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GemMed塾 病床ユニット

医師偏在対策の総合パッケージに向け、「恒久定員への地域枠設置」「総合診療能力持つ医師の養成」などを検討—医師偏在対策等検討会

2024.7.4.(木)

6月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024—賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現—」(骨太方針2023)では、医師偏在解消に向けた総合的な対策のパッケージを本年(2024年末)までにまとめる方針が打ち出されました。

この方針に沿って、7月3日に開催された「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」(以下、偏在対策検討会)で▼地域枠の活用▼総合的な診療能力を有する医師の育成・リカレント教育▼医師少数区域における研修の制度化▼専門研修制度における医師偏在対策の見直し—などに関する本格的な議論が始まりました。

また、別に進められている「新たな地域医療構想に関する検討会」において、「医師少数区域での勤務経験の評価」や「医師多数区域での開業規制」などに関する議論が進められる見込みです(関連記事はこちら)。

7月3日に開催された「第5回 医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」

総合診療専門医の育成には時間がかかるため、「リカレント教育」にも力を入れる

従前より「医師の地域偏在、診療科偏在」が大きな課題となっています。どれだけ病院を建設し、高度な治療・検査機器を整備したとしても、医師がいなければ医療提供はかないません。

この医師偏在の解消に向けて、大きく3つの対策がとられてきています。
▽医学部に「地域枠・地元枠」を設けるほか、臨床研修医・専攻医の大都市集中を防ぐためにシーリングを設ける(国による取り組み)
▽各都道府県で「医師確保計画」(医療計画の一部分)を作成し、医師少数県・区域を中心に「医師確保」を図る(自治体による取り組み)
▽医師働き方改革により上記を支える

医師偏在対策の全体像(医師偏在対策検討会1 240129)



しかし、こうした対策の効果は、必ずしも十分には出ていないようで、第8次医療計画作成論議の中では「2016年から20年にかけて医師偏在が進んでしまった」ことも明らかになっています(関連記事はこちら)。

2016年から20年にかけて医師の地域偏在が助長されてしまっている(地域医療構想・医師確保WG(1)4 221027)



こうした状況を踏まえ、骨太方針2024では「医師偏在対策の総合的なパッケージ」を年内(2024年内)にまとめる方針を打ち出しました。

骨太方針2024では、医師偏在対策の総合対策パッケージを年内(2024年内)にまとめる方針を打ち出した



この点について厚生労働省は、偏在対策検討会では主に▼地域枠の活用▼総合的な診療能力を有する医師の育成・リカレント教育▼医師少数区域における研修の制度化▼専門研修制度における医師偏在対策の見直し—などを、別の新たな地域医療構想に関する検討会で主に▼医師少数区域での勤務経験の評価▼医師多数区域での開業規制—などを議論していく考えを示しています。

偏在対策検討会では、各項目に関して次のような検討方針案が提示され、この方向で議論を進めていくことが概ね了承されています。

【地域枠の活用】
▽臨時定員地域枠については、医学部定員の適正化の検討を進めていくと同時に、「医師多数県では一定数削減していく、都道府県を超えた偏在是正が特に必要な医師少数県・一部の中程度県については増加も許容」する—

▽恒久定員地域枠については、改めてその必要性を認識し設置調整を都道府県・大学に促すとともに、設置が進んでいる都道府県・大学の好事例を広めていく—

【総合的な診療能力を有する医師の育成・リカレント教育】
▽総合診療専門医の養成を引き続き推進していく—(関連記事はこちら

▽各大学における総合診療医センターを中心とした養成に加え、学会や病院団体が協力し「研修・地域における実践的な機会の提供・総合診療の魅力発信を一体的に実施する」ような方策を検討する—

【医師少数区域における研修の制度化等】
▽2026年度から、新たに臨床研修制度(医学部卒業後2年間)において、医師多数県の研修医の一部を半年程度、医師少数県等の病院において研修を行う「広域連携型プログラム」を開始する

