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燕労災病院や三条総合病院等、岩見沢市立総合病院と北海道中央労災病院の再編・統合などを国が重点支援―厚労省

2020.8.26.(水)

北海道の南空知区域において、岩見沢市立総合病院と北海道中央労災病院の再編・統合を、また同じく南檜山区域において、北海道立江差病院・厚沢部町国民健康保険病院・乙部町国民健康保険病院・奥尻町国民健康保険病院などの再編・統合を、新潟県の県央区域において、燕労災病院・三条総合病院・加茂病院・吉田病院・済生会三条病院の再編・統合などを国が直接に財政的・技術的支援を行う―。

厚生労働省は8月25日に、こうした点を公表しました(厚労省のサイトはこちら)。今回は第2回目の設定で、今後も都道府県の申請を受け付け、必要に応じて重点支援区域を設定していきます。

病院の再編・統合について、国が財政的・技術的に支援

Gem Medでお伝えしているとおり、社会保障審議会・医療部会では「新型コロナウイルス感染症を契機として、我が国の医療提供体制の課題がより明確になった。医療提供体制の改革、つまり▼地域医療構想の実現による機能分化・連携の強化▼地域間・診療科間の医師偏在の解消▼医師をはじめとする医療従事者の働き方改革を通じた健康確保―を加速化していく必要がある」との考えをまとめています。

いわゆる団塊の世代が2022年度から後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となることから、日本全体で見た場合、医療ニーズが今後、急速に増加していきます。一方、地域によっては高齢者を含めた人口減が進んでおり、医療ニーズが減少に転じています。限られた医療資源で、こうした複雑な医療ニーズに効果的かつ効率的に対応するためには、医療提供体制を改革していく必要があります。

このため機能分化・連携の強化を目指した「地域医療構想」の実現が重視され、各地域医療構想調整会議(以下、調整会議)で「病院の自主的な機能改革」に向けた議論が進められています。

そこでは、まず「地域の公立病院・公的病院等の機能改革等」(公立病院・公的病院等でなければ担えない機能への特化)に関する合意を得ることになっていますが、形だけの機能改革論議や現状追認にとどまっているケースもあり、厚労省では、がんや心血管系疾患、脳卒中など急性期医療の診療実績が特に少ない、あるいは近隣にこうした診療実績が類似する病院がある「約440の公立・公的等病院医療機関」を対象に機能分化や再編・統合について再検証を求めています(1月17日に都道府県等に宛てて通知を発出、関連記事はこちら)。

もちろん、これらの再検証対象医療機関が新型コロナウイルス感染症対応において重要な役割を果たしているケースが稀ではないこと、医療機能は「急性期医療機能だけではない」ことなどから、「再編・統合を機械的に求める」わけではなく、「再編・統合の必要性がないのかなどを再検証する」ことが求められている点には留意が必要です。再検証の結果、「当該病院は地域になくてはならない。現行体制のまま存続させる」という結論が出る可能性も否定できません。



こうした機能改革論議等は地域医療構想調整会議を中心に進められますが、議論が難航する地域も出てくることでしょう。例えば、再編統合論議が進む中では、吸収・廃止等される側の自治体や住民からは「近隣に病院がなくなってしまう。我々を見捨てるのか」という反対意見が出てくることもあり、また、首長(市区町村長や知事)が「病院の建設・存続・増床」などを公約に掲げている場合には、再編・統合論議は「政治的」な様相を帯びてきます。

このため厚労省は「再編・統合論議を国が重点的に支援する地域」(重点支援区域)を定める考えを提示しています(2019年5月31日の経済財政諮問会議で根本匠厚生労働大臣が発表)。なお、国主導で再編・統合を進めるのではなく、地域・病院の自主性を重んじて「都道府県の申請をベースに重点支援区域が選定されます。

厚労省では「重点支援区域の募集は随時行い、ある程度申請がまとまった段階で選定を行う」としており、今般、第2回目として次の5区域が選定したことを明らかにしました(第1回選定の関連記事はこちら)。

【北海道】
▽南空知区域

→▼岩見沢市立総合病院(484床、一般365・感染4、精神115)+▼北海道中央労災病院(199床、一般199)

