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GemMed塾 「看護必要度」新制度シミュ―レーション

コロナ禍で指導・監査の件数は大幅減少したが、保険指定取り消し等に大きな変化なし―2020年度指導・監査実施状況

2022.1.14.(金)

2020年度に個別指導を受けた保険医療機関等は前年度から61.9%減の1797件。新型コロナウイルス感染症の影響で診療行為そのものが大きく減少したことなどが背景にあると思われる―。

またコロナ感染症拡大防止のために、集団的個別指導はゼロ件となった―。

さらに、監査を受けた保険医療機関等は▼医科:16件▼歯科:23件▼薬局:7件―の合計46件で、前年度から16.4%減―。

一方、保険指定取り消し処分などを受けた医療機関等は19件(前年度から2件減)、医師等は18人(3人増)で前年度と大きく変わっていない―。

こうした状況が、1月13日に厚生労働省が発表した2020年度の「保険医療機関等の指導・監査等の実施状況」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)(関連記事はこちら(2019年度)こちら(18年度)こちら(17年度)こちら(16年度)こちら(15年度)こちら(14年度)こちら(13年度))。

指導・監査などにより返還された診療報酬は、合計で59億5925万円となっています。

2020年度はコロナ感染症の影響で個別指導は1797件、集団的個別指導をゼロ件

保険証(被保険者証)を提示して医療を受ける場合、我々患者は年齢・収入により、かかった医療費の1-3割を負担するのみで済みます。残りの9-7割は他者(医療保険者や国、自治体)が負担しています。

このように保険診療は、▼公費(税金)▼保険料▼患者の一部負担―の財源を組み合わせて成り立っており、我々国民(医療保険の加入者)は「ケガや病気の際に皆が納めたお金」によって低廉な負担(1―3割負担)で良質な医療を受けられます。したがって財源(医療費)の配分は「適正」に行われなければなりません。

この適正配分のためのルール(診療 → レセプト請求 → 支払いのルール)が健康保険法、療養担当規則、診療報酬点数表などで厳格に定められているのです。このルールに従わない保険医療機関や保険医は、すなわち「皆が納めたお金(医療費)を不正に受給している」こととなりペナルティが科されます。最も重いペナルティとしては保険指定の取り消し、つまり「保険診療からの退場命令」です。

厚労省は、保険医療機関がこうしたルールを遵守しているかどうかを定期的に確認し、違反などが疑われる場合には、指導や監査を行っています。

「指導」には次の3種類があります。
(1)集団指導:新規に保険指定を受けた医療機関や医師などを対象に、保険ルールを説明する講習会
(2)個別指導:違反などが疑われる医療機関を呼び出し、面接懇談方式で、保険ルールを遵守するよう指導する(新規に保険指定を受けた医療機関を対象とする「新規個別指導」もある)
(3)集団的個別指導:保険請求金額が高額な医療機関を一定の場所に集め、簡便な面接懇談方式で、保険ルールを遵守するよう指導する



昨年度(2020年度)に(1)の個別指導(新規個別指導を除く、以下同)を受けた保険医療機関等は1797件で、前年度から2918件・61.9%の大幅減となりました。コロナ感染症の影響で患者受診(=診療機会)が大きく減少し、保険診療上の違反も必然的に減少したものと考えられます。

内訳は、▼医科:530件(前年度比1109件・67.7%減)▼歯科:525件(同823件・61.1%減)▼薬局:742件(同986件・57.1%減)―となっています。



また、個別指導を受けた保険医等は2410人で、前年度から1万2465人・83.8%の大幅減。内訳は、▼医師:688人(前年度比8913人・92.8%減)▼歯科医師:681人(同1799人・72.5%減)▼薬剤師:1101人(同16934人・60.6%減)―となりました。やはりコロナ感染症の影響と考えられます。



