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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

2025年4月から稼働する「かかりつけ医機能報告」制度、対象医療機関や報告項目をどう設定するべきか—かかりつけ医機能分科会

2023.11.16.(木)

2025年4月から「かかりつけ医機能報告」制度などが施行されるが、報告対象となる医療機関の範囲をどう考えるか、報告すべき項目にはどのようなものが相応しいか—。

こういった議論が、11月15日に開催された「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」(以下、分科会)で始まりました。来年(2024年)夏の意見取りまとめを目指します。

11月15日に開催された「第1回 かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」

報告制度は何のために創設するのか、を再確認する必要がある

2023年の医療法改正(「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」の一部)で、(1)医療機能情報提供制度の刷新(来年(2024年)4月施行)(2)かかりつけ医機能報告の創設(再来年(2025年)4月施行)(3)慢性疾患患者等に対する書面交付・説明の努力義務化(再来年(2025年)4月施行)—を行うことになりました。「まずかかりつけ医を受診し、そこから基幹病院の専門外来を紹介してもらう。専門外来での治療が一定程度終了した後には、かかりつけ医に逆紹介を行う」という外来医療の流れ・機能分化を推し進めると同時に、地域包括ケアシステムの中で極めて重要な役割を果たす「かかりつけ医機能を持つ医療機関」の明確化を図る狙いがあります。

かかりつけ医機能が発揮される制度整備1

かかりつけ医機能が発揮される制度整備2



10月13日には「国民・患者に対するかかりつけ医機能をはじめとする医療情報の提供等に関する検討会」が発足。さらに今般、下部組織である分科会が設置され、「かかりつけ医機能報告制度の詳細」を詰める議論が始まりました。11月15日には、キックオフ論議が行われ、例えば▼年内(2023年内)は構成員や外部有識者からのプレゼンテーション等を行い、「かかりつけ医機能」とは何かについて幅広い議論を行う▼年明け(2024年)1月から「必要とされるかかりつけ医機能」などの論点に基づく議論を行う▼4月頃から「かかりつけ医機能報告」制度の内容を規定する厚生労働省令などの具体的内容について詰めの議論を行う▼来夏(2024年夏)に意見取りまとめを行う—といったスケジュールの確認を行いました。

分科会の検討スケジュール案(かかりつけ医機能分科会1 231115)

分科会のヒアリング予定(かかりつけ医機能分科会2 231115)



また、かかりつけ医機能に関する自由討議も行われ、例えば「かかりつけ医機能は地域医療機関の連携で確保すべきであり、その際、個々の医療機関が機能を拡充していく努力をすることが重要である」(釜萢敏構成員:日本医師会生涯教育・専門医の仕組み運営委員会センター長)、「患者が『かかりつけ医機能を持つ医療機関』を検索しやすくなるような仕組みの構築が重要である」(山口育子構成員:ささえあい医療人権センターCOML理事長)、「かかりつけ医の『基準』明確化が重要である。当初は高齢の慢性疾患患者がターゲットになることはやむを得ないが、将来はすべての国民をターゲットに据えるべきである」(河本滋史構成員:健康保険組合連合会専務理事)、「かかりつけ医機能の獲得・向上に向けた研修も重要である」(吉川久美子構成員:日本看護協会常任理事)、「かかりつけ医機能は地域の医療機関が『面』で提供することが重要だが、地方では医師の高齢化も進んでいることなども考慮した議論が必要である」(織田正道構成員:全日本病院協会副会長)、「国民が『かかりつけ医機能を持つ医療機関』を検索する際に必要となる情報と、地域で『かかりつけ医機能が充足されているか』などを検討する際に必要となる情報とは、必ずしも一致しない。そうした点も考慮して、報告項目などを考えていくべき」(大橋博樹構成員:日本プライマリ・ケア連合学会副理事長/医療法人社団家族の森多摩ファミリークリニック院長)、「日本の外来医療の実態を正確に認識したうえで、報告対象医療機関や項目を探っていく必要がある」(城守国斗構成員:日本医師会常任理事)、「地方と都市、高齢者と若者で、求められる『かかりつけ医機能』は異なってくる点に留意する必要がある」(長谷川仁志構成員:秋田大学大学院医学系研究科医学教育学講座教授)など、非常に幅広い議論が行われました。構成員の間で「かかりつけ医機能とは何か、どういった仕組みとしていくべきか」という点で考え方に大きな乖離があることが伺えます。今後のプレゼン・ヒアリングを踏まえた議論の中で方向性を揃えていくことに期待が集まります。

ところで、医療提供サイド構成員からは「幅広い医療機関が参加できる」ような仕組みを期待する声が出されました。「かかりつけ医機能報告」制度が、将来の診療報酬に深く関連する(「かかりつけ医機能を持つ」と判断された医療機関が、「かかりつけ医機能」を評価する診療報酬取得を認められる)ことを念頭に置いた意見と考えられますが、「かかりつけ医機能報告」制度が「患者が、まず受診する(ファーストアクセスする)医療機関を探しやすくする」ことを目指す仕組みであることを考えると、こうした医療提供サイドの意見によって議論が違う方向に進んでしまうのではないかと危惧する識者も少なくない点に留意が必要です。

永井良三座長(自治医科大学学長)や尾形裕也座長代理(九州大学名誉教授)らも「なぜ『かかりつけ医機能報告』制度を創設するのかを今一度確認する必要がある」との考えを強調しています。

関連して、「患者のアウトカム改善などが、かかりつけ医報告制度創設で目に見えるようになることに期待したい」(土居丈朗構成員:慶應義塾大学経済学部教授)、「かかりつけ医機能報告制度で『何が変わる』のか、患者の受療動向は変化するのか、在宅看取りが増えるのか、救急搬送が減るのか、なども考えていく必要がある」(大橋構成員)といった声も出ています。



なお、尾形座長代理や山口構成員らは「患者側と医療サイドとで、かかりつけ医機能に関する意識に大きなズレがある」点にも注目。診療報酬改定を議論する入院・外来医療等の調査評価分科会の調査では、例えば「患者はかかりつけ医に『どのような傷病でもまず診てくれる』ことを強く期待していますが、医療サイドはそういった機能をそれほど保有していない」ことなどが分かっています。

患者の期待するかかりつけ医機能(かかりつけ医機能分科会3 231115)

医師の持つかかりつけ医機能(かかりつけ医機能分科会4 231115)



もちろん、医師の専門性もあり「1人の医師、1つの医療機関でどのような傷病にも対応できる」体制を整えることは困難です。このため「地域の医療機関が連携して対応する」体制構築が求められますが、その際にも「この傷病、状態であれば、この医療機関が最適であり、自院から紹介しましょう」といったコーディネート、マネジメントを行う医療機関の存在が重要となります(「医療版のケアマネジャー」といった存在が期待される)。

患者サイドと医療サイドとの考え方のズレ解消に向けた議論にも期待が集まります。



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