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病床機能報告 病床ユニット

がん5年生存率、全体66.4%・胃71.4%・大腸72.6%・乳房92.2%・肝40.4%・肺41.4%―国がん

2019.12.16.(月)

2010年・11年にがんと診断された患者の5年相対生存率(がん以外の死亡原因を除去したもの)は、全体では66.4%で前年調査に比べて0.3ポイント向上。5大がんについて見ると、▼胃がん: 71.4%(前年調査に比べ0.2ポイント低下)▼大腸がん:72.6%(同0.3ポイント低下)▼肝臓がん: 40.4%(同0.4ポイント向上)▼肺がん: 41.4%(同0.8ポイント向上)▼乳がん: 92.2%(同0.3ポイント低下)—となった―。

国立がん研究センター(国がん)が12日14日に公表した「がん診療連携拠点病院等院内がん登録 2013年3年生存率、2010から11年5年生存率」から、このような状況が明らかになりました(国がんのサイトはこちら(概要)こちら(報告書))(前年調査の記事結果はこちら、前々年調査結果の記事はこちら)。

5年生存率、前立腺がん98.8%、膵臓がん9.8%など部位別に大きなバラつき

本稿では「5年生存率」の状況を見てみましょう。「3年生存率」等については、別稿でお伝えします。

今般の集計は、全国のがん診療連携拠点病院(2018年4月末で433施設)・都道府県推薦病院(同256施設)のうち、2010年・11年診断例の生存状況把握割合が90%以上の318施設(がん診療連携拠点病院297施設・都道府県推薦病院21施設)における、約65万症例を対象に行われました。

生存率には、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた「実測生存率」(例えば交通事故による死亡なども含まれる)と、がん以外の死亡原因を除去して計算した「相対生存率」があります。前者の実測生存率では、平均的な患者について疾患の経過を一定程度見通すことができ、後者の相対生存率では、がん対策の効果などを把握することができます。

がん全体の5年生存率を見ると、相対生存率は66.4%(前年集計に比べて0.3ポイント向上)、実測生存率は58.8%(同0.2ポイント向上)となりました。
 
部位別(全臨床病期)に見てみると、5大がんは次のようになっており、部位別に大きなバラつきがあることを改めて確認できます。また前年調査からの増減がありますが、長期的に見ていかなければ「生存率が向上(低下)した」などの判断はできない点に留意が必要です。

▼胃がん:相対・71.4%(前年調査に比べ0.2ポイント低下)、実測・61.5%(同0.4ポイント低下)
▼大腸がん:相対・72.6%(同0.3ポイント低下)、実測・63.5%(同0.2ポイント低下)
▼肝臓がん:相対・40.4%(同0.4ポイント向上)、実測・35.1%(同0.2ポイント向上)
▼肺がん:相対・41.4%(同0.8ポイント向上)、実測・36.3%(同0.7ポイント向上)
▼乳がん:相対・92.2%(同0.3ポイント低下)、実測・87.9%(同0.3ポイント低下)



また、その他の部位を見ると、次のようになっています。今回から、新たに▼喉頭▼胆嚢▼腎▼腎盂尿管―の各がんについても集計が行われています。

▼食道がん:相対・45.7%(同1.3ポイント向上)、実測・40.4%(同1.2ポイント向上)
▼膵臓がん:相対・9.8%(同0.2ポイント低下)、実測・8.7%(同0.1ポイント向上)
▼子宮頸部がん:相対・75.0%(同0.3ポイント低下)、実測・72.4%(同0.2ポイント低下)
▼子宮内膜がん:相対・82.2%(同0.1ポイント向上)、実測・79.1%(同0.1ポイント向上)
▼前立腺がん:相対・98.8%(同0.2ポイント向上)、実測・83.1%(同0.4ポイント向上)
▼膀胱がん:相対・68.4%(同1.1ポイント低下)、実測・55.9%(同0.8ポイント低下)

▼喉頭:相対・80.6%、実測・68.7%
▼胆嚢:相対・29.3%、実測・24.6%
▼腎:相対・80.1%、実測・77.2%
▼腎盂尿管:相対・49.0%、実測・41.1%

5年生存率からも、早期診断・早期治療の重要性を再確認

また5大がんについて、病期(UICC TNM総合ステージ)別に5年相対生存率を見てみると、次のように「進行するにつれ生存率が低下してしまう」状況が改めて浮き彫りになっています。データからも「早期診断・早期治療の重要性」を再確認できます。

