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長引くコロナ禍で個別指導は減少するも感染対策のうえで集団的個別指導を再開、26施設・16人を保険指定取り消し―2021年度指導・監査

2023.1.19.(木)

2021年度に個別指導を受けた保険医療機関等は前年度から41.6%減の1050件。長引く新型コロナウイルス感染症の影響で個別指導の件数は減少している―。

一方、新規の個別指導、集団的個別指導については感染対策を十分に行ったうえで実施を再開・拡充している(集団的個別指導は20年度はコロナ感染症拡大防止のために実施していなかった)―。

さらに、監査を受けた保険医療機関等は▼医科:20件(前年度から4件増)▼歯科:24件(同1件増)▼薬局:7件(同増減なし)―の合計51件で、前年度から10.9%増加した―。

また、保険指定取り消し処分などを受けた医療機関等は26件(前年度から7件減)、医師等は16人(同2人減)となった。

なお、監査の結果、返還された診療報酬は、合計で48億4051万円となり、その中には「虚偽の施設基準届け出」などを行い、10億円を超える不正請求をしていた医療機関もあった―。

こうした状況が、1月17日に厚生労働省が発表した2021年度の「保険医療機関等の指導・監査等の実施状況」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)(関連記事はこちら(2020年度)こちら(2019年度)こちら(18年度)こちら(17年度)こちら(16年度)こちら(15年度)こちら(14年度)こちら(13年度))。

コロナ禍で個別指導件数は減少、ただし感染対策を行い集団的個別指導を再開

保険証(被保険者証)を提示して医療を受ける場合、我々患者は年齢・収入により、かかった医療費の1-3割を負担するのみで済みます。残りの9-7割は他者(医療保険者や国、自治体)が負担しています。

このように保険診療は、▼公費(税金)▼保険料▼患者の一部負担―の財源を組み合わせて成り立っており、我々国民(医療保険の加入者)は「ケガや病気の際に、普段から皆が納めたお金」によって低廉な負担(1―3割負担)で良質な医療を受けられます。したがって財源(医療費)の配分は「適正」に行われなければなりません。

この適正配分のためのルール(「診療 → レセプト請求 → 支払い」に関するルール)が健康保険法、療養担当規則、診療報酬点数表などで厳格に定められているのです。このルールに従わない保険医療機関や保険医は、「皆が納めたお金(医療費)を不正に受給している」こととなりペナルティが科されます。最も重いペナルティとしては保険指定の取り消し、つまり「保険診療からの退場命令」となっています。

厚労省は、保険医療機関がこうしたルールを遵守しているかどうかを定期的に確認し、違反などが疑われる場合には、指導や監査を行っています。

「指導」には次の3種類があります。
(1)集団指導:新規に保険指定を受けた医療機関や医師などを対象に、保険ルールを説明する講習会
(2)個別指導:違反などが疑われる医療機関を呼び出し、面接懇談方式で、保険ルールを遵守するよう指導する(新規に保険指定を受けた医療機関を対象とする「新規個別指導」もある)
(3)集団的個別指導:保険請求金額が高額な医療機関を一定の場所に集め、簡便な面接懇談方式で、保険ルールを遵守するよう指導する



昨年度(2021年度)に(2)の個別指導(新規個別指導を除く、以下同)を受けた保険医療機関等は1050件で、前年度から747件・41.6%の減少となりました。長引くコロナ感染症の影響で一部指導が実施できないことが背景にあるようです。

内訳は、▼医科:307件(前年度比223件・43.1%減)▼歯科:372件(同148件・28.2%減)▼薬局:371件(同371件・50.0%減)―となっています。



また、個別指導を受けた保険医等は1546人で、前年度から864人・35.9%減少しています。内訳は、▼医師:439人(前年度比249人・36.2%減)▼歯科医師:521人(同160人・23.5%減)▼薬剤師:586人(同515人・46.8%減)―となりました。やはりコロナ感染症の影響と考えられます。



一方、集団的個別指導は、前年度にはコロナ感染症拡大を避けるために「ゼロ件」となっていましたが、21年度には感染対策を十分に行ったうえで再開。全体で1万6290件(コロナ禍前の2019年度に比べて3132件増)で、内訳は▼医科:6579件(同2136件増)▼歯科:5235件(同528件増)▼薬局:4476件(同468件増)―という状況です。新規個別指導の件数も前年度に比べて大きく増加しています。

