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がん遺伝子パネル検査、米国病理医協会(CAP)の第三者認定を受けた病院・検査機関で実施を―疑義解釈15【2018年度診療報酬改定】

2019.6.6.(木)

 厚生労働省は6月4日に「疑義解釈資料の送付について(その15)」を公表しました(厚労省のサイトはこちら)。

 今般、新たに保険収載された、がんゲノム医療提供のための「遺伝子パネル検査」や、人工椎間板を使用した頸椎椎間板置換について、医療現場の疑問に答えています。

【2018年度診療報酬改定・疑義解釈に関する関連記事】
疑義解釈1の1
疑義解釈1の2
疑義解釈1の3
疑義解釈2
疑義解釈3
疑義解釈4
疑義解釈5
疑義解釈6
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がん患者に最適な治療法選択するため、遺伝子変異を一括検出する検査を保険収載

 ゲノム(遺伝情報)解析技術が進んでおり、「Aという遺伝子変異の生じているがん患者にはαという抗がん剤投与が効果的、Bという遺伝子変異のある患者にはβとγという抗がん剤の併用投与が効果的である」などといった情報が明らかになってきています。こうしたゲノム情報に基づいた治療法選択が可能になれば、個々のがん患者に対し「効果の低い治療法を避け、効果の高い、最適な治療法を優先的に実施する」ことが可能となり、▼治療成績の向上▼患者の経済的・身体的負担の軽減▼医療費の軽減―などにつながると期待されます。

 我が国においても、産学官が一体的に「がんゲノム医療」を推進すべく、「がんゲノム医療推進コンソーシアム」(共同体)を構築。次のような流れで、がんゲノム医療を提供する仕組みが整ってきています(関連記事はこちらこちらこちら)。

(1)がんゲノム医療を希望する患者に対し、がんゲノム医療中核拠点病院等が十分な説明を行い、同意を得た上で、検体を採取する

(2)検体をもとに、当該病院や衛生研究所などで「遺伝子情報」(塩基配列など)を分析し、その結果を「がんゲノム情報管理センター」(C-CAT)に送付する

(3)中核拠点病院等は、患者の臨床情報(患者の年齢や性別、がんの種類、化学療法の内容と効果、有害事象の有無、病理検査情報など)もあわせてC-CATに送付する

(4)C-CATでは、保有するがんゲノム情報のデータベース(がんゲノム情報レポジトリー・がん知識データベース)に照らし、当該患者のがん治療に有効と考えられる抗がん剤候補や臨床試験・治験情報などの情報を中核拠点病院の専門家会議(エキスパートパネル)に返送する

(5)中核拠点病院等の専門家会議(エキスパートパネル)において、C-CAの解析結果を踏まえて当該患者に最適な治療法を選択し、十分な説明を行った上で、これに基づいた医療を提供する
がんゲノム医療拠点病院等指定要件ワーキンググループ1 190527
がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議2 190308
がんゲノム医療拠点病院等指定要件ワーキング2 190426
 
 
 
 このようにがんゲノム医療を提供するためには、まずがん患者の遺伝子情報を解析し、それをデータベースに照らして、最適な抗がん剤選択等を行う必要があります。今般、複数の遺伝子変異を一括して検出できる検査手法「がん遺伝子パネル検査」が2種類、保険収載されました(6月1日から保険収載)(関連記事はこちらこちらこちら)。

(A)FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル

(B)OncoGuide NCC オンコパネル システム

 遺伝子パネル検査を保険診療の中で実施するにあたっては、厚労省がさまざまな「留意事項」を規定していますが(関連記事はこちらこちら)、今般の疑義解釈では、さらに次のような点が明確にされました。

▽遺伝子パネル検査の実施に当たっては、検査の品質・精度確保のために必要な措置を講ずることとし、▼適切な第三者認定を受けた保険医療機関▼適切な第三者認定を受けた衛生検査所(医療機関からの委託)―で実施することが必要であり、「適切な第三者認定」とは、現時点では「米国病理医協会(CAP:College of American Pathologists)の第三者認定」が該当する。今後、新たに適切な認定制度が確認された場合には、改めて厚労省から周知する

▽遺伝子パネル検査で「コンパニオン検査が存在する遺伝子の変異」等が確認された場合には、遺伝子パネル検査後のエキスパートパネル(専門家会議)が、添付文書・ガイドライン・文献等を踏まえて「コンパニオン検査が存在する遺伝子の異常に係る医薬品投与が適切」と判断した場合には、改めてコンパニオン検査を行うことなく当該医薬品を投与してよい

▽遺伝子パネル検査に用いる検体は、3学会ガイダンス(日本臨床腫瘍学会・日本癌治療学会・日本癌学会合同の次世代シークエンサー等を用いた遺伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス)で▼生検等が可能である場合には、遺伝子パネル検査実施のために必要な検体を採取する▼採取困難な場合は診断時等の保存検体を使用しても良い―とされており、「再生検が困難な場合には、保存検体を使用」してもよい

▽▼遺伝子パネル検査の実施に当たっては、関連団体が定める「インフォームド・コンセント手順書」を遵守し、適切に患者からの同意を取得する▼臨床情報等の提出にあたっては、関連団体が定める「がんゲノム情報レポジトリー臨床情報収集項目一覧表」に則って提出する―ことが求められるが、ここでいう「関連団体」とは、いずれも「がんゲノム医療中核拠点病院等連絡会議」を指す

▽遺伝子パネル検査を実施する医療機関は、「患者の求めに応じて遺伝情報(当該患者のシークエンスデータ(FASTQまたはBAM)および解析データ(VCFまたはXML)等)を患者に提供できる体制を整備する」ことが求められる。ただし、「検査を外部検査機関に委託し、医療機関が当該データを保有していない」など、医療機関から患者へ当該データ等を提供できない場合があるが、この場合、「当該患者へのデータ等提供を外部機関等に委託する」ことが可能である。なお、患者に対し、医療機関が「外部機関等から直接データ等が提供され」点について同意を得なければならない

 新たな検査であり、今後も現場で疑義等が生じると考えられ、都度、厚労省から解釈が示されることになるでしょう。

人工椎間板を使用した頸椎椎間板の置換、K142の1前方椎体固定(3万7240点)を算定

 頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアなどの頚椎変性疾患に伴う神経障害に対し、我が国でも「人工椎間板」を用いた治療を行うことが保険診療上、可能になっています。

 この点について今般の疑義解釈では、日本脊椎脊髄病学会・日本脊髄外科学会が定める「頚椎人工椎間板置換術適正使用基準」に従って「人工椎間板を使用し頸椎椎間板置換」を実施した場合には、K142【脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む)】の「1前方椎体固定」(3万7240点)を準用して算定することが明確にされています。

 

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