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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

将来の医師過剰を考慮し医学部入学定員「減」が必要だが、医師偏在対策もセットで検討しなければならない—医師偏在対策等検討会

2024.1.30.(火)

2020年8月に行われた将来の医師需給推計によれば「現在の医学部入学定員を維持すれば2029年頃から医師『過剰』になってしまう」が、一方、「東北地方を中心に医師少数県が依然として存在するなど、医師偏在が解消していない」。こうした状況を踏まえて2026年度以降の医学部入学定員をどのように考えていくか—。

また、これまでの偏在対策の効果などを評価しつつ、より効果的な偏在対策の在り方をどう考えるか—。

1月29日に「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」(以下、検討会)が開催され、こういった議論が始まりました。まず今春に「2026年度の医学部入学定員の在り方」を確定させ、その後「将来の医学部入学定員の在り方」、「医師偏在対策の在り方」について議論し、来夏(2025年夏)の中間とりまとめを目指します。

1月29日に開催された「第1回 医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」

検討会論議スケジュール(医師偏在対策検討会6 240129)

2026年度以降の医学部入学定員をどう考えるのか、今後の医師偏在対策をどのように進めていくべきか

「医師の地域偏在、診療科偏在」が大きな課題となっています。

偏在解消に向けて、これまでに大きく3つの対策がとられてきています。
▽医学部に「地域枠・地元枠」を設けるほか、臨床研修医・専攻医の大都市集中を防ぐためにシーリングを設ける(国による取り組み)
▽各都道府県で「医師確保計画」(医療計画の一部分)を作成し、医師少数県・区域を中心に「医師確保」を図る(自治体による取り組み)
▽医師働き方改革により上記を支える

医師偏在対策の全体像(医師偏在対策検討会1 240129)



しかし、こうした対策の効果はまだ出ておらず、第8次医療計画作成論議の中では「2016年から20年にかけて医師偏在が進んでしまった」ことも明らかになっています(関連記事はこちら)。

2016年から20年にかけて医師の地域偏在が助長されてしまっている(地域医療構想・医師確保WG(1)4 221027)



そこで厚生労働省は、新たに検討会を立ち上げ「医師養成の過程を通じた偏在対策」を中心に、既存施策の洗い直し(評価・検証)を行うとともに、より効果的な対策を検討していくこととしたものです。

主な検討テーマは、(1)医学部入学定員の在り方(2)医師偏在対策の在り方—の2点です。

前者の「医学部入学定員」については、「将来的に漸減していく」方向が確認されています(こちら)。

冒頭に述べたとおり、2020年8月に行われた将来の医師需給推計によれば「現在の医学部入学定員を維持すれば2029年頃から医師『過剰』になる」ことが分かっており、これは「将来の医師の生活基盤が極めて不安定になる」「不適切な医療需要の掘り起こしが生じ、医療費の高騰→医療保険制度が逼迫する」などの問題が生じさせてしまうためです。

医師需給の最新推計によれば、早ければ2029年、遅くとも2032年に医師の需要と供給が均衡し、以後「医師過剰」となる(医師需給分科会(1)3 200831)



また、現在の医学部入学定員を維持すれば、「2020年には18歳人口の約123人に1人が医学部に進学する」形ですが、「2050年には同じく約85人に1人が医学部に進学する」ことになり、「あり得ない事態」と言えます。

現行の医学部入学定員を維持すれば、2050年には「18歳人口の85人に1人」が医学部に進学することになる(医師偏在対策検討会2 240129)



こうした点を踏まえれば「医学部入学定員を漸減していかなければならない」ことは火を見るよりも明らかと言えます。



しかし、その一方で、東北地方を中心に「医師少数県」が依然として存在しており、医師偏在が解消していない(かつ上述のように偏在は拡大している)こともあり、「単純に医師養成数(医学部入学定員)を減らせば済む」とはなりません。

東北地方を中心に医師少数県がある(医師偏在対策検討会3 240129)



また、大学側にしてみれば「入学定員は極めて大きな収益減になる」という問題もあります。

検討会では、こうした状況を総合的に勘案し、▼まず2026年度の医学部入学定員の在り方を議論し、今春(2024年春)までに結論を出す(高等学校2年生の進路決定に支障を来さないように2年前までに結論を出す必要がある)▼その後、2027年度以降の医学部入学定員の在り方を議論していく—方針を確認しました。



あわせて、これまでの偏在対策の効果などを評価・検証も含めた「偏在対策の在り方」も議論していく必要があります。

上述のように「地域枠の設定」「臨床研修医、専攻医採用枠のシーリング設定」「医師確保計画の推進」などが総合的に進められており、「医師多数の地域よりも、医師少数の地域で医師数増加の度合いが大きい」という効果が生まれています。

若手医師の偏在は少しづつ縮小傾向にはある(医師偏在対策検討会4 240129)



ただし、「医師多数の地域ほど、若手の医師配置も多い」という構造に変化はなく、「さらなる医師偏在対策が強く求められている」状況はかわっていません。

医師多数県ほど若手医師在籍数も多い構造に変化なし(医師偏在対策検討会5 240129)



厚労省は、こうした状況を踏まえて「偏在対策の在り方」も検討会で議論し、来夏(2025年夏)を目途に中間とりまとめを行ってほしい、との考えを示しています。



初回の検討会では、こうした状況・スケジュールについて自由討議を実施。そこでは「医学部入学定員は漸減していかなければならないが、それと合わせて強力な医師偏在対策を進めていかなければならない」(神野正博構成員:四病院団体協議会、全日本病院協会副会長)、「将来的に医学部入学定員を漸減していくことは必要であるが、医師偏在は同一県内でも存在しており、その解消に努める必要がある」(馬場秀夫構成員:国立大学病院長会議)、「偏在対策論議、医学部入学定員論議はコロナ禍でストップしていた。今後、急ピッチで進める必要がある。また若手医師の地方(医師少数の区域など、以下同)勤務だけでなく、ベテラン医師による地方勤務推進策もセットで考えていく必要がある」(釜萢敏構成員:日本医師会常任理事)、「医師に地方勤務を求めるには、それに見合った給与や職場環境を保証しなければならない」(木戸道子構成員:日本赤十字社医療センター第一産婦人科部長)、「医師偏在は進んでしまっているとのデータもあり、また現下の施策では『東京から埼玉や千葉に医師が移動した』にとどまっているのが実際である。臨時定員増の延長、臨床研修医や専攻医の採用上限を厳しくし、都市部集中を改めることなどをお願いしたい」(花角英世構成員:全国知事会)などの意見が出されています。

医学部入学定員の漸減に向けた「方針」は過去の検討会等ですでに固まっていると言えますが、検討会の初回討議も見ても「漸減に消極的な意見、反対する意見」も出ており、今後、どういった議論・調整が行われるのか見通しが難しい状況です。

なお、國土典宏座長代理(国立国際医療研究センター理事長)や印南一路構成員(慶應義塾大学総合政策学部教授)からは「診療所・病院別の医師配置状況」や「男女別・年齢区分別の医師配置状況」など、偏在対策論議などに資する最新データの要望がありました。

また、2024年4月からの勤務医労働時間上限(医師働き方改革)見直しの効果を踏まえた「新たな医師需給推計」を求める声も出ていますが、「近い将来、医師が過剰になる」ことそのものに変化はないため、「新たな需給推計をしなければ医学部入学定員論議を行えないのか、新推計をせずとも、既存データで議論できる部分があるのではないか」という点も考慮して、新推計の是非を考えていくことになります。



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