2021年度における指導の状況

51施設の医療機関等・104名の保険医等に監査を実施、保険指定取りは26件・16人

著しいルール違反が疑われる場合には「監査」によって事実関係が調査されます。その中でルール違反が確認されれば、違反の程度に応じて「保険指定取消」「戒告」「注意」のいずれかの処分が行われます。

昨年度(2021年度)に監査を受けた保険医療機関等は51件で、前年度に比べて5件・10.9%増となりました。内訳は、▼医科:20件(前年度比4件・25.0%増)▼歯科:24件(同1件・43.5%増)▼薬局:7件(同増減なし)―となっています。

また監査を受けた保険医等は104人で、前年度に比べて22人・26.8%減となりました。内訳は、▼医師:51人(前年度比26人・100.4%増)▼歯科医師:36人(同増減なし)▼薬剤師:17人(同4人・19.0%減)―でした。

感染対策を十分に行ったうえで「監査」も実施されている状況と言えるでしょう。

また、監査の結果、重大なルール違反が確認され「保険指定取消」となった保険医療機関等は9件(前年度から2件減)、取消処分が決定する前に自ら保険指定を辞退した分(指定取消相当)は17件(同9件増)で、両者を合計した「保険指定の資格喪失」件数は26件(同7件増)となりました。

内訳を見ると、指定取り消しは▼医科:2件(前年度比1件増)▼歯科:6件(同4件減)▼薬局:1件(同1件増)—、指定取り消し相当は▼医科:6件(同6件増)▼歯科:8件(同3件増)▼薬局:3件(同3件増)―という状況です。

また保険指定取消・取消相当となった保険医等は16人(前年度比2人減)で、内訳は、指定取り消しで▼医師:3人(同1人減)▼歯科医師:10人(同4人減)▼薬剤師:ゼロ人(同増減なし)、取り消し相当で▼医師:ゼロ人(同増減なし)▼歯科医師:3人(同3人増)▼薬剤師:ゼロ人(同増減なし)―となっています。

依然として「重大なルール違反」が一定数存在しています。医療費財源は、上述したように「皆が病気・ケガのために備えて納めている」ものです。ルール違反により、多く配分を受けようと考えることは、厳に慎まなければなりません。



保険指定取り消しとなった医療機関の事例を見ると、「行っていない診療行為を請求していた」(いわゆる架空請求)、「実際に行った保険診療に、行っていない診療行為を追加して請求した」(いわゆる付増請求)、「保険診療で認められない診療行為を、保険診療を装って請求していた」などがあります。こうした不正請求については診療報酬の返還請求がなされ、2021年度の返還金総額は48億4051万円(前年度から11億18742万円減)となりました。この中には「虚偽の看護師配置や平均在院日数などの施設基準を届け出て診療報酬を不正に受給しており、10億円を超える返還を求められた」石川県の病院も含まれています(この病院は2021年7月に廃止)。

返還の内訳は、監査による返還金額が12億9617万円(前年度比8億1158万円増)、適時調査(医療機関等が施設基準等を守っているか確認する調査)による返還金額が20億7423万円(同5億3449万円減)、指導による返還金額が14億7010万円(同13億9584万円減)という内訳です。

保険指定取り消し等の端緒(きっかけ)は、▼保険者や医療機関の従事者、患者等からの情報提供:19件▼警察の摘発など:7件―となっています。

2021年度における監査の状況



保険者の多くは、加入者に向けて「あなたの今月の医療費は●●円です」という通知(医療費通知)を行っています。冒頭に述べた「医療費の財源は国民全員のお金であり、適正な受診が求められる(はしご受診などの、いわゆるドクターショッピングは好ましくない)」という注意喚起の役割を果たします。それと同時に、医療費通知を見た加入者が「私は今月はこの医療機関にかかっていない。なぜ医療費が発生しているのか」などという具合に不正請求を発見する重要なツールにもなっています。「情報公開」が様々な面で重要であることを確認できます。



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