病棟への介護専門職配置と点数設定、入院基本料の引き上げ、ICT対応の評価などを2024年度診療報酬改定で実現せよ—日病協
2023.3.27.(月)
急性期病棟においても要介護高齢者の入院患者が多くなっている点を踏まえ、「病棟への介護専門職配置」を診療報酬で評価せよ—。
昨今の物価・人件費高騰を踏まえ、病院収益の柱である「入院基本料」を適切な水準へ引き上げよ—。
医療DXを推進し、サイバー攻撃に備えるために「ICT対応への診療報酬評価」を充実せよ—。
日本病院団体協議会が3月24日、加藤勝信厚生労働大臣に宛てて、こうした内容を盛り込んだ「令和6年度(2024年度)診療報酬改定に係る要望書【第1報】」を提出しました(日本病院会のサイトはこちら)(関連記事はこちら)。
食材費・人件費の高騰など踏まえた「入院時食事療養費の引き上げ」も実現せよ
日本病院団体協議会は、日本病院会、日本私立医科大学協会、地域医療振興協会など15の病院団体で構成される組織で、主に「診療報酬改定に向けて病院団体の意見をすり合わせ、共同提案・要望を行う」などの活動をしています(もちろん、診療報酬以外の医療の諸課題について議論を行っている)。
2024年度には、診療報酬・介護報酬の同時改定(障害福祉サービス等報酬の改定も加わりトリプル改定でもある)が行われ、すでに中央社会保険医療協議会と社会保障審議会・介護給付費分科会の意見交換会もスタートしている(関連記事はこちら)ことなどを踏まえ、今般「総論的な要望」となる第1報を加藤厚労相に提出しました。今秋には、より具体的・個別的な「第2報」が提出されます。
今般の要望は、(1)入院基本料の適切な引き上げ (2)感染症対応を行うための更なる評価(3)病院におけるICT推進のための評価(4)適切な食事療養費の設定(5)病棟における介護専門職の評価—の5項目です。
まず(1)は、近年のエネルギーコスト・物価の急上昇に対応するため、また医療従事者への適切な処遇改善(つまり給与増)を実現するために、病院収益の柱となる「入院基本料」について大幅な引き上げを求めるものです(関連記事はこちら)。
また(2)は、現下の新型コロナウイルス感染症が5類に移行した後にも病院は「脆弱な患者を守りながら、適切に地域医療を提供し続ける」ことが求められるとともに(関連記事はこちら)、次なる新興感染症対策が第8次医療計画に盛り込まれ(関連記事はこちら)、病院は「適切な感染対策を継続しつづけなけなればならない」ことなどを踏まえ、診療報酬上の評価を求めるものです。
5類移行後の診療報酬について、厚生労働省は▼5月8日からの見直し▼見直し内容等の効果を踏まえた今秋(2023年秋)の見直し▼2024年度改定(恒久点数への組み換え)—という3段階の見直しを行う考えを示しています。今般の日病協要望は3段階目の「2024年度改定(恒久点数への組み換え)」を見据えたものと言えます(関連記事はこちら)。
一方(3)では、「医療DXの推進」の重要性を再確認したうえで、電子カルテ、オンライン資格確認システム、電子処方箋システムなどの導入・維持管理コストが大きな負担となっていること、サイバーセキュリティー体制の構築にも多額の費用がかかることを訴え、「病院におけるICT推進のための適切な評価」を求めています。
なお、2022年度の前回診療報酬改定では、A207【診療録管理体制加算】について▼「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を踏まえた要件見直し(400床以上病院での、専任の医療情報システム安全管理責任者を配置義務化など)▼医療情報システムのバックアップ体制の確保の「望ましい要件」化▼HL7 FHIR(電子カルテ情報を共有等するための標準規格)の導入状況に関する報告要求—などが行われています(関連記事はこちらとこちら)。
また(4)は、「入院時食事療養費が20年以上据え置かれている」一方で、「食材費、光熱費の高騰や人件費の増加」により、近年、ほとんどの病院で病院の給食部門が赤字に陥っていることを踏まえ「入院時食事療養費の適切な水準への引き上げ」を強く求めています(関連記事はこちら)。
さらに(5)では、入院患者の高齢化により「介護が必要な入院患者の割合が高まる」状況に対応するため、国家資格を持った介護福祉士など専門職が「やりがいを持ち専門性を発揮して働ける」環境を整えるために、「病院医療において、適切に介護専門職を位置づけ(例えば基準介護の設定)、適切な評価を行う」ことを求めています(関連記事はこちら)。
中央社会保険医療協議会と社会保障審議会・介護給付費分科会の意見交換会でも、重要論点の1つに位置付けられており、今後の議論に注目が集まります(関連記事はこちら)
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