129)



12月8日の医療保険部会では、厚生労働省保険局医療課保険医療企画調査室の荻原和宏室長から、これまでの議論を踏まえた、例えば次のような考え方が示され、概ね了承されました(関連記事はこちら)。

(1)医療上の必要性があると認められる場合(例:医療上の必要性により医師が銘柄名処方(後発品への変更不可)をした場合)は選定療養とせず、保険給付の対象とする
▼患者希望で「銘柄名処方されたが長期収載品を処方等した」「一般名処方で長期収載品を選択した」場合は選定療養とする
▼「医療上の必要性があると認められる場合」が処方・調剤の段階で明確になるような仕組みを整理する(例えば「選定療養とする」ケースのリスト化など)
▼薬局に後発医薬品の在庫が無いなど「後発医薬品を提供することが困難な場合」は、患者が後発医薬品を選択できないことから保険給付の対象とする

選定療養の適用場面の整理(社保審・医療保険部会(1)1 231208)



(2)対象となる長期収載品は、「患者が後発品を選択し購入できる」ことが大前提となるため、▼後発品上市後5年を経過している▼後発品への置換率が50%に達している—ものとする

選定療養の対象となる長期収載医薬品の範囲(社保審・医療保険部会(1)2 231208)



(3)の選定療養の範囲については「長期収載品と後発品(最高価格)との価格差の2分の1以下」とする



12月15日の中医協でも、改めてこの点が議論されました。

まず(1)の適用場面(どのような場合に選定療養(患者特別負担の発生)とし、どのような場合に現行通りの保険給付とするのか)については、上記案が概ね了承されましたが、「医療上の必要性の有無は処方箋で簡単に確認できるようにしなければならない(複雑な確認の仕組みは薬局業務に支障が出る)。出荷調整等で在庫がなく、長期収載品を選択すべきか否かの判断は薬剤師に委ねてほしい」(診療側の森昌平委員:日本薬剤師会副会長)、「同じ処方箋であるにもかかわらず、薬局の在庫によりA薬局では選定療養(患者特別負担の発生)、B薬局では保険給付となれば混乱しないか。分かりやすい仕組みを現場と協議して構築すべき」(診療側の池端幸彦委員:日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)、「医療上の必要性は処方医が判断することになるが、レセプトのその理由を記載し、後に確認・検証できるようにすべき。また薬局の後発品在庫が一時的に不足する場合には『薬剤師から処方医へ連絡し、別の後発品へ変更する』などの対応を原則とすべき」(支払側の松本真人委員:健康保険組合連合会理事)といった注文がついています。

上記のような「大枠」は固まったと言え、今後、「どういった場面が考えられるのか」を想定しながら、具体的な制度設計を考えていくことになります。



また(2)の対象となる長期収載品については、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)から「後発品が上市されてから5年が経過したとしても、置き換え率が50%に満たないような場合には、患者が『後発品を選択できる』環境が整っているとは言えないのではないか。慎重に判断する必要がある」との考えが示されました。上述のように、新たな仕組みは「同じ成分、効能効果で価格の安い後発品を使用できるにもかかわらず、あえて高額な長期収載品(先発品)を選択する場合には、差額の一部を患者自身に負担してもらう」という趣旨である点に照らせば、長島委員の指摘するように「後発品を選択できる環境が整っていない」場面にまで新たな仕組みを導入するべきではないとも思われます。

ただし、荻原保険医療企画調査室長は「後発品上市後5年が経過していても、置換率が極めて低い場合(市場に後発医薬品がほぼ存在しない場合)は対象外とする」との考えも既に示しており、長島委員の指摘は「すでに織り込み済」と考えることができそうです。

患者の特別負担、診療側は「小さく」すべき、支払側は「大きくすべき」と提案

また(3)の「どの程度を患者特別負担とするか」については、診療側委員と支払側委員とで考え方に違いがあります。

まず、「500円の長期収載品」と「250円の後発品」とを例にとって、3割負担の場合の患者負担額の変化を確認しておきましょう(関連記事はこちら)。

【現行(Xとする)】(3割負担)
▽後発品:75円(250円×0.3)
▽長期収載品:150円(500円×0.3、後発品選択よりも75円高い負担)

【差額の2分の1を選定療養とする場合】
▽後発品:75円(250円×0.3、変化なし)
▽長期収載品:250円(Xよりも100円増、後発品選択の場合よりも175円高い負担)
→▼選定療養部分:137.5円([500円(長期収載品価格)-250円(後発品価格)]×2分の1×1.1(消費税))
→▼3割負担部分:112.5円(500円(長期収載品価格)から125円(選定療養部分)を除外した375円の3割、あるいは「後発品価格(250円)」+「価格差(500円-250円)から選定療養部分(125円)を除外した部分(このケースでは125円)」の合計の3割)

編集部で「価格差の2分の1を選定療養とした場合」の患者負担イメージ図を作成



【差額の3分の1を選定療養とする場合】
▽後発品:75円(250円×0.3、変化なし)
▽長期収載品:217円(Xよりも67円増、後発品選択の場合よりも142円高い負担)
→▼選定療養部分:92円([500円(長期収載品価格)-250円(後発品価格)]×3分の1×1.1(消費税))
→▼3割負担部分:125円(500円(長期収載品価格)から83円(選定療養部分)を除外した417円の3割、あるいは「後発品価格(250円)」+「価格差(500円-250円)から選定療養部分(83円)を除外した部分(このケースでは167円)」の合計の3割)

