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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

2016年の救急搬送患者、軽症と中等症が9割を占める―総務省消防庁

2017.12.21.(木)

 2016年中の救急自動車による急病の搬送人員数は360万7942人で、疾病分類別に見ると▼消化器系9.9%▼呼吸器系9.1%▼心疾患等8.6%▼脳疾患7.7%—などが多いが、「症状・徴候・診断名不明確の状態」が3分の1超(34.0%)を占めている。また、傷病程度別に見ると、「軽症(外来診療)」と「中等症(入院診療)」とで9割を占めている—。

 総務省消防庁が12月19日に発表した2017年版の「救急・救助の現況」から、こういった状況が明らかになりました(総務省消防庁のサイトはこちら)。

救急出動の64%が急病、交通事故は徐々に減少し7.9%に

 総務省消防庁では毎年、消防機関が前年に行った▼救急業務▼救助業務—と、都道府県が前年に行った消防防災ヘリコプターによる消防活動の状況とをまとめ「救急・救助の現況」として公表しています。(1)救急編(2)救助編(救助隊の活動状況など)(3)航空編(消防防災ヘリコプターの活動状況など)—の3編構成となっており、メディ・ウォッチでは(1)「救急編」の中で、医療に関連する事項に焦点を合わせて眺めてみます。

 まず2016年中の救急出動件数は621万3628件(前年に比べて2.6%増加)で、搬送人員数は562万4034人(同2.6%増)となりました。うち救急自動車による搬送は562万1218人(搬送人員数の99.9%)、消防防災ヘリによる搬送は2816人(同0.1%)です。

救急出動件数、搬送人数ともに増加傾向にある

救急出動件数、搬送人数ともに増加傾向にある

 
救急自動車出動の内訳をみると、▼急病が64.0%▼交通事故7.9%▼一般負傷14.9%▼その他13.2%—となっており、「交通事故が減り、急病が増加している」状況が伺えます。
徐々に交通事故での救急搬送患者が減少し、急病での搬送が増加していることが分かる

徐々に交通事故での救急搬送患者が減少し、急病での搬送が増加していることが分かる

 

急病で搬送され、死亡した患者の4割は心疾患

2016年中に急病で救急搬送された人は360万7942人います。これを疾病分類、年齢区分、傷病程度で分類すると次のようになります。

【疾病分類別】:▼消化器系9.9%▼呼吸器系9.1%▼心疾患等8.6%▼脳疾患7.7%—などが多いが、「症状・徴候・診断名不明確の状態」が3分の1超(34.0%)を占めている

【年齢区分別】:▼65歳以上の高齢者60.3%▼18-64歳の成人32.4%▼7-17歳の少年2.5%▼生後28日から7歳の乳幼児4.8%▼生後28日未満の新生児0.0%

【傷病程度別】:▼軽症(外来診療)48.8%▼中等症(入院診療)41.8%▼重症(長期入院)7.7%▼死亡1.7%

急病で救急搬送された患者の3分の1強は「症状・兆候・診断名不明確」である(その1)

急病で救急搬送された患者の3分の1強は「症状・兆候・診断名不明確」である(その1)

急病で救急搬送された患者の3分の1強は「症状・兆候・診断名不明確」である(その2)

急病で救急搬送された患者の3分の1強は「症状・兆候・診断名不明確」である(その2)

 
 これらをクロスして、「疾病分類別×傷病程度別」で見ると、▼死亡者では「心疾患等」と「症状・徴候・診断名不明確の状態」とがともに4割弱▼重症者では「脳疾患」と「心疾患等」がともに2割強▼中等症者では「症状・徴候・診断名不明確の状態」が3割弱▼軽症者では「症状・徴候・診断名不明確の状態」が4割強―となっています。

