病棟への「介護専門職」配置により要介護高齢者の入院対応が充実する、2024年度診療報酬改定で評価せよ—日病協
2023.3.20.(月)
急性期病棟においても要介護高齢者の入院患者が多くなっており、看護補助者がケアを行っている。補助者が「介護専門職資格」(介護福祉士等)を保有する場合には、より適切なケアを行い機能低下・寝たきりを防止することが期待でき、看護師の業務負担軽減にもつながる。「病棟における介護専門職配置」を診療報酬で評価する必要がある—。
3月17日に開かれた日本病院団体協議会の代表者会議で、こうした内容を盛り込んだ「2024年度診療報酬改定に向けた要望」が固まったことが、会議終了後の記者会見で小山信彌議長(日本私立医科大学協会会業務執行理事)と山本修一副議長(地域医療機能推進機構理事長)から明らかにされました。近く加藤勝信厚生労働大臣に宛てて提出されます。
光熱水費・人件費の高騰など踏まえた「入院基本料の引き上げ」なども要望
日本病院団体協議会は、日本リハビリテーション病院・施設協会や日本私立医科大学協会、日本病院会など15の病院団体で構成される組織で、主に「診療報酬改定に向けて病院団体の意見をすり合わせ、共同提案・要望を行う」などの活動をしています(もちろん、診療報酬以外の医療の諸課題について議論を行っている)。
2024年度には、診療報酬・介護報酬の同時改定(障害福祉サービス等報酬の改定も加わりトリプル改定でもある)が行われ、すでに中央社会保険医療協議会と社会保障審議会・介護給付費分科会の意見交換会もスタートしており(関連記事はこちら)、6月頃から総論論議(いわゆる第1ラウンド)がスタートすると見込まれています。
日本私立医科大学協会、地域医療機能推進機、日本病院会、全日本病院協会など15の病院団体で構成される日病協では、中医協論議に合わせて要望項目を検討してきており、今般、第1弾の内容がまとまったことが小山議長・山本副議長から明らかにされました。
第1弾要望は次の5項目となる見込みで、近々に加藤厚労相に宛てて提出されます。
(1)入院基本料の適切な引き上げ
→光熱水費、人件費が急騰し、病院経営が極めて厳しくなる中では「入院基本料を適切な水準まで引き上げる」ことが必要不可欠である(関連記事はこちら)
(2)感染症対応のさらなる評価
→新型コロナウイルスは、5類に移行したからといって性状が変わるわけでもなく、病院ではクラスター発生を防止するための「徹底した感染防止対策」を継続しなければならず、コスト増・収益減が続くため診療報酬上の対応が必要不可欠である(関連記事はこちらとこちらとこちら)
(3)ICT化の推進支援
→病院は、電子カルテの標準化(電子カルテ情報を全国の医療機関等で確認・共有できる仕組みの構築、関連記事はこちら)、オンライン資格確認等システム(レセプト情報を全国の医療機関等で確認・共有できる仕組みの充実、関連記事はこちら、電子処方箋(処方箋を電子運用し、リアルタイムに重複投薬・禁忌薬投与などの防止に活かせる仕組みの全国普及、関連記事はこちら)に取り組むことが強く求められており、そこには相応のコスト(初期費用+ランニングコスト)が発生する。とりわけランニングコストについて診療報酬による下支えが必要となる
(4)食事療養費の引き上げ
→食材費、光熱水費、人件費が高騰し、このままでは「病院での食事提供」が困難になってしまう。入院時食事療養費については25年も据え置かれたままであり、引き上げが必要である(関連記事はこちら)
(5)病棟における介護専門職配置の評価新設
→急性期病棟においても要介護高齢者の入院患者が多くなっており、看護補助者がケアを行っている。補助者が「介護専門職資格」(介護福祉士等)を保有する場合、より適切なケアを行い機能低下・寝たきりを防止することが期待でき、看護師の業務負担軽減にもつながる(関連記事はこちら)
いずれも重要な項目ですが、とりわけ(5)の「病棟における介護専門職配置の評価」は、これまで「病院団体がまとまって要望する」ことのなかった「新たな要望項目」と言え、注目が集まります。
なお、この「病棟における介護専門職配置の評価」は、上述した中医協・介護給付費分科会の意見交換会でも議題に上がっています(関連記事はこちら)。しかし意見交換会の資料について、日病協代表者会議では「要介護高齢者の入院医療について『誤嚥性肺炎や尿路感染症が多く、地域包括ケア病棟や介護施設での対応で十分である』と読めてしまい、誤解を招きかねない。傷病のフェイズ(初期は手厚い医療資源投入が必要で、急性期病棟治療が相応しい)への配慮が不十分な記載であり、厚生労働省に修正対応を求めていく」考えで一致したことも小山議長・山本副議長から明らかにされました。意見交換会は4月・5月にも予定されています。
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