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2024年度の薬価乖離率は5.2%、過去改定に倣えば「乖離率が3.25%以上の医薬品」は2025年度薬価引き下げの対象に—中医協・薬価専門部会

2024.12.4.(水)

2024年における薬価と市場実勢価格との平均乖離率は約5.2%と、過去最低となった。過去の中間年改定(2021年度・23年度)では「平均乖離率の0.625倍」が基準値となり、これに倣えば「薬価と実勢価格との乖離率が3.25%」(5.2%×0.625)以上の医薬品は、来年度(2025年度)に薬価引き下げの対象となる—。

12月4日に開催された中央社会保険医療協議会・薬価専門部会では、こういったデータが示され、引き続き中間年改定論議が行われました。

支払側委員からは「薬価差は縮小しているが、通常通りの薬価改定を行える。特別の配慮は不要である」との、診療側委員からは「安定供給に支障が出ており、薬局経営も厳しい。中間年改定は廃止・中止すべき」などの意見が出ています。

2024年調査では、薬価と実勢価格との乖離は過去最少の5.2%に

来年度(2025年度)の中間年薬価改定に向けた議論が中医協で続けられています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

2017年末のいわゆる4大臣合意に基づいて、薬価制度の抜本改革が2018年度から進められており(関連記事はこちら(2018年度改革)こちら(2020年度改革))、その一環として「毎年度の薬価改定実施」(2年に一度、診療報酬改定と同時に行われる通常の薬価改定+診療報酬改定の行われない年に行われる中間年改定)があります。

一方、継続する「後発品を中心とした医薬品の供給不安」の中、また2024年度薬価制度改革では「イノベーションの評価」が行われた中では、来年度(2025年度)の中間年改定は見送るべきとの指摘も製薬メーカーサイドを中心に出ています。

12月4日の薬価専門部会では、改定内容(対象品目の範囲や適用ルールなど)論議を続けたほか、厚生労働省から2024年医薬品価格調査(薬価調査)の速報値が報告されました。

まず後者の薬価調査結果(速報値)を眺めてみましょう。

薬価改定の基本的な考え方は「公定価格(薬価)と市場実勢価格(医療機関等の購入価格)との差を埋めていく」ところにあります。このため改定に当たっては「市場実勢価格を把握するための調査」(薬価調査)が行われます。来年度(2025年度)の中間改定に向けても調査が行われ、今般、その速報値が薬価専門部会に報告されました。

薬価と市場実勢価格との乖離率を見ると、次のように「経年的に縮小していきている」ことが分かりました。

【全体平均】:約5.2%(過去最少)(2023年:6.0%、2022年:7.0%、2021年:7.6%、2020年:8.0%、2019年:8.0%、2018年:7.2%、2017年:9.1%、2015年:8.8%)

2024年の乖離率1(薬価専門部会1 241204)



【投与形態別】
▽内用薬:6.4%(2023年:7.0%、2022年:8.2%、2021年:8.8%、2020年:9.2%、2019年:9.2%、2018年:8.2%、2017年:10.1%、2015年:9.4%)
▽注射薬:3.5%(2023年:4.4%、2022年:5.0%、2021年:5.6%、2020年:5.9%、2019年:6.0%、2018年:5.2%、2017年:7.3%、2015年:7.5%)
▽外用薬:6.8%(2023年:7.2%、2022年:8.0%、2021年:7.9%、2020年:7.9%、2019年:7.7%、2018年:6.6%、2017年:8.0%、2015年:8.2%)
▽歯科用薬:マイナス9.3%(2023年:マイナス5.6%、2022年:マイナス4.3%、2021年:マイナス2.4%、2020年:マイナス0.3%、2019年:マイナス4.6%、2018年:マイナス5.7%、2017年:マイナス4.1%、2015年:マイナス1.0%)

2024年の乖離率2(薬価専門部会2 241204)



