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がん遺伝子パネル検査等、保険診療上の留意事項を整理―厚労省

2019.6.4.(火)

 がんゲノム医療の実施に向けて、がん患者の複数の遺伝子変異を一括して検出できる「遺伝子パネル検査」の保険収載が、5月29日の中央社会保険医療協議会で認められました(6月1日から適用)。

 この検査の費用は、特定保険医療材料料ではなく、当面、既存の技術料を準用して算定することになっています。厚生労働省は5月31日に通知「『診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について』等の一部改正について」を発出し、こうした点について明確にしています(厚労省のサイトはこちら)(関連記事はこちらこちら)。

遺伝子パネル検査、D006-4【遺伝学的検査】等を準用して費用算定

 がんゲノム医療の実施の流れは、大きく次のように整理できます(関連記事はこちら)。

(1)がんゲノム医療を希望する患者に対し、がんゲノム医療中核拠点病院等が十分な説明を行い、同意を得た上で、検体を採取する

(2)検体をもとに、当該病院や衛生研究所などで「遺伝子情報」(塩基配列など)を分析し、その結果を「がんゲノム情報管理センター」(C-CAT)に送付する

(3)中核拠点病院等は、患者の臨床情報(患者の年齢や性別、がんの種類、化学療法の内容と効果、有害事象の有無、病理検査情報など)もあわせてC-CATに送付する

(4)C-CATでは、保有するがんゲノム情報のデータベース(がんゲノム情報レポジトリー・がん知識データベース)に照らし、当該患者のがん治療に有効と考えられる抗がん剤候補や臨床試験・治験情報などの情報を中核拠点病院の専門家会議(エキスパートパネル)に返送する

(5)中核拠点病院等の専門家会議(エキスパートパネル)において、C-CAの解析結果を踏まえて当該患者に最適な治療法を選択し、十分な説明を行った上で、これに基づいた医療を提供する
がんゲノム医療拠点病院等指定要件ワーキンググループ1 190527

がんゲノム医療拠点病院等指定要件ワーキンググループ2 190527
 
 
 今回、保険収載された遺伝子パネル検査(FoundationOne CDx がんゲノムプロファイルとOncoGuide NCC オンコパネル システム)は「遺伝子情報(塩基配列など)分析」を行うものですが、▼患者への説明と検体採取(1)、遺伝子情報分析(2)等▼エキスパートパネル開催や患者への説明、治療実施(5)―について、既存技術料を準用して評価する(費用請求を認める)ことになりました。

 前者についてはD006-4【遺伝学的検査】の「3 処理が極めて複雑なもの」(8000点)が算定可能で、後者については、▼D006-4【遺伝学的検査】の「3 処理が極めて複雑なもの」を4回分(8000点×4回=3万2000点)▼D004-2【悪性腫瘍組織検査】の「1 悪性腫瘍遺伝子検査」の「注ロ 3項目以上」(6000点)▼M001-4【粒子線治療(一連につき)】の【粒子線治療医学管理加算】(1万点)―の合計4万8000点が算定可能です(例えば、がんゲノム医療中核拠点病院等で一連のがんゲノム医療を行う場合には5万6000点(8000+4万8000)を、がんゲノム医療連携病院で検体採取・遺伝子パネル検査等のみを行う場合には前者8000点を算定することなどが考えられる)。

 あわせて、各D006-4【遺伝学的検査】について、遺伝子パネル検査を実施する場合の留意事項として次のような点が規定されました。

●前者(検体採取、遺伝子情報解析等)
▽対象患者:標準治療がない、または局所進行もしくは転移が認められ標準治療が終了となった固形がん患者(終了見込みを含む)で、関連学会の化学療法に関するガイドライン等に基づき、全身状態・臓器機能等から「化学療法の適応となる可能性が高い」と主治医が判断した者

▽実施可能な施設:がんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療連携病院、それに準ずる医療機関(新たに指定されるがんゲノム医療拠点病院を想定)

▽算定に当たっては、「遺伝子情報・臨床情報等を、患者の同意(関連団体の定めるインフォームド・コンセント手順書に基づき取得)に基づき、C-CATに提出する」ことや、「検査を実施した全患者の情報を管理簿で管理する」こと、「患者の求めに応じて遺伝子解析データ等を提供する体制を整備する」ことなどが求められるが、患者からC-CATへのデータ登録・データの2次利用の同意が得られない場合でも、本検査料を算定できる

 
●後者(エキスパートパネル開催等)
▽実施可能な施設:がんゲノム医療中核拠点病院、それに準ずる医療機関(新たに指定されるがんゲノム医療拠点病院を想定)

▽エキスパートパネルを実施する場合には、がんゲノム医療中核拠点病院の指定要件に規定されているとおり、「がん薬物療法に関する専門的な知識・技術を持つ、診療領域の異なる複数の常勤医師」や「遺伝医学に関する専門的な知識・技術を持つ医師」などを配置することが必要である

