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がんの5年生存率、全体66.1%、胃71.6%、大腸72.9%、乳房92.5%、肝40.0%、肺40.6%―国がん

2019.8.8.(木)

 2009年および2010年にがんと診断された患者の5年生存率(がん以外の死亡原因を除去した相対生存率)は、全体では66.1%で前年調査に比べて0.3ポイント向上。5大がんについて見ると、▼胃がん:71.6%(前年調査に比べて0.5ポイント向上)▼大腸がん:72.9%(同増減なし)▼乳がん:92.5%(同0.2ポイント低下)▼肝臓がん:40.0%(同0.4ポイント向上)▼肺がん:40.6%(同0.6ポイント向上)—などとなった―。

国立がん研究センター(国がん)が8日8日に公表した「がん診療連携拠点病院等院内がん登録 2012年3年生存率、2009から10年5年生存率」から、このような状況が明らかになりました(国がんのサイトはこちら(概要)こちら(集計表)こちら(報告書))(前年調査の記事はこちら)。

5年生存率、前立腺がんは98.6%、膵臓がんは9.6%で部位別に大きなバラつき

 本稿では「5年生存率」の状況を見てみましょう。「3年生存率」等については、別途お伝えします。

今般の集計は、全国のがん診療連携拠点病院(2017年4月末で433施設)のうち、2009年・2010年診断例の生存状況把握割合が90%以上の277施設における、約57万症例を対象に行われました。

生存率には、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた「実測生存率」(例えば交通事故による死亡なども含まれる)と、がん以外の死亡原因を除去して計算した「相対生存率」があります。前者の実測生存率では、平均的な患者について疾患の経過を一定程度見通すことができ、後者の相対生存率では、がん対策の効果などを把握することができます。

がん全体の5年生存率を見ると、相対生存率は66.1%(前年集計に比べて0.3ポイント向上)、実測生存率は58.6%(同0.1ポイント向上)となりました。
 
 部位別(全臨床病期)に見てみると、5大がんでは、次のような状況です。部位別に大きなバラつきがあることを再確認できます。また前年調査からの増減がありますが、長期的にウォッチしなければ「生存率が上がっている、下がっている」などの判断はできない点に留意が必要です。

▼胃がん:相対・71.6%(前年調査に比べ0.5ポイント向上)、実測・61.9%(同0.2ポイント向上)
▼大腸がん:相対・72.9%(同増減なし)、実測・63.7%(同0.2ポイント低下)
▼肝臓がん:相対・40.0%(同0.4ポイント向上)、実測・34.9%(同0.2ポイント向上)
▼肺がん:相対・40.6%(同0.6ポイント向上)、実測・35.6%(同0.4ポイント向上)
▼乳がん:相対・92.5%(同0.2ポイント低下)、実測・88.2%(同0.4ポイント低下)
がん5年生存率(2009・2010年診断)1 190808
 
 また、その他の部位を見ると、次のようになっています。
▼食道がん:相対・44.4%(同0.7ポイント向上)、実測・39.2%(同0.5ポイント向上)
▼膵臓がん:相対・9.6%(同0.4ポイント低下)、実測・8.6%(同0.3ポイント低下)
▼子宮頸部がん:相対・75.3%(同0.3ポイント低下)、実測・72.6%(同0.3ポイント低下)
▼子宮内膜がん:相対・82.1%(同0.4ポイント低下)、実測・79.0%(同0.5ポイント低下)
▼前立腺がん:相対・98.6%(同0.2ポイント向上)、実測・82.7%(同0.3ポイント向上)
▼膀胱がん:相対・69.5%(同1.4ポイント低下)、実測・56.7%(同1.5ポイント低下)
がん5年生存率(2009・2010年診断)2 190808
 

ステージが低いほど5年生存率が高くなる点を再確認、早期発見・治療が重要

 
 また5大がんについて、病期(UICC TNM総合ステージ)別に5年生存率(相対)を見てみると、次のように「進行するにつれ、生存率が低下する」状況を再確認できます。こうしたデータからも早期診断・早期治療がいかに重要であるかが分かります。

【胃がん】
▼ステージI:94.6%(前年調査に比べ0.3ポイント低下)▼ステージII:68.5%(同0.3ポイント向上)▼ステージIII:45.1%(同1.7ポイント向上)▼ステージIV:9.0%(同0.6ポイント低下)

【大腸がん】
▼ステージI:95.4%(同0.1ポイント低下)▼ステージII:88.1%(同0.3ポイント低下)▼ステージIII:76.5%(同0.2ポイント低下)▼ステージIV:18.7%(同0.2ポイント向上)

【肝臓がん】
▼ステージI:60.4%(同0.6ポイント向上)▼ステージII:42.8%(同1.1ポイント向上)▼ステージIII:14.5%(同1.6ポイント低下)▼ステージIV:3.5%(同0.4ポイント低下)