【差額の4分の1を選定療養とする場合】
▽後発品:75円(250円×0.3、変化なし)
▽長期収載品:200円(Xよりも50円増、後発品選択の場合よりも125円高い負担)
→▼選定療養部分:68.75円([500円(長期収載品価格)-250円(後発品価格)]×4分の1×1.1(消費税))
→▼3割負担部分:131.25円(500円(長期収載品価格)から62.5円(選定療養部分)を除外した437.5円の3割、あるいは「後発品価格(250円)」+「価格差(500円-250円)から選定療養部分(62.5円)を除外した部分(このケースでは187.5円)」の合計の3割)

選定療養を導入した場合の、患者負担への影響(機械的試算)(社保審・医療保険部会(1)3 231208)



診療側の長島委員、森委員は、「新たな仕組みであり、患者の自己負担増は当初は小さく抑えるべき」こと、「3割負担のケース(現役世代、75歳以上でも高所得者)に比べて、1割負担(75歳以上で低所得者)のケースのほうが、新たな仕組みによる患者負担増の影響が大きい」こと、「長期収載品と後発品との価格差が大きなケースでは、新たな仕組みによる患者負担増の影響が大きい」こと、「使用期間が長くなれば、患者負担増も大きくなる」ことなどを踏まえ、「当初は『価格差の4分の1』程度を選定療養とし、影響を確認すべき」との考えを述べました。

一方、支払側の松本委員は、「患者が『後発品を選択しよう』と考える程度のインセンティブとならなければならず、『価格差の2分の1』とすべき」と提案しています。

両側の意見ともに頷ける部分が大きく、また選定療養をどの程度とするか、裏返せば「保険給付範囲をどの程度とするか」は国費と密接に関係する(保険給付費の4分の1は国費である)ことから、この点については、今後の「2024年度予算案」の編成過程で決定することになりました。選定療養の導入時期も併せて検討されます。



また、この点に関連して「▼長期収載品の薬価を超えて、選定療養に係る負担を徴収することを認めるのか▼選定療養に係る負担を徴収しないことや、標準とする水準より低い額で徴収することを認めるのか—という論点も提示しました。

上記「2分の1」のケースを例にとると、次のような事例です。
▽前者について、薬局の判断で「さらに50円の上乗せ」を認める場合
→長期収載品:300円(選定療養部分137.5円+50円、3割負担部分112.5円(上記と変わらず))

▽後者について、薬局の判断で「50円の値引き」を認める場合
→長期収載品:200円(選定療養部分137.5円-50円、3割負担部分112.5円(上記と変わらず)



こうした「上乗せ・値引き」を認めるか否かについては、「制度をはじめから複雑にすれば患者や医療現場の影響がさらに大きくなる。当初は避けるべき」との考えが診療側の長島委員や森委員から示されており、当初は導入が見送られる見込みです。



なお新たな仕組みの導入に関し、診療側・支払側ともに「国民や医療現場への丁寧な周知が極めて重要である」という点は一致しています。なぜ、こうした新たな仕組みが必要なのか、新たな仕組みで患者の負担や医療現場の事務がどう変化するのかを十分な時間をとって説明・広報することが重要でしょう。

このほか、「後発品供給不安が長引く中で、後発品供給体制に過重な負担をかけるべきではない。患者負担増も考慮し、当初は慎重にスタートすべき」(長島委員)、「薬局では患者への説明に大きな負担も生じる。事前の十分な広報が必要であり、余裕を持ったスタート(2024年6月よりも遅い導入)とすべき」(森委員)、「この仕組みの導入で、かえって『後発品のない先発品』の処方等が増えないか、導入後の状況を注視していくべき」(松本委員)といった指摘もなされています。詳細な制度設計に当たり、こうした意見も参考にする必要があります。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

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地域包括ケア病棟で救急患者対応相当程度進む、回復期リハビリ病棟で重症患者受け入れなど進む―入院・外来医療分科会(3)
スーパーICU評価の【重症患者対応体制強化加算】、「看護配置に含めない看護師2名以上配置」等が大きなハードル―入院・外来医療分科会(2)
急性期一般1で「病床利用率が下がり、在院日数が延伸し、重症患者割合が下がっている」点をどう考えるべきか―入院・外来医療分科会(1)

総合入院体制加算⇒急性期充実体制加算シフトで産科医療等に悪影響?僻地での訪問看護+オンライン診療を推進!—中医協総会
DPC病院は「DPC制度の正しい理解」が極めて重要、制度の周知徹底と合わせ、違反時の「退出勧告」などの対応検討を—中医協総会
2024年度の費用対効果制度改革に向けた論議スタート、まずは現行制度の課題を抽出―中医協
電子カルテ標準化や医療機関のサイバーセキュリティ対策等の医療DX、診療報酬でどうサポートするか—中医協総会

日常診療・介護の中で「人生の最終段階に受けたい・受けたくない医療・介護」の意思決定支援進めよ!—中医協・介護給付費分科会の意見交換(2)
訪問看護の24時間対応推進には「負担軽減」策が必須!「頻回な訪問看護」提供への工夫を!—中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
急性期入院医療でも「身体拘束ゼロ」を目指すべきで、認知症対応力向上や情報連携推進が必須要素—中医協・介護給付費分科会の意見交換(2)
感染対策向上加算の要件である合同カンファレンス、介護施設等の参加も求めてはどうか—中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
要介護高齢者の急性期入院医療、介護・リハ体制が充実した地域包括ケア病棟等中心に提供すべきでは—中医協・介護給付費分科会の意見交換
2024年度の診療報酬に向け、まず第8次医療計画・医師働き方改革・医療DXに関する意見交換を今春より実施—中医協総会

2022年度改定での「在宅医療の裾野を広げるための加算」や「リフィル処方箋」など、まだ十分に活用されていない—中医協(1)