2025年度薬価中間年改定の骨子を決定、能登半島地震被災病院等でDPC機能評価係数IIの配慮措置—中医協総会(2)
2024.12.27.(金)
来年度(2025年度)の薬価中間年改定では、薬価引き下げの対象品目をカテゴリ別に決定するとともに、「新薬創出・適応外薬解消等促進の累積控除」や「医療上の必要性が高い医薬品についての不採算品再算定」を実施する—。
能登半島地震被災病院等について、DPC機能評価係数IIの配慮措置を実施する—。
12月25日に開催された中央社会保険医療協議会の薬価専門部会と総会で、こう言った内容が承認されました(同日の中医協総会における入院時食事療養費の引き上げ等に関する記事はこちら)。
市場実勢価格を踏まえた薬価の引き下げ、不採算品の薬価引き上げなどをトータルで見ると「薬剤費・医療費ベースで2466億円、国費ベースで648億円」の削減となります(関連記事はこちら)。
これまでの中医協論議、大臣合意を踏まえて2025年度薬価中間年改定の骨子を決定
12月20日に福岡資麿厚生労働大臣・加藤勝信財務大臣・林芳正内閣官房長官の3大臣協議が行われ、来年度(2025年度)の薬価中間年改定の方針が決まりました(厚労省サイトはこちら)。同日の中医協薬価専門部会では、この方針を踏まえた「骨子のたたき台」を了承(関連記事はこちら)。
さらに12月25日の薬価専門部会と総会で「骨子」が了承されました。「たたき台」よりも少し具体的な内容が盛り込まれています。
【対象品目、改定方式】
(1) 新薬のうち新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象品目
→平均乖離率(5.2%)の1.0倍(=乖離率5.2%)を超える品目
(2) 新薬のうち、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象「外」品目
→平均乖離率(5.2%)の0.75倍(=乖離率3.9%)を超える品目
(3) 長期収載品
→平均乖離率(5.2%)の0.5 倍(=乖離率2.6%)を超える品目
(4) 後発品
→平均乖離率(5.2%)の1.0倍(=乖離率5.2%)を超える品目
(5) その他(1967年以前収載品など)
→平均乖離率(5.2%)の1.0倍(=乖離率5.2%)を超える品目
▽改定方式は「市場実勢価格加重平均値調整幅方式」とし、以下の算出式で算定した値を改定後薬価とする(ただし、改定前薬価(税込み)が上限)
新薬価=
▼医療機関・薬局への販売価格の加重平均値(税抜の市場実勢価格)
×
▼1+消費税率(地方消費税分含む)
+
▼調整幅(改定前薬価の2/100)
【適用する算定ルール】
(a) 基礎的医薬品
→2024年度薬価改定で基礎的医薬品とされたものと組成・剤型が同一のものに適用
→乖離率の要件(全ての既収載品の平均乖離率以下)を満たさないものは対象外とする(乖離率の大きな、つまり大幅値引きを行って販売しているものには適用しない)
(b)最低薬価
→最低薬価を、賃金上昇などを踏まえて引き上げたうえで適用する(1996年以来の引き上げ)
→引き上げた最低薬価を下回る価格の基礎的医薬品については、「引き上げ後の最低薬価」と同水準までその薬価を引き上げる
(c)不採算品再算定
▽急激な原材料費の高騰、安定供給問題に対応するため「医療上の必要性が特に高い品目」を対象に臨時・特例的に適用する
→具体的には、▼基礎的医薬品とされたものと組成・剤形区分が同一である品目▼安定確保医薬品のカテゴリA・Bに位置付けられている品目▼厚生労働大臣が増産要請を行った品目—を基本とする
▽「『組成、剤形区分、規格が同一である類似薬の市場実勢価格の薬価に対する乖離率平均』が『全ての既収載品の平均乖離率』を超える品目(厚労相増産要請品目を除く)」は対象外とする
▽厚労相増産要請品目については、不採算品再算定の▼当該既収載品と組成、剤形区分、規格が同一である類似薬がある場合には、全ての類似薬について該当する▼当該既収載品と組成、剤形区分、規格が同一である類似薬(新規後発品として薬価収載されたものに限る)がある場合には、当該全ての類似薬について該当する場合に限る—の規定を適用しない
→「基礎的医薬品とされたものと組成・剤形区分が同一である品目」「安定確保医薬品のカテゴリA・Bに位置付けられている品目」については、これらの規定を▼当該既収載品と組成、剤形区分、規格が同一である類似薬(2023年度・24年度の薬価改定で不採算品再算定の対象となったものを除く)がある場合には、全ての当該類似薬について該当する場合に限る▼当該既収載品と組成、剤形区分、規格が同一である類似薬(新規後発品として薬価収載されたものに限る、ただし2023年度・24年度の薬価改定で不採算品再算定の対象となった品目を除く)がある場合には、全ての当該類似薬について該当する場合に限る—と読み替えて適用する
