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大学病院等の一部で「派遣医師の引きあげ」検討、2次救急病院も積極的に宿日直許可取得を―社保審・医療部会(1)

2022.6.6.(月)

2024年4月から、勤務医の新たな時間外労働規制がスタートする。このため「派遣医師の引きあげ」などを検討している大学病院等も一部あることが分かってきた。ただし病院全体の状況・都道府県の状況は明らかになっておらず(病院・都道府県がそもそも状況を把握できていない)、今後、早急に実態を明らかにし、必要な対応を検討していかなければならない―。

また、宿日直許可基準について「救急病院は取得できない」などのルールは存在しない(実際に2次救急病院が宿日直許可を得ているケースもある)。病院サイドも様々な工夫を行い、また国も様々なアドヴァイスをする必要がある—。

6月3日に開催された社会保障審議会・医療部会で、こうした議論が行われました。2024年4月まで残された時間はわずかであり、関係者が一丸となって協力し、「医師の健康確保」と「地域医療の確保」とを実現しなければなりません。

6月3日に開催された「第88回 社会保障審議会 医療部会」

「派遣医師の引きあげ」を検討している大学病院等も一部ある、地域医療への影響は・・・

Gem Medで繰り返しお伝えしていますが、2024年4月から、【医師の働き方改革】がスタートします。

すべての勤務医に対して新たな時間外労働の上限規制(原則:年間960時間以下(A水準)、救急医療など地域医療に欠かせない医療機関(B水準)や、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師(C水準)など:年間1860時間以下)を適用するとともに、一般労働者と比べて「多くの医師が長時間労働に携わらなければならない」状況に鑑みた、追加的健康確保措置(▼28時間までの連続勤務時間制限▼9時間以上の勤務間インターバル▼代償休息▼面接指導と必要に応じた就業上の措置(勤務停止など)―など)を講じる義務が医療機関の管理者に課されるものです。

医師働き方改革の全体像(中医協総会1 210721)



この点、大学病院の勤務医について▼個々の医師の労働時間を短縮しながら、医療提供体制を確保するためには医師の増員が必要であり、「他の病院に派遣している医師の引きあげ」(派遣ストップ)が生じるのではないか▼兼業先・副業先を含めて960時間・1860時間の上限があるため、自院(大学病院)での勤務を優先させ、兼業・副業の制限が生じるのではないか―などという不安を地域医療の現場は抱えています。

実際に、慶應義塾大学健康マネジメント研究科の裵英洙特任教授らの研究班が行った「医師の働き方改革の地域医療への影響に関する調査」では、「副業・兼業先病院での待機時間を含めると、相当程度の大学病院勤務医において、時間外労働が1860時間超となってしまう」ことなどが明らかになっています(関連記事はこちらこちら)。

もっとも、「待機時間」について「ほとんど患者がこない」などの状況であれば、宿日直許可を得ることで「待機時間を労働時間に含めない→時間外労働を1860時間以内に収める」ことも可能になってきます。

こうした点を踏まえると、「大学病院を含めた病院が、勤務医の働き方をどの程度把握できているのか、宿日直許可を得られているのか」「大学病院は派遣医師の引き上げを行うとしているのか、派遣を受ける病院はその点を確認できているのか」、さらに「地域の医療提供体制確保について責任を負う都道府県は、管下病院の状況などを適切に把握し、必要な支援を行えているのか」が気になります。こうした状況把握ができていれば「課題への対応」を検討するフェーズに移れますが、状況把握ができていなければ対応のしようがないためです。

そこで今般、厚生労働省医政局医事課の山本英紀課長は都道府県・病院を対象に「働き方改革の状況をどの程度把握できているか」を調査。その結果、次のような点が明らかになりました。

▽病院(回答3163)において「兼業先・副業先も含めた時間外労働等の状況を把握できている」のは39%(1394病院)

▽大学病院本院(82)において「兼業先・副業先も含めた時間外労働等の状況を把握できている」のは24%(20病院)

兼業先・副業先を含めて「全勤務医の労働状況を把握している」病院は多くない(社保審・医療部会(1)1 220603)



▽「兼業先・副業先も含めた時間外労働等の状況を把握できている」病院(1394)のうち、「2024年4月以降も、1860時間を超える時間外労働が発生してしまう医師が存在する」病院は1%、「2024年4月以降も、960時間超1860時間以内の時間外労働が発生してしまう医師が存在する」病院は11%

▽「兼業先・副業先も含めた時間外労働等の状況を把握できている」大学病院(20)のうち、「2024年4月以降も、1860時間を超える時間外労働が発生してしまう医師が存在する」大学病院は5%、「2024年4月以降も、960時間超1860時間以内の時間外労働が発生してしまう医師が存在する」病院は65%

1860時間を超える時間外労働が見込まれる医師が、一部ではあるが存在する(社保審・医療部会(1)2 220603)



▽「2024年4月以降に960時間を超える時間外労働が発生してしまう医師が存在する」病院(529病院)のうち、宿日直許可を取得しているのは32%、申請予定が44%だが、16%が申請予定なし

▽「2024年4月以降に960時間を超える時間外労働が発生してしまう医師が存在する」大学病院(69病院)のうち、宿日直許可を取得しているのは67%、申請予定が17%だが、12%が申請予定なし

960時間を超える時間外労働が必要な医師がいるにもかかわらず「宿日直許可の申請」すらしていない病院もある(社保審・医療部会(1)3 220603)



▽医師派遣を行っている大学病院(68)のうち、4病院が「常勤医師派遣の中止・削減」を、6病院が「常勤→非常勤化」を、2病院か「非常勤医師派遣の中止・削減」を予定している