【肺がん】
▼ステージI:81.2%(同0.1ポイント低下)▼ステージII:46.3%(同1.6ポイント低下)▼ステージIII:22.3%(同0.6ポイント向上)▼ステージIV:5.1%(同0.3ポイント向上)

【乳がん】
▼ステージI:99.8%(同0.2ポイント低下)▼ステージII:95.9%(同0.2ポイント向上)▼ステージIII:79.9%(同0.7ポイント低下)▼ステージIV:37.2%(同0.6ポイント低下)
 
 国がんでは、前年調査と同様に「乳がんでは、他の部位と比較して、比較的若い世代の罹患が多く、より長期的な視野で見ていくことが重要」とコメント。すでに試みが始まっている「10年生存率」はもちろん、今後のデータ集積を見据えた「15年」「20年」といった長期間の生存率分析に期待が集まります。

都道府県別・施設別の生存率、単純な比較はできない

 
 なお、都道府県別・施設別の5年生存率も公表されています。都道府県別に、5大がんの病期別5年生存率(相対)について、上位3自治体を見てみると次のような状況です。

【胃がん】
▼全病期(全国平均71.6%):新潟県(80.1%)、高知県(78.4%)、東京都(77.7%)
▼ステージI(全国平均94.6%):沖縄県(99.1%)、長野県(98.9%)、高知県(98.7%)
▼ステージII(全国平均68.5%):高知県(84.2%)、富山県(80.9%)、奈良県(79.5%)
▼ステージIII(全国平均45.1%):佐賀県(59.8%)、岡山県(59.0%)、徳島県(54.0%)
▼ステージIV(全国平均9.0%):石川県(16.5%)、奈良県(12.4%)、岡山県(11.9%)

【大腸がん】
▼全病期(全国平均72.9%):東京都(77.6%)、新潟県(76.9%)、大阪府(77.9%)
▼ステージI(全国平均95.4%):香川県(102.20%)、岐阜県(100.7%)、福井県(99.8%)、
▼ステージII(全国平均88.1%):長野県(92.9%)、大阪府(91.8%)、佐賀県(91.8%)
▼ステージIII(全国平均76.5%):奈良県(85.3%)、静岡県(81.6%)、新潟都(81.4%)
▼ステージIV(全国平均18.7%):山形県(26.7%)、宮崎県(25.3%)、奈良県(24.8%)

【肝臓がん】
▼全病期(全国平均40.0%):奈良県(51.7%)、山梨県(49.5%)、長崎県(48.1%)
▼ステージI(全国平均60.4%):長崎県(70.2%)、鳥取県(69.0%)、奈良県(68.8%)
▼ステージII(全国平均42.8%):岐阜県(58.7%)、徳島県(54.9%)、高知県(54.0%)
▼ステージIII(全国平均14.5%):奈良県(24.1%)、鳥取県(23.7%)、滋賀県(22.3%)
▼ステージIV(全国平均3.5%):岡山県(40.0%)、長野県(8.7%)、広島県(8.3%)

【肺がん】
▼全病期(全国平均40.6%):東京都(48.7%)、長崎県(48.0%)、長野都(47.6%)
▼ステージI(全国平均81.2%):熊本県(88.3%)、長野県(87.5%)、東京都(87.3%)
▼ステージII(全国平均46.3%):長野県(59.6%)、兵庫県(56.5%)、茨城県(55.8%)、
▼ステージIII(全国平均22.3%):和歌山県(29.3%)、東京都(28.2%)、鹿児島県(28.1%)
▼ステージIV(全国平均5.1%):徳島県(7.2%)、宮崎県(6.9%)、奈良県(6.8%)

【乳がん】
▼全病期(全国平均92.5%):山梨県(96.3%)、福井県(95.8%)、新潟県(94.3%)
▼ステージI(全国平均99.8%):—(多くの都府県で100.0%)
▼ステージII(全国平均95.9%):京都府(100.0%)、岡山県(100.0%)、長崎県(99.3%)
▼ステージIII(全国平均79.9%):石川県(100.0%)、山梨県(90.4%)、島根県(86.2%)
▼ステージIV(全国平均37.2%):広島県(54.5%)、岡山県(54.4%)、福岡県(47.9%)

都道府県別に大きなバラつきがありますが、国がんでは「患者の年齢などで大きく変動するため、単純な比較はできない」旨を強調している点に留意が必要です。

 
 
 なお、国がんでは施設別の5年生存率なども詳しく示しています。ただし、▼集計対象が限定されている▼患者の年齢・治療法・併存疾患の有無に偏りがある―ことから、この数字をもって、例えば「●●がんの治療成績ナンバー1は◆◆病院」などと考えることはできません。重度者や併存疾患を持つがん患者を積極的に受け入れている病院では、必然的に生存率などは低くなるためです。誤った報道等にはご留意ください。

 
 
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