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2027年度も「医師多数県医学部の定員▲→医師少数県医学部へ+」を進めるが、多様な要素勘案し削減幅緩和—医師偏在対策検討会

2025.12.2.(火)

少子化が進んでおり、「医学部入学定員(臨時定員)の減員」を進めなければ、医師過剰が生じ、その弊害が出てしまう—。

2027年度の医学部入学定員(臨時定員)配分に関しては、「医師多数県の臨時定員を削減し、その分、医師少数県に振り替えていく」ことを継続するが、多様な要素を勘案して医師多数県の削減部分を緩和することも重要ではないか―。

また、都道府県の医師確保計画見直し論議が進んでいるが、その中に「医師養成過程での偏在対策」も盛り込んでいくことが重要である―。

11月20日に開催された「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」(以下、偏在対策検討会)で、こうした議論が行われました。さらに議論を深めて「具体化」を目指していきます。

医師確保計画の中に「医師養成課程での偏在対策」も盛り込んでいく

検討会では、名称どおり「医師養成過程を通じた医師の偏在対策」を議論しており、昨年(2024年)には(1)臨床研修の「広域連携型プログラム」の制度化(2)総合的な診療能力を有する医師の育成・リカレント教育(3)医師偏在に配慮した医学部臨時定員の漸減(4)診療科間の医師偏在対策の検討—方針を固め、年末(2024年)の「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」に盛り込まれました。

11月20日の検討会では、前回会合に続いて「2027年度以降の医学部入学定員」(臨時定員)の在り方を議論するとともに、「次期医師確保計画策定ガイドラインにおける医師養成過程の取り組み」に向けた見直し論議を行いました(関連記事はこちら)。



まず2027年度の医学部入学定員について見てみましょう。

医学部の入学定員は、▼恒久定員(下図の青色の部分)▼臨時定員(医師確保が必要な地域・診療科のための「暫定増」(下図の黄色の部分)・地域枠などを設定するための「追加増」(下図の赤色の部分))—で構成されます。

医学部入学定員の構造(医師偏在対策検討会2 240226)



このうち臨時定員枠については、「近い将来、医師過剰になる」ことを踏まえ「漸減していく」方針が確認されています(医師過剰になれば、「症例の分散による医療水準の低下」「医療費の高騰」「医師の生活不安」などにつながる)が、「医師偏在が解消しない中で定員減を行えば偏在が拡大してしまう」との声も地方や医療現場から出ています。

こうした状況を踏まえて、これまで次のように「緩やかに臨時定員枠を削減する」取り組みが行われています。
【2025年度】
・2024年度の臨時定員総数(9403名)を上限とする
・医師多数県では、臨時定員を2割削減する(恒久定員内地域枠を4%以上設けている場合には一定の復元可)
・医師少数県で「2024年度よりも増員」意向がある場合には、意向に沿った臨時定員の増員を認める
など(関連記事はこちらこちら)。

【2026年度】
・2025年度方針をベースとする(医師多数県の枠を削減し、医師少数県に振り向ける)
・医師多数県であっても「若手医師が少ない、高齢医師が多い」場合には、将来「医師不足に陥る」可能性がある点を考慮し、「地域における医師の確保に真に必要な範囲で臨時定員の設置」を認める
など(関連記事はこちらこちらこちら



2027年度の医学部入学定員(臨時定員)については、これまでに▼「地域の医師確保」を強力に進め、医師偏在の是正を推進する▼臨時定員について「地域における医師確保への大きな影響が生じない」範囲で適正化(漸減)を図る—方向を確認しています。

地域枠医師よりも一般枠医師のほうがはるかに多く、個の一般枠医師の「地域定着」が重要である(医師偏在対策検討会5 250121)



11月20日の会合では、次のような具体な考え方が厚生労働省から提示されました。

●医師多数県については臨時定員地域枠を一定数削減するが、次のような観点から「削減の緩和」などを検討してはどうか
(1)地域の医師確保ニーズに配慮しつつ、地域の主体的な取り組みを後押しする視点
▽大学の設置主体毎の特性等を踏まえながら、必要な調整等により、特に医師多数県において「恒久定員内への地域枠」設置が進んでいる状況を踏まえ、これまでの復元(削減の緩和)要件(恒久定員100名あたり恒久定員内地域枠4名以上設置)の基準を引き上げてはどうか

