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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

医師働き方改革に向け都道府県-医療機関の連携深化、2024年4月以降も勤務医の労働環境・地域医療への影響を注視—医師働き方改革推進検討会

2024.3.15.(金)

医師(勤務医)の働き改革がこの4月(2024年4月)からスタートする。960時間超の時間外労働を可能とするためには「B水準」等の指定を都道府県から受けることが必要となるが、指定の前提となる「医師勤務環境評価センター(以下、評価センター)の評価受審」状況を見ると、昨年(2023年)10月9日時点で「471病院」であったが、本年(2024年)3月11日時点では「483病院」に増加した—。

また、医師働き方改革により診療体制が縮小する見込みの医療機関は、全国で457施設あり、このうち132施設では「自院の診療体制縮小より地域医療提供体制へ影響が出る」と考えていること、248施設では「地域医療提供体制への影響が見通しきれない」と考えていること、さらに49施設では「医師の引き揚げが生じ、診療体制への縮小が見込まれる」と考えていることなどが分かった—。

3月14日に「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(以下、検討会)で、こうした状況報告が行われ、「スタート後も医師の働き方や、地域の医療提供体制などの実態を把握していく」べきことが確認されました。

なお、スタート後に「以前はすべての勤務医が960時間以内に収まると予想していたが、どうも960時間を超える医師が出てきそうだ」などの事態が判明した病院は、直ちに評価受審などに動く必要がある、と厚生労働省担当者は強調しています。

3月14日に開催された「第19回 医師の働き方改革の推進に関する検討会」

2024年4月以降に「960時間の上限から溢れそう」な場合、速やかにB水準申請を

ついに、この4月(2024年4月)から、【医師の働き方改革】がスタートします。すべての勤務医に対して新たな時間外労働の上限規制(原則:年間960時間以下(A水準)、救急医療など地域医療に欠かせない医療機関(B水準)や、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師(C水準)など:年間1860時間以下)を適用するとともに、追加的健康確保措置(▼28時間までの連続勤務時間制限▼9時間以上の勤務間インターバル▼代償休息▼面接指導と必要に応じた就業上の措置(勤務停止など)―など)を講じる義務が医療機関の管理者に課されるものです。

医師働き方改革の全体像(中医協総会1 210721)



新たな時間外労働規制のスタートまで「数週間」に迫る中、スタート前「最後」の検討会が開かれ「医師の働き方改革の施行に向けた進捗状況」や「地域の医療提供体制への影響」などに関する報告が行われました。

まず「評価センターの評価受審」状況を見ると、本年(2024年)3月11日時点で483施設となりました。昨年(2023年)10月9日時点では471施設でしたので、12施設の増加となっています。

B・C水準等指定のベースとなる「評価」の受審状況(医師働き方改革推進検討会1 240314)



申請増加の背景について厚労省は「都道府県が、個々の医療機関に対して『勤務医の働き方の実態はどうか』『長時間労働(960時間超の時間外労働)となる医師は本当にいないのか』『評価受審の必要は本当にないのか』などの働きかけを繰り返し行っていることがある」と見ています。当初は「自院は問題ない。タスクシフトを得て、宿日直許可を取得しているので960時間超の医師はいない」と考える病院であっても、都道府県による繰り返しの働きかけをうけ「もう一度精査してみよう」→「少し怪しい部分があるようだ」→「評価受審をしたほうが良いかな」と意識が高まっているようです。

こうした状況について構成員からは、「病院管理者や勤務医、国民への正しい情報提供をさらに進める必要がある。働き方改革を進めても、患者家族が勤務時間外の説明を求めたのでは医師の労働時間は短縮しない点にも十分に配慮してほしい」(馬場武彦構成員:社会医療法人ペガサス理事長、森正樹構成員:東海大学副学長・医学部長)、「評価受審病院が少ないように感じる。今後の状況を注視し、必要な場合には適切に対応すべき」(鈴木幸雄構成員:横浜市立大学医学部産婦人科客員研究員)などの意見が出されています。

医師働き方改革は「この4月(2024年4月)を乗り切れば終わり」ではありません。後述するようにB水準は段階的に廃止されていきます(段階的に「1860時間」の上限が低くなっていく)し、スタート後(2024年4月以降)に「以前は、すべての勤務医が960時間以内に収まると予想していたが、どうも960時間を超える医師が出てきそうだ」などの事態が判明することもあるでしょう。

厚生労働省は、こうした病院は「直ちに評価受審などに動く必要がある」と強調しており、またこうした事態に速やかに対応するためにも都道府県と各医療機関とのコミュニケーションをさらに強化していくことも重要です。

医師働き方改革による「診療体制縮小」「派遣医師引き揚げ」などで地域医療に影響も

ところで、医師働き改革を進める際には「地域の医療提供体制に悪影響が出るのではないか」との懸念もあります。例えば「救急医療対応を縮小せざるを得ない」「自院のリソースを確保するために、派遣している医師を引き揚げる」などの事態が心配されています。

このため厚労省は都道府県・医療機関(病院、有床診)を対象とした調査を行っており、今回、次のような「第5回調査」の結果が報告されました(「本年(2024年)4月時点の見込み」状況)(第1回調査に関する記事はこちら、第2回・第3回調査に関する記事はこちら、第4回調査に関する記事はこちら)。

