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1860時間超の「違法となる超長時間労働」する医師は激減、大学病院等からの医師引き揚げが懸念される地域医療機関も激減—厚労省

2022.11.16.(水)

大学病院本院において、「自院および兼業・副業先」における時間外労働時間が1860時間を超える医師は、本年(2022年)7-8月調査では56病院・1095名であったが、8-9月調査では8病院・69名に「大幅減少」している―。

大学病院以外も含めた地域全体(病院・有床診療所)で見ると、1860時間を超える時間外労働をする医師は、本年(2022年)7-8月調査では993名であったが、8-9月調査では237名に「大幅減少」している—。

また「大学病院等から医師の引き揚げがあり、診療機能に支障が出かねない医療機関」は、本年(2022年)7-8月調査では303医療機関であったが、8-9月調査では43医療機関に「大幅減少」している—

11月7日に厚生労働省が公表した「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」結果から、こうした状況が明らかになりました。「違法な超長時間労働の是正」と「地域医療の確保」との両立が相当程度進んでいることが伺えます。

第3回目調査結果(相当程度、労働時間短縮などの取り組みが進んでいると伺える)

第3回目調査結果

「違法な超長時間労働の是正」と「地域医療の確保」との両立が進んでいる可能性

Gem Medで繰り返しお伝えしていますが、2024年4月から、【医師の働き方改革】がスタートします。

すべての勤務医に対して新たな時間外労働の上限規制(原則:年間960時間以下(A水準)、救急医療など地域医療に欠かせない医療機関(B水準)や、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師(C水準)など:年間1860時間以下)を適用するとともに、一般労働者と比べて「多くの医師が長時間労働に携わらなければならない」状況に鑑みた、追加的健康確保措置(▼28時間までの連続勤務時間制限▼9時間以上の勤務間インターバル▼代償休息▼面接指導と必要に応じた就業上の措置(勤務停止など)―など)を講じる義務が医療機関の管理者に課されるものです。

医師働き方改革の全体像(中医協総会1 210721)



この点、地域医療機関の間には「大学病院の勤務医について、▼個々の医師の労働時間を短縮しながら、医療提供体制を確保するためには医師の増員が必要であり、「他の病院に派遣している医師の引きあげ」(派遣ストップ)が生じるのではないか▼兼業先・副業先を含めて960時間・1860時間の上限があるため、自院(大学病院)での勤務を優先させ、兼業・副業の制限が生じるのではないか―」などの強い不安があると指摘されます(関連記事はこちらこちら)。

このため、「大学病院を含めた病院が、勤務医の働き方をどの程度把握できているのか、宿日直許可を得られているのか」「大学病院は派遣医師の引き上げを行うとしているのか、派遣を受ける病院はその点を確認できているのか」、さらに「地域の医療提供体制確保について責任を負う都道府県は、管下病院の状況などを適切に把握し、必要な支援を行えているのか」などの実態把握を厚生労働省は行っています。

第1回調査(本年(2022年)4-5月実施)の結果からは「大学病院や都道府県は、状況把握を十分にできていない」という少し困った状況が明らかになりました(関連記事はこちら)。

しかし、第2回調査(本年(2022年)7-8月実施)では、厚労省の都道府県・大学病院への指導等もあり、▼「自院の勤務状況」については100%の把握が行われている▼「兼業先・副業策の勤務状況」については90%の把握が行われている▼副業・兼業先も含めた時間外・休日労働時間数が1860時間相当を超える医師数は1034名(全勤務医の2.4%)▼診療科別に「時間外・休日労働時間数が年通算1860時間相当超の医師」(副業・兼業先も含める)の【割合】を見ると、産婦人科(7.0%)、脳神経外科(5.8%)、外科(5.1%)で多い―ことなどが明らかになりました(関連記事はこちら)。



さらに今般の第3回調査(本年(2022年)7-8月実施)では、第2回調査で「副業・兼業先も含めた時間外・休日労働時間数が1860時間相当を超える医師が存在する」56病院を対象に行われ、次のような状況が明らかになりました。

▽労働時間短縮の取組を実施しても、2024年4月時点で「副業・兼業先も含めた時間外・休日労働時間数が年通算1860時間相当を超える」医師は次のとおり

▼8病院に在籍している
▼合計で69名である

労働時間短縮(業務の整理やタスク・シフトの推進など)により「1860時間を超える超長時間残業を行っている医師」が、この短期間で大きく減少していることが分かります。病院数は56から8に減少(48病院・85.7%減)、医師数は1095名(修正あり)から69名に減少(1026名・93.7%減少)。1860時間を超える時間外労働が生じた場合、当該病院は「違法」となります。このペースで労働時間短縮が進めば、2024年4月時点では「違法となる大学病院は解消される」見込みです。



また、都道府県を対象に「時間外労働が1860時間を超える見込みの医師数」、「医師の引き揚げにより診療機能への支障を来すと見込まれる地域の医療機関数」についても調査を行っており、次のような状況が明らかになりました。

▽労働時間短縮の取り組みを実施しても、2024年4月時点で「副業・兼業先も含めた時間外・休日労働が年通算1860時間相当を超える見込みの医師」数(県内の医師全体を把握、47都道府県すべてで把握)は「237名」(病院勤務医:204名、有床診療所勤務医:33名)

▽医師の引き揚げによる診療機能への支障が見込まれる医療機関数は「43医療機関」(県内の医療機関全体を把握、46都道府県で把握)

前者の「1860時間超の時間外労働をする医師」は、第2回調査では「993名」(病院勤務医:886名、有床診療所勤務医:107名)であったことから、次のように大きく減少していることが分かります。各医療機関において「労働時間の短縮」に向けた取り組みが進んでいると言えるでしょう。

▼全体:993名→237名(756名・76.1%減)
▼病院:886名→204名(682名・77.0%減)
▼有床診療所:107名→33名(74名・69.2%減)



後者の「医師引き揚げにより診療機能に支障が出かねない医療機関数」は、第2回調査では「303医療機関」であったことから、やはり大きく減少していると言えます。大学病院等の「地域医療確保に向けた配慮」などの調整が進んでいると伺えます。

▼303医療機関→43医療機関(260医療機関・85.8%減)



このように「違法な超長時間労働の是正」と「地域医療の確保」との両立が相当程度進んでいる状況には、一定の「安堵」を覚えます。

ただし、第2回調査結果が報告された社会保障審議会・医療部会では「『一定時間を超える時間外労働はカウントしない』などの事態が生じているのではないか」との指摘もあります(いわゆる「サービス残業」実施を迫られている可能性、関連記事はこちら)。こうした事態に陥っていないのかも含めて、今後も「実態把握」をしっかりと行ってき、必要に応じた対応(医療機関の指導や支援)を行っていくことに期待が集まります。



2024年4月まで本当に時間がありません(2年を切っている)。国・自治体・医療機関・医療従事者・国民のすべてが協力して、医師働き方改革実現(つまり「医師の健康確保」と「地域医療の確保」との両立)に向けて動くことが重要です。



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