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がんの3年生存率、全体72.1%、胃75.6%、大腸78.7%、肝54.6%、肺50.8%、乳房95.2%―国がん

2019.8.9.(金)

 お伝えしているとおり、国立がん研究センター(国がん)は8日8日に「がん診療連携拠点病院等院内がん登録 2012年3年生存率、2009から10年5年生存率」を公表しました。

 ここでは、「3年生存率」(2018年に初めて公表)に注目してみましょう(国がんのサイトはこちら(概要)こちら(集計表)こちら(報告書))(2009・10年5年生存率の記事はこちら)(前年調査による3年生存率の記事はこちら)。

より迅速に「がん治療等を選択できる」体制の整備等に向け、3年生存率を公表

がん治療の成果を表す代表的な指標の1つとして「5年生存率」があります。多くのがんでは、「5年後の生存状況」が治癒の1つの目安とされているためです。

しかし、例えば今年(2019年)がんと診断された患者の5年生存率は、当たり前のことですが、5年後の「2024年データ」を集計・分析する必要があり、結果が明らかになるまでには10年近い時間がかかります(2019年8月に示された5年生存率は、2009年・10年にがんと診断された症例がベースとなっている)。

がん医療の進歩はめまぐるしく、よりスピーディな情報提供が求められており、第3期がん対策推進基本計画(2017年10月、2018年3月に閣議決定)でも「国民が必要な時に、自分に合った正しい情報を入手し、適切に治療や生活等に関する選択ができるよう、科学的根拠に基づく情報を迅速に提供するための体制を整備する」とされています。また、がん対策推進協議会の山口建会長(静岡県立静岡がんセンター総長)も、第4期がん対策推進基本計画の最重要項目の1つとして「適切な情報提供」を候補としてあげています。

こうした背景を踏まえ、国がんは、より迅速な評価指標と言える「3年生存率」を2018から示しているのです。

 
今般の集計は、全国のがん診療連携拠点病院(2017年4月末で433施設)のうち、2012年診断例の生存状況把握割合が90%以上の286施設における、約34万症例を対象に行われました。

 がん全体の3年生存率を見ると、相対生存率は72.1%(前回調査に比べて0.8ポイント向上)、実測生存率は67.2%(同0.9ポイント向上)となりました。
 
 部位別(全臨床病期)に見てみると、5大がんでは、次のような状況です。3年経過時点で、すでに部位別に大きなバラつきがあることが分かります。

▼胃がん:相対・75.6%(前回調査に比べて1.3ポイント向上)、実測・69.5%(同1.4ポイント向上)
▼大腸がん:相対・78.7%(同0.6ポイント向上)、実測・72.8%(同0.6ポイント向上)
▼肝臓がん:相対・54.6%(同1.0ポイント向上)、実測・50.3%(同1.0ポイント向上)
▼肺がん:相対・50.8%(同1.4ポイント向上)、実測・47.1%(同1.4ポイント向上)
▼乳がん:相対・95.2%(同増減なし)、実測・92.6%(同0.1ポイント向上)
がん3年生存率(2012年診断)1 190808
 
 
 また、その他の部位を見ると、次のようになっています。膵臓がんでは、3年経過時点で相対生存率が2割を切ってしまう状況です。
▼食道がん:相対・53.6%(同1.6ポイント向上)、実測・50.0%(同1.6ポイント向上)
▼膵臓がん:相対・16.9%(同1.8ポイント向上)、実測・15.8%(同1.7ポイント向上)
▼子宮頸部がん:相対・79.6%(同0.8ポイント向上)、実測・78.0%(同0.9ポイント向上)
▼子宮内膜がん:相対・85.9%(同0.4ポイント向上)、実測・84.0%(同0.3ポイント向上)
▼前立腺がん:相対・99.2%(同0.2ポイント向上)、実測・90.3%(同0.6ポイント向上)
▼膀胱がん:相対・73.4%(同0.1ポイント低下)、実測・65.1%(同0.1ポイント向上)
がん3年生存率(2012年診断)2 190808
 
 多くの部位で3年生存率が前年調査に比べて向上していますが、より長期的な状況確認が必要です。

 
 さらに5大がんについて、病期(UICC TNM総合ステージ)別に3年生存率(相対)を見てみると、次のように「進行するにつれ、生存率が低下する」状況が再確認されました。ここでも早期診断・早期治療の重要性を改めて認識できます。

【胃がん】
▼ステージI:96.9%(前年調査に比べ0.8ポイント向上)▼ステージII:76.4%(同1.4ポイント向上)▼ステージIII:53.2%(同2.1ポイント低下)▼ステージIV:10.3%(同3.8ポイント低下)

【大腸がん】
▼ステージI:96.4%(同0.3ポイント低下)▼ステージII:93.4%(同0.5ポイント向上)▼ステージIII:85.2%(同1.6ポイント向上)▼ステージIV:30.5%(同0.2ポイント向上)

【肝臓がん】
▼ステージI:78.5%(同2.1ポイント向上)▼ステージII:62.5%(同0.3ポイント低下)▼ステージIII:26.0%(同3.3ポイント向上)▼ステージIV:7.8%(同1.9ポイント向上)