急病で救急搬送された患者を疾病分類別×傷病程度別にみると、死亡患者では心疾患などが多いといった若干の特徴があることがわかる

急病で救急搬送された患者を疾病分類別×傷病程度別にみると、死亡患者では心疾患などが多いといった若干の特徴があることがわかる

 
 また「年齢区分別×傷病程度別」では、いずれの年齢区分でも「中等症」と「軽症」で9割程度を占めていますが、▼新生児では両者が同程度▼乳幼児・少年・成人では軽症が圧倒的に多い▼高齢者では中等症がやや多い—という違いがあります。
急病で救急搬送された患者を年齢区分別×傷病程度別にみると、若干の特徴がある(乳幼児や少年、成年では軽症患者が圧倒的)ことがわかる

急病で救急搬送された患者を年齢区分別×傷病程度別にみると、若干の特徴がある(乳幼児や少年、成年では軽症患者が圧倒的)ことがわかる

 
 一方、急病に限らず、2016年中に救急搬送された人全体を傷病程度別に見ても、▼軽症49.3%▼中等症41.0%▼重症8.4%▼死亡1.4%—で、急病と同様の結果となっています。ただし、救急搬送人員全体について「年齢区分別×傷病程度別」に分類すると、▼新生児では中等症が圧倒的に多い▼乳幼児・少年・成人では軽症が圧倒的に多い▼高齢者では中等症がやや多い—状況で、急病とは少し異なる結果になっています。また経年変化を見ると、「軽症は横ばい」「中等症は増加」「重症は減少」という状況です。

119番から病院収容までに平均で39.3分、精神疾患ではやや長い

さらに、「119番通報から救急自動車が現場に到着するまでの時間」は全国平均で8.5分、「119番通報から病院に収容されるまでの時間」は同じく39.3分となりました。いずれも前年に比べてわずかながら短縮しています。

119番から病院収容までの時間は、2016年は39.3分で、前年からわずかながら短縮した

119番から病院収容までの時間は、2016年は39.3分で、前年からわずかながら短縮した

 
また病院収容までの時間(救急出動要請を覚知してから医師に引き継ぐまでの時間)を疾病分類別に見ると、精神系の疾患ではやや長くなっており、「精神疾患患者を受け入れてくれる病院」の探索に時間がかかる状況が浮かび上がってきます。

 
 なお、救急隊の行った応急処理件数は1471万4256件で、うち除細動や気管挿管、薬剤(エピネフリン)投与などの特定行為等の件数は18万8533件で、いずれも年々増加しています。さらに、医師が現場に赴いた件数は3万5719件(全救急出動の0.6%)、うち急病によるものが1万9975件と言う状況です。

医療機関への受け入れ照会は「1回」が8割超で最多、ただし11回以上のケースも

 最後に、医療機関などへの搬送状況をみると、受け入れ照会回数は「1回」がもっとも多く急病では83.2%、次いで「2回」10.6%、「3回」3.5%と続きますが、「11回以上」の照会が必要であったケースも1878件あります(救急搬送全体では3353件)。

救急搬送患者が「何回の照会で収容先が見つかった」かを見ると、8割超は「1回」となっているが、一部に「11回以上」というケースもある

救急搬送患者が「何回の照会で収容先が見つかった」かを見ると、8割超は「1回」となっているが、一部に「11回以上」というケースもある

 
 また搬送先医療機関の種別にみると、救急告示病院に93.1%、非告示病院で6.8%の患者が搬送されています。2017年4月1日時点で、救急告示病院は4011施設あり、内訳は▼民間病院2737施設▼公立病院752施設▼公的等病院335施設▼国立病院187施設―となっています。
救急搬送患者の9割超は救急告示病院に搬送され、非告示病院に7%程度が搬送される

救急搬送患者の9割超は救急告示病院に搬送され、非告示病院に7%程度が搬送される

 
 さらに救急自動車による転送は、2016年中に2万4784件あり、56.7%が「処置困難」、13.8%が「専門外」、4.6%が「満床」、0.4%が「医師不在」などの理由で転送となりました。

 
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