【胃がん】
▼ステージI:94.7%(前年調査に比べ0.1ポイント低下)
▼ステージII:67.6%(同0.9ポイント低下)
▼ステージIII:45.7%(同0.6ポイント向上)
▼ステージIV:8.9%(同0.1ポイント低下)

【大腸がん】
▼ステージI:95.1%(同0.3ポイント低下)
▼ステージII:88.5%(同0.4ポイント向上)
▼ステージIII:76.6%(同0.1ポイント向上)
▼ステージIV:18.5%(同0.2ポイント低下)

【肝臓がん】
▼ステージI:60.8%(同0.4ポイント向上)
▼ステージII:43.9%(同1.1ポイント向上)
▼ステージIII:14.3%(同0.2ポイント低下)
▼ステージIV:2.6%(同0.9ポイント低下)

【肺がん】
▼ステージI:81.6%(同0.4ポイント向上)
▼ステージII:46.7%(同0.4ポイント低下)
▼ステージIII:22.6%(同0.3ポイント向上)
▼ステージIV:5.2%(同0.1ポイント向上)

【乳がん】
▼ステージI:99.8%(同増減なし)
▼ステージII:95.7%(同0.2ポイント低下)
▼ステージIII:80.6%(同0.7ポイント向上)
▼ステージIV:35.4%(同1.8ポイント低下)
 
国がんでは、前年調査・前々年調査と同様に「乳がんでは、他の部位と比較して比較的若い世代の罹患が多く、より長期的な視野で見ていくことが重要」とコメント。すでに試みが始まっている「10年生存率」はもちろん、今後のデータ集積を踏まえた「15年」「20年」といった長期間の生存率分析に期待が集まります。

胃・大腸・肝臓・肺・乳がんの5年生存率(がん5年生存率(2010・11年診断)1 191214)



また、以下のように他のがんでも「早期診断・早期治療」が重要であることを確認できます。

【食道がん】
▼ステージI:82.5%(同1.4ポイント向上)
▼ステージII:50.3%(同0.1ポイント向上)
▼ステージIII:25.3%(同0.4ポイント向上)
▼ステージIV:12.1%(同0.1ポイント低下)

【膵臓がん】
▼ステージI:45.5%(同2.2ポイント向上)
▼ステージII:18.4%(同0.9ポイント低下)
▼ステージIII:6.4%(同0.7ポイント向上)
▼ステージIV:1.4%(同0.3ポイント低下)

【子宮頸部がん】
▼ステージI:95.0%(同1.3ポイント低下)
▼ステージII:79.6%(同0.9ポイント向上)
▼ステージIII:62.0%(同0.6ポイント向上)
▼ステージIV:25.0%(同0.2ポイント低下)

【子宮内膜がん】
▼ステージI:96.8%(同増減なし)
▼ステージII:91.7%(同1.8ポイント向上)
▼ステージIII:72.8%(同1.2ポイント低下)
▼ステージIV:22.3%(同1.0ポイント向上)

【前立腺がん】
▼ステージI:100.0%(同増減なし)
▼ステージII:100.0%(同増減なし)
▼ステージIII:100.0%(同増減なし)
▼ステージIV:61.3%(同0.9ポイント低下)

【膀胱がん】
▼ステージI:87.8%(同0.3ポイント向上)
▼ステージII:59.2%(同2.7ポイント低下)
▼ステージIII:45.1%(同0.1ポイント低下)
▼ステージIV:19.2%(同0.1ポイント向上)

食道・膵臓・前立腺・子宮・膀胱がんの5年生存率(がん5年生存率(2010・11年診断)2 191214)



【喉頭】
▼ステージI:95.1%
▼ステージII:89.5%
▼ステージIII:72.2%
▼ステージIV:47.7%

【胆嚢】
▼ステージI:84.4%
▼ステージII:25.7%
▼ステージIII:9.0%
▼ステージIV:1.3%

【腎】
▼ステージI:96.0%
▼ステージII:86.4%
▼ステージIII:74.6%
▼ステージIV:17.5%

【腎盂尿管】
▼ステージI:83.9%
▼ステージII:72.6%
▼ステージIII:58.2%
▼ステージIV:10.6%

咽頭・胆嚢・腎・腎盂尿管がんの5年生存率(がん5年生存率(2010・11年診断)3 191214)



