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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

がんの3年生存率、全体72.4%・胃76.3%・大腸78.6%・肝54.2%・肺51.7%・乳95.3%―国がん

2019.12.16.(月)

お伝えしているとおり、国立がん研究センター(国がん)は12日14日に「がん診療連携拠点病院等院内がん登録 2013年3年生存率、2010から11年5年生存率」を公表しました。

本稿では「3年生存率」(2018年から公表開始)に注目してみましょう(国がんのサイトはこちら(概要)こちら(報告書)))(2010・11年5年生存率の記事はこちら)(前年調査による3年生存率の記事はこちら)。

2013年にがんと診断された患者の3年相対生存率は全体で72.4%、5大がんについて見ると、▼胃76.3%(前回調査に比べ0.7ポイント向上)▼大腸78.6%(同0.1ポイント低下)▼肝臓54.2%(同0.4ポイント低下)▼肺51.7%(同0.9ポイント向上)▼乳95.3%(同0.1ポイント向上)—となっています。

迅速に「がん治療法を選択できる」体制整備等に向け、3年生存率を2018年から公表

がん治療の効果・成績を表す代表的な指標の1つに「5年生存率」があります。多くのがんでは、「5年後の生存状況」が治癒の1つの目安とされているためです。

ただし、例えば今年(2019年)がんと診断された患者の5年生存率は、当たり前ですが5年後の「2024年データ」を集計・分析する必要があり、結果が明らかになるまでに10年近い時間がかかります(2019年12月に示された5年生存率は、2010年・11年にがんと診断された症例がベースとなっている)。

がん医療の進歩はめまぐるしく、よりスピーディな情報提供が求められています。がん対策のベースとなる第3期がん対策推進基本計画(2017年10月、2018年3月に閣議決定)でも「国民が必要な時に、自分に合った正しい情報を入手し、適切に治療や生活等に関する選択ができるよう、科学的根拠に基づく情報を迅速に提供するための体制を整備する」とされています。また、>がん対策推進協議会の山口建会長(静岡県立静岡がんセンター総長)も、第4期がん対策推進基本計画の最重要項目の1つとして「適切な情報提供」を候補としてあげています。

こうした背景を踏まえて国がんは、より迅速な評価指標と言える「3年生存率」を2018年から公表しています。

今般の集計は、全国の診療連携拠点病院(2018年4月末で433施設)・都道府県推薦病院(同256施設)のうち、2013年診断例の生存状況把握割合が90%以上の330施設(がん診療連携拠点病院等294施設・都道府県推薦病院36施設)における約37万症例を対象に行われました。

がん全体の3年生存率を見ると、相対生存率(がん以外の死亡原因を除去、がん対策の効果などを把握可能)は72.4%(前回調査に比べて0.3ポイント向上)、実測生存率(死因に関係なくすべての死亡を勘案、平均的な患者について疾患の経過を見通すことが可能)は67.5%(同0.3ポイント向上)となりました。

部位別(全臨床病期)に見てみると、5大がんでは、次のような状況です。3年経過時点で、すでに大きなバラつきがあることが分かります。

▼胃がん:相対・76.3%(前回調査に比べ0.7ポイント向上)、実測・70.1%(同0.6ポイント向上)
▼大腸がん:相対・78.6%(同0.1ポイント低下)、実測・72.9%(同0.2ポイント向上)
▼肝臓がん:相対・54.2%(同0.4ポイント低下)、実測・49.8%(同0.5ポイント低下)
▼肺がん:相対・51.7%(同0.9ポイント向上)、実測・47.9%(同0.8ポイント向上)
▼乳がん:相対・95.3%(同0.1ポイント向上)、実測・92.8%(同0.2ポイント向上)

また、その他の部位を見ると、次のようになっています。難治性がんの1つである膵臓がんでは、3年経過時点で相対生存率が2割を切ってしまう状況です。

▼食道がん:相対・55.0%(同1.4ポイント向上)、実測・51.2%(同1.2ポイント向上)
▼膵臓がん:相対・18.0%(同1.1ポイント向上)、実測・16.9%(同1.1ポイント向上)
▼子宮頸部がん:相対・79.0%(同0.6ポイント低下)、実測・77.3%(同0.7ポイント低下)
▼子宮内膜がん:相対・85.6%(同0.3ポイント低下)、実測・83.8%(同0.2ポイント低下)
▼前立腺がん:相対・99.1%(同0.1ポイント低下)、実測・90.3%(同増減なし)
▼膀胱がん:相対・72.3%(同1.1ポイント低下)、実測・64.2%(同0.9ポイント低下)

▼喉頭:相対・85.6%(同1.2ポイント向上)、実測・78.1%(同0.8ポイント向上)
▼胆嚢:相対・34.0%(同0.6ポイント向上)、実測・30.8%(同0.4ポイント向上)
▼腎:相対・85.5%(同0.1ポイント向上)、実測・80.4%(同0.3ポイント向上)
▼腎盂尿管:相対・56.2%(同0.6ポイント向上)、実測・50.6%(同0.4ポイント向上)