▽南檜山区域
→▼北海道立江差病院(198床、一般146・感染症4・精神48)+▼厚沢部町国民健康保険病院(69床、一般45・療養24)+▼乙部町国民健康保険病院(62床(ただし10床は休床中)、一般52、療養10(休床中))+▼奥尻町国民健康保険病院(54床、一般22・療養32)+▼町立上ノ国診療所(19床)+▼上ノ国町立石崎診療所(19床)

【新潟県】
▽県央区域

→▼県立燕労災病院(300床、一般300)+▼新潟県厚生農業協同組合連合会三条総合病院(199床、一般199)+▼県立加茂病院(118床、一般118)+▼県立吉田病院(199床、一般199)+▼新潟県済生会三条病院(199床、一般199)

【兵庫県】
▽阪神区域

→▼市立伊丹病院(414床、一般414)+▼公立学校共済組合近畿中央病院(445床、一般408・人間ドック37)

→▼市立川西病院(283床、一般283)+▼医療法人協和会協立病院(313床、一般313)

【岡山県】
▽県南東部区域

→▼玉野市民病院(199床、一般199)+▼玉野三井病院(110床、一般60・療養50)

【佐賀県】
▽中部区域

→▼多久市立病院(105床、一般60・療養45)+▼小城市民病院(99床、一般99)

【熊本県】
▽天草区域

→▼天草市立牛深市民病院(148床、一般105・療養43)+▼天草市立栖本病院(70床、一般24・結核46)+▼天草市立新和病院(40床、一般40)+▼天草市立河浦病院(99床、一般39・療養60床)

※ベッド数は各病院のホームページ等より



重点支援区域に選定された医療機関については、国による▼財政的支援▼技術的支援―を受けられます(関連記事はこちらこちらこちら)。

財政的支援としては、2020年度予算案に盛り込まれた「国費でのダウンサイジング支援」(国費84億円)がなされます。稼働病床を1割以上減少させる場合に、将来得られたであろう利益(逸失利益)を補助するもので、▼重点支援区域での病床削減 > ▼複数病院の合併による病床削減 > ▼単一病院の病床削減―という具合に補助に傾斜を設けられ、重点支援区域での複数医療機関の再編・統合に伴う病床削減では「最も手厚い補助」がなされます。

技術的支援としては、▼地域医療構想調整会議への「地域の医療事情に係るデータ提供」と「議論の場や講演会などへの国職員の出席」▼都道府県に対する「関係者と議論を行う際の資料作成支援」「議論の場や住民説明会などへの国職員の出席」「関係者の協議の場の設定」―などが想定されています。

2020年度予算案には全額国費による病床ダウンサイジング支援が盛り込まれた(2020年度厚生労働省予算案)



なお、重点支援区域については今後も申請が受け付けられ、選定の手順等は次のように説明されています。

▽事前に、「地域医療構想調整会議で『重点支援区域への申請』を行う旨の合意」「●●構想区域におけるA病院とB病院の再編・統合についての重点支援」に関する合意を得て、都道府県が申請を行う

▽重点支援区域には、次のような地域が対象になる
▼複数医療機関の再編・統合(ダウンサイジング、機能分化・連携、集約化、機能転換なども含む)事例である(単一医療機関のダウンサイジングは対象外)
▼再検証対象医療機関(約424の公立・公的等医療機関)以外の再編・統合も対象となる
▼複数区域にまたがる再編・統合も対象となる(

▽重点支援区域として、次のような事例を優先する
▼複数の設置主体による再編・統合
▼多数の病床削減(少なくとも関係病院の総病床数の10%以上)を伴う再編・統合
▼「異なる大学病院等からの医師派遣を受けている医療機関」同士の再編・統合
▼人口規模・関係者の多さから「より困難である」と想定される再編・統合

▽重点支援区域に選定された場合には、国による直接の▼財政的支援(2020年度予算案に盛り込まれた「国費でのダウンサイジング支援」(国費84億円)を活用)▼技術的支援(地域医療構想調整会議への地域の医療事情に係るデータ提供や、国職員の出席など)―を受けられる

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