なお、前立せんがんについてはI-III期で100%となっており、国がんでは「前立腺がん患者さん日本人全体を比較したとき5年後に生存している割合はほとんど変わりない」と見ています。

都道府県別・施設別のがん生存率、単純比較できない点に留意

国がんでは都道府県別・施設別の5年生存率も公表しています。都道府県別に、5大がんの病期別5年生存率(相対)について上位3自治体を見てみると、次のような状況です。

【胃がん】
▼全病期(全国平均71.4%):新潟県(81.5%)、高知県(79.0%)、長野県(78.4%)
▼ステージI(全国平均94.7%):山梨県(99.9%)、新潟県(99.7%)、長野県・高知県(99.0%)
▼ステージII(全国平均67.6%):愛媛県(80.6%)、山形県(78.9%)、高知県(77.5%)
▼ステージIII(全国平均45.7%):鳥取県(56.2%)、岡山県(55.0%)、新潟県・兵庫県(54.8%)
▼ステージIV(全国平均8.9%):石川県(14.6%)、山梨県(13.4%)、新潟県(12.4%)

【大腸がん】
▼全病期(全国平均72.6%):東京都(78.0%)、高知県(76.5%)、新潟県(76.3%)
▼ステージI(全国平均95.1%):奈良県・高知県(100.0%)、滋賀県(99.3%)
▼ステージII(全国平均88.5%):石川県(96.1%)、京都府(94.1%)、鳥取県(93.2%)
▼ステージIII(全国平均76.6%):新潟県・大分県(82.3%)、京都府(81.4%)
▼ステージIV(全国平均18.5%):滋賀県(25.6%)、東京都(24.3%)、福井県(22.3%)

【肝臓がん】
▼全病期(全国平均40.4%):山梨県・徳島県(48.7%)、奈良県(48.5%)
▼ステージI(全国平均60.8%):富山県(70.7%)、長崎県(69.9%)、兵庫県(69.4%)
▼ステージII(全国平均43.9%):鳥取県(55.9%)、徳島県(55.5%)、福岡県(51.2%)
▼ステージIII(全国平均14.3%):宮崎県(25.6%)、福井県(21.5%)、岡山県(20.0%)
▼ステージIV(全国平均2.6%):広島県(7.7%)、熊本県(7.5%)、岐阜県・鳥取県(5.8%)

【肺がん】
▼全病期(全国平均41.4%):鹿児島県(49.4%)、新潟県(48.8%)、熊本都(48.7%)
▼ステージI(全国平均81.6%):熊本県(87.8%)、長野県(87.6%)、鳥取県(87.2%)
▼ステージII(全国平均46.7%):鹿児島県(63.8%)、青森県(63.7%)、群馬県(60.3%)、
▼ステージIII(全国平均22.6%):鹿児島県(30.3%)、岡山県(30.1%)、広島県(27.6%)
▼ステージIV(全国平均5.2%):宮城県(8.5%)、島根県(8.1%)、宮崎県・鹿児島県(7.5%)

【乳がん】
▼全病期(全国平均92.2%):福井県(95.4%)、新潟県(95.3%)、奈良県(95.0%)
▼ステージI(全国平均99.8%):—(多くの道府県で100.0%)
▼ステージII(全国平均95.7%):福井県(99.4%)、石川県(99.2%)、沖縄県(98.9%)
▼ステージIII(全国平均80.6%):山梨県(92.1%)、石川県(91.2%)、和歌山県(88.2%)
▼ステージIV(全国平均35.4%):兵庫県(47.4%)、新潟県(46.2%)、香川県(46.0%)

都道府県別に大きなバラつきがありますが、国がんでは「患者の年齢構成などで大きく変動するため、単純な比較はできない」旨を強調している点に留意が必要です。

なお、国がんでは施設別の5年生存率なども詳しく示していますが、▼集計対象が限定されている▼患者の年齢・治療法・併存疾患の有無に偏りがある―ため、この数字をもって、例えば「●●がんの治療成績ナンバー1は◆◆病院」などと考えることはできません。軽度者を多く受け入れている病院で生存率は高くなり、重度者や併存疾患を持つがん患者を積極的に受け入れている病院では生存率は低くなるためです。誤った報道等にはご留意ください。
 
 
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