部位によって向上・低下状況が異なりますが、患者の年齢等により生存率は変わってくるため、長期的に状況確認をしていくことが必要です。

3年生存率もステージの進行で低下、早期診断・早期治療が重要

さらに5大がんについて、病期(UICC TNM総合ステージ)別に3年相対生存率を見てみると、次のように「進行するにつれ、生存率が低下する」状況が再確認されました。ここでも早期診断・早期治療の重要性を改めて認識できます。

【胃がん】
▼ステージI:97.1%(前年調査に比べ0.2ポイント向上)
▼ステージII:76.4%(同増減なし)
▼ステージIII:53.2%(同増減なし)
▼ステージIV:10.5%(同0.2ポイント向上)

【大腸がん】
▼ステージI:95.5%(同0.9ポイント低下)
▼ステージII:92.5%(同0.9ポイント低下)
▼ステージIII:84.8%(同0.4ポイント低下)
▼ステージIV:31.3%(同0.8ポイント向上)

【肝臓がん】
▼ステージI:77.4%(同1.1ポイント低下)
▼ステージII:62.4%(同0.1ポイント低下)
▼ステージIII:25.2%(同0.8ポイント低下)
▼ステージIV:8.6%(同0.8ポイント向上)

【肺がん】
▼ステージI:89.0%(同0.7ポイント低下)
▼ステージII:64.4%(同9.8ポイント向上)
▼ステージIII:38.2%(同1.7ポイント向上)
▼ステージIV:12.3%(同0.3ポイント低下)

【乳がん】
▼ステージI:100.0%(同0.2ポイント向上)
▼ステージII:98.0%(同0.2ポイント向上)
▼ステージIII:88.8%(同0.4ポイント低下)
▼ステージIV:56.0%(同0.6ポイント低下)

胃・大腸・肝臓・肺・乳がんの5年生存率(がん5年生存率(2013年診断)1 191214)



また、以下のように他のがんでも「早期診断・早期治療」が重要であることを確認できます。大きな増減がある部位・ステージもありますが、やはり長期的に見ていく必要があります。

【食道がん】
▼ステージI:84.9%(同1.3ポイント低下)
▼ステージII:61.0%(同2.8ポイント向上)
▼ステージIII:35.0%(同0.2ポイント向上)
▼ステージIV:14.0%(同1.2ポイント低下)

【膵臓がん】
▼ステージI:56.4%(同5.8ポイント低下)
▼ステージII:33.9%(同2.4ポイント向上)
▼ステージIII:12.7%(同1.8ポイント向上)
▼ステージIV:2.7%(同0.5ポイント低下)

【子宮頸部がん】
▼ステージI:97.2%(同増減なし)
▼ステージII:83.4%(同2.5ポイント低下)
▼ステージIII:73.0%(同1.8ポイント向上)
▼ステージIV:31.5%(同1.3ポイント低下)

【子宮内膜がん】
▼ステージI:97.5%(同0.1ポイント低下)
▼ステージII:91.7%(同2.4ポイント低下)
▼ステージIII:78.3%(同1.6ポイント低下)
▼ステージIV:28.0%(同4.6ポイント低下)

【前立腺がん】
▼ステージI:100.0%(同増減なし)
▼ステージII:100.0%(同増減なし)
▼ステージIII:100.0%(同増減なし)
▼ステージIV:76.7%(同1.0ポイント向上)

【膀胱がん】
▼ステージI:91.0%(同0.7ポイント低下)
▼ステージII:66.8%(同0.7ポイント低下)
▼ステージIII:50.9%(同0.6ポイント低下)
▼ステージIV:24.8%(同1.1ポイント向上)

食道・膵臓・前立腺・子宮・膀胱がんの5年生存率(がん5年生存率(2013年診断)2 191214)



【喉頭】
▼ステージI:98.9%(同2.9ポイント向上)
▼ステージII:95.8%(同5.6ポイント向上)
▼ステージIII:78.2%(同6.7ポイント低下)
▼ステージIV:54.4%(同0.8ポイント向上)

【胆嚢】
▼ステージI:96.0%(同4.9ポイント低下)
▼ステージII:75.0%(同2.4ポイント低下)
▼ステージIII:34.0%(同8.7ポイント向上)
▼ステージIV:5.7%(同1.1ポイント向上)

【腎】
▼ステージI:98.2%(同0.3ポイント低下)
▼ステージII:90.4%(同3.9ポイント低下)
▼ステージIII:82.8%(同0.2ポイント低下)
▼ステージIV:25.6%(同1.0ポイント低下)

【腎盂尿管】
▼ステージI:88.2%(同1.9ポイント低下)
▼ステージII:84.5%(同4.9ポイント向上)
▼ステージIII:69.2%(同0.9ポイント低下)
▼ステージIV:18.9%(同1.9ポイント向上)

