【2024年度診療報酬改定総点検3】特定疾患療養管理料・外来医療管理加算などの整理検討、地域包括診療料で認知症対応力強化等目指す
2024.1.3.(水)
Gem Medでは、2022年度の次期診療報酬改定に向けて、これまでの中医協論議についてポイントを絞ってお浚いしています(第1回は入院医療の、第2回は医療従事者の働き方改革等の見直しポイントを整理)。今回は「かかりつけ医機能」への診療報酬によるサポートに焦点を合わせます。
地域包括診療料など、主治医・ケアマネ連携、認知症対応力の強化を目指す
外来医療についても、入院医療と同様に「まず、かかりつけの医療機関を受診し、診断、治療を受ける」→「当該医師が『専門的な、高度な診療が必要である』と判断した場合には、高度・専門的な医療を行う医療機関(特定機能病院、地域医療支援病院、紹介受診重点医療機関など)を紹介する」→「高度・専門的な医療を終え、状態が安定したきたと医師が判断した場合には、地域のかかりつけの医療機関に逆紹介する」という流れ(機能分化・連携の強化)の推進が図られてきています。さらに、「かかりつけ医機能を持つ医療機関」には、地域包括ケアシステムの中で「日常的な健康管理」「在宅医療提供」などの広範な役割を果たすことも期待されています。
2024年度の次期診療報酬改定では、こうした「かかりつけ医機能」の診療報酬での評価も重要テーマの1つとなり、例えば次のような論点が浮上しています。なお、「かかりつけの医療機関」については、2023年の医療法改正で、▼医療機能情報提供制度の刷新(来年(2024年)4月施行)▼かかりつけ医機能報告の創設(再来年(2025年)4月施行)▼慢性疾患患者等に対する書面交付・説明の努力義務化(再来年(2025年)4月施行)—を行うことになり、現在、具体的な報告制度創設に向けた議論が進められています(関連記事はこちらとこちら)。このため2024年度診療報酬改定では「改正医療法の一部のみを先取り」する対応が行われます。
(1)地域包括診療料・加算や機能強化加算について「主治医と介護支援専門員双方向のコミュニケーションを促す」「認知症対応力向上を図る」ことをどう考えるか
(2)医療DXの推進等を踏まえ、かかりつけの患者の診療情報を一元的に医療情報プラットフォームを活用して管理することも想定され状況や、今後、高齢・認知症の患者が増加することなどを踏まえ、「かかりつけ医機能をより強化するための診療報酬上の評価」をどのように考えるか
(3)改正医療法に基づき「書面を用いた説明」がかかりつけ医機能の1つとして努力義務化される(上述)点等を踏まえ、診療報酬で、どのように「文書交付(電磁的なものも含む)による患者への適切な説明」を推進していくか
(4)「特定疾患療養管理料」について、▼生活習慣病管理料と異なり「詳細な療養計画書の作成」が求められていない点▼地域包括診療料等の取得医療機関と比べて「かかりつけ医機能が高い」とは言えない点—等を踏まえ、「特定疾患療養管理料」の要件など、生活習慣病に係る診療報酬上の療養指導の評価の在り方をどう考えていくか
(5)かかりつけ医機能を評価する診療報酬(地域包括診療加算、特定疾患療養管理料、外来管理加算、生活習慣病管理料など)の併算定等をどう考えていくか
まず(1)は、かかりつけ医機能を評価する【地域包括診療料】や【地域包括診療加算】について、「主治医とケアマネジャーとの連携強化を目指し、医師がサービス担当者会議(介護保険利用者にどのようなサービスを提供するかが望ましいかを多職種で協議する会議)に出席することなどを要件化する」、「認知症対応力向上研修受講医の配置を要件化する」といった対応が浮上しています。
中身のある医療・介護連携、認知症対応力強化の方向には診療側・支払側ともに賛同していますが、診療側委員は「中身のある医療・介護連携は『サービス担当者会議への出席』以外の手段(主治医からケアマネジャーへの適切な情報共有、ケアマネからの相談に主治医が応じるなど)でも十分に可能である」、「認知症対応力向上は重要だが、裾野を広げる段階であり、地域包括診療料などの要件強化は好ましくない」との考えを述べています。
今後、「サービス担当者会議への出席」「認知症対応力向上研修受講」を1例として、「中身のある医療・介護連携」「認知症対応力強化」を進める実効的な要件を探っていくことになるでしょう。