【専門研修制度における医師偏在対策の見直し】
▽日本専門医機構の研究成果(シーリングの効果分析、手法の検証、都道府県・診療科の選択要因調査など)を踏まえて、より適切な仕組みへと見直しを検討していく—(関連記事はこちら



まず「地域枠」は、医師偏在の是正に向けて「最も効果のある対策」として知られています。厚労省は「恒久定員の中への地域枠設置」を進め、「安定した地域枠医師の養成→地域医療に従事する医師の確保」を図る考えです(関連記事はこちら)。

医学部の入学定員は、▼恒久定員(下図の青色の部分)▼臨時定員(医師確保が必要な地域・診療科のための「暫定増」(下図の黄色の部分)・地域枠などを設定するための「追加増」(下図の赤色の部分))—で構成されます。

医学部入学定員の構造(医師偏在対策検討会2 240226)



このうち臨時定員枠については、「近い将来、医師過剰になる」ことを踏まえ「漸減していく」方針が確認されていることから、今後は「医師偏在是正に効果的な地域枠を、恒久定員の中に設置していく」ことが極めて重要となるのです(関連記事はこちらこちら)。

この方向に異論・反論は出ていません。2025年度から「恒久定員内に一定以上の地域枠を設置することで、医学部入学定員を一定程度確保できる」仕組みが設けられ、これが推進策の1つになってくるでしょう。

なお、小笠原邦昭構成員(日本私立医科大学協会)は「県によって必要な医師は異なる。例えばA県では●●科の医師は比較的確保できているが、◆◆科の医師が極めて不足し、逆にB県では◆◆科の医師は比較的確保できているが、●●科の医師が極めて不足しているといった場合に、A県の●●科医師と、B県の◆◆科医師を交換できるような仕組みを検討してはどうか」と提案しています。厚労省と都道府県で「地域枠医師の現状」を細かく見ながら検討していくことに期待が集まります。



また、医師が少数の地域では「総合的な診療能力を持つ医師」の存在が極めて重要となります。この点、2018年度からスタートした新専門医制度検討会では「総合診療専門医」の育成も始まっており、さらなる養成強化が進められます。この点については「基本領域として総合診療専門医を取得した医師のサブスペシャリティ領域での専門医資格取得」など、キャリアパスを明確にすべき旨の意見が國土典宏座長代理(国立国際医療研究センター理事長)や神野正博構成員(全日本病院協会副会長)、小笠原構成員らから出されています。若手医師が総合診療専門医を安心して目指せるような環境を日本専門医機構・医学会・厚労省が連携して構築していくことが求められます。

ところで、総合診療専門医を十分な数養成するには時間がかかり、また総合診療専門医だけで地域医療を担うこともできません。このため中堅医師が「患者を総合的・全人的に診療できる能力」を身につける(いわば領域別の専門医資格をベースに、ジェネラリストとしての能力を高めていく)ための研修(リカレント教育)が重要になってきます。

この点について厚労省は「総合的な診療能力を持つ医師養成の推進事業」を展開しており、本年度(2024年度)には「経験豊富な総合診療の指導医を集約する総合診療医センターを地域に設置し、そこでリカレント教育を実施する」取り組みが行われます。

総合的な診療能力を持つ医師養成の推進事業概要



また、すでに日本医師会では「日医かかりつけ医機能研修制度」を実施しており、病院団体でも総合診療能力を獲得し、高めるための研修を実施しています(関連記事はこちら)。

この点について横手幸太郎構成員(国立大学病院長会議特任委員)は「リカレント教育は極めて重要であれば、だれがリーダーシップをとって研修を進めるかなど難しい課題がまだあり、早急な検討が必要」と、神野構成員は「各学会、病院団体の総合的な診療能力を持つ医師の研修制度を総覧し、リカレント教育のカリキュラムを確立したり、研修制度への財政的支援のPRなどを検討することが重要」とコメント。また木戸道子構成員(日本赤十字社医療センター第一産婦人科部長)は「総合診療専門医などの活躍のためには、国民の理解が不可欠である」との考えを示しています。なお、日本専門医機構では「総合診療医とは何か」をわかりやすく解説しています