咽頭・胆嚢・腎・腎盂尿管がんの5年生存率(がん5年生存率(2013年診断)3 191214)

がんの部位・ステージにより、3年・5年・10年生存率の動きに特徴

次に、病期ごとに、5大がんの生存率を「3年」「5年」「10年」で並べてみましょう。対象が異なる(対象患者が異なり、また治療を受けた年度なども異なる)ため「比較することに意味があるのか」との疑問もありますが、何らかの傾向がつかめるかもしれません。

◆ステージI
【胃がん】
▼2013年の3年生存率:97.1%
▼2010・11年の5年生存率:94.7%
▼2002-05年の10年生存率:89.6%

【大腸がん】
▼2013年の3年生存率:95.5%
▼2010・11年の5年生存率:95.1%
▼2002-05年の10年生存率:91.0%

【肝臓がん】
▼2013年の3年生存率:77.4%
▼2010・11年の5年生存率:60.8%
▼2002-05年の10年生存率:26.3%

【肺がん】
▼2013年の3年生存率:89.0%
▼2010・11年の5年生存率:81.6%
▼2002-05年の10年生存率:64.5%

【乳がん】
▼2013年の3年生存率:100.0%
▼2010・11年の5年生存率:99.8%
▼2002-05年の10年生存率:96.1%


◆ステージII
【胃がん】
▼2013年の3年生存率:76.4%
▼2010・11年の5年生存率:67.6%
▼2002-05年の10年生存率:51.5%

【大腸がん】
▼2013年の3年生存率:92.5%
▼2010・11年の5年生存率:88.5%
▼2002-05年の10年生存率:79.0%

【肝臓がん】
▼2013年の3年生存率:62.4%
▼2010・11年の5年生存率:43.9%
▼2002-05年の10年生存率:16.0%

【肺がん】
▼2013年の3年生存率:64.4%
▼2010・11年の5年生存率:46.7%
▼2002-05年の10年生存率:27.7%

【乳がん】
▼2013年の3年生存率:98.0%
▼2010・11年の5年生存率:95.7%
▼2002-05年の10年生存率:86.3%


◆ステージIII
【胃がん】
▼2013年の3年生存率:53.2%
▼2010・11年の5年生存率:45.7%
▼2002-05年の10年生存率:36.6%

【大腸がん】
▼2013年の3年生存率:84.8%
▼2010・11年の5年生存率:76.6%
▼2002-05年の10年生存率:72.6%

【肝臓がん】
▼2013年の3年生存率:25.2%
▼2010・11年の5年生存率:14.3%
▼2002-05年の10年生存率:6.1%

【肺がん】
▼2013年の3年生存率:38.2%
▼2010・11年の5年生存率:22.6%
▼2002-05年の10年生存率:13.1%

【乳がん】
▼2013年の3年生存率:88.8%
▼2010・11年の5年生存率:80.6%
▼2002-05年の10年生存率:59.4%

 
◆ステージIV
【胃がん】
▼2013年の3年生存率:10.5%
▼2010・11年の5年生存率:8.9%
▼2002-05年の10年生存率:5.7%

【大腸がん】
▼2013年の3年生存率:31.3%
▼2010・11年の5年生存率:18.5%
▼2002-05年の10年生存率:11.0%

【肝臓がん】
▼2013年の3年生存率:8.6%
▼2010・11年の5年生存率:2.6%
▼2002-05年の10年生存率:2.4%

【肺がん】
▼2013年の3年生存率:12.3%
▼2010・11年の5年生存率:5.2%
▼2002-05年の10年生存率:2.7%

【乳がん】
▼2013年の3年生存率:56.0%
▼2010・11年の5年生存率:35.4%
▼2002-05年の10年生存率:15.9%



部位・ステージによって「3年生存率」「5年生存率」「10年生存率」の動きには違いがあります。例えば、「ステージIの胃がんや大腸がん、ステージI・II乳がんでは、3年、5年、10年の生存率は同きく変化しない(90%程度)」ことが分かりますが、「ステージIの肝臓がんやステージIIの肺がんでは、3年→5年→10年と生存率は漸減していく」、また「ステージIVの胃がんでは、3年生存率ですでに極めて低くなり、そこから5年、10年にかけて緩やかに生存率が低下していく」ことなどが見えてきます。

こうした特徴に基づいて、患者に対して、例えば「Aさんのがんは、3年から10年の間で生存率は大きく下がってはいきません。手術から3年が経過しました。一応の安心が得られるのではないでしょうか」、「Bさんのがんは、3年・5年・10年と生存率が下がっていきます。5年が経過したものの、まだ安心とは言えません。定期検査を欠かさないようにしましょう」といった説明が将来的には可能になってくるかもしれません。

今後のさらなるデータ集積と分析・研究に期待が集まります。
 
 
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