2025年度予算案を閣議決定、医療機関のサイバーセキュリティ対策・地域医療構想の実現・介護人材確保などの支援を重要な柱に―厚労省
2024.12.27.(金)
来年度(2025年度)予算案が12月27日に閣議決定されました。政府全体の歳出は115兆5415億円となり、今年度当初予算(後の補正予算を含まない)に比べて2兆9698億円・2.6%増加しています(財務省サイトはこちら)。
このうち厚生労働省所管分の一般会計は34兆2904億円(今年度当初予算と比べて4715億円・1.4%増)、うち社会保障関係費は33超9723億円(同じく4677億円・1.4%増)となりました(厚労省のサイトはこちら)(事前大臣折衝の記事はこちら、夏の概算要求の記事はこちら)。
認知症施策、医療保険制度の安定運営、周産期医療体制整備なども推進
厚労省の来年度(2025年度)予算案の柱は、(1)全世代型社会保障の実現に向けた保健・医療・介護の構築(2)持続的・構造的な賃上げに向けた三位一体の労働市場改革の推進と多様な人材の活躍促進(3)1人1人が生きがいや役割を持つ包摂的な社会の実現—の3本です。
Gem Medでは、主に(1)の全世代型社会保障の実現に向けた保健・医療・介護の構築に焦点を合わせます。(a)創薬力強化に向けたイノベーションの推進と医薬品等の安定供給確保(b)医療・介護におけるDX、地域医療・介護の基盤強化の推進等(c)国際保健への戦略的取組、感染症対策の体制強化(d)予防・重症化予防、女性の健康づくり、認知症施策の推進等—という項目建てとなっており、次のような施策が目を引きます。
【医療提供体制改革関連】
▽地域医療介護総合確保基金(医療分)(613億円)
▽入院・外来機能の分化・連携推進等に向けたデータ収集・分析事業(3億9000万円)
→地域医療構想の実現、第8次医療計画(医師確保計画・外来医療計画を含む)の進捗管理等に活用するため、「病床機能報告、外来機能の分化・連携に向けた外来機能報告の集計」などを引き続き実施するともに、新地域医療構想の策定に当たって必要となる策定支援ツールを当該事業において開発し、各都道府県に提供する(関連記事はこちら)
▽地域医療構想の実現に向けた医療機能分化・連携支援事業(2億円)
→▼地域医療構想を推進するための課題の調査・分析▼再編等を検討している医療機関等からの相談窓口対応▼国が重点的に支援する重点支援区域への再編の支援(事例紹介、データ分析等)▼重点支援区域への申請の前段階の再編を企画・検討する区域に対する支援(重点支援区域の設定の要否を判断するまで支援)▼モデル推進区域へのアウトリーチの伴走支援—など行う(関連記事はこちら)
▽かかりつけ医機能普及促進等事業(7500万円)
→かかりつけ医機能報告制度が円滑に運用され、地域で必要なかかりつけ医機能が普及・推進されるよう、▼かかりつけ医機能の発揮に係る取り組み好事例の横展開等▼かかりつけ医機能報告制度の運営を行う地方自治体への伴走支援等▼地方公共団体や医療機関等に対する制度周知等—を行う(関連記事はこちら)
▽かかりつけ医機能研修事業(1000万円)
→地域で新たに開業し地域医療を担うことを検討している病院勤務医、既に地域の中小病院や診療所でかかりつけ医機能を担っている医師等が「研鑽」を積む研修体制の整備等を支援する(関連記事はこちら)
▽周産期母子医療センター運営事業(医療提供体制推進事業費補助金267億円の内数)
→産科、小児科、麻酔科、救急医療の関連診療科を有し、必要な設備・人員等を備え、24時間体制で母体・新生児を受け入れる体制を備え、産科・産科以外の合併症に対する対応の強化を図る
▽周産期医療施設整備事業(産科区域施設整備)(1900万円)
→産科区域の特定により▼妊産婦を特定の病室に集めることで病室担当助産師が妊産婦ケアに集中できる▼妊産婦が他科患者に気兼ねせず、安心して入院生活を送ることができる▼新生児へのMRSA感染症を予防することができる—点を踏まえ、周産期医療施設における産科区域の特定に係る施設整備費を補助する
▽HPV検査単独法導入に向けた精度管理支援事業(2200万円)
→自治体におけるHPV検査単独法による子宮頸がん検診実施を支援する(関連記事はこちら)
▽脳卒中・心臓病等特別対策事業(2億6000万円)
→▼都道府県循環器病対策推進事業▼循環器病の相談に資する事業▼循環器病医療提供体制の促進等に資する事業▼循環器病対策に資する多職種連携推進事業▼循環器病に関する正しい知識の普及啓発事業▼脳卒中・心臓病等総合支援センター事業▼循環器病に関する治療と仕事の両立支援事業—などを支援する
【医療DX関連】
▽医療機関におけるサイバーセキュリティ確保事業(11億円)
→中・大規模病院は多数の部門システムで構成されているため、各システムを提供する事業者と個別に連携しても「全てのネットワーク接続を俯瞰的に把握する」ことは困難である点、ランサムウェア対策には「オフライン・バックアップが有効である」点などを踏まえ、医療機関におけるサイバーセキュリティの更なる確保のため▼外部ネットワークとの接続の安全性の検証・検査▼オフライン・バックアップ体制の整備—を支援する(関連記事はこちら)
【医療保険関連】
▽各医療保険制度などに関する医療費国庫負担(10兆2619億円)