【主要薬効群別】
▽内用薬
▼その他の腫瘍用薬:3.4%
(2023年:3.7%、2022年:4.2%、2021年:4.6%、2020年:5.1%、2019年:5.1%、2018年5.1%、2017年:6.6%、2015年:7.1%)
▼糖尿病用薬:6.9%(2023年:7.9%、2022年:8.4%、2021年:9.0%、2020年:9.5%、2019年:9.9%、2018年:8.6%、2017年:10.6%、2015年:10.3%)
▼他に分類されない代謝性医薬品:5.1%(2023年:6.3%、2022年:7.2%、2021年:8.2%、2020年:9.1%、2019年:9.0%、2018年:8.0%、2017年:9.5%、2015年:9.1%)
▼消化性潰瘍用剤:9.2%(2023年:10.6%、2022年:11.3%、2021年:11.2%、2020年:11.7%、2019年:12.3%、2018年:10.8%、2017年:13.1%)
▼血圧降下剤:11.7%(2023年:12.3%、2022年:11.3%、2021年:11.9%、2020年:12.1%、2019年:13.4%、2018年:11.7%、2017年:13.3%)
▼高脂血症用剤:10.9%(2023年:11.9%、2022年:12.7%、2021年:12.5%、2020年:13.8%、2019年:13.9%、2018年:12.2%、2017年:12.7%)
▼その他のアレルギー用薬:9.0%(2023年:10.3%、2022年:11.6%、2021年:12.2%、2020年:13.6%、2019年:13.6%、2018年:11.8%、2017年:14.5%)

▽注射薬
▼その他の腫瘍用薬:3.0%
(2023年:4.3%、2022年:4.7%、2021年:5.0%、2020年:5.3%、2019年度:5.0%、2018年度:4.3%、2017年度:6.0%、2015年度:6.9%)
▼他に分類されない代謝性医薬品:5.1%(2023年:5.7%、2022年:6.3%、2021年:6.6%、2020年:6.7%、2019年度:6.3%、2018年度:6.0%、2017年度:7.8%、2015年度:8.6%)
▼血液製剤類:1.3%(2023年:1.9%、2022年:2.2%、2021年:2.5%、2020年:3.0%、2019年度:3.3%、2018年度:2.3%、2017年度:4.1%、2015年度:4.1%)
▼その他のホルモン剤(抗ホルモン剤含む):5.3%(2023年:6.5%、2022年:7.2%、2021年:7.5%、2020年:7.9%、2019年度:7.8%、2018年度:6.5%、2017年度:8.4%)
▼その他の生物学的製剤:2.1%(2023年:2.5%、2022年:2.7%、2021年:3.3%、2020年:3.3%、2019年度:3.8%、2018年度:3.8%、2017年度:4.6%)

▽外用薬
▼眼科用剤:8.2%
(2023年:8.3%、2022年:8.7%、2021年:8.5%、2020年:8.4%、2019年度:8.0%、2018年度:6.8%、2017年度:7.8%、2015年度:8.6%)
▼鎮痛、鎮痒、収斂、消炎剤:7.8%(2023年:7.9%、2022年:9.1%、2021年:8.7%、2020年:8.6%、2019年度:8.9%、2018年度:7.6%、2017年度:9.3%、2015年度:9.3%)
▼その他呼吸器官用剤:6.7%(2023年:6.9%、2022年:7.2%、2021年:7.2%、2020年:7.6%、2019年度:6.8%、2018年度:6.0%、2017年度:7.6%)

2024年の乖離率3(薬価専門部会3 241204)



さらに、▼後発品のない先発医薬品では3.8%▼後発品のある先発品では9.5%▼後発品では9.4%▼その他の品目では2.6%の乖離率が、医療上の必要性が高い▼基礎的医薬品では1.6%▼安定確保医薬品Aでは3.5%▼不採算品再算定品では2.1%―といった乖離率があることも報告されました。

また供給不安が生じている「後発品」のシェア(後発品割合)は数量ベースで「85.0%」(前年調査から4.8ポイント増)、金額ベースで「62.1%」(同5.4ポイント増)となっています。

