病院の看護職員不足が深刻化、看護職員を確保し、適切な処遇改善を行うためにも「入院基本料の引き上げ」などが必要—日病・相澤会長
2023.6.6.(火)
病院の看護師不足が著しい。離職者が増加しており、あわせて計画に沿った採用も年々困難になってきている—。
そうした中で、十分な看護職員を確保し、また適切な処遇改善を行うために、「入院基本料の引き上げ」「看護職員の確保・養成に関する政策の再検討」が必要である—。
日本病院会の相澤孝夫会長は6月1日、加藤勝信厚生労働大臣に宛てて、こうした内容の「看護師の確保等に関する提言」を提出しました(日病サイトはこちら、厚労省医政局の榎本健太郎局長が代理受領)。
コロナ禍で「病院実習」を受けられなかった若手看護職員の離職が急増
コロナ感染症が落ち着く中で「病院の看護職員不足」が大きな問題となっています。全国自治体病院協議会の調査でも「とりわけ若手看護職員の離職が増加している」ことが報告され(関連記事はこちらとこちら)、日本病院会幹部の間でもこの点を危惧する声が非常に大きくなっています(関連記事はこちら)。
日病が会員を対象に実施したアンケート調査によれば、次のような状況が明らかになっています(563病院が回答)。
▽75%の病院が「看護職員不足」を訴え、「不足していない」は13%、「どちらとも言えない」が12%
▽「看護職員不足」の理由(複数回答)としては、「産休・育休・時短勤務者の増加」(不足と答えた病院の66.2%)、「退職者の有給休暇取得」(同36.4%)、「夜勤勤務のため」(同31.4%)、「給与などの待遇面の問題」(27.9%)、「奨学金返済修了による退職」(同19.5%)などが多い
▽看護職員を計画通り採用できた病院の割合は、2021年度:61%→22年度:51%→23年度:39%と減少している
▽「計画通り採用できなかった病院」において、不足人数11-20人の割合は2021年度:6.8%→22年度:6.2%→23年度:7.6%、不足人数21人超の割合は2021年度:1.2%→22年度:4.7%→23年度:5.5%となり、「不足度合が大きくなっている」状況が伺える
▽看護職員の離職理由としては、「結婚・出産など」(全体の54.2%)、「業務負担が大きい」(同49.0%)、「人間関係」(同44.8%)、「コロナ禍によるメンタル不調」(同25.9%)、「夜勤が多い」(同16.0%)などが多い
また、自由意見を見ると、例えば「コロナ禍で学生時代の実習経験不足であった新人が退職し、実務可能者への負担が増加。疲弊による退職も増加傾向にある」、「入職後3-5年程度の戦力となる層の転職が相次ぎ、体制維持が容易ではない」、「採用できても『夜勤不可』スタッフばかりとなり、高額かつ期間限定の応援ナースに頼らざるを得ない」、「看護補助者の不足も著しく、給与面で『補助が出る福祉施設』に条件で勝てず、採用が難しい」、「待遇の大幅改善や職場環境改善がなければ、今後も急性期病院を希望する看護師等の確保は困難」、「実際の患者の重症度やケア密度を考えると、人員配置基準では十分とは言えない」、「夜勤のない美容クリニックなどへの転職が増えている」などの声が目立ちします。
こうした「看護職員が不足し、しかも年々不足度合が厳しくなってきている」状況を踏まえて相澤会長は、「生産年齢人口が減少する一方で、入院患者の高齢化等によりケア業務が増加する中でも看護師が十分に確保できる」「病院勤務看護職員の処遇改善が行える」ように、▼入院基本料の引き上げ▼様々な離職理由(上述)を踏まえた看護職員の確保・養成に関する政策の再検討—が必要であると、強く提言しています。
なお、アンケートの自由意見を見ると、「入院患者の高齢化、認知症などで看護だけではなく、介護も必要となっている状況の中、満足なケアの提供が難しい」との声もあります。日病も含めた日本病院団体協議会(日病協)では、2024年度の次期診療報酬改定に向けて「急性期病院・病棟への介護職員配置」を要望しており、こちらの動きにも注目が集まります(関連記事はこちらとこちら)。
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