▽医師派遣を行っている地域医療支援病院(110)のうち、2病院が「常勤医師派遣の中止・削減」を、7病院か「非常勤医師派遣の中止・削減」を予定している

「派遣医師の引きあげ」を考えている大学病院・地域医療支援病院も一部にある(社保審・医療部会(1)4 220603)



▽管内地域における「医師働き方改革による医療提供体制への影響」把握を行っている都道府県は6、「今後行う予定」を含めても28にとどまる(一部でも把握できていれば「把握している」とカウントしており、実態はさらに厳しいものと思われる)

▽40の都道府県(85%)において、「小児」「周産期」「救急」医療提供体制への医師の働き方改革の影響が把握できていない(同)

「医師働き方改革による地域医療への影響」を把握している都道府県は一部である(社保審・医療部会(1)5 220603)



こうした調査結果を受けて山本医事課長は、「今回の調査では病院の準備状況等、総合的な評価を行うことは困難である(評価を行うデータが揃わない)」「大学病院に対し、今夏(2022年夏)に向けて状況を適切に把握するよう依頼し、その後、改めて状況調査を行う」との考えを示しました。

「残り2年を切っている」中で、状況把握が十分に進んでいないことに衝撃を受けます。医療部会委員も同様に受け止めており、「早急に実態把握を進め、医師働き方改革の実行によって地域医療に深刻な影響がでないような支援・指導を行う」よう厚労省に求める声が多数だされました。例えば、内堀雅雄(全国知事会、福島県知事)や都竹淳也(全国市長会、岐阜県飛騨市長)、遠藤直幸委員(全国町村会、山形県山辺町長)の自治体代表委員からは「派遣医師の引きあげを検討している病院もあり、離島やへき地などでは、医師働き方改革により医師不足がさらに深刻化する。地域医療に混乱が生じないような対応をしてほしい」と要望。

また状況把握の難しさを指摘し、「調査の工夫」を求める声も出ています。相澤孝夫委員(日本病院会会長)は「医師派遣は、大学単位でも診療科単位でもなく『第1外科』『第2外科』などの単位で行われることが多い。大学単位で派遣の状況を聞いても必ずしも実態等を把握できない可能性があり、調査には工夫が必要である」と指摘。また釜萢敏委員(日本医師会常任理事)も「宿日直許可について、診療科単位の実態などを詳しく見る必要がある」とコメントしています。

救急病院でも宿日直許可取得が可能、病院側も工夫を行い、国もアドヴァイスを

さらに、状況把握が不十分な中でも「宿日直許可の取得等が十分に進んでいない」点を危惧する委員も少なくありません。

「宿日直許可」については、2019年7月に厚労省が通知「医師、看護師等の宿日直許可基準について」を示し、「医師・看護師等の宿日直は『通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のもの』で、『特殊の措置を必要としない軽度または短時間の業務』実施のみを行う場合に限って認められる。例えば、夜間の救急搬送患者が常に多く、それに少ない宿直医等で対応しなければならないなど『通常の業務と同態様の業務が稀でない』ような場合には、宿日直は認めらない」などの考えを整理しています。

宿日直許可が認められなければ、夜間に行う業務などは「夜勤」、つまり「労働時間」(時間外労働)と扱われ、960時間・1860時間の制限をクリアすることが難しくなってくるため、木戸道子委員(日本赤十字社医療センター第一産婦人科部長)は「宿日直許可を申請しない病院は、救急対応を行うことが難しくなる。救急指定の返上などをせざるを得ないのではないか」とコメント。これに対し加納繁照委員(日本医療法人協会会長)は「自院(加納総合病院、大阪府)も年間5000件の救急搬送を受け入れる2次救急病院だが宿日直許可を得られている。『救急病院は宿日直許可を得られない』わけではない」ことを紹介するとともに、▼全国の2次救急病院では、様々な工夫をして宿日直許可を得る必要がある▼厚生労働省も各病院に対し宿日直許可取得に向けたアドヴァイスを行ってほしい―と強く要請しています。厚労省では、この4月(2022年4月)から「医療機関からの宿日直許可申請に関するWEB相談窓口」を設置しており、さらなる周知と積極的な活用に期待が集まります。

あわせて加納委員は「大学病院では連携B取得を推進すべき」とも進言しています。連携B水準は、まさに大学病院等での医師引きあげが生じないように「自院と兼業先との合計で960時間超の時間外労働を可能とする」ものです。



このほか、▼自治体病院では、個別病院が相当に準備・対応を進め、労働時間も短縮してきているが、「1院ではどうにもできない」問題(例えば地域の病院が少なく、特定病院に患者がどうしても集中するなど)もある。国と都道府県が「地域の医療提供体制をどうするのか」を今以上に真剣に考え、必要な対応をとってほしい(小熊豊委員:全国自治体病院協議会会長)▼都道府県サイドには「何から手を付ければ良いのか分からない」という思いがあるのではないか。国(厚労省)がより具体的に「まずこれを行い、次にこれを行う」「宿日直許可についても、ここまでは相談可能だが、ここから先は譲れない」「管理者である院長による宿日直が増えないような、地域でのネットワークづくりを行う」などの説明・指導等を強化する必要がある(島崎謙治構成員:国際医療福祉大学大学院教授)▼国民・患者サイドが何をなすべきか、医療現場の状況はどうなっているのかなどを、より分かりやすく国民に情報提供してほしい(野村さちい委員:つながるひろがる子どもの救急代表)—などの声も出ています。



繰り返しになりますが、2024年4月まで本当に時間がありません(2年を切っている)。国・自治体・医療機関・医療従事者・国民のすべてが協力して、医師働き方改革実現(つまり「医師の健康確保」と「地域医療の確保」との両立)に向けて動くことが重要です。



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