また(2)では、オンライン資格確認等システムや電子カルテ情報共有サービスなどの医療DXの進展を踏まえて「各種文書による情報共有などの診療報酬上の要件を、オンラインによる共有でも可能としてはどうか」という考え方が浮上しています。この方向には、診療側・支払側双方が賛同しています。
他方、(3)は改正医療法で努力義務化される「慢性疾患患者等に対する書面交付」(再来年(2025年)4月施行)に向けて、診療報酬で「先取りの評価」を行うべきか、という論点です。
例えば【生活習慣病管理料】では、すでに療養計画書交付が要件(義務)となっており、そうした点も参考に「かかりつけ医機能を持つ診療報酬において、患者からの求めに応じて書面交付を行う」ことを義務化してはどうかといった考えが浮上しています。
支払側はこの考えに賛同していますが、診療側は「改正医療法でも『努力義務』にとどまっており、診療報酬での義務化は好ましくない」と難色を示しています。今後、さらに調整論議が進められます。
特定疾患療養管理料や外来医療管理加算など、生活習慣病管理を評価する報酬を再編統合
また、(4)(5)は「特定疾患療養管理料の要件」などをどう考えていくかという論点です。支払側委員は「【生活習慣病管理料】では、医療技術の進展を踏まえた要件アップデートなどが行われてきている。生活習慣病治療において算定件数が多い【特定疾患療養管理料】においても医療技術の進展を踏まえた、要件のアップデートを行う、あるいは生活習慣病を【特定疾患療養管理料管理料】の算定対象から除外し、『生活習慣病治療の際は、原則として【生活習慣病管理料】を算定する』というルールを設けてはどうか。現状は【生活習慣病管理料】の要件が厳しいため、代わりに【特定疾患療養管理料】を算定しているように見える」と指摘。
一方、診療側委員は「【特定疾患療養管理料】は様々な疾患の重症化を防ぐために、早期の管理を評価するものである。一方、【生活習慣病管理料】は、より専門性の高い治療管理を総合的に評価するもので、両者は明確に異なる。患者の特性や状態などを踏まえて医療現場で適切な点数選択が行われている。仮に『生活習慣病治療の際は、原則として【生活習慣病管理料】を算定する。【特定疾患療養管理料】は算定できない』という乱暴なルールを設ければ、初期の生活習慣病患者が適切な治療を受ける機会を逃してしまう」と強く反論しています。
この点、2024年度の予算案編成に向けた武見敬三厚生労働大臣・鈴木俊一財務大臣の折衝により「生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等の効率化・適正化で0.25%のマイナス改定を行う」方針が決定されました。
生活習慣病の管理を評価する診療報酬としては、【生活習慣病管理料】や【特定疾患療養管理料】、【地域包括診療料】、【地域包括診療加算】、【外来医療管理加算】などがありますが、「どの報酬項目が、どのような点を評価するのかが曖昧である」との指摘があります。
この点、高血圧症などの治療における外来診療報酬項目の算定回数を見ると、【外来管理加算】と【特定疾患療養管理料】が多く、両者は「併算定」されるケースが多いようです。
今後、こうした状況を見ながら「生活習慣病の管理を行う診療報酬」の再編・統合を検討していくことになります。
また、【生活習慣病管理料】に関しては、▼療養計画書の簡素化▼月1回以上の診療実施要件の緩和▼多職種連携の要件化などを図る方向が固まってきています。
(かかりつけ医機能の診療報酬評価に関する記事)
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安定供給に注力するメーカーの後発品を「価格下支え」などで評価、多品目少量生産解消を目指した後発品薬価対応も―中医協・薬価専門部会
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「不妊治療の保険適用」は効果をあげているが「年齢・回数制限の見直し」求める声も、凍結胚の維持管理期間を延長してはどうか—中医協総会
地域医療体制確保加算について支払側が廃止を求めるが診療側が猛反発、勤務間インターバルを報酬要件に盛り込むべきか—中医協総会(3)
回復期リハビリ病棟での運動器リハビリ算定上限をどう考えるか、身体拘束ゼロにどう取り組んでいくべきか—中医協総会(2)
