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病床機能報告 DPC特定病院群への昇格・維持のために今やるべきこと

医療のグランドデザインが不明確なため医療機関が将来に不安を感じ、機能転換などが十分に進まないのでは—日病・相澤会長

2024.9.5.(木)

新たな地域医療構想論議が進んでおり、9月下旬にも「日本病院会の提言」をまとめ、提出する。そこでは「医療法における医療計画と地域医療構想の関係」「構想区域の考え方」「2次医療圏の在り方」などを抜本的に見直す必要性を指摘する予定である—。

また個人的な見解であるが、「医療のグランドデザインが不明確なため医療機関が将来に不安を感じ、機能転換などを進められない」という問題があると考えている—。

日本病院会の相澤孝夫会長が9月3日に定例記者会見を開き、こうした考えを述べました。

新たな地域医療構想については、厚労省の「新たな地域医療構想等に関する検討会」で議論が進められており、今秋(2024年秋)に中間とりまとめを行い、年内(2024年内)に最終とりまとめがなされる予定です。

9月3日の定例記者会見に臨んだ日本病院会の相澤孝夫会長

9月下旬にも、新たな地域医療構想に関する「日本病院会の提言」をまとめる

2040年頃を念頭においた「新たな地域医療構想」策定論議が「新たな地域医療構想等に関する検討会」(以下、新検討会)で進められています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

2025年度には団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達することから、急速な医療ニーズの増加・複雑化に対応できる効果的・効率的な医療提供体制を地域ごとに構築するため、【地域医療構想】の実現が求められています(関連記事はこちら)。

さらに2025年以降は、高齢者人口そのものは大きく増えない(高止まりしたまま)ものの、▼85歳以上の高齢者比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、認知症高齢者の比率が高まる)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)—ことが分かっています。少なくなる一方の若年世代で、多くの高齢者を支えなければならず、「効果的かつ効率的な医療提供体制」の構築がますます重要になってきます。

また、こうした人口構造の変化は、地域によって大きく異なります。ある地域では「高齢者も、若者も減少していく」ものの、別の地域では「高齢者も、若者もますます増加していく」、さらに別の地域では「高齢者が増加する一方で、若者が減少していく」など区々です(関連記事はこちら)。

そこで、2025年以降、2040年頃までを見据えた「医療提供体制の新たな設計図」(ポスト地域医療構想、新地域医療構想)作成に向けた議論が進められているのです(関連記事はこちら)。



検討会では、今秋(2024年秋)に中間とりまとめを、年内(2024年内)に最終とりまとめを行う予定で議論が進められており、日病でもこのスケジュールに間に合うように考え方・提言をとりまとめるべく幹部での議論が進められています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

9月3日の定例記者会見で相澤会長は、例えば次のような方向で日病幹部の議論が進んでいることを紹介しました。

厚労省の検討会で示された「新たな地域医療構想を通じて目指すべき医療」の方向は概ね了解でき、この方向で議論を進めるべきである

▽新地域医療構想で、「医療のグランドデザイン、将来の医療提供体制の方向」を描き、現状との乖離・現状の課題をどう解決していくかという視点で議論していくことが重要である

▽地域医療構想区域については、次のような方向で検討・設定していくべき
▼85歳以上の高齢者が急増し、内科系の急性期医療ニーズ、救急搬送ニーズ、医療・介護等の複合ニーズが増える。そうした中では、現在の2次医療圏よりも「小さな単位・エリア」で医療・介護・福祉・生活支援サービスの連携を進める
▼一方、こうした小さな単位・エリアでは賄いきれない医療、具体的には高度手術など医療資源を多く使う医療や、減少していく65歳未満の現役世代の医療などに対し、適切なエリアを設定する

地域医療構想は「2040年頃を見据えた将来の医療提供体制像」、医療計画は「直近6年間を見た医療提供体制像」という役割分担をするのであれば、医療法や医療介護総合確保法(地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律)の規定・立て付けを見直す必要がある
→具体的には、「医療介護総合確保法に『将来の医療、介護提供体制をどう考えるか』を規定し、それを踏まえて医療計画や介護保険事業(支援)計画を策定する」という立て付けにすべきである

▽さらに「外来医療提供体制にかかる構想」や「地域医療介護総合確保基金の在り方」などもより明確化していくべきである

日病では、さらに議論を深めて9月下旬にも提言をまとめる考えです。



ところで、厚労省の検討会では次のようなデータが示され、新たな地域医療構想の策定に向けて「病院経営」の視点も重要となるとの考えが示されました。
▽一般病院等の医業利益率は低下している(病床利用率の低下)

病院の経営状況(新地域医療構想検討会7 240826)



▽2020年から2040年にかけて、全ての診療領域において、半数以上の構想区域で手術件数が少なくなる

手術件数の変化(新地域医療構想検討会8 240826)



人口減が進む中、とりわけ地方では「患者そのものが減少する→診療報酬の算定回数も減少する→医療機関経営が厳しくなる」という状況が顕在化してきます。このため検討会では、「必要に応じて現行の構想区域を越えて一定の症例や医師を集約して、医師の修練や医療従事者の働き方改革を推進しつつ、高度医療・救急を提供する体制の構築を目指す」などの方向が示されています。

この点について相澤会長は「個人的な見解である」と前置きしたうえで、「現在、診療報酬で医療提供体制を誘導しているが、将来の医療提供体制の姿が見えず、医療現場は大きな不安を抱えている。このため、将来に向けた機能見直しなどよりも、『目の前の患者への対応をしっかり行うこと』に終始してしまう。新たな地域医療構想で『将来の医療提供体制の姿』を明確にし、そのうえで『どのような機能を持つ医療機関であっても経営が維持できるような診療報酬上の手当てを行う』という方針をしっかり示すことが重要である。医療提供体制と医療機関経営とは密接に関連している」との考えを強調しました。▼将来の絵姿が見えず、「●●の方向に進んだ場合の報酬上の保証」もなされていない→▼自院がどの方向に進むべきかを定められない→▼機能見直しが進まない—という問題にどういった解決策を見出していくのか、今後の議論に注目する必要があります。



なお、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、機能再編や経営強化プランを策定する公立病院を支援するサービスメニューも準備しています。

GHCが「先行して新公立病院改革プラン改訂を行った病院」(市立輪島病院:石川県輪島市)を支援したところ、「入院単価の向上」「戦略的な病床機能強化の推進」などが実現されています。「経営強化」「機能強化」を先取りして実現している格好です。

ガイドラインでは「外部アドバイザーの活用も有効である」と明示していますが、コンサルティング会社も玉石混交で「紋切り型の一律の改革プランしかつくれない」ところも少なくありません。この点、GHCでは「膨大なデータとノウハウ」「医療政策に関する正確かつ最新の知識」をベースに「真に地域で求められる公立病院となるための経営強化プラン」策定が可能です。

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従前より「地域単位での医療提供体制見直し」に着目してコンサルティングを行っているGHCマネジャーの岩瀬英一郎は「従来通りの考えにとどまらず、より緻密な分析を行い、戦略をもった検討をベースとして『地域に必要とされる公立病院の姿』を個々の病院の実情に合わせて検討する必要がある」と強調しています。



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