●2024年薬価調査の速報値はこちらこちら

2023・21年度中間年改定では「平均乖離率の0.625倍」を基準に薬価引き下げを実施

こうした調査結果について支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は「乖離率は極端に小さくなっておらず、通常通りの薬価改定(=引き下げ)を行える状況と考える。国民負担の抑制、国民皆保険堅持の観点から平常ルールを適用する方向で議論していくべき」と、松本真人委員(健康保険組合理事)は「価格差がある以上、それは国民に還元していく(=薬価改定・薬価引き下げを行う)べき」と進言しています。一方、診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は「中間年改定実施を決めた時点と現在とでは、薬価差の縮小、諸物価(原材料費、エネルギー費、人件費など)の高騰など環境が全く異なる。診療報酬収益の大きな部分を薬剤費が占める薬局においては、毎年度改定で経営が逼迫している。中間年改定は廃止、少なくとも来年度(2025年度)については中止すべき」と訴えました。

来年度(2025年度)に中間年改定を実施するか否かは中医協で決することは難しく、来年度(2025年度)に向けた予算案編成の過程で政治決着になると見込まれます。

なお、診療側の林正純委員(日本歯科医師会副会長)は「歯科の局所麻酔薬の逆ザヤ(薬価よりも高い価格で麻酔薬を購入している)状況が解消されていない。厚労省にはさらなる取り組みを期待したい」と要望しました。



また12月4日の薬価専門部会では、「仮に来年度(2025年度)に薬価中間年改定を行う」ことになった場合に備えて、▼改定の対象範囲▼適用ルール▼医薬品安定供給への対応―などについて議論を重ねました。

まず改定の対象範囲については、過去2回の中間年改定で「平均乖離率の0.625倍」という基準が用いられています。仮に、今回の平均乖離率5.2%でも適用するとなれば、「乖離率(薬価と実勢価格との差)が3.25%以上の品目が薬価引き下げ対象になる」と言えます。

この基準についても、年末の予算編成過程の中で検討・決定されますが、診療側の森委員は「仮に改定を行う場合には、影響を小さくするために対象範囲は狭めるべき。薬価差が縮小する中で倍率(上述の0.625)を維持することは、対象範囲を事実上拡大するものだ」と、一方、支払側の松本委員は「対象範囲を狭めるほど、新薬が対象から外れ、後発品や長期収載品の薬価引き下げが進む」とコメントしています。

乖離率と改定対象との関係(薬価専門部会4 241204)



また、適用ルールについては、やはり診療側の「実勢価格に連動するルールに限定すべき」(森委員)という意見と、支払側の「新薬創出適応外薬解消加算の累積額控除などはもちろん、市場拡大再算定なども含めた他のルールも広範に適用すべき。メーカーサイドもイノベーション評価と累積額向上のセット実施には理解を示していると考えている」(松本委員)という意見とが対立しています。

既収載医薬品の算定ルール(薬価専門部会5 241204)



他方、医薬品安定供給への配慮等に関しては、▼不採算品算定について2023・24年度と連続の特例を実施したが、その効果は十分に見えない。安易な特例実施はすべきでない(松本委員、鳥潟委員)▼安定供給に積極的に取り組む後発品企業の指標設定・評価については、アップデートを行い、広く適用していくべき(松本委員)▼後発品企業の指標設定・評価については、初めての試みであり、検証しながら慎重に進めるべき(森委員)▼2024年度薬価制度改革ではイノベーション評価・医薬品安定供給に力を注いだが、それを受けてメーカーサイドがどのような取り組みを行っているのか、具体的に示すことが重要である。また薬価引き下げを行った場合、その財源は医療機関に還元すべき(長島公之委員:日本医師会常任理事)—などの意見が出されました。

後発品メーカ1の評価指標等1(薬価専門部会6 241204)

後発品メーカーの評価指標等2(薬価専門部会7 241204)

後発品メーカーの評価指標等3(薬価専門部会8 241204)



次回、薬価専門部会では業界団体からのヒアリングを行い、その結果も踏まえながら、さらに議論を重ねていきます。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

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