(2)地域の置かれた状況に適切に配慮する視点
▽地域における人口動態の勘案
→人口減少率が急激な地域では「地域の人口を分母とする医師偏在指標において、時点の更新により医師偏在指標の値が相対的に上位になると想定される」ことや、「75歳以上人口の増加率が比較的大幅に増加する場合には、医療提供体制を一定程度維持する必要がある」ことから、地域における「全年齢の人口変化率に対して75歳以上人口増加率が比較的高い」場合は、時限的な措置として削減幅を緩和してはどうか

▽地理的要素の勘案
2027年度からの次期医師確保計画では地理的要素を反映して医師少数区域を設定する方向で検討が進んでいることを踏まえて、都道府県内に「医療機関へのアクセスが比較的困難な2次医療圏が一定数存在する」場合は、削減幅を緩和してはどうか

▽医師の年齢構成の勘案
「医師の年齢構成」による復元要件(医師の高齢化が進んでいる地域では削減を緩和する)について、定員の固定化を防ぐ観点から基準を引き上げてはどうか

(3)全国的な取組を促す視点
▽臨時定員として当該都道府県内の大学を中心に医学部定員を増員している一方で、医師が県外に流出している実態もあることを踏まえ、今後、「前年度を上回る地域枠数」を設定する場合は、「当該都道府県に所在する大学の恒久定員内への地域枠や地元出身者枠の設置を行う」ことを基本としてはどうか
▽その際、各都道府県と当該都道府県内の大学の必要な協議を促すとともに、「各県の臨時定員地域枠数は原則として前年度の数を超えない」よう調整してはどうか

▽地域に定着する医師を確保するためのその他の取り組みを後押しする方策を検討する。また、都道府県と大学との協議が円滑に進むような対応について文部科学省とも連携して検討する

次期医師確保計画に向けた医師偏在指標の更新により区分が変更となる都道府県における臨時定員地域枠の取り扱いについては、「これまでの区分に基づく対応とのバランス」や「激変への配慮」に留意し改めて検討する

地域枠の設置状況1(医師偏在対策検討会1 251120)

地域枠の設置状況2(医師偏在対策検討会2 251120)

地域枠の設置状況3(医師偏在対策検討会3 251120)

地域枠の設置状況4(医師偏在対策検討会4 251120)



今後の検討方針が提示された格好であり異論・反論は出ていませんが、医師偏在対策検討会では▼A県・B県が連携し「A県大学の地域枠医師が、B県の病院で勤務できる」ような仕組みを構築すべき(小笠原邦昭構成員:日本私立医科大学協会)▼医師偏在対策と医学部臨時定員減とをセットで早急に進めるべき(木戸道子委員:日本赤十字社医療センター副院長・第一産婦人科部長)▼人口動態や地理的要素を勘案した「医師多数県の臨時定員枠削減」、医師の地域定着、医師派遣の推進、都道府県の境をまたいだ地域枠医師の勤務などを総合的に検討していくべき(前田嘉信構成員:国立大学病院長会議理事)—などの声が出ています。あわせて都道府県サイドからは「医師多数県での臨時定員削減は理解できるが、その前により強力に医師偏在対策を進めてほしい」と要望しています。





ところで、「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」では、医師偏在の解消に向けて▼医師確保計画の見直し▼「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」の実現—論議も始まっています(関連記事はこちら)。

医師偏在対策検討会でも、この方向に沿って「医師養成課程」(医学部、臨床研修、専門研修)での対応方策を検討しています。

この点について厚労省は、例えば次のような検討方針を明らかにしました。

▽「医師養成過程を通じた対策」も、今後予定されている次期「医師確保計画策定ガイドライン」に網羅的に位置づけ、地域に必要な医師の確保の実効性を高めてはどうか

【医学部定員における取り組み】
▽地域枠や地元出身者枠の定員設定にあたり、地域の特性を適切に踏まえる観点から、これまでの地域枠数の実績等に加え、「都道府県ごとの医師の流入や流出状況、地域枠以外を含む定着意向等の状況」を地域で分析する
▽「自県における地域枠医師の配置状況」や「従事要件が明けた地域枠医師の地域への定着状況」などの把握や分析が重要である
▽地域枠や地元出身者枠の設定にあたり、前述の分析を踏まえ、地域医療に必要な医師を安定的に確保するとともに、人口減少等にも対応するため「これまでに養成した地域枠医師の定着の促進」「地域の大学を卒業した医師の地域への定着・出戻りを図る対応」「医師養成過程に関する制度も活用した都道府県間での医師の人的交流」など取り組むことも考えられる
▽必要な地域枠等を新たに設置する場合は、今後は「原則として恒久定員内で設置する」ことを検討する
▽地域枠「以外」の医学生についても、地元出身者等に対して早期から地域医療への関心や定着意欲を育む取組が重要である
▽都道府県と大学とが、「在学中の医学生に対する地域の定着に向けた取り組み」や「地域の医療ニーズに応じた卒業後の研修環境の整備」などを協議し、地域医療の実情に応じて検討することが重要である