【肺がん】
▼ステージI:89.7%(同1.7ポイント向上)▼ステージII:54.6%(同4.8ポイント低下)▼ステージIII:36.5%(同2.9ポイント向上)▼ステージIV:12.6%(同0.8ポイント向上)

【乳がん】
▼ステージI:99.8%(同0.2ポイント低下)▼ステージII:97.8%(同0.2ポイント低下)▼ステージIII:89.2%(同0.9ポイント向上)▼ステージIV:56.6%(同2.2ポイント向上)

がんの部位・ステージによって、3年・5年・10年生存率の動きに特徴あり

 次に、病期ごとに、5大がんの生存率を「3年」「5年」「10年」で並べてみましょう。対象が異なる(対象患者が異なり、また治療を受けた年度なども異なる)ため「比較することに意味があるのか」との疑問もありますが、何らかの傾向がつかめるかもしれません。

◆ステージI
【胃がん】

▼2012年の3年生存率:96.9%▼2009・10年の5年生存率:94.6%▼2002-05年の10年生存率:89.6%

【大腸がん】
▼2012年の3年生存率:96.4%▼2009・10年の5年生存率:95.4%▼2002-05年の10年生存率:91.0%

【肝臓がん】
▼2012年の3年生存率:78.5%▼2009・10年の5年生存率:60.4%▼2002-05年の10年生存率:26.3%

【肺がん】
▼2012年の3年生存率:89.7%▼2009・10年の5年生存率:81.2%▼2002-05年の10年生存率:64.5%

【乳がん】
▼2012年の3年生存率:99.8%▼2009・10年の5年生存率:99.8%▼2002-05年の10年生存率:96.1%

 
◆ステージII
【胃がん】

▼2012年の3年生存率:76.4%▼2009・10年の5年生存率:68.5%▼2002-05年の10年生存率:51.5%

【大腸がん】
▼2012年の3年生存率:93.4%▼2009・10年の5年生存率:88.1%▼2002-05年の10年生存率:79.0%

【肝臓がん】
▼2012年の3年生存率:62.5%▼2009・10年の5年生存率:42.8%▼2002-05年の10年生存率:16.0%

【肺がん】
▼2012年の3年生存率:62.2%▼2009・10年の5年生存率:46.3%▼2002-05年の10年生存率:27.7%

【乳がん】
▼2012年の3年生存率:97.8%▼2009・10年の5年生存率:95.9%▼2002-05年の10年生存率:86.3%

 
◆ステージIII
【胃がん】
▼2012年の3年生存率:53.2%▼2009・10年の5年生存率:45.1%▼2002-05年の10年生存率:36.6%

【大腸がん】
▼2012年の3年生存率:85.2%▼2009・10年の5年生存率:76.5%▼2002-05年の10年生存率:72.6%

【肝臓がん】
▼2012年の3年生存率:26.0%▼2009・10年の5年生存率:14.5%▼2002-05年の10年生存率:6.1%

【肺がん】
▼2012年の3年生存率:36.5%▼2009・10年の5年生存率:22.3%▼2002-05年の10年生存率:13.1%

【乳がん】
▼2012年の3年生存率:89.2%▼2009・10年の5年生存率:79.9%▼2002-05年の10年生存率:59.4%

 
◆ステージIV
【胃がん】

▼2012年の3年生存率:10.3%▼2009・10年の5年生存率:9.0%▼2002-05年の10年生存率:5.7%

【大腸がん】
▼2012年の3年生存率:30.5%▼2009・10年の5年生存率:18.7%▼2002-05年の10年生存率:11.0%

【肝臓がん】
▼2012年の3年生存率:7.8%▼2009・10年の5年生存率:3.5%▼2002-05年の10年生存率:2.4%

【肺がん】
▼2012年の3年生存率:12.6%▼2009・10年の5年生存率:5.1%▼2002-05年の10年生存率:2.7%

【乳がん】
▼2012年の3年生存率:56.6%▼2009・10年の5年生存率:37.2%▼2002-05年の10年生存率:15.9%

 部位・ステージによって「3年生存率」「5年生存率」「10年生存率」の動きには特徴があり、例えば、「ステージIの胃がん、大腸がん、乳がんでは、3年、5年、10年の生存率は同じ程度の水準(90%程度)」ですが、「ステージIIの肺がんでは、3年→5年→10年と生存率は漸減していく」、一方で「ステージIVの胃がんでは、3年生存率が極めて低くなり、そこから5年、10年にかけて緩やかに生存率が低下していく」ことなどが見えてきそうです。

こうした特徴に基づいて、患者に対して、例えば「Aさんのがんは、3年から10年の間で生存率は大きく下がってはいきません。手術から3年が経過しました。一応の安心が得られるのではないでしょうか」、「Bさんのがんは、3年・5年・10年と生存率が下がっていきます。5年が経過したものの、まだ安心とは言えません。定期検査を欠かさないようにしましょう」といった説明が将来的には可能になってくるかもしれません。

今後のさらなるデータ集積と分析・研究に期待が集まります。

 
 

 

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