▽医師の働き方改革の施行に伴って診療体制の縮小が見込まれる医療機関は457施設

▽457施設のうち、「自院の診療体制の縮小によって地域医療提供体制へ影響がある」と考えている施設は132 、「影響なし」と考えている施設は77、「影響は不明である」と回答した施設は248

▽1860時間超の時間外労働が生じると見込まれる勤務医は「1人」(第4回調査では83人)

▽医師の引き揚げによる診療体制への縮小が見込まれる医療機関は49施設(うち21医療機関が自院の診療体制の縮小により地域医療提供体制への影響もありと回答)(第4回調査では30施設)



「1860時間超の時間外労働」(=違法)となる勤務医はほぼ解消される見込みですが、「医師の引き揚げなどで診療体制を縮小しなければならない、結果、地域の医療提供体制に影響が出る」と考える医療機関が増えている状況がうかがえます。

また、多くの地域医療機関への医師派遣機能を持つ大学病院では「研究時間が短くなっており(今後の医学研究の主力となる助教クラスの半数が「1週間の研究時間が5時間以下」)、将来の我が国の医学・医療水準の低下」が懸念される状況も浮かび上がってきています(関連記事はこちらこちら)。

こうした地域医療への影響を抑えるために、例えば厚労省は「地域医療総合確保基金による『勤務医の労働時間短縮に向けた体制整備』事業の充実」(大学病院や地域の基幹病院など、医師が多く勤務する医療機関での働き方改革支援を充実)を、文部科学省も「大学病院改革に向けた支援の充実」(教育・研究環境の整備、高度な臨床・研究能力を有する医師養成の促進など)を行う予定です。

地域医療介護相互確保基金の充実(医師働き方改革推進検討会2 240314)

大学病院支援1(医師働き方改革推進検討会3 240314)

大学病院支援2(医師働き方改革推進検討会4 240314)

大学病院改革プランのイメージ(医師働き方改革推進検討会5 240314)



この点について構成員からは、「医師働き方改革スタート後(2024年4月以降)も状況を注視してほしい」との声が岡俊明構成員(日本病院会副会長)や島崎謙治構成員(国際医療福祉大学大学院教授)ら多数の構成員から出たほか、「大学病院だけでなく、地域の基幹病院等からも医師派遣は行われており、そうした病院への支援も行ってほしい」(鈴木構成員)との要望が出されています。

上述のとおり「医師働き方改革は、この4月(2024年4月)を乗り切れば終わり」ではなく、厚労省・文科省ともに「状況を引き続き把握し、必要な対応を進める」考えを強調しています。また厚労省担当者は「こうした調査を通じて、都道府県と医療機関とのコミュニケーションがさらに深化してきている」と分析、今後、不測の事態が生じると考えられますが、都道府県・医療機関の連携関係がされることで、こうした事態にも柔軟に対応していけるのではないかと期待されます。

医師働き方改革・地域医療体制改革・医師確保対策は三位一体で進めなければならない

繰り返しになりますが、「医師働き方改革は、この4月(2024年4月)の制度施行で完了する」わけではありません。B水準については「段階的に縮小し、2035年度で終了する」こととされており、A水準・C水準についても「さらなる労働時間の短縮」が求められています(A水準960時間上限は、一般の720時間よりも長い)。

このため「今後も、医師の働き方改革をさらに進めていく」必要があり、厚労省は今後の県とテーマとして、例えば▼さらなる時短推進(医療機関勤務環境評価センターの評価やその活用・支援強化、労務管理に対する意識の向上、医療機関への財政支援など)▼C水準(上限時間の縮減のあり方、中長期的な方向性、技能研修計画の妥当性評価方法、医療機関の教育研修環境など)▼制度の適切な施行・運用(追加的健康確保措置の適切な履行(面接指導/勤務間インターバなど))▼ほか(地域医療提供体制と医師の働き方改革の関係、大学病院における医学教育と医師の働き方改革の関係、国民への周知・啓発など)—が考えられます。

構成員からは、「医療機関勤務環境評価センターの人員拡充、機能充実」(城守国斗構成員:日本医師会常任理事)、「自己研鑽と労働との切り分けなどに関する考え方の標準化」(森構成員)、「地域におけるB水準/C水準の適切な役割分担とその標準化(地域によってC1指定に大きなバラつきがある)」(家保英隆構成員:高知県健康政策部長)、「国民の理解と協力(軽症での救急利用を控えるなど)」(岡構成員)、「大学病院での研究時間確保、2次医療圏の見直しなども含めた地域医療体制改革・働き方改革・医師確保対策の一体的推進」(島崎構成員)、「宿日直許可、自己研鑽の『形骸化』対策」(片岡仁美構成員:京都大学医学研究科医学教育・国際化推進センター)を求める声などが出されています。

地域医療体制改革・働き方改革・医師確保対策は「三位一体」で進める必要があります(関連記事はこちら)。こうした点も踏まえて、上記の課題をどのような場で議論するかも含めた検討が今後、厚労省で進められます。



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