【臨床研修制度における取り組み】
2026年度からの「広域連携型プログラム」設定において、都道府県が「連携先病院での研修内容や指導体制、研修の進捗状況や研修医の様子・生活などについて、病院間で適切な情報共有が行われているかなどを把握し、必要に応じてフォローを行う」取り組みが求められており、これは医師確保の観点でも重要と考えられる
▽研修医を受け入れた医師少数県等において、将来的な都道府県への定着を図る取り組みも地域の医師確保の観点で重要である(例:地域の魅力を活かした特色ある研修プログラム作成への関与、臨床研修修了後のキャリアプランの提示を目的とした都道府県内の専門研修プログラムに関する情報提供など)



【専門研修制度における取り組み】
▽医師のキャリアパスの特徴や専攻医の定着率のデータ等から、医師確保対策において専門研修に着目した取り組みを行うことが重要である
▽プロフェッショナルオートノミーを基盤として構築されてきた制度であることを踏まえ、都道府県では「まずは管内の専門研修に関する状況を十分に把握し、専門研修施設に対する支援等を行う」ことが考えられる
▽専門研修における取り組みのアプローチは、▼専門研修プログラムの周知等、専攻医を確保するための施策▼専門研修指導医の確保を含む研修環境の整備等、専攻医の定着支援につながりうる施策▼連携プログラムの活用等、県内外の医療機関間のネットワークの形成・強化—が重要である



【必要な診療科の医師の育成・確保に関する取り組み】
●地域において必要な診療を担う医師の育成・確保
▽「総合的な診療能力を有する医師」など、地域で必要な診療を担う医師の育成や確保において、都道府県が関与することが重要である
▽「若手医師までを中心とした取り組み」「中堅・シニア世代を中心とした取り組み」について、既存の取り組みのほか、都道府県が担える役割を整理し、医師確保につなげることが重要である
▽女性医師の増加や育児・介護等と仕事の両立に係るニーズ等を踏まえ、地域医療を支える意欲のある医師が多様なライフプランやキャリアステージに応じて、勤務形態を問わず、また地域間の人的交流なども活用しながら、柔軟かつ持続可能な形で診療に参加できる体制や運用を念頭に検討していくことがより一層重要となる

医師確保に向けた取り組みの整理(医師偏在対策検討会5 251120)



●必要な診療科の医師の確保に資する医師の働き方改革の推進
▽地域で必要な診療科(労働時間が長い傾向にある外科、周産期に関わる診療科、麻酔科など)について、都道府県の「医師確保に関わる部局」と「勤務環境改善に関わる部局」が連携し、現場の状況を把握し、必要な支援を検討していく



これらは、いわば今後検討していくべき論点と言えます。検討会構成員からは▼キャリア形成プログラムの充実が極めて重要となる(木戸構成員)▼都道府県ごとの医師の流れ(自県大学出身の医師がどこへ勤め、他県大学出身の医師が自県のどの病院に勤めるのか、など)を明確にすることがまず重要である。また「症例数を一定期間内に確保しなければならない」専門研修において、医師偏在対策を進めることには一定の制約があることを認識しなければならない(今村英仁構成員:日本医師会常任理事)—などの声が出ています。

都道府県における医師の動向(医師偏在対策検討会6 251120)



キャリア形成プログラムは、「医師不足地域の医師確保」と「派遣される医師の能 力開発・向上」の両立を目的としたプログラムです。若手医師には「医師が不足する地域での勤務では十分な症例経験を積めず、医師としてのキャリア形成が不利になるのではないか」といった不安もあるでしょう。これを払拭できるように、各都道府県において「医師不足である我が県ではあるが、『●●コースを設けており専門医資格取得に問題なし』『〇〇コースを用意しており学位も取得可』『◆◆コースでは海外留学も可能』などのサポートを行っており、医師として十分なキャリアを積めます。是非、我が県で医師として従事してください」というPRを行うツールの1つとしてキャリア形成プログラムがあります。

木戸構成員の提唱どおり、このキャリア形成プログラムを充実することで「地方での勤務を希望する若手医師・医師を目指す高等学校生」が増えていくことに期待が集まります。

さらに議論を深めていきます。



病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

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