→健康保険法、国民健康保険法、高齢者医療確保法などに基づき、各医療保険者に対し医療費等に要する費用の一部を負担する(主な国庫負担割合は協会けんぽ:164/1000、市町村国保:32/100および9/100、後期高齢者医療:3/12および1/12など)
【介護関連】
▽地域医療介護総合確保基金(介護施設整備分252億円、介護従事者確保分97億円)
▽介護職員処遇改善加算等の取得促進事業(2億2000万円)
→介護職員等処遇改善加算の加算未取得事業所への新規加算取得、加算既取得事業所のより上位区分の取得に向け、専門的な相談員(社会保険労務士など)によるオンライン個別相談窓口の設置等により個別の助言・指導等の支援を行う
▽科学的介護データ提供用データベース構築等事業(4億2000万円)
→介護サービスの質向上に向けた「科学的介護情報システム」(LIFE)について、2025年度後半から、介護情報基盤の運用開始に伴って「顕名データを収集し利活用するLIFEシステム」(顕名LIFE)に変更になる予定である。これを踏まえ、既存の匿名データを収集するLIFEシステム(匿名LIFE)の運用・保守、顕名LIFEの工程管理を実施する
▽介護テクノロジー開発等加速化事業(3億2000万円)
→介護現場の業務効率化を進めるためテクノロジーの活用を推進する必要がある。介護現場におけるテクノロジーへの理解を促進し、開発企業が介護テクノロジー市場に参入しやすい環境を整備するため、研究開発から上市に至るまでの各段階で生じた課題等に対する総合的な支援を行うとともに、介護ロボットに関するフォーラム等による情報発信等を行う
▽介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分)97億円の内数)
→介護ロボットやICT等のテクノロジーを活用し、業務の改善や効率化等を進めることにより介護職員の業務負担軽減を図り、生み出した時間を直接的な介護ケアの業務に充て、介護サービスの質の向上にも繋げていく
(補助対象)
▼介護ロボット(来年度(2025年度)に改定する「介護テクノロジー利用における重点分野」に該当する介護ロボット(カタログ方式を導入)
▼ICT(介護ソフト、タブレット端末、インカム、クラウドサービス 業務効率化に資するバックオフィスソフト)
▼パッケージ型導入(見守り機器等の複数のテクノロジーを連動することで導入する場合に必要な経費)
▼その他(第3者による業務改善支援等にかかる経費)
▽認知症総合支援事業(地域支援事業)(88億円の内数)
→認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けられるよう、市町村において▼認知症の早期診断・早期対応に向けた支援体制の構築▼地域の実情に応じた認知症施策の推進▼認知症の人やその家族の支援ニーズと認知症サポーターを中心とした支援を繋ぐ仕組み(チームオレンジ)の整備—を図る
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2040年頃見据えた新地域医療構想、在宅医療の強化、構想区域の見直し、「病院」機能明確化などですでに共通認識—新地域医療構想検討会
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【ポスト地域医療構想】論議を近々に開始、入院だけでなく、外来・在宅・医療介護連携なども包含して検討—社保審・医療部会(1)
入院時の食事に係る患者負担を2025年度から「20円引き上げ」、ただし低所得者では負担増に配慮を―社保審・医療保険部会
病院の経営窮状・食材費高騰などを踏まえ、入院時の食事療養費(保険給付+患者負担)を20円引き上げ―中医協総会(1)
2025年度薬価中間年改定の骨子を決定、能登半島地震被災病院等でDPC機能評価係数IIの配慮措置—中医協総会(2)
2025年度薬価中間年改定論議が実質決着、9320品目の薬価を引き下げ、新薬創出等加算の「累積控除」を初実施—中医協・薬価専門部会
2025年度の薬価中間年改定(薬価引き下げ)を実施すべきか?実施する場合の対象品目・ルールをどう考えるか?—中医協
医薬品のイノベーション評価・安定供給に逆行しないよう、2025年度に薬価の中間年改定(=薬価引き下げ)は中止をと医薬品業界—中医協
規制的手法も含めた医師偏在対策、地域医療構想実現に向けた知事権限強化、2025年度薬価改定」(薬価の引き下げ)などを実施せよ―財政審
2024年度の薬価乖離率は5.2%、過去改定に倣えば「乖離率が3.25%以上の医薬品」は2025年度薬価引き下げの対象に—中医協・薬価専門部会
2025年度薬価中間年改定、「医薬品の安定供給、薬価下支え」と「国民皆保険維持」とのバランスをどう考えるか—中医協・薬価専門部会
2025年度薬価中間年改定、「新薬開発に向けたイノベーション評価」と「国民皆保険維持」とのバランスをどう考えるか—中医協・薬価専門部会
2025年度の薬価中間年改定、「2024年度薬価制度改革のイノベーション評価方向に逆行する」と医薬品業界は反対姿勢—中医協・薬価専門部会
「2025年度の中間年薬価改定」、行うべきか否かも含めた議論開始、連続改定による負の影響を懸念する声も—中医協・総会(2)
2024年度薬価・材料価格・費用対効果評価の制度改革内容を決定、23成分・38品目の医薬品を市場拡大再算定—中医協総会(2)
2024年度の薬価制度・材料価格制度・費用対効果評価制度の「改革骨子」固まる、年明けに詳細な改革案決定へ—中医協