(d)新薬創出・適応外薬解消等促進加算
→「加算」「累積額控除(新薬創出等加算対象品目等を比較薬にして算定された品目の取扱いも含む)」の両方を適用する
(e)後発品等の価格帯ルール
→2024年度薬価改定における「価格帯集約」の考え方を踏襲して適用する
→ただし、組成、剤形区分、規格が同一である既収載品群の価格帯の特例の適用条件「全ての既収載後発品の中で最も高い価格帯となるものであること」の規定については、「全ての既収載後発品(改定の対象範囲外の品目を含む)の中で、最も高い価格帯となるものであること」と読み替えて適用する
(f)既収載品の外国平均価格調整
→2024年度薬価改定の考え方に基づいて適用する
(g)既収載品の薬価改定時の加算
→2024年度薬価改定の考え方に基づいて適用する
なお、「長期収載品の薬価の改定」「市場拡大再算定」「その他の既収載品の算定ルール」については、来年度(2025年度)中間年改定では適用されません(長期収載品についてはこの10月(2024年10月)から選定療養費が導入され、その効果を見る必要があること、市場拡大再算定はイノベーション評価に逆行する可能性が高いことなどを勘案)。
骨子では、このほかに次のような考え方も示されました。
▽組成、剤形区分、製造販売業者が同一の品目の規格間で価格逆転が生じる際には、可能な限り価格の逆転が生じないよう、財政中立の範囲内で、改定対象とならない規格を含めて価格を調整する
▽2024年度薬価調査で取り引きが確認されなかった品目については「類似する品目の乖離率」等に基づき、改定の対象か否かを判定する。ただし、本年(2024年)10月以降に薬価収載された品目は改定対象としない
▽「薬価改定」を区切りとして品目を選定する次の規定において、2025年度薬価中間年改定は、当該規定でいう「薬価改定」に含めない
・長期収載品の薬価の改定
・再算定
▽来年度(2025年度)薬価中間年改定においては、「2023年11月から2024年10月までの間に小児・希少疾病に係る効能・効果が追加された品目」等に限り、薬価改定時の加算の適用対象であるもの、または新薬創出等加算の要件に該当するものとする
骨子の内容は、これまでの議論を積み上げたものと言え、中医協委員からは異論・反論は出ていません。ただし、▼来年度(2025年度)中間年改定が医療機関等や製薬メーカーにどういう影響を及ぼしたのか、医療の質向上につながったのかを検証する必要がある(森昌平委員:日本薬剤師会副会長)▼カテゴリ別の改定対象範囲基準は2026年度薬価制度改革以降も重要な論点となる。イノベーション推進のための配慮措置を踏まえ、製薬メーカーは速やかに新薬の研究開発を進めるべき(松本真人委員:健康保険組合連合会理事)—などの注文もついています。
能登半島地震で被災した病院など、DPC機能評価係数IIで配慮措置
また、12月25日の中医協総会では、「DPC制度における能登半島地震等を踏まえた対応」も承認されています。
DPCの機能評価係数II(平均在院日数の短縮への努力を評価する効率性係数など)は、毎年度見直されます。例えば来年度(2025年6月)の見直しでは、「2023年10月から2024年9月の診療実績」(平均在院日数など)をベースに決定されます。
その際、2024年1月には能登半島地震が生じ、また今夏・秋には台風や大雨なども生じています。こうした大災害時には「一時、診療停止を余儀なくされる」「一時的に多様な患者を多く受け入れる」などの事態が生じます。この期間をそのまま適用すると「診療実績が低くなり、機能評価係数IIも低くなる」可能性があります。
医療機関を責めることのできない事情で「係数を低くする」(=収益も少なくする)ことは好ましいとは言えず、厚生労働省保険局医療課の林修一郎課長は、こうした事態に配慮するため、次のような対応を行うことを提案し、了承されています。
▽2023年10月以降に発生した下表(詳細は厚労省サイト(中医協資料)を参照)の災害に被災した地域に所在する病院においては、次のいずれかを比較し、「より高い値」に基づいて機能評価係数IIを算出する
・通常と同様の取扱いとした場合
・下表(詳細は厚労省サイト(中医協資料)を参照)に定める対象期間の診療実績データを、「それ以外の月の診療実績データの平均値」に置き換えて算出した場合
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