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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

小児がん医療の評価は平均で10点満点中「8.4点」、セカンドオピニオンや妊孕性温存などが大きな課題―国がん

2021.3.10.(水)

小児がん患者は、自分が受けた医療を「10点満点中、平均8.4点」と高く評価している―。

小児がんにおいて、「セカンドオピニオン受診」「生殖機能に関する説明や妊孕性温存処置」などが大きな課題である―。

がんゲノム医療の認知度は、小児がん患者では3割に満たず、さらなる周知が求められる―。

国立がん研究センターは3月6日に「小児がん患者を対象に初の体験調査報告」を公表し、こうした状況を明らかにしました(国がんのサイトはこちら(報告書)こちら(プレスリリース))。

初診から診断まで、診断から治療開始まで、7-8割の患者がそれぞれ1か月以内

国立がん研究センターでは、我が国のがん対策の評価・方向性の検討に活かすため、がん患者の▼診療体験▼療養生活の実態―に関する全国調査を行っており、今回、「初めて小児がん患者」を対象に調査を実施しました。

97施設で診断・治療された2511名の小児がん患者(2014年・16年診断症例)を対象に、▼診断・治療までに要した時間▼情報提供▼生殖機能への影響▼医療者とのコミュニケーション▼治療スケジュールに関する十分な情報の取得▼つらい症状へのすみやかな対応▼病気についての説明・告知▼経済的負担▼家族の就労▼相談支援▼教育の継続支援▼がん医療の進歩・知識―などについて調査を行っています(解析・報告の対象は1029名)。

調査内容は膨大なため、「医療」に絞って結果を眺めてみましょう。

まず、「初診から診断までに要した時間」が1か月以内であった割合は、▼がん全体では74.3%▼造血器腫瘍では78.4%▼脳腫瘍を除く固形腫瘍では70.5%▼脳腫瘍では71.6%―となりました。一方で、6か月以上かかったケースも、▼がん全体では3.6%▼造血器腫瘍では2.5%▼脳腫瘍を除く固形腫瘍では3.5%▼脳腫瘍では7.1%―あります。

また、「診断から治療までに要した時間」が1か月以内であった割合は、▼がん全体では80.6%▼造血器腫瘍では85.0%▼脳腫瘍を除く固形腫瘍では74.5%▼脳腫瘍では82.0%―となりました。一方、6か月以上かかったケースも、▼がん全体では4.9%▼造血器腫瘍では4.8%▼脳腫瘍を除く固形腫瘍では5.4%▼脳腫瘍では4.7%―あります。

小児がん患者の7-8割は、初診から1か月以内にがん診断を受け、診断から1か月以内にがん治療が開始されている(小児がん実態調査1 210306)



次に、「専門的な医療を受けられたと思う」人(とてもそう思う、ある程度そう思う)の割合は、▼がん全体では90.4%▼造血器腫瘍では94.3%▼脳腫瘍を除く固形腫瘍では87.3%▼脳腫瘍では84.9%―となりました。ただし、「専門的な医療を受けられたと思わない」も、▼がん全体で1.0%▼造血器腫瘍では0.4%▼脳腫瘍を除く固形腫瘍では1.1%▼脳腫瘍では3.2%―います。

小児がんでは、患児の心理的サポートが成人以上に重要であること再確認

また、「治療を進める上で医療者と十分な対話ができたと思う」人(とてもそう思う、ある程度そう思う)は、▼がん全体では76.3%▼造血器腫瘍では77.6%▼脳腫瘍を除く固形腫瘍では77.9%▼脳腫瘍では66.6%―です。ただし、「十分な対話ができたと思わない」人も、▼がん全体で2.2%▼造血器腫瘍では1.3%▼脳腫瘍を除く固形腫瘍では3.3%▼脳腫瘍では3.2%―おられます。



さらに、「主治医以外にも相談しやすい医療者がいた」人(とてもそう思う、ある程度そう思う)は、▼がん全体では78.0%▼造血器腫瘍では83.4%▼脳腫瘍を除く固形腫瘍では71.6%▼脳腫瘍では75.4%―。逆に「主治医以外に相談しやすい医療者はいなかった」人も、▼がん全体で3.5%▼造血器腫瘍では2.5%▼脳腫瘍を除く固形腫瘍では4.4%▼脳腫瘍では4.8%―となっています。



国がんでは、こうした結果を踏まえて「小児がん診療においては、医師以外にも臨床心理士や社会福祉士など、心のケアや療養のサポートを行なう様々な職種がかかわる診療体制作りが関連している可能性がある」と分析。身体のみならず、精神的にも未発達な小児のがん治療に対しては、成人以上の手厚い心理的サポートがなされることが期待されます。