他方、臨床研修制度における「広域連携型プログラム」は、卒後2年間の臨床研修制度においても、例えば「都会の大規模な基幹病院で研修する医師でも、一定期間、医師少数の地域の病院で勤務する」ことを求めるものです。若い時期に地域医療を学ぶことで、見識を広めることができると期待されますが、「あくまで本人の希望で広域連携型プログラムの参加すべきで、強制的に参加させられることは好ましくない」(木戸構成員)、「マッチングの時間を十分に確保する必要がある」(花角英世構成員:全国知事会)などの注文がついています。

臨床研修制度における後期連携型プログラム1

臨床研修制度における後期連携型プログラム2

臨床研修制度における後期連携型プログラム3



偏在対策検討会では、当初「来夏(2025年夏)の中間とりまとめ」を目指していましたが、骨太方針2024を受け「年内(2024年内)の総合パッケージとりまとめ」に向けて、ピッチを上げて議論を進める見込みです。

なお、横手構成員は「医師偏在対策においては、1人、2人が医師少数地域等に出向いても効果は小さく、継続的に医師少数地域等に医師が確保されることが必要であり、この点では経済的インセンティブが極めて重要になる」との考えを示しました。この点については、例えば「補助金」の拡充や、診療報酬上の手当てなどが別に検討される可能性があります。



なお、前回(4月26日)の偏在検討会では、来年度(2025年度)の医学部入学定員から、「医師多数県の臨時定員を削減し、それを医師少数県の配分する」方針が固められました。具体的には次のような仕組みです。
(1)医師多数県での対応方針
→医師多数県では、医師少数県・中程度県と比較して、臨時定員として地域枠を確保する必要性が低い
→ただし、大幅な変更は教育・研修・診療体制への影響等も考えられる
ために、次のような対応を行う
▼原則として2024年度の臨時定員地域枠に0.8を乗じたうえで、必要に応じて(3)の対応を行う(つまり2割減(1)+α(3)とする)

(2)医師少数県での対応方針
→医師少数県では、医師多数県・中程度県と比較して、医師全体が少なく、若手医師についても少ない傾向がある
ために、次のような対応を行う
▼臨時定員地域枠の要件を満たしつつ、教育・研修体制が維持される範囲内で、医師多数県から削減等した定員数分((1))を活用して、原則として2024年度よりも増員の意向がある場合には、その意向に沿った配分を行う(増員を認める)

(3)残余臨時定員の調整
→上記(1)(2)の対応を行った結果、「2025年度の臨時定員総数」<「2024年度の臨時定員総数」となる場合には、「2025年度の臨時定員総数=2024年度の臨時定員総数」となる範囲内で、「恒久定員100名あたり、恒久定員内地域枠を4名以上設置している」など、更なる県内の偏在是正が必要な都道府県について次の調整を行う
▼医師多数県では、例えば2024年度臨時定員地域枠の1割など「一部の意向」を復元する(上述(1)の+α)
▼医師少数区域のある医師中程度県では、2024年度からの増員意向がある場合、「医師少数区域等に従事する枠となっているか」など、地域枠の趣旨の範囲内で配分を行う
▼臨時定員研究医枠について、2024年度からの増員意向がある場合には、その趣旨の範囲内で配分を行う

2025年度の臨時定員配分についての機械的試算1

2025年度の臨時定員配分についての機械的試算2



7月3日に会合では「今後、各都道府県・大学の意向を踏まえて具体的な配分を行っていく、8-9月頃に配分の具体案を偏在検討会で固める」ことが確認されています。なお、上述のように「医師多数県の臨時定員枠を減じ、それを医師少数県の臨時定員増に配分する」仕組みは、当面継続される見込みです。



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