一方、集団的個別指導はゼロ件です。コロナ感染症の拡大を避けるために、多くの医療関係者を集合させることを避けたものです。

2020年度における指導の状況(2020年度指導・監査1 220113)

46医療機関等・保険医等82人に監査を実施、保険指定取り19件・18人

著しいルール違反が疑われる場合には「監査」によって事実関係が調査されます。その中でルール違反が確認されれば、違反の程度に応じて「保険指定取消」「戒告」「注意」のいずれかの処分が行われます。

昨年度(2020年度)に監査を受けた保険医療機関等は46件で、前年度に比べて9件・16.4%減となりました。内訳は、▼医科:16件(前年度比2件・11.1%減)▼歯科:23件(同5件・17.9%減)▼薬局:7件(同2件・22.2%減)―となっています。

また監査を受けた保険医等は82人で、前年度に比べて47人・36.4%減となりました。内訳は、▼医師:25人(前年度比38人・60.3%減)▼歯科医師:36人(同9人・20%減)▼薬剤師:21人(同増減なし)―でした。

「指導」ほどではないもの、「監査」も件数・人数が一定程度減少しておりコロナ感染症の影響がありそうです。

また、監査の結果、ルール違反が確認され「保険指定取消」となった保険医療機関等は11件(前年度から増減なし)、取消処分が決定する前に自ら保険指定を辞退した分(指定取消相当)は8件(同2件減)で、両者を合計した「保険指定の資格喪失」件数は19件(同2件減)となりました。

内訳を見ると、指定取り消しは▼医科:1件(前年度比3件減)▼歯科:10件(同6件増)▼薬局:0件(同3件減)―、指定取り消し相当は▼医科:3件(同増減なし)▼歯科:5件(同2件増)▼薬局:ゼロ件(同増減なし)―という状況です。

また保険指定取消(2020年度は指定取消相当はゼロ)となった保険医等は18人(前年度比3人増)で、内訳は、▼医師:4人(同2人減)▼歯科医師:14人(同5人増)▼薬剤師:ゼロ人(同増減なし)―となっています。

指導や監査と異なり、保険指定取り消し等の状況は前年度と大きく変わっていない(医師等では増加している)点が興味深いところです。「重大なルール違反は環境によらず生じており、必ず制裁を受けている」と考えるべきなのか、など詳しい分析が期待されます。



保険指定取り消しとなった医療機関の事例を見ると、「行っていない診療行為を請求していた」(いわゆる架空請求)、「実際に行った保険診療に、行っていない診療行為を追加して請求した」(いわゆる付増請求)、「保険診療で認められない診療行為を、保険診療を装って請求していた」などがあります。こうした不正請求については診療報酬の返還請求がなされ、2020年度の返還金総額は59億5925万円(前年度比49億1430万円減)となりました。ここでもコロナ感染症の影響(診療機会が少なくなっている)があると考えられます。

監査による返還金額が4億8459万円(前年度比19億1746万円減)、適時調査(医療機関等が施設基準等を守っているか確認する調査)による返還金額が26億872万円(同24億3780万円減)、指導による返還金額が28億6594万円(同5億6904万円減)という内訳です。

保険指定取り消し等の端緒(きっかけ)は、▼保険者や医療機関の従事者、患者等からの情報提供:12件▼新聞報道や指導など:7件―となっています。

2020年度における監査や保険指定取り消しなどの状況(2020年度指導・監査2 220113)



保険者の多くは、加入者に向けて「あなたの今月の医療費は●●円です」という通知(医療費通知)を行っています。冒頭に述べたように「医療費の財源は国民全員のお金であり、適正な受診が求められる(はしご受診などの、いわゆるドクターショッピングは好ましくない)」という注意喚起の役割を果たします。同時に、医療費通知を見た加入者が「私は今月はこの医療機関にかかっていない。なぜ医療費が発生しているのか」という具合に不正請求を発見する重要なツールにもなっています。「情報公開」が様々な面で重要であることを確認できます。



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