 
 なお、遺伝子パネル検査のうち「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」は、特定の抗がん剤の効果の有無を事前に判断するコンパニオン検査として実施することも可能で、この場合には上記の「D006-4【遺伝学的検査】の「3 処理が極めて複雑なもの」を4回分(8000点)」ではなく、次の諸点数を算定します。

▽非小細胞肺がん患者への、「オシメルチニブ酸塩」(アレセンサ)などの効果予測を目的として実施する場合
→D004-2【悪性腫瘍組織検査】の「1 悪性腫瘍遺伝子検査」の「イ EGFR遺伝子検査(リアルタイムPCR法)(2500点)とN002【免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製】の「6 ALK融合タンパク」(2700点)を合算して算定

▽悪性黒色腫患者への「ダブラフェニブメシル酸塩」(タフィンラー)などの効果予測を目的として実施する場合
→D004-2【悪性腫瘍組織検査】の「1 悪性腫瘍遺伝子検査」の「ヌ BRAF遺伝子検査」(6520点)を算定

▽乳がん患者への「トラスツズマブ(遺伝子組換え)」(ハーセプチンなど)の効果予測を目的として実施する場合
 →N005【HER2遺伝子標本作製】の「1 単独の場合」(2700点)を算定

▽直腸・結腸がん患者への「セツキシマブ(遺伝子組換え)」(アービタックス)などの効果予測を目的として実施する場合
 →D004-2【悪性腫瘍組織検査】の「1 悪性腫瘍遺伝子検査」の「ハ K-ras遺伝子検査」(2100点)を算定

 また、こうしたコンパニオン検査として実施した場合でも、包括的な遺伝子変異情報(ゲノムプロファイル)を取得しているケースがあります。このとき、「目的とする遺伝子変異の結果」のみを患者に提供し、「目的以外の遺伝子変異にかかる検査結果」は患者の治療方針決定等に用いることはできません。

遺伝子パネル検査で特定の抗がん剤が推奨される場合、改めてのコンパニオン検査不要

 また厚労省は同日に事務連絡「遺伝子パネル検査の保険適用に係る留意点について」を発出。

そこでは、▼遺伝子パネル検査後のエキスパートパネルが、添付文書・ガイドライン・文献等を踏まえて「コンパニオン検査が存在する遺伝子の異常に係る医薬品投与が適切」と判断した場合には、当該コンパニオン検査を改めて行うことなく当該医薬品を投与してよい▼この場合の遺伝子パネル検査に用いられる検体は、3学会ガイダンス(日本臨床腫瘍学会・日本癌治療学会・日本癌学会合同の次世代シークエンサー等を用いた遺伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス)にも「生検等採取が困難な場合は診断時等の保存検体を使用しても良い」とされていることを踏まえ、再生検が困難な場合には保存検体を使用してもよい―旨が明確にされています。

非小細胞肺がん患者への抗がん剤選択を効果的に行う検査法も保険収載

ところで5月29日の中医協総会では、次の2つの医療機器の保険収載も承認されており(6月1日から適用)、今般の通知では算定上の留意事項も規定されています。

▽非小細胞肺がん患者について4種類の遺伝子変異の有無があるかを一度に検査する「オンコマイン Dx Target Test マルチ CDx システム」
→▼D004-2【悪性腫瘍組織検査】の「1 悪性腫瘍遺伝子検査」の「注イ 2項目」(4000点)▼D006-4【遺伝学的検査】の「2 処理が複雑なもの」(5000点)▼N002【免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製】の「6 ALK融合タンパク」(2700点)―の合計1万1700点を算定可能

→本検査と別に実施された肺がんにおける▼EGFR遺伝子検査▼ROS1融合遺伝子検査▼BRAF遺伝子検査▼ALK融合タンパク検査▼ALK融合遺伝子検査―の費用は別に算定できない。ただしEGFR遺伝子検査は「再発や増悪により、2次的遺伝子変異が疑われ、再度治療法を選択する必要がある場合」には算定可能

 
▽薬物療法で十分に効果が得られない本態性振戦の症状緩和に用いる「MRガイド下集束超音波 治療器 ExAblate 4000」
→▼M001-2【ガンマナイフによる定位放射線治療】(5万点)▼M000【放射線治療管理料(分布図の作成1回につき)】の「4 強度変調放射線治療(IMRT)による体外照射を行った場合」(5000点)▼M001-4【粒子線治療(一連につき)】の「注2 粒子線治療適応判定加算」(4万点)▼同「注3 粒子線治療医学管理加算」(1万点)―の合計10万5000点を算定可能

→本治療は、振戦の診断や治療に関して専門知識および5年以上の経験を有し、関連学会が定める所定の研修を修了している常勤の脳神経外科の医師が実施し、レセプトに当該医師の「所定の研修修了を証する文書」の写しを添付することが必要

 

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