小児がん患者のセカンドオピニオン受診、全体で2割に満たず

また、セカンドオピニオンの受診状況をみると、▼がん全体では19.2%▼造血器腫瘍では10.5%▼脳腫瘍を除く固形腫瘍では24.2%▼脳腫瘍では35.2%―にとどまっています。小児がんについては、症例数が少ないことから、症例を一部の病院(小児がん拠点病院や小児がん連携病院)に集約する方策がとられています。症例が分散すれば、知見の集積・専門的な医療提供が十分に行えないためです。一方、こうした方策は「セカンドオピニオン受診を難しくしている」ことが今般の調査で明らかになったといえます。今後は「オンラインによるセカンドオピニオン受診」などに各拠点病院等が積極的に取り組んでいくことに期待が集まります(関連記事はこちら)。



ただし、「医療スタッフから十分に情報が得られた」と感じる人(とてもそう思う、ある程度そう思う)は、▼がん全体では74.4%▼造血器腫瘍では75.1%▼脳腫瘍を除く固形腫瘍では77.1%▼脳腫瘍では65.6%―、「医療スタッフから年齢に応じた十分な説明が行われた」と感じる人(とてもそう思う、ある程度そう思う)は、▼がん全体では60.1%▼造血器腫瘍では60.1%▼脳腫瘍を除く固形腫瘍では59.8%▼脳腫瘍では56.6%―となっています。各施設が説明に工夫を行っている状況が一定程度伺えます。



また、「治療による副作用が見通せた」人(とてもそう思う、ある程度そう思う)は、▼がん全体では69.2%▼造血器腫瘍では71.0%▼脳腫瘍を除く固形腫瘍では71.0%▼脳腫瘍では57.1%―となりました。



さらに、「つらい症状に速やかにスタッフが対応してくれたと思う」人(とてもそう思う、ある程度そう思う)は、▼がん全体では83.3%▼造血器腫瘍では85.7%▼脳腫瘍を除く固形腫瘍では81.2%▼脳腫瘍では79.4%―となりました。知識が乏しく、また精神的に未発達な小児患者が「安心して治療に向き合える」環境の構築に、各施設が様々な工夫を行っている状況が伺えます。

生殖機能への説明は6割未満、妊孕性温存処置は1割に満たず

ところで、小児がん治療患者ではとりわけ「生殖機能への影響」が懸念されます。この点については、次のような状況が明らかになっています。

▽「生殖機能への影響」に関する説明が行われた割合は、▼がん全体では53.8%▼造血器腫瘍では54.6%▼脳腫瘍を除く固形腫瘍では56.9%▼脳腫瘍では41.8%―にとどまる

▽「妊孕性温存処置」(卵子の凍結保存など)が行われた割合は、▼がん全体では7.2%▼造血器腫瘍では6.7%▼脳腫瘍を除く固形腫瘍では9.2%▼脳腫瘍では0.8%―にとどまる

生殖機能への説明があった小児がん患者は6割に満たない(小児がん実態調査2 210306)



患者が小児であり「説明が難しい」という面もありますが、がん医療が進展し、小児がん患者が長期生存する中では極めて重要な事項と言えます。今後、多くの施設で、より積極的な説明・温存処置が行われるようになることに期待したいところです。

小児がん医療の評価、10点満点中「平均で8.4点」と高評価

さらに、「受けた医療を10点満点で評価する」とした場合、平均点はがん全体で8.4点となり、「8-10点」の高得点をつけた割合は、▼がん全体では80.5%▼造血器腫瘍では82.0%▼脳腫瘍を除く固形腫瘍では81.1%▼脳腫瘍では74.0%―でした。単純比較は困難ですが、成人のがん患者では「平均7.9点」であり、「高い評価が得られている」と言えそうです。

小児がん患者の、自身の受けた医療の評価(10点満点)(小児がん実態調査3 210306)



なお、▼24.5%の小児がん患者が「周囲の人が、がんに対する偏見をもっている」と感じている▼がん相談支援センター(拠点病院などに設置されている相談窓口)の認知度は66.4%▼臨床試験の認知度は67.5%▼がんゲノム医療の認知度は29.3%▼長期フォローアップ(成人後の再発などもあり、「がんに関するさらなる周知が必要」な部分も少なくないことが再確認されました。

ゲノム医療の認知度は、小児がん患者の3.5%にとどまる(小児がん実態調査4 210306)



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