地域包括ケア病棟、救急患者の受け入れ・介護サービス等との連携などさらに強化、入院料逓減制は意見割れる—中医協総会(1)
入院時食事療養費の「患者の自己負担」部分引き上げ、中医協でも賛意示される—中医協総会(2)
「優れた医薬品を早くいち日本で保険適用してもらう」ためのインセンティブ新設、補正加算も改善へ―中医協・薬価専門部会
「長期収載品と後発品との価格差の一部」を選定療養(患者負担)へ、簡易なオンライン資格確認も導入進める—社保審・医療保険部会(2)
「外来管理加算の廃止」の支払側提案に、診療側委員は猛反発、「かかりつけ医機能」の診療報酬評価をどう考えるか—中医協総会(1)
入院時食事療養費、昨今の食材費急騰を踏まえて「患者の自己負担」部分を引き上げへ—社保審・医療保険部会(1)
初診からの向精神薬処方など「不適切なオンライン診療」を是正、D to Pwith N・D to Pwith Dを適切に推進—中医協総会(2)
一般病棟用の看護必要度(救急搬送後の入院やB項目)をどう見直すべきか、急性期一般1の在院日数要件を短縮すべきか—中医協総会(1)
診療所経営は極めて良好、2024年度改定で診療所点数を適正化し「看護職員等の処遇改善」財源を生み出せ―財政審
「医療人材の賃金アップ」を診療報酬で手当てすべきか、するとして「医療現場の柔軟対応」を可能な仕組みとすべきでは—社保審・医療部会
2024年度診療報酬改定では「医療人材の確保」を重点課題に据える、国保の賦課限度額を106万円に引き上げ—社保審・医療保険部会
2022年度改定での「在宅医療の裾野を広げるための加算」や「リフィル処方箋」など、まだ十分に活用されていない—中医協(1)
「医薬品の安定供給」に力を入れる製薬メーカーの医薬品、薬価でも高い評価を設定すべきだが・・・―中医協・薬価専門部会
医療従事者の給与アップ財源を「診療報酬引き上げ」に求めるか、「医療機関内の財源配分」(高給職種→低い給与職種)に求めるか—中医協総会
深刻化するドラッグ・ラグ/ロスの解消や小児用医薬品開発に向け、専門家の研究結果も踏まえた薬価上の対応を検討―中医協・薬価専門部会
訪問看護の機能強化と同時に不適切事例の適正化・効率的なサービス提供も進めよ、退院当日の複数回訪問看護も適切に評価—中医協総会(2)
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優れた新薬の薬価を支える新薬創出等加算、企業要件や品目要件、加算の計算式、累積控除時期をどう考えていくべきか―中医協・薬価専門部会
医師少数区域等の脳卒中患者へ、迅速にtPA静脈注射療法・血栓回収療法を実施可能とする診療報酬上の手当てを検討—中医協総会(2)
安全で良質な「外来がん化学療法」に向け基準等作成を義務化するか、急性期充実体制加算に外来化学療法実績を求めるか—中医協総会(1)
2024診療報酬改定、救急医療管理加算の基準・急性期病棟での高齢者対応・看護必要度B項目などが重要論点—入院・外来医療分科会(2)
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勤務医の労働時間上限規制が2024年度から厳格される中、「救急医療体制の確保」が極めて重大な課題となる―入院・外来医療分科会(3)
「データ数が少ない」「適切なデータ提出が行えない」病院は、DPC制度からの退出を求めてはどうか―入院・外来医療分科会(2)
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費用対効果評価が低いと判断された医薬品・医療機器、「費用対効果評価が対照技術と等しくなる」まで価格を下げるべきか―中医協
「要介護度が高い在宅患者への訪問診療の評価引き上げ」「高齢者施設への極めて頻回な訪問診療の評価適正化」など検討—中医協総会
2024年度診療報酬改定の基本方針論議続く、物価高騰対応の必要性言及を医療提供サイドは高く評価するが、費用負担者は効率化を強く要請
地域包括ケア病棟への入院料逓減制、障害者施設等での施設基準明確化、提出データ評価加算の要件見直しなど検討―入院・外来医療分科会(3)
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