職域で行われるがん検診、「子宮頸がん・乳がんがオプション」設定で受診のハードルに!早急な改善を!—がん検診あり方検討会(2)
2023.2.1.(水)
職域で行われる「がん検診」の実施状況を見ると、内容にバラつきがあるとともに、「子宮頸がん・乳がん」検診がオプション(希望者のみ、追加料金必要)となっているケースが少なくない—。
最も検診を受診すべき年代の女性に対して「検診受診へのハードル」となっていると考えられ、早急に背景・要因を調査し「改善」(子宮頸がん・乳がん検診の必須メニュー化)を検討・実施すべきである—。
1月30日に開催された「がん検診のあり方に関する検討会」(以下、検討会)では、こういった議論も行われました。同日には「新型コロナウイルス感染症によるがん検診等への影響」も議題に上がり、別稿で報告済です(関連記事はこちら)。また、「がん検診事業が適切に行われているのかを評価する指標の設定」や「乳がん・子宮がん検診の受診勧奨強化」も議題に上がっており、これらは別稿で報じます。
要精検情報の把握は医療保険者の3割にとどまる、個人情報保護法上での配慮・工夫を
我が国のがん検診には、大きく「市町村の実施する住民検診」と「事業所等で行われる職域検診」があります。後者の職域検診については「実施状況は良い」(半強制的に実施されており、受診率は高い)ものの、「精度管理が十分でない」「ガイドラインに沿った実施が十分になされていない」などの問題点も指摘されています(関連記事はこちら)。
このため検討会や、親組織であるがん対策推進協議会では「▼適格な対象集団への受診勧奨▼プログラムの管理・評価—を行う『組織型検診』の構築に向けた議論を深める」方針を打ち出しており、第4期がん対策推進基本計画にも盛り込まれる見込みです(本年(2023年)3月に閣議決定予定、関連記事はこちらとこちら)。
もっとも、組織型検診体制の構築には時間がかかるため、まず「職域検診の実態を明らかにし、改善を進める」方針も同時に示されています(関連記事は、関連記事はこちら)。
1月30日の検討会には、厚生労働省から2022年の医療保険者データをもとにした「職域検診の実施状況」(健康保険組合、協会けんぽ、共済組合といった被用者保険におけるがん検診の実施状況)報告が行われました。そこからは、例えば次のような状況が明らかになっています。
▽保険者単独あるいは事業主と共同で検診を実施している医療保険者が多い
▽検診の実施方法は医療保険者によって大きなバラつきがある(例えば胃がんについて、バリウム検査は9割超で行われているが、内視鏡検査は7割強に、問診は5割弱に、ペプシノゲン検査やヘリコバクターピロリ検査などは2割程度にとどまるなど、他のがん種でもバラつきあり)
▽検診の実施範囲を見ると、肺がんなどでは実施状況が芳しいが、子宮頸がんや乳がんは「オプション」(希望者が別途の追加料金を支払って受ける)としているところが多い
▽検診費用について「全額補助」「一部補助」を行っているところが多い
▽要精密検査対象者を把握している保険者はおよそ3割程度にとどまり、うち7割以上が対象者に受診勧奨を行っている
こうした調査結果について多くの構成員(中山恵一構成員:東京大学大学院医学系研究科特任教授、若尾直子構成員:NPO法人がんフォーラム山梨理事長、井上真奈美構成員:国立がん研究センターがん対策研究所予防研究部部長、松田一夫構成員:福井県健康管理協会 副理事長・がん検診事業部長)が「乳がん・子宮頸がんについて、オプション検査としている医療保険者が多いことに驚愕した。最も検診を受けるべき年代の女性に対し、『オプション』(追加料金)という障壁を設けている理由などを早急に明らかにし、見直しを進めるべき」との声が強く出されました。若尾構成員は「女性では、胃がん・肺がん・大腸がん加え、子宮頸がん・乳がんを基本・必須メニューとすべき」旨の考えを強調し、多くの構成員・中山富雄座長(国立がん研究センターがん対策研究所検診研究部部長)もこの考えに賛意を示しています。
また、高橋宏和参考人(国立がん研究センターがん対策研究所検診研究部検診実施管理研究室長・がん医療支援部検診実施管理支援室長)は「要精検情報を把握できている医療保険者が少ないが、この背景には『個人情報保護法』が影響していると聞く。市町村の実施する住民検診においては、要精検情報を市町村が把握し、精検受診勧奨につなげられる制度整備(法令上の整備)がなされている。職域保険でもこうした対応を行うべき」と指摘しています。
なお、市町村の実施する住民検診においては「乳がん検診、子宮頸がんの無料クーポン券交付」が行われていますが「クーポン券の利用状況が芳しくない。利用推進に向けた取り組みを考えるべき」との議論が行われており、別稿で報じます。
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