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原発巣起因症状のない【ステージIV】の大腸がん、原発巣は切除せず「化学療法先行」を第1選択せよ―国がん

2021.2.16.(火)

【ステージIV】の大腸がんで、原発巣に起因する症状がない場合には、「原発巣切除後に化学療法を行う」場合でも「原発巣を切除せず、化学療法を単独で行う」場合でも生存期間に違いはなく、「原発巣切除」のほうが有害事象が多い。今後は「原発巣は非切除のまま化学療法を先行する治療」を第1選択とすべきである―。

国立がん研究センターは2月10日に、研究結果をもとにこう提言しました(国がんのサイトはこちらこちら)。

現在の標準治療は「原発巣切除」を推奨しているが・・・

大腸がんは、男女計で見たとき「もっとも罹患数の多いがん種」(2018年の全登録者は15万3522名)となっており、ステージ(治療前)別には次のような状況(2018ねのがん登録データからGem Med編集部が抜粋)です。

【ステージゼロ】(腫瘍が粘膜にとどまっている)
→14.4%

【ステージI】(固有筋層(筋肉の層)にとどまっている)
→19.9%

【ステージII】(固有筋層を越えて、周囲に広がっている)
→15.6%

【ステージIII】(深達度に関係なく、リンパ節に転移している)
→18.7%

【ステージIV】(肝臓や肺、腹膜など離れた臓器に転移している)
→13.5%

大腸がんのステージ



我が国の「大腸癌治療ガイドライン」では、【ステージIV】にまで進行した場合でも「原発巣と転移巣が切除可能であれば、ともに切除する」ことが推奨されています。しかし【ステージIV】症例の8割では、「原発巣、転移巣ともに切除不能で別途の対応をとる」「原発巣は切除可能だが、転移巣は切除不能で別途の対応をとる」のが実際です。

標準治療ではステージ4でも原発巣切除を推奨している

原発巣切除可能な症例は2割のみ



このうち「原発巣の切除」については、▼出血や狭窄の予防になる▼全身のがん細胞制御に有利である―などのメリットがある一方で、▼手術に伴う合併症発生のリスクが高まる▼化学療法の開始が遅れてしまう―というデメリットもあり、「原発巣に起因する症状がない場合でも、原発巣を切除すべきか否か」が論点となっていました。

そこで今般、国がん研究センター中央病院大腸外科の金光幸秀科長の研究グループが「原発巣による症状がない場合の原発巣切除の意義」について研究。具体的には、2012年6月から2019年4月に、「標準治療である化学療法単独治療」を受けた患者(82名)と、「原発巣切除後に化学療法治療」を受けた患者(78名)とで、生存期間を比較。次のような点が明らかになりました。

▽いずれの治療法を受けた患者でも、生存期間の中央値は約26-27か月(原発巣切除を化学療法前に行っても生存期間は延伸しない

▽「原発巣切除先行治療」において、▼化学療法による有害事象の頻度は高くより重度▼原発巣切除後の合併症死亡が発生(3名)―(原発巣切除で有害事象が増えてしまう

▽「化学療法単独治療」では、原発巣に起因する腸閉塞症などの症状で姑息的手術が必要となることは限定的であった

▽化学療法が奏効して「治癒切除」が施行できた患者は、▼化学療法単独群:4名(5%)▼原発巣切除+化学療法群:2人(3%)―で差がない

▽「化学療法単独治療」では、87%において「最期まで手術が不要」であった(13%では緩和手術

原発巣切除は有害事象が多く、生存期間の延伸効果もない



こうした結果を踏まえて国がんでは、「【ステージIV】の大腸がんで、原発巣に起因する症状がない場合には、『原発巣は非切除のまま化学療法を先行する治療』が第1選択として推奨される」と提言。今後、日本や諸外国のガイドラインにおいても、この点を標準治療とされることが期待されます。



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